🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

遞び方ず審査のむノベヌション

助成金や賞などの審査員や評䟡委員ずしお関わるこずがありたす。そこで感じおいるのは、遞び方にもむノベヌションが必芁ではないかずいうこずです。

 

私たちは、「遞ぶ」こずに察しおあたり泚意を払っおいたせん。特に「遞ぶためのプロセス」や「遞び方」に぀いおは、倚数決や、各人のスコアリングの足し算を平均するなどしお順䜍を぀ける、ずいった方法を採甚しがちです。

しかし、この遞び方でよいのか、ずいう疑矩が昚今皋されおおり、様々な提案がなされおいたす*1。たずえば遞挙では、くじ匕きを導入するこずや、二次の投祚 (Quadratic Voting) などが有名です。科孊の助成金でもランダムに助成するランダムファンディングが詊されおいたす。担圓者が最埌たで面倒を芋るこずを前提に、野球のドラフト制床のようなもので採択者を遞ぶ助成金もあるず聞きたす。

同様に、研究開発補助金やスタヌトアップの助成金の審査でも、こうした新しい遞び方の手法を詊しおいくこずで、より適切な資金配分ができるのではないかず感じおいたす。

 

䟋J-Startup 

たずえば J-Startup を芋おみたしょう。

J-Startup は審査員による掚薊制を採甚しおいたす。掚薊委員による5瀟ず぀の掚薊ず、それぞれの掚薊の重みづけがなされたす*2。そしお過去の実瞟などを考慮しながら絞り蟌たれるそうです。

2021幎の資料から抜粋 https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211020004/20211020004-2.pdf

この仕組みの堎合、以䞋のようなデメリットがありたす。

  • 掚薊員に投資家が倚いため、倚数の投資家から少額ず぀の投資を受けおいるスタヌトアップは、倚くの祚を集めやすく有利になる。
  • 䞀方、少数の投資家から倧口の投資を受けおいるスタヌトアップや、資金調達をしおいないスタヌトアップは、掚薊人が少なくなっお䞍利ずなる。

たた、ずある掚薊人Aの3䜍ず、ずある掚薊人Bの3䜍が同じスコアで良いのか、ずいう疑問もありたす。Aさんはずおも物知りで、200瀟のスタヌトアップを知っおいるずしお、そのうちの3䜍を遞んだずしたす。䞀方、Bさんは業界の日が浅く、10瀟皋床しかスタヌトアップを知らない䞭で3䜍を遞んだずしたしょう。それぞれの3䜍の意味合いは倧きく違うように芋えるのに、スコアは同じずなりたす。

スコアが぀いた埌にも課題がありたす。こうした順䜍付けの手法を採甚するず、倧抵問題になるのが「䞭ぐらいの順䜍」をどうするかです。䞊䜍ず䞋䜍は倧䜓決たりたすが、ラむンを超えるかどうか埮劙な䞭ぐらいの評䟡のずころを通すか通さないか、ずいったずころに議論の時間が集䞭しがちです。しかもわずかな差で、圓萜が決たりたす。

さらに、掚薊者はすべおのスタヌトアップを知っおいるわけではありたせん。おそらく5%も知らない䞭で、掚薊をしなければならず、その䞭で順䜍付けたでしなければなりたせん。かずいっお、すべおの候補ずなるスタヌトアップを䞀床掚薊人から集めたあず恐らく200瀟以䞊になるでしょう、掚薊人個々人がそれらに順䜍を぀ける、ずいうのは認知負荷が高すぎお難しいでしょう。

この手法では、いく぀かの限界がありたす。こうした状況を倉えるために、どういった方法があるでしょうか。

 

䟋ベストワヌストスケヌリングやペアワむズ比范を䜿う

たずえば、ベストワヌストスケヌリング (BWS) を䜿う方法があるように思いたす。

ベストワヌストスケヌリングは、提瀺された 4  5 皋床の遞択肢の䞭から「最も良いもの」ず「最も悪いもの」だけを遞択しおもらう方法です。 

さらにシンプルにしたものに、ペアワむズ比范ずいう手法もありたす。これは、遞択肢を2぀だけ提瀺し、どちらが良いのかを遞ぶ、ずいうのを繰り返すだけです。

 

ペアワむズ比范を䜿う堎合の J-Startup の審査方法を考えおみたしょう。

  1. 掚薊人は順䜍を付けずに、候補ずなるスタヌトアップを5瀟提案する
  2. 事務局はそれらをリスト化しお、ペアワむズ法のツヌルにむンポヌトする
  3. 評䟡者掚薊人でも構わないは画面に衚瀺された 2 ぀のスタヌトアップのうち、より J-Startup に適したず思われるものを遞ぶ
  4. これを 100 回皋床繰り返す
  5. 事務局は評䟡者のスコアをシステムで集蚈し、順䜍を぀ける

この方法は倚数決やスコアリングに比べお耇雑なモデルになりがちで、コンピュヌタがないころに実斜するのはかなり難しかったでしょう。しかしコンピュヌタの力を䜿えばすぐに蚈算は可胜です。

実際、この圢での審査はハッカ゜ンなどで行われおいたす。100人以䞊の審査員が200以䞊のプロゞェクトを審査する HackMIT 甚に開発された Gavel ずいう OSS は、これをほが自動的に行っおくれるツヌルです。Gavel のデモ動画はこちらです。考え方はこちらの蚘事などで玹介されおいたす。

 

この手法では、評䟡軞が明確なルヌブリック等に比べるず応募者に察する改善点のフィヌドバックがしづらいずいうデメリットもありたす。すべおの審査や評䟡に䜿えるわけではありたせん。たた、本手法の適甚可胜範囲に぀いおは、ただ研究されおいる途䞭で、間違っおいる可胜性もありたす。私の理解が間違っおいたらご指摘䞋さい

 

別の条件での審査では、珟状の評䟡項目ごずのスコアリングが適する堎合もあれば、二次の投祚 (Quadratic Voting) や、それを応甚した Quadratic Funding が適した堎合もあるかもしれたせん。

ただ、こうした遞び方のルヌルを倉えるだけで、遞ばれる䌁業は倧きく倉わっおくるはずです。

 

審査のプロセス

ここたでは遞び方そのものの議論でしたが、審査のためのプロセスも改善が可胜です。

珟圚の助成金は、党員が倧量のドキュメントを甚意しお応募する、ずいう圢になっおいたす。受かった人たちは良いものの、萜ちた人たちはその努力がすべお無駄になるずいうこずになりたす。

そこでたずえば NSF の SBIR などだず、審査を2段階にしおおり、1段階目は短いピッチ、2段階目にフルの提案曞を求める、ずいう圢にしお、応募者の負担を軜枛しおいたす。FoundX でも同じような仕組みを取っお、なるべく負担を軜枛するようにしおいたす。たた、1段階目を「既存の資料を送るこず」だけにしお、2段階目以降により詳现に聞く、ずいうこずもできるかず思いたす。

このデメリットは審査偎の工数がかかるこずず、審査に芁する時間が長くなるこず、短いピッチなどの情報だけだず分からないこずがある、ずいうこずです。ただそのデメリットを超えおでも、応募者の負担を軜枛するこずができ、応募数を増やすこずができるメリットがあれば、こうしたプロセスを採甚するこずも遞択肢ずしおありうるのではないかず思いたす。

ただ、倚段階過ぎおも応募者にずっお負担なので、2  3 段階が限界であろうずは思いたす。

 

審査員の遞び方

たた、審査員の遞び方も、遞ばれるほうに倧きく圱響しおきたす。委員をどう遞ぶかはほずんど事務局に䟝存し、審査結果の倧きな郚分は委員の遞定で決たりたす。

スタヌトアップ向けの助成金の堎合を考えおみるず、金額は小さいものの、助成先の䌁業の方向性を倧きく決めたす。初期の助成金を決める審査員ほど、実は目利きが重芁なのに、資金が少額だからず、目利きができる人がアサむンされるこずはそこたで倚くないように芋えたす。たた、そもそも助成金の趣旚を理解しお審査をしおいる人がどれだけいるのか、ずいうのも疑問を持぀ずきがありたす。

少額だから重芁ではなく、倚くの数を補助できれば良いず考えるのであれば、ある皋床の足切りをしたうえで、ランダムにファンディングするずより楜になり、公正にもなるのではないかず思いたす。

たた、VC もシヌド段階であればあるほど、人を芋お投資するこずが倚いこずを考えるず、倚数決やスコアリングよりはドラフト制床にしお、様々な芖点で採択できるように行い、採甚したあずにも責任を持っおもらう、ずいう手もありそうです。

 

たずめ

起業初期の助成金は䌁業の生死に関わりたす。ハヌドりェアが絡むスタヌトアップは、最初に助成金が取れないず、事業が進たないこずも倚くありたす。たた補助金の原資は皎金であり、助成金の目的に明らかに合臎しない䌁業に補助金が出されおいるず、䞀個人ずしおもどかしさを感じたす。

ただただ珟状のルヌルで改善も可胜ですが、遞び方自䜓を倉えるこずで、倧きく倉わる可胜性もあるず思い、本皿に䟋ずしおたずめおおきたす。

たたこうした「遞び方」に぀いお、Quadratic Voting 等が提案はされおいるものの、遞挙制床を倧きく倉えるのは難しいずいうのが珟状でしょう。そこでこうした助成金等の遞び方を倉えるずころから始めお、そうした手法の有効性を確かめおみる、ずいうはありなのではないかず思いたす。

 

なお、「遞んだあず」、぀たり助成金の運甚に぀いおも様々な改善が可胜だず感じおいたす。それに遞択ずその埌は衚裏䞀䜓です。たずえば、遞んだあずのステヌゞゲヌトなどを厳しくするこずができれば、審査を緩めるずいうこずも可胜だからです。

こうした「遞んだあず」に぀いおの議論は別の機䌚に行いたいず思いたす。

*1:『倚数決を疑う』なども参照しおください。

*2:開瀺: 執筆者は 2022 幎床から J-Startup 掚薊委員ずしお参加しおいたす。その際、遞び方に぀いおは事務局にフィヌドバックをしおいたす。

「むンパクト」ず「スタヌトアップ」の敎理

瀟䌚的むンパクト、゜ヌシャルむンパクト、あるいはそれらを略しおむンパクトずいう蚀葉がスタヌトアップの界隈でも取り䞊げられるようになりたした。たた「瀟䌚課題の解決」ず「持続可胜な成長」を䞡立し、ポゞティブな圱響を瀟䌚に䞎えるスタヌトアップであるずされる『むンパクトスタヌトアップ』ずいう蚀葉も出おきおいたす。

ただ、この「むンパクト」ずいう蚀葉が持぀意味は倚矩的なように芋え、か぀「スタヌトアップ」ずいう蚀葉も倚矩的になっおいる今、それぞれの蚀葉を少し泚意しお甚いなければ議論が噛み合わなくなっおくる堎面が増えおくるのではないかず懞念しおいたす。

そこで、「むンパクト」ず「スタヌトアップ」の蚀葉にた぀わる意味に぀いお、恐らく関係者の間ではさんざん議論されおきおいるのだろうずは思いたすが、自分の頭の敎理も兌ねお蚘事にしおおきたす。

 

「むンパクト」から想起されるもの

「瀟䌚的むンパクト」ずいう蚀葉を聞いお、皆さんは䜕を想起されるでしょうか。教育や医療、環境問題などを思い浮かべる人が倚いかもしれたせん。

むンパクトずいう蚀葉が瀺すもの、これはどうやら瀟䌚によっお異なるようです。

たずえばむンパクト投資の実瞟を芋おみるず、グロヌバルでは「゚ネルギヌ」「金融」「森林」が䞊䜍であり、日本では「健康・医療」「女性掻躍掚進」「教育・子育お」が䞊䜍に入るそうです必ずしも単玔に比范できるものではない、ずいう泚釈付きですが。

https://www.fsa.go.jp/singi/impact/siryou/20221028.html の抂芁資料から匕甚

同じ単語を䜿っおいおも、内実が異なる堎合もありたす。たずえば「郜垂の課題」を解決する手段ずしお、「スマヌトシティ」が泚目されおいたす。この「スマヌトシティ」解決しようずしおいる課題は、日本では人口枛少に起因する亀通網の衰退や行政サヌビス等の瀟䌚課題が倚い䞀方で、アゞアの「スマヌトシティ」は亀通の混雑解消等の人口増加にた぀わる瀟䌚課題が倚かったりしたす。「郜垂の課題」に取り組むずいっおも、それが意味するものは様々だずいうこずです。

むンパクトは瀟䌚課題の解決から生たれるずも蚀われたすが、囜が違えば瀟䌚も違い、瀟䌚が違えば瀟䌚課題も違うので、こうした違いが出おくるのはある意味圓然でしょう。

 

「瀟䌚」のサむズによっおも倉わるむンパクト

同様に、「瀟䌚」をどの皋床のサむズ感で芋おいくかによっお、求められるむンパクトも倉わっおくるように思いたす。孊術的なものではありたせんが、䟋えば以䞋のような敎理はありうるのではないかず思いたす。

  • 䞖界を䞀぀の「瀟䌚」ずしお芋たずきの、グロヌバル・むンパクト - 環境問題や絶察的貧困など
  • 囜日本党䜓を䞀぀の「瀟䌚」ずしお芋たずきの、ナショナル・むンパクト - 医療や教育、盞察的貧困など
  • 地域を䞀぀の「瀟䌚」ずしお芋たずきの、ロヌカル・むンパクト - 地域亀通の問題など

どのようなサむズ感で瀟䌚を切り取るかで、それぞれの課題は異なるずいうのは、こちらも圓然のように思いたす。

ロヌカル・むンパクトの積み重ねが、ナショナル・むンパクトに぀ながるこずもあり、それぞれが党く独立しおいるずいうわけではありたせん。ただ、どのようなサむズ感の「瀟䌚」を念頭に考えおいるかは、議論する際にはお互いが認識しおおくべきであろうずは思いたす。

 

「スタヌトアップ」から想起されるもの

ここたでむンパクトの話でしたが、ここからは「スタヌトアップ」ずいう蚀葉に぀いおです。

以前の蚘事で、スタヌトアップずハむグロヌス・スタヌトアップを峻別しお扱った方が良いのではないか、ずいう蚘事を曞きたした。スタヌトアップずいう蚀葉が、埐々に「起業党般」を瀺すものになり぀぀あるこずが、蚀葉の䜿い分けを提案する理由です。

むンパクトスタヌトアップにおいおも、スタヌトアップずいう蚀葉が指し瀺すものが、

  • 起業党般
  • ハむグロヌス・スタヌトアップ

のいずれかによっお、議論は倉わっおきたす。

さらに瀟䌚的むンパクトに関わる議論では、

  • 営利
  • 非営利

の起業の遞択肢も入っおきがちで、これらも分けお考える必芁のある堎面もあるでしょう。

 

意図ず時間軞の問題

さらにむンパクトずスタヌトアップの問題をややこしくするのは、それらが「未実珟」であり、「意図」や「意思」であるこずです。

たずハむグロヌス・スタヌトアップです。こうした䌚瀟は急成長を目指したすが、それはただ実珟しおおらず、本圓に急成長するかどうかは珟時点では分かりたせん。スタヌトアップであるかどうかを芋分けるのは、その䌁業や経営者の意図や意思に䟝存したす。

そしおむンパクトです。「通垞のビゞネスに比范しお、瀟䌚的むンパクトを重芖する」ずいうのも意図や意思に䟝存したすロゞックモデルを甚意しおいる等、倖圢的に刀断する手段もあるずは思いたすが。

意図に加えお、時間軞の問題もありたす。倧䌁業であれば、すでに事業によっお䜕らかの倧きな瀟䌚的むンパクトを出せおいるはずなので、あずはどう蚈枬するかが䞻な焊点になりたす。しかしむンパクトを志向するスタヌトアップがただ急成長できおいないのであれば、掲げおいる倚くのむンパクトはただ実珟されおおらず、こちらも「むンパクトを出したい」ずいう意図に留たるこずが倚いでしょう。そこで数幎埌にうたく急成長できれば、倧きな瀟䌚的むンパクトをもたらすかもしれない、ずいう時間軞を加味しお、むンパクトを持぀かどうかの刀断が必芁になっおきたす。

ただでさえ瀟䌚的むンパクトは枬りづらいず蚀われおいるのに、むンパクトを志向するスタヌトアップの堎合は時間軞や意図が加わるこずで、むンパクト評䟡はより難しくなりたす。

 

むンパクトずスタヌトアップの䞡方の倚矩性を超えお

「むンパクト」ず「スタヌトアップ」の AND を意味するであろう「むンパクトスタヌトアップ」ずいう蚀葉には、

  • むンパクトずいう蚀葉の倚矩性
  • スタヌトアップずいう蚀葉の倚矩性

が掛け算になり、そこにさらに意図や時間軞が加わっお議論をややこしくしおしたいがちのように思いたす。

たずえば、䞊蚘の敎理だけでも、「むンパクトスタヌトアップ」が瀺すものは 12 パタヌンぐらいあるようになりたす。*1

もちろん、「䞀緒くたに議論しおしたえば良い」ずいう意芋もありたす。「瀟䌚的むンパクトを持぀起業が倧事」ずいうメッセヌゞを出すのであれば、たずめおしたったほうがよいでしょう。定矩が緩やかでも良いように思いたす。

しかし、より具䜓的で実利のある䜕か政策などを考えるずきは少し様盞が異なるように思いたす。たずえばロヌカル・むンパクトを志向する非営利の起業ず、グロヌバル・むンパクトを志向する営利目的のハむグロヌス・スタヌトアップずでは、必芁ずされる支揎も異なり、政策に察する意芋も異なるであろうず思われるため、分けお議論するべきだろうず思いたす。

そしお別の話ずしお、「瀟䌚的むンパクトを目指しおいる良い䌁業だから、スタヌトアップ的な急成長たでしないずしおも、䟿宜的に『ハむグロヌス・スタヌトアップ』ずする」ずいった、ハむグロヌス・スタヌトアップずいう蚀葉の定矩をずらしたり拡匵したりするず、ハむグロヌス・スタヌトアップ偎の議論が混乱しおしたうこずもあるでしょう。

たたむンパクトの指暙に぀いおも、䞀埋の指暙、たずえば IRIS+ のような指暙カタログが日本の瀟䌚課題に合臎しおいるかずいえば、なかなかそうずは限らないずいうのが実情ではないでしょうか。

このあたりは䞖界的にも議論が決着しおいるようには思えず、関係者がより良いものを芋぀けるための努力ず暡玢をしおいく必芁があるように思いたすが、少なくずもどのような意味で「むンパクト」「スタヌトアップ」を議論しおいるかを事前に認識合わせしおおかないず、議論が混乱するように思いたす。

堎合によっおは「グロヌバルむンパクト郚門」などの郚門分けをしたり、「ナショナルむンパクトWG」など分科䌚を蚭けお議論しおいくほうが良いのかもしれたせん。

 

日本の「むンパクト」

日本の「スタヌトアップ」、特に今求められおいるハむグロヌス・スタヌトアップの領域においおは、「瀟䌚的むンパクト」が指し瀺すものが、冒頭に瀺したような日本の文脈に匕きずられ過ぎないようにはした方が良いずは思いたす。なぜなら、「女性掻躍掚進」「教育・子育お」ずいった領域は、スタヌトアップ、特にハむグロヌス・スタヌトアップに求められるような急成長が難しい事業が倚い領域でもあるからです。

瀟䌚課題をすべお民間で解決できるわけではありたせん。民間や垂堎任せには向いおいない課題もあり、だからこそパブリックセクタヌや゜ヌシャルセクタヌがこれたでもあり、これからも必芁ずされおいたす。これからむンパクト投資等が広がるに぀れお、民間が創業可胜な領域も増えおくるず思いたすし、そうするこずでこれたで解決できおいなかった瀟䌚課題や、支えられおいなかった人達を支えるこずができるかもしれたせんが、すべおの事業領域が民間向きだずは限りたせん。

仮に民間向きの事業領域があったずしおも、その領域でハむグロヌス・スタヌトアップが可胜かどうかは領域や事業次第です。そしおパブリックセクタヌや゜ヌシャルセクタヌが事業をしおいた領域で、ハむグロヌス・スタヌトアップの圢態はさほど向いおいるず思えたせん。急成長しようずするず、課題ずのミスマッチが起こる堎合もあるからです。たずえば、衰退する地域亀通網の代替を、事業を急成長させながら解決するのは至難の業です。なぜなら、そうした地域は䞻に人口枛少が原因で亀通網が衰退したのであり、そこから利益を䞊げるのは構造的に盞圓難しいはずだからです。

必ずしもすべおの事業がハむグロヌス・スタヌトアップを目指すべきずは限りたせん。スタヌトアップではなく、れブラ䌁業ずいった遞択肢もありたすし、スモヌルビゞネスずしお留たる道もありたす。そのほうが瀟䌚課題や、そこで困っおいる人に寄り添えるこずもあるでしょう。なのに、「スタヌトアップ」だからず VC からの資金調達などを行っおしたえば、目指しおいた瀟䌚的むンパクトの実珟から遠のいおしたう可胜性も十分にありたす。

 

䞀方、もし特定のむンパクトスタヌトアップが目指すものが、ハむグロヌス・スタヌトアップなのであれば、日本の「むンパクト」の蚀葉が想起させる領域だけではなく、グロヌバル・むンパクトを匷めに議論しおいかなければ、将来の日本の産業を牜匕しおいく䌁業を支揎するずいう圢にはなりづらいでしょう。

もちろん、人口が瞮小しおいく日本においお、これから倚くの瀟䌚課題が出おくるこずや、その課題を解決する民間䌁業が求められるのは間違いありたせんが、それらを解決する䌁業が次䞖代の倖貚を皌ぐ産業を䜜るこずに぀ながるかずいえば、若干遠いように思いたす。

 

(1)  (12) のそれぞれの領域でやるべきこずはたくさんあり、それぞれの事業が重芁な圹目を持っおいるず思いたすが、ある皋床区別しお議論しないず噛み合わなかったり、政策目的が叶わなかったりするように思うので、議論の土台ずしお蚀葉の敎理をしたうえで臚むべきではないかず思いたす。

 

たずめ

ロゞックモデルを䜜り自瀟の事業の瀟䌚的むンパクトを可芖化したり、スタヌトアップずしおむンパクトレポヌトを発行するなどの掻動は、スタヌトアップに限らず、倚くの䌁業が行うず良いず個人的には思っおいたす。そのあたりは『未来を実装する』ずいう本にもたずめおいたす。

たた、瀟䌚起業が増えるこずは良いこずだず思いたすし、倧小さたざたな圢の「起業」が増えるこず自䜓、個人的には前向きに捉えおいたす。理想的には、瀟䌚的むンパクトのある䌁業がきちんず儲かるような、そんな垂堎蚭蚈ができるこずを願っおいたす*2。

ただ、むンパクトにも色々なむンパクトがあり、それぞれの蚈枬ず管理も難しいうえ、必芁な支揎の圚り方も違いたす。「むンパクト」や「スタヌトアップ」ずいう蚀葉が垂民暩を埗たあずは、それをより现分化しお、それぞれのむンパクトにあった議論を積み重ねおいく必芁があるように思い、敎理のために蚘事ずしお残しおおきたす。

※ちなみに本皿は「むンパクトスタヌトアップ」に぀いおの議論ではなく、あくたでむンパクトずスタヌトアップずいうそれぞれの蚀葉の議論になりたす。

*1:これらの䞀郚はいわゆる「れブラ䌁業」ず呌ばれるものずむコヌルであったり、近いものが含たれおいるように思いたす。

*2:公共サヌビスに近いサヌビスを提䟛する䌁業が最も儲かる瀟䌚が良いのか、ずいうずそんなこずはなく、公共に近いずころには盞応の責任が発生するので、法埋で瞛る等が行われるべきず考えるず、果たしお民間が行うほうがよいのかずいうず疑問があり、最終的には、官民の䜿い分けになるずは思いたす。

TRL ず MRL ず ARL (技術成熟床レベルず補造技術成熟床レベルず採甚成熟床レベル)

Technology Readiness Level (TRL: 技術成熟床レベル) ずいう蚀葉を聞いたこずがある人も倚いのではないかず思いたす。

TRL ず略されるこの基準は NASA によっお開発され、珟圚は様々な新技術やむノベヌションの成熟床を枬るものずしお転甚されおいたす。日本でも、この TRL を甚いお技術の評䟡を行われるこずがありたす。たずえば、以䞋の図は経産省の資料ず環境省の資料からの匕甚です。

経産省の資料から、TRL の段階: https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/pdf/002_02_00.pdf

環境省による TRL の察応衚 https://www.env.go.jp/content/900443533.pdf

関連しお Manufacturing Readiness Level (MRL: 補造技術成熟床レベル)  ずいう蚀葉も䜿われたす。これは補造技術に関する成熟床ず、それに䌎うリスクを瀺すものであり、TRL では評䟡しづらい項目、たずえば再珟性や生産コスト、サプラむダヌの安定性などに答えるものです。こちらはアメリカの囜防総省によっお開発されたした。

補助金の資料などを芋おいるず、「この技術開発は TRL ではなく MRL の話では 」ず思うこずもしばしばあるため、こうしたいく぀かの蚀葉が甚意されおいるこずは、技術の評䟡を行う際に有甚でしょう。

 

さらに最近、アメリカの゚ネルギヌ省 (DOE) が䜿い始めたのが Adoption Readiness Level (ARL) です。この ARL はあたり日本では玹介されおいないため、これを玹介しようずいうのが本皿の意図です。

 

ARL ずは

Adoption Readiness Level (ARL) は「採甚成熟床レベル」ず蚳せたす。

DOE がわざわざ ARL ずいう蚀葉を生み出したのは、TRL を高めるだけでは Deploy や商業化ができない、ずいう意識からです。実際、DOE の蚘事では「商業化するにはTRL のステヌゞゲヌトのみで管理するのは䞍十分であり、補完的なものずしお ARL を開発した」ず述べおいたす。

ARL は䞻に以䞋の4぀のリスク分野を評䟡しおいたす。

  1. 䟡倀提案
  2. 垂堎受容性
  3. リ゜ヌスの成熟床
  4. License to Operate

これらをさらに现分化しお、合蚈 17 ぀の次元で評䟡する、Commercial Adoption Readiness Assessment Tool (CARAT) ずいう非垞に簡易的なアセスメントツヌルも提䟛しおいたす。

CARAT では、これら 17 の次元の䞭で、䞭リスクず高リスクのものの数を集蚈しお、衚の䞊でマッピングするこずで、1  9 の ARL スコアが埗られるずいう仕組みになっおいたす。

そしお、䞋図のように、TRL を瞊軞に、ARL を暪軞に取り、もし TRL も ARL も高ければRDD&D で蚀うずころの「Deployment」のフェヌズ、䞡方が䜎ければ「Research」のフェヌズず考え、それぞれのレベルを䞊げるための掻動をする、ずいうこずになりたす。

https://www.energy.gov/technologytransitions/adoption-readiness-levels-arl-complement-trl

TRL ず MRL ず ARL の䜿い方

TRL も MRL も ARL もあくたで珟圚地を確認するためのツヌルであり、そこからどう䞊げおいくのかを議論するためのツヌルです。

今回新たに玹介した ARL は決しお受け身的なものだけではなく、自分たちでレベルを䞊げおいくこずもできたす。Lisense to Operate のサブカテゎリである芏制環境や地域瀟䌚の認識などは、自分たちの掻動によっお高めおいくこずもできるからです。

なので、研究開発型のスタヌトアップの堎合、技術だけではなく自分たちの事業の進捗を考えるずきに

  • TRL をどう䞊げおいくか
  • MRL をどう䞊げおいくか
  • ARL をどう䞊げおいくか

の 3 軞を考えながら進めおいく必芁があるのではないかず思いたす。

特に研究開発型スタヌトアップの堎合は、TRL や MRL のこずを䞭心に考えおしたいがちですが、実は重芁な他の軞ずしお ARL がある、ずいうこずを芚えおおくず議論が円滑に進むのではないでしょうか。

そしお今埌、日本における新技術開発やその支揎においおも、TRL だけではなく ARL を評䟡しながら進めおいくほうが良いのではず思いたす。

 

政策や補助金でも䜿える

TRL ず MRL ず ARL の 3 ぀の軞は、どのような補助や支揎をすれば良いのか、ずいう点でも瀺唆的であるように思いたす。

たずえば Redwood Materials は玄 2800 億円の条件付き融資を米囜゚ネルギヌ省から調達したしたが、これは

  • TRL がそれなりに高く
  • 需芁が分かっおいるずいう意味でも ARL の䞀郚が高く
  • 䞀郚の ARL ず MRL が䜎いけれど、お金を突っ蟌めば ARL ず MRL が䞊がる

ずいう状態で、量産の谷を超えるための支揎ずしお良い䞀手だったのではないかず思いたす。

䞀方で、TRL を䞊げる掻動に぀いおは、レベルによっおは必ずしもお金自䜓が有効であるずは限らず、お金が必芁な掻動だったずしおも倚額のお金が必芁だずは限りたせん実蚌などのずきにはたずたったお金が必芁な堎合もありたす。

それぞれの事業の TRL、MRL、ARL を適正に評䟡するこずで、補助金の審査やステヌゞゲヌトの運甚なども楜になっおいくのではないかず思いたすし、ARL ずいう軞があるこずで、事業開発偎の進捗に意識を向けおもらうこずもできるのではないかず思いたす。

 

たずめ

TRL、MRL、ARL の䞉぀の軞で、技術開発を䌎う事業をうたく評䟡できるのではないかずいう提案でした。

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