🐴 (馬)

Takaaki Umada / 馬田隆明

「未来を実装する」を実装する

未来を実装する』の「おわりに」にこのようなことを書きました。

こうした「社会実装」や「未来を実装する」というコンセプトを社会実装するには、情報を伝えるだけではうまくいきません。本書ではインパクトとそこに至る道筋を少し示しただけであり、これからこの内容についてのガバナンスやセンスメイキングを実施していく必要があるでしょう。それは著者の宿題です。

ということで、『未来を実装する』を2021年1月の出版したあと、この書籍を"実装"する活動をしてきました。

 

出版後、公開イベントや社内講演で30回程度お話しさせていただいたほか、時間の許す限り対話もしてきたつもりです。Twitterで『未来を実装する』について言及いていただいている方々にも御礼の返信もさせていただきました。センスメイキングの章で挙げたような活動を地道にやってきたつもりです。こうした活動を通して、書籍を読んでいただいた皆さんとつながれたのも良い経験となりました。

また、ガバナンスに多少でも貢献するために、政府系の委員仕事なども引き受けさせていただきました。

これらの活動を通して、少しでもこの本のコンセプトが実装できたのであれば良いなと思いますし、宿題がある程度こなせたのであれば良いなと思います。

 

今後、「社会との実装」が本当に必要な、気候変動対策や規制に挑むスタートアップなどが増えてくることを願っています。

来年はもう少しだけ先に進めるために、社会実装に関するコミュニティ活動を強化しようかなと思っています。ご興味あれば『未来を実装する』特別サイトからご登録ください。

 

2022年はまた本を出す予定です。『未来を実装する』よりも、もう少し現場寄りの内容になる予定ですが、ご興味あればまた手に取っていただけると嬉しいです。

スタートアップ側に不利な協業契約にならないように(とその対策)

スタートアップが注目を浴び、日本全国でオープンイノベーションの取り組みが広まるにつれて、スタートアップが他企業と共同で何かを行うことが増えました。また各産業の深い課題に取り組むスタートアップも増え、初期の段階から顧客企業との間でNDAなどの契約を交わすことが増えているように思います。

そんなとき、スタートアップはどうしても不利な立場に置かれがちです。そのため国として是正の動き(下記に紹介します)が出てきているのですが、そうであるにも関わらず、オープンイノベーションをビジネスとする一部の企業などが、スタートアップ側に不利な契約を持ち掛けるケースを聞きました。そこで注意喚起も含めてブログにしておきます。

契約の隠れた注意点

PoCやライセンス契約での不当な契約や、共同研究における知的財産権の帰属、成果物の利用の制限などは、不利なところが分かりやすいので、契約書のやり取りの中で問題に気付けるスタートアップも多いのではないかと思います。

ただし、それ以外にもいくつか気を付けるべき点があります。例えば以下のようなものです。

  • 損害賠償責任の一方的負担 (何かしらの損害が起こった際はスタートアップが一方的に負担するとの文)
  • 取引先の制限
  • 最恵待遇条件

これらの一部はNDAなどの時点で入っているケースもあります。たとえば損害賠償責任については、何かしらの不慮の事故により損害賠償が発生したら、スタートアップはすぐに倒産の憂き目にあうかもしれません。

契約に不慣れなスタートアップや立場が弱いスタートアップは、名の知れた企業や実績のありそうなオープンイノベーション仲介企業から「これが雛形です」と言われると「そういうものか」と思って、飲んでしまうように思います。しかしこれらにはそれぞれリスクがあるため、契約書はきちんと読むことをお勧めします。

対処するには…

不利な契約に気付いたときに役立つのが経済産業省・特許庁・公正取引委員会と委員によって作られた「モデル契約書(新素材・AI)」と「スタートアップとの事業連携に関する指針」です。

これらのモデル契約書や『スタートアップとの事業連携に関する指針』は単に知識として活用できるだけではなく、これらを基に「国のモデル契約書や指針に反するのでは?」「公正取引委員会の見解として、優越的地位の乱用と見做されるかもしれません」と伝えたうえで「これはお互いにとってリスクです。良い落としどころを見つけませんか?」と先方に言うと、国の御旗の元で交渉が可能になります。

実際、これらを参照しながら「これが一般的な契約ですよ」と見せて契約を進めている支援先のスタートアップもあり、大変役に立っています。

業界としてより良くしていくために

大手企業側から料金を取り、スタートアップとのマッチングなどを行うオープンイノベーション企業にとっての、顧客はスタートアップではなく大手企業であり、大手企業側に有利な契約書を使おうとするインセンティブがあるのは分かりますし、大手企業側の法務が自社防衛的な措置を含みたがるのも分かります。

ただ、こうした動きがあるとお互いの信頼を損なってしまい、オープンイノベーションを本当に進めたいと思っている人達にも悪影響が出てきます。そこで今一度、スタートアップを斡旋するような企業やスタートアップとの協業を考える企業の皆様におかれましては、「モデル契約書(新素材・AI)」と「スタートアップとの事業連携に関する指針」、それらに加えて「スタートアップの取引慣行に関する実態調査について(最終報告):公正取引委員会」を参照いただき、自社の契約書の状況をチェックされると良いのではないかと思います。また自社内の法務にも、こうしたモデルのひな型をうまく使うことで、適正な内容に変更できないかという相談もできるのではないでしょうか。

スタートアップもこうしたガイドをうまく使って、契約において交渉をすると良いのではないかと思います。

大学生向けの「全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム 2021」

東京大学アントレプレナー道場の一部を、全国の大学生向けにオンラインで提供できることになりました。

 

全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム

 

全国の大学生であればどなたでもご参加可能です。登録は上記のサイトから無料で可能で、登録締切は 11 月 24 日 (水) 17 時までを予定しています。

本プログラムは文部科学省による事業であり、私は 12 月 2 日から1月末にかけて、約2か月全8回を担当します。

授業内容はプロジェクト型で、オンラインでのワークショップと、一部大学ではオフラインで実施いただきます。

 

言わずと知れた起業家である DeNA 南場さん、コオロギセンベイで一躍脚光を浴びる徳島大学のグリラス渡邉さんにもゲストとしてご登壇いただきます。

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東京大学ではこの2年、オンラインでのアントレプレナーシップに関する大規模授業を行ってきました。そこでの成果を活かしての内容になる予定です。もしご興味ある大学生の方がいらっしゃればご参加ください。

日本から少しでも多くの起業家が生まれるよう、微力ながら何かしら貢献できればと思います。

 

なお、プロジェクト型ではなく知識習得型の授業をご希望の場合は、FoundX Online Startup School をご活用ください(※こちらは大学生でなくても受講可能です)