起業に興味がある若手の方と話していると、「自分には原体験がない」「文系(理系)だから」「スキルがない」といって、行動を始めることを躊躇してしまう人がそれなりの数いることに気づきます。
実際、起業を始める前に「あなたの原体験は何か」といったことを問うようなワークショップなどもあると聞くため、「過去に特別な何かがないと、何かを始める資格がない」という認識を強めてしまうのかもしれません。
私たちは過去に理由を求めてしまいがちです。確かに過去に培ってきたものは大事ですし、過去を振り返れば気づけるものもあるでしょう。
だからといって、過剰に過去を気にしすぎたり、自分に特別な理由がなければやってはいけないと思うのなら、それは呪いでしかありません。そうした「原体験がない」や「資格がない」といった呪いのせいで、自らの将来の可能性を狭めてしまうのは、本当にもったいないことだと思います。
「行動する資格」が必要な領域は限られています。法的な資格が必要なのであれば、資格を取ればよいだけです。専門性やスキルが求められるなら、勉強して身につければ良いでしょう。興味関心があれば、大きな理由がなくとも始めて良いはずです。
ただそうは言っても、私たちは過去に理由や資格を求めてしまいます。だから、そんなときは、視点を未来に移してみることが一つの対処策なのではないかと思っています。
未来の過去を今から作る
当然と言えば当然ですが、未来の自分にとって「今の自分」は過去です。言い方を変えれば、未来の自分にとっての過去は、今から作ることができる過去です。
たとえば、野球選手のダルビッシュ氏は、20歳前後のときに、自分が40歳でホームレスになった未来を想像し、「20歳の時に戻してやる」と言われて、転生したつもりで頑張った、と述懐するインタビュー記事があります。これはまさに未来の視点に立って、今の自分を見て、その未来の自分にとっての過去を作りはじめた好例でしょう。
同じように、私たちは未来の自分にとって過去を今から作ることができます。
大した理由がなくても行動し始めて、誰かを助けたりすることが実際にできれば、それは行動を続ける理由になります。実績ができれば、それは自分がやる十分な理由になるでしょう。そうして5年も続けていれば、他の人にはなかなか真似できない立派な理由になっています。
何が理由であろうと、あるいは理由がなかろうと、とにかく歩き始めて、遠くまで来たときにふと振り返ってみたときに、轍のように残るものがいわゆるキャリアであり、自分なりの理由のように思います。
だから、「未来の自分にとっての過去や理由を、今から作り始めてあげるんだ」、あるいは「未来の過去を今から作る」と考えれば、積極的にいろいろなことに挑戦ができるのではないでしょうか。
まとめ
分かりやすい理由や原体験があって、自分の中のストーリーがあれば確かに動きやすいでしょう。でもそのストーリーはこれからでも紡いでいけますし、私たちは時間の流れとともにそのストーリーを紡いでいかなければなりません。であれば、これまでのストーリーではなく、これから紡ぐストーリーに目を向けたほうがよっぽど生産的です。
「過去に何もない」からといって、未来がそうだとは限りません。その何かは今から作ることだってできます。過去に「なかったこと」を「あったこと」にはできなくても、これからそれを「ある」ようにすることはできるはずです。
そんなつもりで、これから理由を作っていくつもりであれば、過去になにもないと思っていても、きっと動き始めることができるのではないでしょうか。