🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

アントレプレナヌシップず『起業家性』、アントレプレナヌシップ教育で涵逊するべき資質・胜力

アントレプレナヌシップは、起業家粟神や䌁業家粟神ず蚳されるこずが倚い蚀葉です。

その「粟神」ずいう語感から、アントレプレナヌシップ教育ずは「起業家の持っおいるような粟神やマむンドセットを育おる教育」なのだず思われる人もいるようです。そのため「本圓に教えられるのか」「粟神に介入するのは良いこずなのか」ずいった疑問も招きがちです。

しかし、元々の英語にある〇〇シップ(-ship)ずは状態や胜力を瀺す蚀葉です。英語でのアントレプレナヌシップずいう蚀葉のニュアンスは、決しお粟神論やマむンドセットだけの話ではありたせん。資質・胜力人間性等だけではない、知識や技胜、思考力や衚珟力等ずいった、獲埗できる胜力の面も含んでいるのがアントレプレナヌシップずいう蚀葉です。

たずえば、他の〇〇シップで有名なものには、リヌダヌシップがありたす。そしおリヌダヌシップを教えるずきには、単に粟神論に終始するのではなく、スキルや知識に぀いおも語られるこずが普通でしょう。スキルや知識であれば、埌からでも獲埗可胜なものも倚くありたす。

぀たり、アントレプレナヌシップ教育を考えるずきには粟神的な郚分だけを考えるのではなく、獲埗できる・教えられる郚分もある、ず捉えたほうが良いでしょうし、そのほうが建蚭的な議論が可胜になりたす。

もし粟神論に拘泥しおいるようだず、アントレプレナヌシップ教育は「起業家や瀟䌚起業家を呌んできお、圌ら圌女らの情熱を䌝えれば粟神が倉わる」ずいった、逆効果の可胜性のある教育が広たっおしたうのでしょう。

そうした粟神論の教育からは脱华し、どのように効果的に胜力や資質を䌞ばしおいくのか、ずいった議論をより積極的にしおいくべきのように思いたす。そしお実際に、こうした起業家性にた぀わる胜力や、その結果ずしおの起業パフォヌマンスは、教育で䌞ばしうるこずがいく぀もの研究で瀺唆されおいたす。

そうした背景やアントレプレナヌシップの原矩を鑑みお、アントレプレナヌシップは「起業家粟神」「䌁業家粟神」ではなく、「起業家性」ず蚳されるべきでは、ずいった論もありたす。私も個人的には、アントレプレナヌシップを起業家性ずしお捉えたほうが、誀解を招くこずが少ないのではず思いたす。

もちろん、マむンドセットや態床がアントレプレナヌシップの構成芁玠ずしおあるずは思っおいたす。それにこうした態床などは特定の発達段階を過ぎるず倉わりづらくなっおくるからこそ、アントレプレナヌシップ教育をするのであれば若幎局での教育が重芁であるず考えおいたす。

資質・胜力ずは

では起業家性を構成する資質・胜力、぀たりアントレプレナヌシップ教育の䞭で育むべき資質・胜力ずは䜕でしょうか。

それを考える䞊では、たず資質・胜力に぀いお考える必芁がありたす。

日本で䜿われる資質・胜力ずいう蚀葉は、英語で語られるコンピテンシヌ (competency) ずほが同矩のものずしお扱われおいるようです。コンピテンシヌは䞀般的に「特定の物事をより良く行うための、知識、スキル、態床 (Knowledge, Skill, Attitude で KSA)」ず理解されるこずが倚いように思いたす。

アントレプレナヌシップ教育の領域でも、コンピテンシヌずいう蚀葉はよく出おきたすし、教育の成果ずしおコンピテンシヌを䌞ばすこずは䞀぀の目的ずなっおいたす。するず、アントレプレナヌシップ教育をどのように行うかずは、「アントレプレナヌシップに関するどのような知識、スキル、態床をどのように身に着けるべきか」ずいう問いずなりたす。

アントレプレナヌシップずは

次にアントレプレナヌシップずはそもそも䜕か、ずいうこずを考える必芁がありたす。

これは論者によっお異なるのが珟状です。Gedeon のレポヌトでは、本圓に様々な皮類の定矩が集められ、掲茉されおいたす。この䞭で頻出する単語ずしおは「機䌚」「リスク」「資源」などがありたす。

文郚科孊省は2016幎に起業家粟神を「チャレンゞ粟神、創造性、探究心等」ずし、起業家的資質・胜力を「情報収集・分析力、刀断力、実行力、リヌダヌシップ、コミュニケヌション力等」ずしおいたす。ただ、あたり海倖の文献を芋おいおも出おこない単語が倚く、独自性の高い定矩のように芋えたす。

EUは2016幎にアントレプレナヌシップのコンピテンシヌである、European Entrepreneurship Competence Framework、略しおEntreCompをたずめおいたす。

EntreComp では起業家的なコンピテンシヌを「機䌚やアむデアに基づいお行動し、他人のために経枈的、文化的、瀟䌚的䟡倀に倉換する胜力」ず定め、现かく15個の胜力ず8぀のレベルに分けおいたす。15個を倧別するず、「アむデアず機䌚」「資源」「行動ぞ」の3぀ずなっおいたす。これらを図で瀺すず以䞋のようなものになりたす。

こうした EntreComp は過去のアントレプレナヌシップに関する研究で頻出する、「機䌚」「資源」などの抂念を含んでいたす。たた昚今、熟達した起業家に぀いおの研究の䞭でも泚目される゚フェクチュ゚ヌションに関連する「行動」も含たれおいたすし、さらに、狭矩のアントレプレナヌシップではなく、広矩のアントレプレナヌシップに基づいお構成されおおり、考えるベヌスずしお良いのでは、ず思いたす。

アントレプレナヌシップ教育で涵逊するべき四぀の資質・胜力

そのうえで、私が今考える、「アントレプレナヌシップ教育」で涵逊するべき資質・胜力は、以䞋の四぀ではないかず思っおいたすただし、今埌の怜蚎や議論を経お倉わるかもしれたせん。あくたで珟時点のものです。

  1. 機䌚の発芋ず創造
  2. 資源の掻甚ず獲埗
  3. 詊行錯誀による孊習
  4. リスクの管理ず遞択

1.  機䌚の発芋ず創造

䞀぀目は機䌚に関する知識・スキル・態床です。

様々な倉化や䞍確実性を芋぀け、それを評䟡しお、機䌚ずしお認識できるこずは、起業家性の䞀぀の芁玠ずしお取り䞊げおも良いのではず思いたす。機䌚ずいう蚀葉はしばしばアントレプレナヌシップの研究の䞭でも出おくる単語です。

ただし、客芳的に存圚する機䌚を芋぀けるだけではなく、行動するこずで新たな機䌚を創造する、ずいう偎面もあるため、発芋 (discovery) ず創造 (creation) の䞡方を入れおいたす。

これたでのアントレプレナヌシップ教育や起業家教育では、垂堎や環境の分析をしお、ビゞネスプランを蚈画をする教育が䞻でした。そうした掻動は機䌚を発芋するこずが䞭心に眮かれおいるように芋えたす。しかし実際には、詊行錯誀をしお自ら環境に働きかけるこずで、機䌚を創造するこずも重芁です。おそらく発芋ず創造はサむクルで回っおいくものでしょう。発芋ず創造の䞡方を意識しながら胜力を䌞ばす必芁がありたす。

2.資源の掻甚ず獲埗

二぀目は、人・もの・金・時間ずいった資源を䞊手に掻甚する知識・スキル・態床ず、そうした資源を獲埗する知識・スキル・態床です。

䞀般的にビゞネススクヌルで教えられるのは、䞎えられた資源を最倧限掻かすための知識やスキルですが、起業家は資源が䞍足しおいる䞭で事業を䜜らねばならないため、自分の持っおいる資源を超えお、倖郚にある資源を獲埗しにいきたす。

たずえば、スタヌトアップの起業家で蚀えば資金調達や採甚は資源の獲埗ですし、瀟䌚起業家でも資金調達は必芁です。自分が持぀資源の範囲内で行うのではなく、機䌚を远求するためなら、倖郚の資源をも掻甚するし、掻甚できる、ずいう態床を涵逊するこずが起業家性ずいう芳点では重芁ではないかず思いたす。

゚フェクチュ゚ヌションの領域ででも、Effectual Ask の熟達の研究が進んでいたすが、Askもたさに倖郚の資源の獲埗のためのスキルず蚀えたす。

この考え方を端的に衚した、もっずも有名なアントレプレナヌシップの定矩の䞀぀は、ハヌバヌド倧孊のスティヌブン゜ン教授による「コントロヌル可胜な資源を超越しお機䌚を远求するこず」でしょう。

ただし獲埗だけでもダメで、埗られた資源を掻甚できなければなりたせん。呚りに資源があるのに掻甚できない人もたくさんいたす。それに手持ちの少ない資源を掻甚しお成果をあげたような人でなければ、远加で資源を埗るこずもできたせん。

スタヌトアップでいえば、わずかな資源であっおも事業進捗を生んで、その成果をもっお投資家を説埗したすが、そのためには資源の掻甚のためのスキルが必芁です。぀たり掻甚ず獲埗のサむクルを回しおいくためにも、䞡方が必芁だずいうこずです。

3. 詊行錯誀による孊習

孊習は、知識䌝達を含んだ様々な圢で行われたす。しかしアントレプレナヌシップずいう芳点では、行動によっお埗られた経隓ず、経隓を通した孊習を行うための知識・スキル・態床が重芁になっおくるず思っおいたす。

特に仮説生成ず仮説怜蚌を通した、行動を䌎う孊習が重芁だず考えおおり、さらに単に行動を䞀床起こせば良いのではなく、行動をした埌に、その結果を螏たえお反省し、さらに行動をするずいうニュアンスを含めるために詊行錯誀ずいう蚀葉を䜿っおいたす。

珟圚の起業家教育の倚くは、蚈画しただけで実践せずに終わりのこずも倚く、それは詊行錯誀ずは蚀えたせん。仮に屋台の出店などで䞀床実践したずしおも、それで終わっおしたうず詊行錯誀ではありたせん。

蚈画だけではなく、さらに䞀床だけの実践だけでもなく、実践した埌に振り返りを行っお、䜕床も実践を積み重ねお孊び続けるこずが本来の起業家的プロセスで行われおいるこずのはずで、そのプロセスを教育にも組み蟌んで孊習を促す必芁があるように思いたす。

より具䜓的には、詊行錯誀のプロセスを早めるための知識やスキルず、経隓から孊ぶ態床ず内省のスキルを涵逊しおいくこずが重芁ではないかず思いたす。

4. リスクの管理ず遞択

最埌にリスクに関する知識・スキル・態床です。倉化によっお生たれるリスクを機䌚ずしお捉え、そのリスクを胜動的に取る態床は、起業家性の倧きな䞀぀の偎面のように思いたす。いく぀もあるアントレプレナヌシップの定矩を芋おいおも、リスクに着目した定矩はそれなりの数がありたす。

ただ、無謀なリスクを取るのは決しお起業家的ずは蚀えないでしょう。自ら取れるリスクや、自ら背負える損倱の範囲をきちんず蚈算したうえで、確実性は倚少小さいずしおも倧きなリタヌンが埗られそうであれば、十分にリスクを緩和する策を講じおそのリスクを取るずいった、リスクを「管理する」ずいう偎面、そのための知識やスキルも起業家には倧いに必芁ずなりたす。

そうしたリスクを取るこずによっお、真正性の高い経隓が埗られ、倧きな孊びを埗られるずいう面もありたす。それに恐らくアントレプレナヌシップ教育を孊校で行うこず自䜓、教育の堎が孊校の倖界に開かれ、その結果リスクをはらむものずなりたす。そのリスクをうたく管理ず遞択できおいるかどうかを教育者偎も意識する必芁があるず考え、リスクの項目を入れたほうが良いのではず考えたした。

四぀の構成芁玠の扱いず他の孊習抂念ずの接続

これらはすべおの「〇〇起業家」の掻動においおも、共通しお掻甚できる胜力ではないかず考えおいたす。たた、起業家に限らず、䞍確実性の高い状況においお䞖界に圱響しお新たな䟡倀を生み出しおいく、ずいう面で汎甚的な胜力ではないかず思いたす。

たずえば研究者を䟋に挙げおみたしょう。ここでの機䌚はビゞネス機䌚だけではなく、最先端の䞍確実な状況䞋で科孊的発芋の機䌚を特定するこずです。たた研究費ずいう資源を獲埗しなければなりたせん。実隓はたさに行動を通した詊行錯誀であり、そこから孊んでいくこずです。新しい発芋をするために、適切な範囲でリスクを取るこずもあるでしょう。これらの胜力を身に着けおおくこずは、研究者でも掻甚可胜です。

加えお、これらの胜力を涵逊するこずは、OECDの Education 2030 で提唱される『生埒゚ヌゞェンシヌ』の定矩である、「生埒が目的意識を働かせ、自分自身の責任を果たしながら、呚囲の人々、事象、状況をより良くするために孊んでいくための力。自分の人生および呚りの䞖界に察しお良い方向に圱響を䞎える胜力や意志をも぀こず」にも沿うのではないかず思っおいたす。

これらの四぀の構成芁玠は、起業家的コンピテンシヌの尺床の項目ずも察応させながら考えおいたす。

なお、私がただ考えおいる途䞭のものずしお、倧志をどう持っおもらうか、ずいう悩みもありたす。これをアントレプレナヌシップの䞭に含めるかどうかは議論が必芁で、むしろリベラルアヌツ教育のほうに任せたほうが良いのではずも思いたすが、考えるべき宿題ずしお曞いおおきたす。

教育の実践に向けお

ここたで抂念の敎理をしおきたしたが、教育を実際に行っおいくためにはもう䞀歩具䜓的なものに螏み蟌む必芁がありたす。

そこで、四぀の構成芁玠を知識・スキル・態床の芁玠に分けお、さらにそれを段階に分けお成長させおいくこずが、アントレプレナヌシップ教育を蚭蚈するずきに考えるべきではないかず思いたす。

より具䜓的には、以䞋のような衚を埋めおいきながら、それぞれのアントレプレナヌシップ教育のカリキュラムの到達目暙を定め、それぞれの知識・スキル・態床をどのように涵逊しおいけるかを考えるのが、アントレプレナヌシップ教育で行うべきこずではないでしょうか。

なお、到達するべきレベルは発達段階によっお異なるため、すべおの発達段階で同じ教育を行うべきではないず思っおいたす。発達段階に合わせた教育の重芁性に぀いおは、別の蚘事で指摘しおいたすので、こちらなどもご芧ください。

blog.takaumada.com

これたで経隓や勘で行われおきたように芋えるアントレプレナヌシップ教育ですが、研究を参照し぀぀、このように抂念を敎理しながら進めるこずで、より効果的なカリキュラムを蚭蚈できるのではないかず思っおいたす。たた、それがないたた挠然ずしたアントレプレナヌシップ教育を進めおも、その効果はほずんど芋蟌めないのではないかず懞念しおいたす。

起業家の䞍足: 2022幎の日本のスタヌトアップ゚コシステムの課題

2022幎珟圚、日本のスタヌトアップ゚コシステムにはたくさんの改善点があるずされおいたす。たずえば経団連が2022幎にたずめたスタヌトアップ躍進ビゞョンには、2022幎時点での課題がいく぀も挙げられおいたす。

ただ、この5幎を芋おみるず様々な制床や環境が敎っおきおいるのも事実です。スタヌトアップフレンドリヌな制床や組織がいく぀も立ち䞊がり、VCからの投資額やファンド組成額も順調に増えおいたす。

他囜ず比范しお足りない郚分はもちろんただただありたすが、10幎前や5幎前ず比べるずスタヌトアップ゚コシステムは党䜓的に改善傟向であるように思いたす。

そんな䞭で、あたり倉わっおおらず、数々の課題の䞭でも最も倧きなボトルネックになっおいるように芋えるのは、起業家の数であるように思いたす。これに぀いお、デヌタを芋ながら考えおいきたす。

デヌタから掚枬する起業家の数の枛少

INITIAL のたずめた 2021 幎の資金調達のレポヌトを芋おみたしょう。

2021幎 Japan Startup Finance 〜囜内スタヌトアップ資金調達動向決定版〜 https://initial.inc/enterprise/resources/japanstartupfinance2021

投資金額調達金額は毎幎䌞びおきおおり、リスクマネヌが順調に䌞びおきおいるのは赀色の棒グラフを芋おも分かるずころです。もちろん、諞倖囜ず比べればただ数分の䞀や数十分の䞀かもしれたせんが、少なくずも勢いよく増えおきおはいたす。

䞀方、緑色の線グラフで瀺されおいる資金調達瀟数は、2018幎をピヌクに、2021幎は玄70%たで䞋がっおいたす。さらに「蚭立埌経過幎数別の調達者数割合掚移」(p.24) も、1幎未満の䌁業は幎々䞋がっおいたす。

぀たり、党䜓ずしおの投資金額は増えおいるものの、創蚭されたばかりのスタヌトアップぞの投資は増えおいるわけではない、ずいうこずがデヌタから瀺唆されおいたす。

創蚭されたばかりのスタヌトアップぞの投資が増えない原因ずしおの「起業家の数」

こうした数字になる原因を考えおみたしょう。

たずデヌタ自䜓に疑いを持぀こずもできたす。少額の資金調達は衚に出ないものが倚く、捕捉できおいない調達がある可胜性もあるからです。ただそれはどの幎もそう倉わらないはずのため、経幎倉化に぀いおは倧きな圱響は及がさないず考えたす。

次に考えられる理由ずしおは、

  • 投資家が若いステヌゞに投資しなくなった求められるレベルが䞊がった、シヌドからアヌリヌに投資の軞を移した、など
  • 投資に倀するアむデアが少ない投資察象ずなる領域が倉わった、など
  • 起業家の数が少ない

などが考えられたす。

これらの理由の䞭では、日々起業の初期の人たちず関わっおいる䞭で筆者が感じおいるこずずしおは、起業家の数の枛少が最倧の理由ではないかず思いたす。

同様の悩みを投資家から聞くこずがしばしばありたす。「起業家がいないから自ら䜜りに行く」ず、VC䞻導で起業するプログラムやスタヌトアップスタゞオを怜蚎するずころも増えおきおいたす。私も個人の感想ずしお、起業家の数はさほど増えおいないずいう印象です。

投資資金を増やす以倖の策が必芁

リスクマネヌの額は幎々増えおいるのに、資金調達の数や起業家の数が増えおいないこずを考えるず、「VC に回すお金を増やせば、起業家が増えるわけではない」ずいうこずが蚀えるのではないかず思いたす。もちろん今埌、遅効的に効いおくる可胜性もありたすが、珟時点ではその傟向は芋えおいたせん。

ずなるず、スタヌトアップ゚コシステム党䜓をより良くしおいくためには、資金量を増やす以倖の「起業家の数を増やす」手立おを講じる必芁がありそうです。

しかし、その手立おを遞ぶずきにも泚意が必芁です。

たずえば、無理やり起業の数を増やすこずはできるでしょう。たずえば「倧孊から50瀟ず぀スタヌトアップを茩出せよ」ず号什を出すこずで、数は増えたす。しかし、無暗に起業の数を増やすこずが政策ずしお正しいかどうかは議論がありたすし、傟向的に吊定的な論のほうが倚いように思いたす。実際、日本でも倧孊発ベンチャヌ1000瀟蚈画ずいうものを行いたしたが、あたり評䟡は芳しくありたせん。数を増やすために無理やり起業を増やす取り組みが始たるず、歪んだむンセンティブを生み出しおしたい、埌凊理が倧倉になるリスクの方が倧きいように思いたす。

なので、「起業家の数を増やさなければならないから、起業家の数をなんずしおでも増やす」ずいう埌先を考えない取り組みは危険です。起業の数が増えおいない原因を考え、そこにアプロヌチしおいく必芁があるように思いたす。

そこで続く蚘事では、なぜ起業家の数が少ないのかに぀いお考えたいず思いたす。

blog.takaumada.com

ビゞネス起業家、瀟䌚起業家、䌁業内起業家、政策起業家、垂民起業家  様々な〇〇起業家が求められる時代におけるアントレプレナヌシップ教育

「〇〇起業家」ず呌ばれる人たち、英語だず「〇〇 entrepreneur」ずいう蚀葉が増えおきおいたす。

䟋えば以䞋のような「〇〇起業家」ずいう蚀葉がありたす。

  • 商業起業家 ―― 商売ずしおの事業を起業する人たちです。䞀般的に起業家ずいえば、この人たちを指したす。
  • スタヌトアップの起業家 ―― 短期間で急成長する䌁業スタヌトアップを䜜ろうずする起業家です。商業的な起業の䞀皮ですが、資金調達に融資ではなくVCからの出資を甚いるこずが倚く、IPOを目指すこずが倚いなど、少し掻動が異なるため分けお曞いおいたす。
  • 瀟䌚起業家 ―― 垂堎では解決されづらい瀟䌚課題や、囜家の保障から挏れた課題を解決するために事業を起こす人たちです。NPOなどの組織を䜜り事業掻動をするこずが倚い起業家です。ただし近幎はれブラ䌁業やベネフィットコヌポレヌションなど、株匏䌚瀟でありながら瀟䌚課題を解決しようずいう起業掻動も盛んになっおきおいたす。瀟䌚起業家は組織の維持のためにファンドレむゞング資金調達をし぀぀、むシュヌレむゞング問題提起をするずも蚀われたす。英語で蚀えば Social Entrepreneur です。
  • 䌁業内起業家 ―― 既存䌁業の䞭で新しい取り組みや新芏事業を行う人達です。むントレプレナヌ (Intrapreneur) ず呌ばれたりもしたす。
  • 政策起業家 ―― 政策の実装を働きかけるこずで瀟䌚課題を解決する人たちです。Policy Entrepreneurず呌ばれたす。スタヌトアップではIPOが䞀぀のマむルストヌンですが、政策起業家では政策が法制床化されたり、囜の骚倪の方針に入るこずがIPOに近いマむルストヌンだず蚀われるこずもありたす。垂民個人が政策を実珟するために掻動しおいるずきに政策起業家ず呌ばれるこずもありたすし、野心的な政策を䜜っおいく政治家や官僚もこの領域の起業家ず蚀われるこずもありたす。
  • 垂民起業家 ―― コミュニティ掻動やたちづくりなど、「瀟䌚」よりも小さな集団単䜍のための業を起こす人たちです。もずもずは経枈的な面が匷く、コミュニティビゞネス的な文脈から出おきた抂念のようですが、最近はより広く垂民掻動党般の事業を起こす人ずしお捉えられおいるように思いたす。Civic Entrepreneur ず呌ばれたりしたす。
  • 制床起業家 ―― 制床掟組織論を基に論じられおいる抂念で、リ゜ヌスを掻甚しお新しい制床(institution)の生成や、既存の制床の倉革を実珟する人たちです。Institutional Entrepreneurず呌ばれたす。
  • 地域起業家 ―― 地域に根差しおスモヌルビゞネスなどを行う起業家は Local Entrepreneur ず呌ばれるこずもありたす。日本ではロヌカルベンチャヌず呌ばれる文脈に近いず思いたす。
  • 地方起業家 ―― 地域の䞭でも特に地方や田舎を䞭心ずした。Rural Entrepreneur ず呌ばれたりしたす。特に発展途䞊囜の文脈で出おきやすいようですが、日本の過疎地域での町おこしなどにおいお掻甚可胜な抂念のように思いたす。
  • 孊術起業家 ―― Academic Entrepreneurず呌ばれたす。倚くの堎合は孊術的成果を甚いお起業をする人たちを指したす。ただそもそも研究者は、䞍確実性の高い先端領域で新しい発芋をしおいくずいう意味では起業家的ですし、研究を通しお新しい研究領域を確立した人は「起業」家ずも蚀えるでしょう。

䞭には抂念ずしおほずんど成熟しおいないものもありたすが、こうした数々の蚀葉が生たれおいるずいうこずは、それぞれの領域においお、起業家的な圹割が求められおいるずいうこずでしょう。そしおこれからも瀟䌚は垞に倉わっおいくため、「新しい事業を起こす人」は継続的に求められ続けおいきたす。

そしお起業家的な胜力を持っおいる個人は、それぞれの領域で求められる人材ずなりたす。

個人が商業起業家になるための胜力を持っおいれば、垂堎で䟡倀を提䟛しお、䌚瀟に䟝存せず個人ずしお報酬を埗るこずができるでしょう。䌁業内起業家の胜力を持っおいれば、劎働垂堎で匕く手あたたになりたす。瀟䌚起業家や垂民起業家になるこずができれば、瀟䌚の問題を解決し぀぀、垂民ずしお自ら居堎所を䜜るれるようにもなるでしょう。

こうした起業家的人材を倚く育むこずで、より倚くの䟡倀が創出されるこずが期埅され、瀟䌚課題も解決されやすくなり、倚くの人がより良い生掻を享受できるはずです。実際、『垝囜』や『マルチチュヌド』で有名なネグリハヌトは、近刊の『アセンブリ』で、マルチチュヌドの起業家掻動に぀いお觊れおおり、瀟䌚的協働の自埋的組織化のために起業家的胜力が必芁であるずしおいたす。

こうした〇〇起業家ずいう蚀葉がしばしば聞かれるような環境䞋においおは、アントレプレナヌシップ教育に泚目が集たるのも、自然な流れのように思いたす。

ビゞネス起業家教育からより広いアントレプレナヌシップ教育ぞ

しかし䞀方で、これたでのアントレプレナヌシップ教育は䞻にビゞネスの分野、぀たり商業起業家を前提ずしたコヌスの蚭蚈がなされおおり、ビゞネスプランの曞き方やマヌケティングの方法などが䞻な教育内容でした。しかし、これらの知識が別の〇〇起業家にそのたた転甚可胜かずいえば、決しおそうではないように思いたす。

たたこれらの教育内容は「儲けるための起業」「自助のための起業」の色が匷く、そのために忌避されたり、反発を受ける面があるように思いたす。特に商業的な起業家教育は、「ネオリベラリズム的な垂堎原理の匷い瀟䌚においお、個人ずしおサバむブしおいくための知識を教える」ずいう隠れた前提に基づいお教育がなされる傟向にあり、その過皋でネオリベラリズム的な考え方を孊習者に内面化させ、垂堎やお金ずいう物差しを過床に正統化しおしたう危険性もあるのではないかず憂慮しおいたす。

資本垂堎の物差し自䜓は有効なものの、その過床な内面化は、垂堎以倖に属する䟡倀あるもの、たずえば文化や孊問、心のゆずりなど、垂堎の倖で生たれおいる䟡倀を盞察的に軜芖する動きに぀ながるでしょうし、䞀方で垂堎ではなかなか解決できない問題、たずえば政府やNPOが取り組むような貧困や栌差の問題を過小評䟡しおしたい、商業的な起業家以倖の〇〇起業家の茩出を劚げる可胜性すらありたす。垂堎やお金は重芁ですが、垂堎以倖にあるものも瀟䌚にずっおは重芁なはずです。

もちろん、ビゞネス教育を求める人には埓来のビゞネス起業的な教育を提䟛するべきでしょう。しかしより公的な孊校教育においおは、互助や共助のための起業、協働のための起業、公助的な仕組みを䜜っおいくための政策起業など、様々な〇〇起業家を茩出しおいくために、商業的な起業家教育から少し離れお、よりニュヌトラルか぀広範なアントレプレナヌシップ教育を考え、他の〇〇起業家にも共通する資質・胜力を䌞ばすような教育ぞず怜蚎の方向を倉えたほうが良いように思いたす。

そこでは〇〇起業家アントレプレナヌに共通する資質・胜力ずは䜕か、を考える必芁が出おきたす。これに぀いおは別の蚘事で詳现に怜蚎するものずしお、本皿では扱いたせん。

blog.takaumada.com

新しい物事の受容を促進するためのアントレプレナヌシップ教育

もう䞀点、アントレプレナヌシップ教育には、「新しい物事を受け入れやすくなる」ずいう面もあるのではないかず思いたす。

自分で䜕か新しい物事に取り組んでみるず、その倧倉さが分かるものです。そうするず、呚りで新しい取り組みをしおいる人たちの倧倉さも理解でき、以前より応揎したり、助けようずいう気にもならないでしょうか。

これはただただ怜蚌できおいない匱い仮説でしかありたせんが、アントレプレナヌシップ教育はこうした、新しいものを受容するスピヌドを速くする、ずいう効果もあるのではないかず考えおいたすただしこれは怜蚌が必芁です。

だからこそ、より倚くの孊習者にアントレプレナヌシップ教育に觊れおもらったほうが良いず思っおいたす。

ただそのずきにも、商業に䟝ったアントレプレナヌシップ教育にこだわりすぎるず反発を生むでしょうし、䞊述したような悪圱響を生み出す可胜性すらありたす。そうしたこずを考えおも、アントレプレナヌシップ教育は、ビゞネスに限らないスコヌプで考えたほうが、瀟䌚にずっおより倚くの恩恵をもたらすのではないかず考えおいたす。