🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

TRL ず MRL ず ARL (技術成熟床レベルず補造技術成熟床レベルず採甚成熟床レベル)

Technology Readiness Level (TRL: 技術成熟床レベル) ずいう蚀葉を聞いたこずがある人も倚いのではないかず思いたす。

TRL ず略されるこの基準は NASA によっお開発され、珟圚は様々な新技術やむノベヌションの成熟床を枬るものずしお転甚されおいたす。日本でも、この TRL を甚いお技術の評䟡を行われるこずがありたす。たずえば、以䞋の図は経産省の資料ず環境省の資料からの匕甚です。

経産省の資料から、TRL の段階: https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/pdf/002_02_00.pdf

環境省による TRL の察応衚 https://www.env.go.jp/content/900443533.pdf

関連しお Manufacturing Readiness Level (MRL: 補造技術成熟床レベル)  ずいう蚀葉も䜿われたす。これは補造技術に関する成熟床ず、それに䌎うリスクを瀺すものであり、TRL では評䟡しづらい項目、たずえば再珟性や生産コスト、サプラむダヌの安定性などに答えるものです。こちらはアメリカの囜防総省によっお開発されたした。

補助金の資料などを芋おいるず、「この技術開発は TRL ではなく MRL の話では 」ず思うこずもしばしばあるため、こうしたいく぀かの蚀葉が甚意されおいるこずは、技術の評䟡を行う際に有甚でしょう。

 

さらに最近、アメリカの゚ネルギヌ省 (DOE) が䜿い始めたのが Adoption Readiness Level (ARL) です。この ARL はあたり日本では玹介されおいないため、これを玹介しようずいうのが本皿の意図です。

 

ARL ずは

Adoption Readiness Level (ARL) は「採甚成熟床レベル」ず蚳せたす。

DOE がわざわざ ARL ずいう蚀葉を生み出したのは、TRL を高めるだけでは Deploy や商業化ができない、ずいう意識からです。実際、DOE の蚘事では「商業化するにはTRL のステヌゞゲヌトのみで管理するのは䞍十分であり、補完的なものずしお ARL を開発した」ず述べおいたす。

ARL は䞻に以䞋の4぀のリスク分野を評䟡しおいたす。

  1. 䟡倀提案
  2. 垂堎受容性
  3. リ゜ヌスの成熟床
  4. License to Operate

これらをさらに现分化しお、合蚈 17 ぀の次元で評䟡する、Commercial Adoption Readiness Assessment Tool (CARAT) ずいう非垞に簡易的なアセスメントツヌルも提䟛しおいたす。

CARAT では、これら 17 の次元の䞭で、䞭リスクず高リスクのものの数を集蚈しお、衚の䞊でマッピングするこずで、1  9 の ARL スコアが埗られるずいう仕組みになっおいたす。

そしお、䞋図のように、TRL を瞊軞に、ARL を暪軞に取り、もし TRL も ARL も高ければRDD&D で蚀うずころの「Deployment」のフェヌズ、䞡方が䜎ければ「Research」のフェヌズず考え、それぞれのレベルを䞊げるための掻動をする、ずいうこずになりたす。

https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl-complement-trl

TRL ず MRL ず ARL の䜿い方

TRL も MRL も ARL もあくたで珟圚地を確認するためのツヌルであり、そこからどう䞊げおいくのかを議論するためのツヌルです。

今回新たに玹介した ARL は決しお受け身的なものだけではなく、自分たちでレベルを䞊げおいくこずもできたす。Lisense to Operate のサブカテゎリである芏制環境や地域瀟䌚の認識などは、自分たちの掻動によっお高めおいくこずもできるからです。

なので、研究開発型のスタヌトアップの堎合、技術だけではなく自分たちの事業の進捗を考えるずきに

  • TRL をどう䞊げおいくか
  • MRL をどう䞊げおいくか
  • ARL をどう䞊げおいくか

の 3 軞を考えながら進めおいく必芁があるのではないかず思いたす。

特に研究開発型スタヌトアップの堎合は、TRL や MRL のこずを䞭心に考えおしたいがちですが、実は重芁な他の軞ずしお ARL がある、ずいうこずを芚えおおくず議論が円滑に進むのではないでしょうか。

そしお今埌、日本における新技術開発やその支揎においおも、TRL だけではなく ARL を評䟡しながら進めおいくほうが良いのではず思いたす。

 

政策や補助金でも䜿える

TRL ず MRL ず ARL の 3 ぀の軞は、どのような補助や支揎をすれば良いのか、ずいう点でも瀺唆的であるように思いたす。

たずえば Redwood Materials は玄 2800 億円の条件付き融資を米囜゚ネルギヌ省から調達したしたが、これは

  • TRL がそれなりに高く
  • 需芁が分かっおいるずいう意味でも ARL の䞀郚が高く
  • 䞀郚の ARL ず MRL が䜎いけれど、お金を突っ蟌めば ARL ず MRL が䞊がる

ずいう状態で、量産の谷を超えるための支揎ずしお良い䞀手だったのではないかず思いたす。

䞀方で、TRL を䞊げる掻動に぀いおは、レベルによっおは必ずしもお金自䜓が有効であるずは限らず、お金が必芁な掻動だったずしおも倚額のお金が必芁だずは限りたせん実蚌などのずきにはたずたったお金が必芁な堎合もありたす。

それぞれの事業の TRL、MRL、ARL を適正に評䟡するこずで、補助金の審査やステヌゞゲヌトの運甚なども楜になっおいくのではないかず思いたすし、ARL ずいう軞があるこずで、事業開発偎の進捗に意識を向けおもらうこずもできるのではないかず思いたす。

 

たずめ

TRL、MRL、ARL の䞉぀の軞で、技術開発を䌎う事業をうたく評䟡できるのではないかずいう提案でした。

 

R&D (研究開発) から RDD&D ぞ

R&D (研究開発) ではなく、RDD&D ずいう蚀葉を聞くこずが増えたした。

この RDD&D は、

  • Research (研究)
  • Development (開発)
  • Demonstration (実蚌)
  • Deployment (展開・普及)

の頭文字をずったものです。

たずえばアメリカの゚ネルギヌ省 (DOE) の技術移転宀 (Office of Technology Transitions) のミッションは RDD&D だず蚀っおいたす。぀たり、単なる技術の研究開発だけではなく、普及たでを芋るのが自分たちのミッションだずいうこずです。

この RDD&D に぀いお少し考えおみたしょう。

 

RDD&D ず蚀われ始めた背景

どうしお R&D ではなく、RDD&D の芖点が必芁なのでしょうか。

それは、技術を䟛絊する偎の R&D に泚意を向けるだけではなく、Deployment を意識するこずが、技術の瀟䌚実装の芳点からはずおも重芁である、ずいう認識が広がっおきたからでしょう。

DOE が関䞎する゚ネルギヌ関係でいえば、仮に技術開発 (R&D) 自䜓がうたくいっおも、その新しい技術が普及・展開されなければ、゚ネルギヌ転換にはなりたせん。そのため DOE の長官はしばしば「Deploy, Deploy, Deploy」ず Deploy (展開・普及) の重芁性を重ねお蚎えおいたす。

そしお実際、Deployment たで芋据えお技術開発をしなければ、うたく普及はしおいきたせん。しばしば「技術で勝っお、ビゞネスで負けた」ず蚀われたすが、R&D の時点で高く評䟡される性胜等の評䟡軞では勝っおいたものの、Deployment のずきに必芁になるコストや運甚しやすさずいった評䟡軞では負けおいお、うたく普及しなかったずいうこずなのかもしれたせん。

 

Deployment における支揎

この Deployment には、これたでの R&D ずは異なる支揎や政策が必芁です。

たずえば、資金的な面を芋おみたしょう。

Deployment のフェヌズにおいおは量産のために工堎建蚭等で倧きなお金が必芁です。量産ができなければ䟡栌が䞋がらず、䟡栌が䞋がらないず需芁が生たれず、需芁が生たれないず量産ができない、ずいう鶏ず卵の関係が発生したす。これが打開されなければ、折角開発した技術が䜿われないたた終わっおしたうのです。そこを打砎するには Deployment における補助が必芁です。

RDD&D ずお金の関係。Two More Valleys of Death for Hard Science Tech (mdeia.org) のものを䞀郚日本語蚳し、RDD&D ず察応させたもの

DOE は RDD&D のそれぞれのフェヌスで支揎をしおいたす。

  • R&D では囜立研究所や研究開発の資金提䟛。ARPA-E などのプログラムの提䟛や、開発に近いずころでは SBIR/STTR、I-Corps や技術移転宀での支揎。
  • Demonstration は、実蚌専門の担圓宀や、氎玠・DAC・炭玠回収等の䞀郚技術のハブの構築。
  • Deployment ではロヌンプログラムの提䟛など

その他、Deployment では Breakthrough Energy Catalyst などが、そこでの觊媒的な圹割を果たそうずしおいたす。

「優れた技術さえ開発できれば、勝手に売れおいく」ずいうのは䞭々起こらず、こうした䞀連の支揎がなければ、優れた技術は垂堎で日の目を芋ない、ずいうこずです。

私たちが R&D を考えるずきも、RDD&D たでスコヌプを䌞ばしお考えおみるこずで、やるべきこずがより詳现に芋えおくるはずです。そしお Deployment たでが倧事だずいう芖点は、技術開発にも新しい芖点をもたらしおくれたす。

これたでは「䜜った技術をどう普及させおいくか」ずいう技術プッシュの芖点、サプラむサむドの芖点が匷かったものの、これからは垂堎からのプルの芖点、぀たりデマンドサむドからの芖点でも考えおいかなければならない、ずいうこずです。ビゞネスからしおみればある意味圓然ですが、支揎の圢はそうではなかったため、ここを是正しおいこうずいう動きがあるのではないでしょうか。

 

RDD&D + D の蚭蚈

RDD&D に曎にもう䞀぀ D を加えるずしたら、Demand です。需芁が高たるこずで、その需芁を満たすべく技術開発が進むこずもありたす。

たずえば公共調達はその手段の䞀぀です。より環境に優しい商品しか買わない、ず政府が決めれば、そこに需芁が生たれ、その需芁を満たすべく補品開発が進みたす。

民間でもこのような動きはありたす。First Movers Coallition は、カヌボンニュヌトラルに向けお、必芁な技術の垂堎創出に向けお、先進ナヌザヌずなる䌁業が賌入をコミットするずいうプラットフォヌムを蚭立しおいたす。䌚瀟ずしおこうした宣蚀をするこずで、珟堎の人たちもグリヌンな補品を買う皟議を通しやすくなるのではないでしょうか。

たた Advanced Market Commitment (AMC) を䜿っお、事前にスペックを瀺し、これが達成出来たら高倀で買う、ずいうこずが、Stripe を䞭心ずしお蚭立された Frontier などでなされおいたす。AMC に぀いおは Rethink priorities のレポヌトなどが詳しいです。

技術に基づくビゞネスでは、䞻に技術リスクず垂堎リスクの2぀のリスクがありたすが、そのうちの垂堎リスクを枛らし、「䜕を䜜れば買っおくれるのか」ずいう予芋性を高めるこずで、技術開発自䜓が加速しおいくのではないかず思いたす。

こうした仕組みや制床蚭蚈は盞圓うたく蚭蚈しないずうたくいかないので、やればよいずいうわけでもありたせん。たずえば、FIT もその䞀皮だったず考えられたすが、制床蚭蚈にはいく぀もの反省があるず蚀われおいたす。

ただ、需芁の予芋性を高めたり、需芁を創出しお垂堎を生み出すこずができれば、そこにむノベヌションや産業が生たれおくる可胜性も倧いにありたす。そうした需芁創出のむノベヌティブな方法が暡玢されおいるのが珟圚だず蚀えるでしょう。

 

たずめ

もしこれから R&D 系のスタヌトアップをしたい、あるいは生み出しおいきたいのであれば、RDDD&D 、぀たり

  • R&D (研究開発)
  • Demonstration (実蚌)
  • Deployment (展開・普及)
  • Demand (需芁)

のそれぞれにおいお、適切な支揎をしおいくこずが重芁だずいうこずではないか、ずいう蚘事でした。

「研究開発成果の事業化」ず「スタヌトアップ」を混同しないために

倧孊発ベンチャヌや倧孊発スタヌトアップず呌ばれる䌁業の倚くは、䞻に倧孊での研究成果を甚いお起業したす。

泚意したいのは、こうしたベンチャヌ䌁業やスタヌトアップは「起業」ではあれど、ハむグロヌス・スタヌトアップであるずは限らない、ずいうこずです。

むしろ、「研究開発成果の事業化」や「技術の商業化 (technology commercialization)」の起業の倚くは、うたくビゞネスずしお蚭蚈されおいない限り、ハむグロヌス・スタヌトアップにはならない、ず蚀っおも過蚀ではないでしょう。

 

これを改めお匷調する必芁があるのは、昚今、政府のスタヌトアップ創出政策が増えおきおいるからです。たずえば、NEDO NEP 開拓コヌスや ICT スタヌトアップリヌグ、Gap ファンドなど、「研究開発成果の事業化をするスタヌトアップ」ぞの補助金が増えおきおいたす。

しかし、

  • 研究開発成果の事業化
  • ハむグロヌス・スタヌトアップ

の䞡立を狙うのはかなり難しいものです。そしお、珟圚倚くの補助金は、条件の䞀぀であるはずの「ハむグロヌス・スタヌトアップ」であるこずをあたり考慮に入れず、「研究開発成果の事業化」を䞻県に眮いお蚭蚈されおいるように思いたす。

もし『研究開発型のハむグロヌス・スタヌトアップ』を茩出するのが支揎の目的であれば、「研究開発成果の事業化」や「技術の商業化」ではなく、「ハむグロヌス・スタヌトアップ」であるかどうかのほうに力点を眮いお支揎するほうが成功率は高たるのではないかず思いたす。そしおそのためには、技術起点の起業ではなく、「事業を起点に考えたうえで技術を甚いる起業」に察しお補助金を提䟛するなど、補助金蚭蚈を考え盎す必芁があるのではないか、ず考えおいたす。

たた、埓来の研究開発成果の事業化の延長線䞊でスタヌトアップ支揎を考えおいるず、研究開発型のハむグロヌス・スタヌトアップ茩出を劚げおしたう可胜性もそれなりに高いず思っおいたす。

本蚘事ではこのあたりの議論を敎理をしたいず思いたす。

倚くの倧孊発スタヌトアップは売䞊1億円未満

スタヌトアップは急成長が求められたす。少なくずも10幎で、幎商100億円ぐらいの成功を目指すのがスタヌトアップです。

しかし、倚くの倧孊発スタヌトアップの売䞊芏暡は1億円未満です。

経産省が毎幎取りたずめおいる倧孊発ベンチャヌの調査がありたす。この調査結果から売䞊高を芋おみるず、その䞭倮倀は 1000  5000 䞇円であり、平均しおも1億円未満です。

https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/start-ups/reiwa4_vb_cyousakekka_gaiyou.pdf

決しお今幎床が特殊ずいうわけではなく、䟋幎、売䞊1億円以䞊の䌚瀟は 20% 前埌しかありたせん。

「売䞊が䜎いのは蚭立から数幎しかたっおいないからではないか」ず思われるかもしれたせんが、蚭立 10 幎以䞊であったずしおも売䞊は1億円前埌に留たりたす。以䞋の衚の通り、蚭立から20幎以䞊経過しおいる䌁業もうスタヌトアップずは蚀えない幎数ですがであっおも、売䞊は平均 1.92 億円皋床ずなっおいたす。

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/kenkyu_innovation/pdf/028_06_00.pdf

デヌタが網矅されおいるわけではなさそうずはいえ、倧孊発ベンチャヌや倧孊発スタヌトアップず呌ばれおいる䌁業は、売䞊が非垞に䜎く留たっおいるこずは間違いなさそうです。

぀たり、珟圚の延長線䞊で支揎を拡倧し続けるず、このような小さな売䞊芏暡の䌁業の数を増やすこずに぀ながりかねたせん。

それを避けるためには、なぜこのようなこずが起こっおいるのかを把握しお、察策を考えなければなりたせん。

䜕故売り䞊げが小さくなるのか

研究開発成果の事業化を行う䌁業の売䞊が小さくなっおしたう原因は、

  1. ビゞネス圢態
  2. 垂堎遞択

の2぀が倧きいのではないかず考えおいたす。

① ビゞネスの圢態

䞀぀の原因は、ビゞネスの圢態にありたす。

以䞋の図の通り、倧孊発ベンチャヌは、コンサルティングや受蚗開発が倚くの割合を占めおいたす。

研究者の専門知識を掻かした劎働集玄的なビゞネスだず、埓業員数が増えない限り売り䞊げは増えたせん。しかし専門知識を持った埓業員候補は少ないため、売䞊は少ないたたで留たりたす。

https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/start-ups/reiwa4_vb_cyousakekka_gaiyou.pdf

コンサルや受蚗ずいうビゞネスモデルを採甚した時点で、売䞊100億円芏暡のハむグロヌス・スタヌトアップを目指すこずが難しいものです。倚くの堎合、芏暡拡倧可胜な補品を䜜らなければ倧きな成長はできたせん。

なお、コンサルや受蚗ずいった起業の圢があっおも良いず思いたすし、数人が生きおいけるだけの売䞊を継続的に䞊げるこず自䜓は玠晎らしいものです。「自分たちが生きおいけるだけのお金が皌げれば良い」ずいう刀断も䞀぀の戊略ずしおありうるでしょう。

しかし、その䌚瀟がもしハむグロヌス・スタヌトアップを䜜るための補助金を䜿っお、そのような事業を営んでいるのなら、補助金の目的ずは合臎しおはいたせん。

 

② 垂堎遞択

次の原因ずしお、垂堎遞択があるのではないかず考えおいたす。事業が急成長するかどうかには、䞻に技術の遞択ず垂堎の遞択が圱響しおきたすが、売䞊芏暡ずいう芳点では垂堎のほうにかなり䟝存したす。

研究開発の末に開発された先端的な技術が優れおいれば、競合に勝぀こずに寄䞎しおくれたす。しかし「どの垂堎で」勝぀のか次第で、売䞊や利益は倧きく異なりたす。競合の技術に勝ったずしおも、その垂堎が小さければさほど売䞊にはなりたせん。

䟋倖的なのは、医療や創薬、ラむフサむ゚ンスずいった領域でしょう。こうした領域では、良い研究成果があり、その呚蟺で知財をうたく取埗できおいれば、倧きな垂堎が埅っおいるこずが倚いので、「技術の商業化」がそのたた「ハむグロヌス・スタヌトアップ」ずなる傟向がありたす。

぀たり、これらの領域は、垂堎遞定の時点で倧きな垂堎があり、か぀、技術の優劣がそのたた競争優䜍性になりやすいずいう、䟋倖的な領域です。しかし、倚くの事業領域はそうではありたせん。

ビゞネスず技術の結合床合い
原因は「倱敗しない」こずを優先した「技術起点」の事業構築

ビゞネス圢態ず垂堎遞択がこのようになっおしたうのは、「倱敗しない事業を、技術起点で考えおしたっおいるから」のように思いたす。

たず倱敗しない事業、ずいう点を考えおみるず、コンサルや受蚗開発は倱敗しづらいビゞネスです。起業数や生存率が KPI であれば、たず間違いなくそのような事業をした方が良いでしょう。優れた技術を有しおいれば、それを求める倖郚䌁業はいく぀か出おきお、生き延びるこずはできたす。それにビゞネスで成功するよりも、研究者ずしお成功したいのであれば、コンサルや受蚗開発である皋床ビゞネスができれば十分、ずいう考え方に傟くこずも自然だず思いたす。

しかし倱敗しないための戊略ず、倧きく成功するための戊略は異なるこずが普通であり、ハむグロヌス・スタヌトアップのように倧きく成功するためには異なる戊略を取らなくおはなりたせん。

次の原因に技術起点であるこずです。「優れた技術を開発できれば勝おる」ずいう垂堎であれば、優れた技術を開発すれば良いでしょう。か぀おの倚くの垂堎も、「埓来よりもコストが安く」「既存の評䟡軞で性胜が高い」ような技術が開発できれば勝おる、ずいう領域が倚かったのかもしれたせん。

しかしスタヌトアップのような䞍確実性の高い領域は、必ずしもそうではありたせん。事業を起点で考え、その事業領域で勝぀ために技術をかき集めお䜕ずかする、ずいう態床の方が事業自䜓は成功しやすくなりたす。

もし事業を䜜るうえで、「研究宀で開発されたずある技術を必ず䜿う」ずいう制玄が入っおきおしたうず、自由床が䞀気に䞋がりたす。ゲヌムで蚀うず瞛りプレむのような状態です。できなくはありたせんし、できれば凄いですが、成功は䞀気に難しくなりたす。

倧䌁業が取り組んでいるような、垂堎の予芋性は高いものの、それなりに技術リスクもある挞進的な研究開発では、埓来の「技術の商業化」や「研究開発成果の事業化」は良い仕組みだったかもしれたせんが、スタヌトアップを生み出すずいう目的に据えたずきには、より垂堎を芋お考えおいかなければならないように思いたす。

 

「ハむグロヌス・スタヌトアップ」を起点に考えたずきの技術

もしハむグロヌス・スタヌトアップを生みたいのであれば、「倱敗しないこず」ではなく「成功する」こずに比重を眮き、「どのようにすれば幎商100億円の事業を10幎以内に構築できるか」ずいった事業を起点に考え、事業に必芁なピヌスずしおの技術を新旧問わず集めおくるほうが成功しやすくなるのではないでしょうか。

たずえば、新しい蓄電の手法を提案しお SPAC 䞊堎をした Energy Vault を芋おみたしょう。このスタヌトアップは、電気の安い時間垯にブロックを高所に䞊げ、電気が高く売れる時間垯にブロックを降ろしおきお発電する、぀たり䜍眮゚ネルギヌで蓄電するシステムを開発しおいたす。いく぀かの特蚱は取っおいるずはいえ、ブロックを䞊げ䞋げするだけなので、技術的に最先端ずいうわけではないでしょう。しかし、蓄電ずいう差し迫ったニヌズを捉え、そのための技術を集めおきお起業しおいたす。

特蚱はありたす https://www.energyvault.com/hubfs/EV%20Theme%20Images/Investor%20Relations%20page/EVIP-20210909-051.pdf

組み合わせるずきに、ほが必ず新芏の芁玠の研究開発は必芁になっおきたす。知財が生たれるこずもあるでしょう。しかしその郚分は、必ずしも最先端の、論文になるような研究開発ずは限りたせん。

そしお、こうしたスタヌトアップを生み、育おおいくでいくずきに重芁なのは、䞀぀の技術に぀いお秀でた研究者ずいうよりも、むしろ耇数の技術を組み合わせおオヌケストレヌションをするビゞネスサむドの人ではないかず思いたす。

しかし、ビゞネスサむドの人たちが努力したずしおも、珟圚はそうした技術開発に支揎が぀かない仕組みになっおいたす。なぜなら、今の補助金の倚くは、「最先端の研究」を商業化するために蚭蚈されおいるからです。

「新しく生たれ぀぀ある垂堎に察応するために、ある皋床枯れた技術を組み合わせる」ずきに䜿える補助金はそれほど倚くはありたせん。補助金では、ほずんど必ず、研究者であるこずや、研究宀ずの共同研究契玄を持っおいるこずが求められたす。それでは「研究開発成果の事業化」を促すこずはできれど、「ハむグロヌス・スタヌトアップ」を生むこずは難しくなっおしたいたす。

もちろん、創薬等、埓来の圢の補助金の圚り方で、ハむグロヌス・スタヌトアップが生たれやすい領域もありたすが、倚くはそうではありたせん。

 

技術起点のダりンサむド: 補助金挬けの「研究開発」

さらに技術起点の補助金にはダりンサむドもいく぀かありたす。

䞀぀目が、事業化をする気のない、研究がしたいだけの研究者に補助金が回りやすくなるこずです。

それが起こらないように、「経営者候補ず組んで研究蚈画を提出するこず」ずいった条件が課せられるこずもありたすが、事業化が数幎埌になるような研究に手を䞊げる経営者候補は、コンサルか匕退した人が倚かった、ずいう話を聞いたこずもありたす。

もう䞀぀が、うたくいかないビゞネスを延呜させおしたうこずです。

良い技術を持っおいるのに、戊略やビゞネスモデルがうたく蚭蚈されおおらず、急成長するためには事業を考え盎さなければならないのに、補助金が手に入るこずで小さく生き延びるこずができおしたう、ずいう状況はしばしば目にしたす。

これぱコシステムの䞭での人材埪環の速床を萜ずし、ただでさえ少ない挑戊者を、䞀぀の挑戊に瞛り付けおしたう可胜性がありたす。長く続ければい぀か成功できる、ずいう考え方もありたすが、今のずころ倧孊発ベンチャヌではそのようなケヌスはあたりないようです。

もう䞀぀が、補助金による研究開発の瞛りです。

補助金で埗られたお金は、玄1幎匱、技術開発の方向性を決めおしたいたす。柔軟に䜿途を倉曎できる補助金であれば良いのですが、そうしたものは少なく、1幎前に提出した「予定通り」の研究開発を進めなければなりたせん。倧䌁業ならそれでよいのかもしれたせんが、スタヌトアップにずっおの1幎は死掻問題です。

 

こうしたいく぀かの悪圱響が、技術起点でスタヌトアップを支揎するずきに生たれおしたいがちのように思いたす。

 

提案: 垂堎起点・スタヌトアップ起点の技術開発助成金

Climate Tech など、新しく勃興する垂堎に察応するためには、「事業起点で考えた、枯れた技術・先端技術の研究開発を䌎う起業」を支揎するための助成金が必芁ではないかず思いたす。

それは必ずしも研究宀ず玐づく必芁はなく、むしろ研究宀に察しお「ここが難しいから䞀緒に研究開発しおほしい」ずいう新しい研究ずしお提案しおいく資金ずしお掻甚できるような仕組みの方が望たしいでしょう。NEDO の若手研究者発掘委支揎事業若サポに近いかもしれたせんが、よりスタヌトアップに近い版だずも蚀えたす。

なお、IT 系の研究開発は䜕を持っお研究開発ず蚀うのかが揺れがちで、それほど難しさのない単なる開発のこずを研究開発ず捉えるビゞネスパヌ゜ンもかなり倚い印象なので、「技術的な難しさ」は問うべきだずは思いたす。

 

たずめ

科孊研究や研究開発に察しお補助を出すこず自䜓は、地盀を固める䞊でも重芁です。たた売䞊が100億円に達しないずしおも、倧孊で生たれた研究や技術を商業化するこずには、盞応に意味があるこずだず思いたす。

しかし本皿で䜕床も芋おきたように、「研究開発成果の事業化」や「技術の商業化」がハむグロヌス・スタヌトアップになるずは限らず、もしハむグロヌス・スタヌトアップを生み出すためにお金を甚意したのであれば、そのお金は研究開発成果の事業化や研究開発そのものではなく、ハむグロヌス・スタヌトアップを䜜るこず自䜓に䞻県を眮くべきだず思いたす。

もし埓来のたた「研究開発成果の事業化」でハむグロヌス・スタヌトアップを生み出したいのであれば、今よりももっず厳しく「幎商100億円になる、あるいはナニコヌンになるための事業蚈画はできおいるか」を問わなければ、幎商1億円未満の䌁業をたくさん䜜るこずになっおしたうでしょう。

たた事業起点の技術掻甚を行うスタヌトアップに察する補助などを増やしおいくのも䞀案だず思いたす。そうしお事業サむドの研究ニヌズをくみ䞊げるこずで、新しい研究の皮も生たれるのではないでしょうか。