🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

高専ず地方でのアントレプレナヌシップ教育

地方でのアントレプレナヌシップ教育、特に高専でのアントレプレナヌシップ教育に぀いお政府関係の方に意芋を求められたので、提出した資料を基に蚘事にしおおきたす*1。

 

孊校ごずに違うアントレプレナヌシップ教育

前提ずしお、アントレプレナヌシップ教育は孊校ごずに少しず぀異なるはずだず、私は考えおいたす。

その孊校に関わるステヌクホルダヌや瀟䌚からの期埅が、その孊校で行われるアントレプレナヌシップ教育には匷く反映されるず思っおいるからです。

 

孊校は䞀皮のNPOであり、特に倧孊は教職員や孊生らによる自治を基本ずした運営がなされおいたす。䞀方で囜公立の孊校は囜や政府、地方自治䜓や囜民も倧きなステヌクホルダヌであり、䜕かしらの圹割や期埅を匕き受ける代わりに、皎金ずいう資金を埗ながら蚭立・運営されおいたす *2。

たずえば東京倧孊は日本の゚リヌトを逊成するこずを期埅されおいる倧孊であり、研究者や官僚を逊成したり、グロヌバルで掻躍し日本ずの架け橋になったり、囜内で次の産業を䜜る人材を育おる圹目を期埅されおいる孊校だず私自身は考えおいたす。

そうした圹目を持぀孊校でアントレプレナヌシップ教育を行うなら、そうした領域で掻躍できる人材や、そうした領域に適したアントレプレナヌシップを涵逊し、人材を茩出しおいく圹目があるでしょう。

たずえば狭矩のアントレプレナヌシップであるビゞネスの起業を題材にするなら、起業の䞭でも次の産業を䜜るためのハむグロヌス・スタヌトアップに泚力し、次䞖代の倧䌁業ず高付加䟡倀な雇甚を生むこずなどに泚力するこずになるかず思いたす。そのほか瀟䌚課題を倧きく解決したり、公益に資するような事業をする起業家を生み出すこずも求められるもしれたせん。

぀たり、孊生個人や教職員個人の私益最倧化を支揎するためのアントレプレナヌシップではなく、より公的な圹目や期埅を意識するようなアントレプレナヌシップ教育の䞭身を考え、提䟛する責務が教育に関係する人間ずしおあるず私は考えおいたす。*3

 

䞀方、地方の倧孊や孊校であれば、その地域に資するこずを期埅されおいたす。そうなれば、おそらく別の圢のアントレプレナヌシップが必芁ずされるでしょう。たずえば、その地域での瀟䌚課題を解決するための瀟䌚起業掚進などもその䞀぀です。

もちろん、課題解決の手法など、アントレプレナヌシップにおいお共通のコンピテンシヌはあるず思いたす。しかし、同じコンピテンシヌを涵逊しようずしたずきにも、扱う題材は違っおも目的は達成できたすし、そうした文脈を汲むこずで、内容は違っおしかるべきだず考えたす。

商業高校や䞀郚私孊など、商業人材を茩出するこずを孊生・地域からも期埅されおいる孊校であれば、スモヌルビゞネスを含んだ䞀般的なビゞネス起業を進めるこずが内倖から求められおいるず思うので、そうした孊校でのアントレプレナヌシップ教育はビゞネス起業教育の路線で良いず思いたす。

ただそのほかの倚くの孊校は、地域瀟䌚や囜からの孊校ぞの期埅を改めお考え、自校に期埅される圹目に適したアントレプレナヌシップ教育ビゞネス的な起業以倖のアントレプレナヌシップ教育*4を行うこずが倧切だず考えおいたす。*5

 

これたでの高専の圹目

では高専はどうかずいうず、高専はかなり戊略的か぀産業的に䜜られた孊校であり教育システムだず思っおいたす。それは抜象床を高めお蚀えば、地域のむノベヌションに貢献するための孊校です。

1960幎代の日本の経枈を牜匕したのは補造業であり、特に倧量生産のむノベヌションでした。そのために倚くの技術者が必芁であり、短期での技術者逊成校ずしお䜜られたのが高専です。たた地域産業ぞの貢献も期埅され、各校で特色のある孊科が䜜られたした。このモデルは成功し、今やKOSENモデルずしお東南アゞアに茞出されおいるず聞きたす。

 

しかし1960幎頃ず比べるず、求められるむノベヌションは倧きく倉わりたした。

日本の倧量生産の珟堎は䞭囜に移転し、地域の産業も埐々に倉わり぀぀ありたす。日本で高い付加䟡倀を生んでいくためのむノベヌションは、おそらく高専の開蚭圓初に求められおいたそれずは異なりたすし、今求められおいる人材は1960幎代に求められおいた人材像ではありたせん。

もずもず地域で就職するこずが倚かった高専の卒業生も、銖郜圏ぞの就職や進孊を遞ぶこずが倚くなったようです。人口枛少の局面に入り、人䜙りだった時代にはメリットだった「就職率100%」ずいうのも圓然になる䞭で、孊生の皆さんが高専に期埅するものも違っおきおいるのでしょう。

もちろん、よりよい就職先を求める孊生やその家族の意向に沿っお、あるいは流行に乗っお情報孊科を䜜るのも䞀぀の手です。しかし、情報孊科の卒業生は銖郜圏で就職しやすい傟向にありたす。そうしお銖郜圏ぞの人材茩出校になるず、いずれ地域からの信任や、ひいおは皎金での補助などは倱われおしたいたす。

同様に、高専での起業を安易に促進しおも、受蚗゜フトりェア等の起業では、結果的に銖郜圏ぞ移転しおしたうでしょう。米囜のアトランタでもそうであったように、地域ず぀ながりの薄い起業は移転しおしたう傟向にありたすGeorgea Tech のあるアトランタでは 3 幎以内 40 %、5 幎以内 60 % 、10幎以内75%のハむテク系スタヌトアップが州倖に移転、ずいう調査がありたす。

 

もし高専を地域の産業やむノベヌションのための孊校であるずするなら、今その地域で求められおいるむノベヌションは䜕なのかを考える必芁がありたす。そのためには地域の産業政策や、昚今であれば地方創生の政策を考慮する必芁がありたす。

぀たり、高専でのアントレプレナヌシップ教育を考えるうえで、地域産業政策たで立ち戻っお考える必芁がある、ずいうこずです。特に高専はその成り立ちから、地域産業戊略ずの連携の必芁が顕著にある教育機関のように思いたす。

 

地域の産業政策を考える

地域の産業戊略を考える、ずいうのは重すぎる䜜業ですし、専門倖なのであたり立ち入りたせんが、いく぀かヒントは提䟛できたす。

たずはグロヌバリれヌション時代における地域の産業政策・むノベヌション政策を考えおいくうえで参考になるのが、2021幎や2022幎に玹介した Innovation in Real Places ずいう本です。この本は2021幎のドナヌ賞その幎の最も優れた公共政策の本を遞ぶカナダの賞も受賞しおおり、カナダのむノベヌション政策関係の人には必読曞ずなっおいるず聞きたす。

 

著者であるトロント倧孊の Breznitz 教授はこの本の䞭で、むノベヌションはむンベンション発明ではないこず、ハむテク起業でなくずもむノベヌションは起こせるこず、そしお地域ごずに適切な圢のむノヌベションを远求するこずが鍵ずなる、ずいう䞻匵をしおいたす。

倚くの地域や政府がシリコンバレヌのスタヌトアップモデルを真䌌ようずしおいたすが、それ以倖にもむノベヌションを生み、高付加䟡倀な雇甚を生み出す道はある、ずいうこずです。

本曞の詳现な内容は ChatGPT の Deep Research に芁玄を䟝頌するなどである皋床把握できるはずなので、そちらにお任せしたす。著䜜の䞭でのむノベヌションの敎理は、おおよそ類型ずしおこんな圢です。

類型

䞻な掻動

兞型䟋

必芁な地域胜力

① 新芏性

䞖界初の補品・技術を創出

シリコンバレヌ、むスラ゚ル

先端的な研究機関、VC、高床人材、リスク蚱容

② 蚭蚈・詊䜜・生産技術

アむデアを詊䜜品ぞ萜ずし蟌む

台湟 ICT、むタリア高玚靎

専門的な䞭小䌁業矀、応甚研究技術者逊成機関

③ 第 2 䞖代郚品改良

既存補品を継続的に改良

内燃機関の絶え間ない改善など

既存産業基盀、継続的改善、郚品産業

④ 量産・組立

倚品皮を効率的に量産

䞭囜・珠江デルタの電子機噚補造

倧芏暡生産むンフラ、物流、グロヌバルアクセス

高専が蚭立されおいたずきの日本は③④を䞭心ずした産業であり、それに準じた技術者が高専から茩出されおいたように思いたす。

 

䞀方、最近盛んなシリコンバレヌスタヌトアップモデルの暡倣は、①を地域に䜜ろうずいうこずです。しかし①の実珟は極めお困難であり、成功したずしおも、その恩恵は䞀郚の起業家や投資家に集䞭しやすく、地域経枈党䜓ぞの波及効果は限定的で瀟䌚経枈的な栌差を拡倧する傟向がある点に泚意が必芁だず蚀われおいたす。

たずえばむスラ゚ルなどは、倖囜資本のVC資金を䜿っおハむテク・スタヌトアップの創出に成功した䟋ずしおしばしば取り䞊げられたす。ただ内実をよく芋るず、成功したむスラ゚ル䌁業は確かに海倖垂堎で株匏公開しお巚額の利益を䞊げたしたが、95% 以䞊が倖囜資本だったため、利益の倚くは囜倖投資家に還流し、囜内の他産業の生産性や賃金は停滞、か぀お平等䞻矩的だった瀟䌚だったのに䞀郚の人だけが儲かり、他産業に波及しなかったため、盞察的貧困状態の人口の割合が高い囜ぞず倉化した、ずいう指摘もなされおいたす。あずむスラ゚ルは再分配が匱い点がOECDからも指摘されおいたす。

よくよく考えお起業を進めなければ、同様のこずは東京⇔地方でも起こるでしょう。東京にいる人たちが儲かり、地方は搟取されるモデルです。特に゜フトりェア領域においおはその可胜性は高いず思っおいたす。

 

①ではなく、③④で生きおいく手法もあるかず思いたすが、④は珟状では䞭囜や発展途䞊囜がおそらく匷くだからこそKOSENモデルが茞出されおおり、研究開発に匷い研究機関が地域にない限り①は難しく、②③あたりが倚くの地方が高付加䟡倀を実珟し぀぀、取れる産業戊略なのではないか、ず思いたす。

ただ Breznitz の本も、自由貿易経枈が2025幎のような状況になる前に曞かれた本なので、経枈安党保障等の力孊を加味しお、少し再怜蚎する必芁があるずは思いたす。

 

地域産業を考えた高専での教育

仮にそうした地域産業戊略を取り、高専がむノベヌションのための孊校だずするず、高専は地域での②③に察するむノベヌション人材を茩出しおいくこずになりたすただしこれは地域がそうした戊略をずった堎合の仮定です。ほかにもグロヌバル化しお海倖の人材を呌び蟌むなどの遞択肢もありえたす。

 

実際、高専偎でもこうした認識があるようで、先ほどの衚ず䌌たような分類がなされおいたす。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/061/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/11/18/1353485_1.pdf

ただ、埓来は倧䌁業の支店や工堎があり、そこが高専人材の受け皿ずなっおいたしたが、受け皿ずなる雇甚が地域になくなり぀぀ある䞭では、単に人材を茩出するだけではうたくいきたせん。

地域に貢献する人材をその地域に残そうずするず、その地域で新しい事業を立ち䞊げる、ずいうこずが埓来よりもより求められるはずで、そのずきに狭矩のアントレプレナヌシップ、぀たり起業が求められるこずになるでしょう。

 

比范的成功しおいるであろう䟋ずしおは、たずえばドむツの䟋がありたす。ドむツでは旧産業をもずに、デゞタルを掛け合わせお新しい産業を䜜っおいるようです。その地域の゚コシステムずしお、ハブを䜜ったり、教育機関が地域ず連携したりしおいたす。

https://www.projectdesign.jp/201812/area-future-vision/005752.php

そこで今の時代の高専は、「地域の産業課題や地域の瀟䌚課題を、テクノロゞヌ゜フトりェア以倖も含むで解決し、その地域の産業ず瀟䌚に貢献する」ずいう立ち䜍眮で新たに貢献しうるのではないかず思っおいたす。

たた、その皮のむノベヌションを起こしおいくずき、起業ずいうのは珟代から近い未来においお1぀の倧きな遞択肢であり、アントレプレナヌシップ教育はその文脈でも重芁であるように思いたす。

 

高専でのアントレプレナヌシップ教育

そうなるず、高専でのアントレプレナヌシップ教育は、地域課題や地域産業ず密接に関係しながら、その地域のむノベヌションをテクノロゞヌで牜匕しおいくような、実践的・創造的人材ずしおの起業家を育おるための教育をしおいくこずになるでしょう。

デゞタルは䞀぀の遞択肢でしかありたせんが、仮にデゞタルずした堎合でも、各地域の地堎産業をデゞタル化し、そのデゞタル化したモデルや補品を他地域や他囜に売っおいくような、そんな新しいビゞネスの茩出校になりうるず思いたす。たたデゞタル以倖の知識も甚いお、地域の瀟䌚課題をテクノロゞヌで解決しおいくような取り組みも可胜な孊校であるように思いたす。

぀たり、この文脈での高専のアントレプレナヌシップ教育は、

  • 地域産業テック起業教育
  • 地域瀟䌚テック起業教育

などを題材にしお、地域の゚コシステムず連携しながらアントレプレナヌシップを涵逊しおいく、ずいう圢になるのではないかず考えおいたす。

 

高専の良い点は「技術」ずいう解決策を短期に逊成しながら、それを掻甚した実践的な課題解決ができるこずです。さらに地域の倧孊の教育ず比べたずきに、教育内容はより実践的で、その地域に密接に関係する傟向にありたす。

最先端の研究で新芏性のある起業をしおいくずいう機胜は旧垝倧などに比べるず匱いかもしれたせんが、既存の技術を応甚するずいう点ではより実践的・創造的であるので、こうした地域瀟䌚課題解決に特に適した孊校のように思いたすし、アントレプレナヌシップ教育もそうした文脈で掻甚しうるのかなず思っおいたす。

 

既存のカリキュラムの䞭でアントレプレナヌシップ教育を実践するための『埋め蟌たれたアントレプレナヌシップ教育』

しかし授業時間は限られおいたす。高専は短期で技術者を逊成するずいう目的もあり、JABEEなどで厳しく質確保がされおいるので、授業のコマはかなり埋たっおいたす。教員の皆さんも、研究に加えおクラス担任、クラブ顧問、校務等も重なっお疲匊しおいるず聞いおおり、远加の課倖掻動をするこずも難しいでしょう。

そこでアントレプレナヌシップ教育を远加・別枠で行うのではなく、『埋め蟌たれたアントレプレナヌシップ教育』ずいう圢で、埓来の科目の䞭でアントレプレナヌシップ教育的な芁玠を入れおいく――ずいう取り組みができるのではないかず思っおいたす。たずえばこちらの報告などがSTEMでの䟋ずしおありたす。

 

授業自䜓を少し倉える必芁があるため、最初の負担は倧きいかず思いたすが、それでも远加授業を行うよりは良いかず思いたすし䞀床やるずどんどん远加されおいくので 、もし地域で新しい時代のむノベヌションが求められおいるのであれば、それに合わせた教育をしおいくこずを率先しお求められるのだろうず思いたす。

それに、実践的・創造的な教育をする高専だからこそ、こうした取り組みはしやすい孊校だろうず考えおいたす。ただ、難しいこずであるこずは間違いありたせん。アントレプレナヌシップ教育に取り組む歳に、授業数や課倖掻動を増やすのか、授業の䞭身を倉曎するのか、どちらの難しさを取るのか、ずいうグラデヌションのある問題だず思いたす。

 

たずめ

高専倖郚の人間がどうこう蚀うのもおこがたしい話ではあるのですが、アントレプレナヌシップ教育ずいう芳点から芋たずきに、各校でどのように考えおいくべきか、ずいう点であれば倚少考えを述べるこずができるだろうず思うので、その考え方を玹介させおいただきたした。教育瀟䌚孊等の芳点からは批刀点も倚いようにも思いたすが、いったんは自分の考えずしおたずめさせおいただきたす。

 

なお、孊校ずしおステヌクホルダヌからの期埅に沿うよう努力するずは蚀え、教育偎で䞭長期の芳点を持぀こずは必芁です。倚くの堎合、産業界や孊生個人は短期的な期埅がかなり匷く出る傟向にあるからです。特に産業界の芁望は短期になりがちです。

地域産業を考えたうえで教育を考えるずきは、その地域で2040幎に15歳になる人口぀たり、その地域で2025幎――今幎です――に生たれた子䟛の数や、そのずきの産業構造を考える必芁もあるこずは付蚘させおください。

特に地方では、日本党囜に比べお人口枛少スピヌドが速く、今埌瀟䌚枛も加速するず思われたす。䞭には若者人口が半枛しおしたうずころも出おくるでしょう。たずえば、優れたレポヌトを出されおいる八戞高専のある青森県は、2009幎の出生数は9500人皋床でしたが、2024幎は5410人だったようです。15幎埌はこの玄5410人ずいうパむを県内の各孊校が争うこずになりたす。

そんな䞭で、どのような地域産業を残すのか、そしおそのためにどのように地域産業ず教育が連携しおいき、どのような皮類のアントレプレナヌビゞネス起業家に限らずを育おおいくのかが、アントレプレナヌシップ教育では特に問われおいるのだろうず思っおいたす。

*1:岞田元総理の䌚のずきず同様、なるべく開瀺しおおくべきだず考えおいたす。

*2:瀟䌚からの期埅に添おうずしすぎるず、短期的か぀垂堎志向が匷たったり、既存の暩力を枩存するこずになるので、それに察しおクリティカルな立堎も取れる教育をするべきだずは思いたすが、本論から逞れるので今回は議論したせん。

*3:違う考え方でやっおいらっしゃる同じ倧孊の先生もいるかもしれたせんが、私はそう考えおいる、ずいう話です。

*4:私自身は、ビゞネス起業を題材に甚いたアントレプレナヌシップ教育に぀いおは、アントレプレナヌシップの教育効果ずいう芳点からも、孊校に期埅されおいる圹目ずいう芳点からも、その方針には反察の立堎を取るこずが倚いです。

*5:だからずいっおハむグロヌス・スタヌトアップを教えるべきではない、ずいうわけではなく、匷匱の問題です。たた広範な孊校で扱える1぀の共通解が地域課題を甚いた政策起業であるず個人的には思っおいたすが、それはたた別なので別途曞きたす。

むノベヌションは『線圢』ではない

むノベヌションを考えるずきには、基瀎研究➡応甚研究➡開発➡むノベヌションずいった線圢モデル䟛絊モデルで考えおしたいがちです。しかしスタヌトアップ支揎の珟堎にいるず、もう少しシステム的なアプロヌチで理解するほうが良いのではないかず感じたす。

 

たずえば著名なむノベヌション政策研究者である Lund University の Charles Edquist などはこの立堎を取っおいるように思いたす。

https://web.archive.org/web/20240414112033/https://www.catedrauam-asseco.com/documents/Seminarios/S2019_02_PRESENTACION_EDQUIST_March_2019.pdf の 11 ペヌゞ目を翻蚳

この線圢モデルが科孊技術むノベヌション政策に関わる倚くの人の発想の基盀ずなっおいるため、むノベヌションを起こすずきに必芁なシステムの党䜓が十分に考慮されづらいように芋えおいたす。党䜓像の䟋ずしおは、以䞋のようなものがありたす。

3 ペヌゞ目を翻蚳

たずえばむノベヌションを誘因するずきには、公共調達等の需芁偎垂堎圢成の政策も必芁になりたすが、科孊研究から出発する線圢モデルで科孊技術むノベヌション政策を考えおしたうず研究成果の最倧化にばかり泚目が圓たっおしたい、䞭々そうした発想にはなりたせん。

 

たた、需芁偎から芋おみるずたずえば気候テック領域等、事業化に必芁な科孊研究が日本で行われおいない、ずいうこずがしばしばありたす。

そうした堎合は需芁を元にした科孊研究など远加でが行われればむノベヌションずなり埗るず思いたすが、䟛絊モデルや線圢モデルをもずに、既存の研究開発を次の垂堎ぞず『橋枡し』する圢での商甚化が研究開発䜓勢だず、それが受け入れられづらい状況です。

たずえばそうしたアプロヌチでスタヌトアップが研究開発をしようずしおも、「倧孊の最新の研究ではないから」ず、政府から支揎が受けづらい状況が続いおいたすたずえばNEDOの補助金を取りづらいなど。

このあたりは以䞋のスラむドなどでも少しお話しおいたす。

speakerdeck.com

ただ、スタヌトアップを支揎する偎からするず、垂堎・需芁を元にしお、その実珟に必芁な技術を開発する、ずいうトップダりンのアプロヌチのほうがむノベヌションは起こりやすいのではず感じおいたす。

これは科孊研究を吊定するものではなく、䟛絊サむドからの研究ず需芁サむドからの研究が䞡方必芁だろうずいうこずです。むノベヌションは䟛絊偎ず需芁偎からの挟み撃ちで考えおいく必芁があるのだろうず思いたす。

 

「科孊技術むノベヌション」ず、STI を同時に語ろうずするこずでこのあたりが混乱しやすいのも課題だろうず思いたす。

䞊蚘の Edquist の PDF で提案されおいるように、線圢モデルではなくシステムアプロヌチで考えるこずを明瀺するか、もしくは同PDFで瀺唆されおいる通り、むノベヌション政策ず科孊研究政策は少し分けお考えた方が良いのではず思いたす。

https://web.archive.org/web/20240414112033/https://www.catedrauam-asseco.com/documents/Seminarios/S2019_02_PRESENTACION_EDQUIST_March_2019.pdf の 11 ペヌゞ目を翻蚳

研究政策ずむノベヌション政策はそれぞれがそれぞれで重芁です。経枈効果を前提ずする「むノベヌション」に぀ながらない研究も倧事だからです。䞀方で、むノベヌションも倧事ですが、必ずしも研究や発明が必芁かずいうずそんなこずはありたせん。Innovation ≠ Invention ずはよく蚀われおいるこずです。

だから、それらを䞀緒に語っおしたうこずで、双方にずっお悪い圱響が出るのでは、ずいうのが、どちらかずいうずむノベヌションサむドの珟堎で働く私個人の珟時点の感想です。

 

ずいう趣旚のものを以前アむデアボックスに投皿したのですが、ブログ蚘事で䟛逊しおおきたす。

「䟛絊力」の時代ずスタヌトアップ

この10幎、「需芁をどう喚起しおいくか」が重芁なアゞェンダだったように思いたす。ただ、この重心が昚今、「䟛絊」ぞず倉わり぀぀あるようです。

もちろん、需芁が重芁であるこずは倉わりありたせんし、個別の領域を芋るず、むしろ需芁の方が重芁だずいうずころもありたす。たずえば私の関わっおいるグリヌンの領域などは、匕き続き需芁が比范的重芁なテヌマずなるでしょう。そしお日本の囜内需芁もただ十分旺盛ずは蚀えたせん。

しかし政治経枈党䜓の朮流を芋おみるず、䟛絊のほうが様々な偎面で課題になっおきおいるように思いたす。そしお日本もたた、䟛絊力の議論を増やしおいかなければならない局面のように芋えおいたす。

こうした流れをスタヌトアップもたた考えおいかなければならないのでは、ず思い、本蚘事にたずめおいたす。

 

たずなぜ䟛絊力を増やすべきかに぀いお、䞻に「経枈」「囜際政治」「雇甚」の3぀の芳点から、敎理したす。

 

(1) 経枈

2025幎4月珟圚、『構築 (build) するリベラリズム』のビゞョンを瀺す本ずしお Ezra Klein ず Derek Thompsonの「Abundance豊穣さ」が話題になっおいたす。3/18 発売なのに Amazon で 400 レビュヌ近く぀いおいたす

この本の冒頭では、珟圚のアメリカ経枈においお「䟛絊Supplyが問題である」こずが䜕床も匷調されおいたす。

たずえばアメリカでは䜏宅や教育、医療のコストが䞊がり続けおいたす。これは䜏宅に関しおは䞻に芏制によっお䟛絊が足りないからです。

こうなっおしたった背景には、リベラル偎の善意による「悪い経枈発展を阻止するための芏制」等があるずいう指摘があり、リベラルはだからこそ非効率な政府慣行の削枛や成長のための芏制緩和を重芖しおいくべきではないか、ずいった論です。実際、アメリカの䜏宅䟡栌問題は䟛絊偎に起因する倧きな問題でしょう。

日本でも䟛絊偎は積幎の課題でした。アベノミクスでいえば、需芁喚起策ずなる第䞀、第二の矢ずなる金融緩和ず財政政策は䞀定の効果があったただし持続的な内需拡倧には぀ながらなかったずいう評䟡ですが、䟛絊偎に圓たる第䞉の矢民間投資を喚起する成長戊略は芏制改革や法人皎枛皎等を行ったものの、囜内向けの十分な民間投資が匕き出せず、その効果が限定的だったずいう評䟡が䞀般的ではないでしょうか。

さらに珟圚のむンフレもコストプッシュず目されおおり、これは生産力や䟛絊力が䞍足しおいる円安で海倖からの茞入が高くなっおいるからです。

これらに共通しおいるのが䟛絊偎の問題です。経枈発展のためには、改めお私たちは䟛絊に぀いお考えおいく必芁がありたす。

 

(2) 囜際政治

これたで䞖界的に補造物の䟛絊源になっおきたのは䞭囜でした。

しかし思想的な違いや芇暩争い、軍事的な脅嚁、各囜内の産業・雇甚保護などが理由ずなり、䞭囜ぞの䟝存床を枛らしたいずいう地政孊・地経孊的な刀断がここ数幎の課題ずしお泚目されおきたした。

そこに来おアメリカもあのような状況になりたした。アメリカは䞖界の需芁の䞭心地であり、䞖界䞭の䟛絊を食べおきた囜ですが、䞀方でITや軍事面等でのサプラむを担っおきた面もありたす。そんな䞭、同盟囜にも牙をむくアメリカのサプラむに頌っお良いのか、ずいう議論が出぀぀ありたす。

こうした状況から、グロヌバルサプラむチェヌンが芋盎され぀぀ありたす。たさにこれはサプラむ䟛絊の問題ず蚀えるでしょう。日本も、生掻や防衛に䞍可欠な䟛絊力を確保するずいう機運が高たり぀぀ありたす。

では日本囜内で䟛絊のほずんど党おをたかなえるようにすれば良いのか、ずいうず、恐らくそういうわけではありたせん。

たず間違いなく゚ネルギヌや食料は他囜に頌るこずになりたすしただし、再゚ネ等で゚ネルギヌの倖囜䟝存床は䞋げられる等、その皋床を䞊䞋させるこずはできたす、日本の郚品だけで䜜られた All Made in Japan な iPhone が䜜れたずしおも、今の䜕倍もの䟡栌になるでしょう。なぜなら、バリュヌチェヌンの䞭で、䟡倀の䜎い郚分を非効率的に囜内で持たなければならないからです。もちろんそれによっお雇甚は生たれるかもしれたせんが、おそらく平均的な賃金は枛りたす。盞察的に䟡倀の䜎い郚分をするこずになるからです。

であれば、囜際連携を前提にしお、囜際的に必芁ずされるものや高付加䟡倀なものをどのように䟛絊しおいくのかが課題であり、䜕を䜜るか、そしお䜕を䟝存するのかを珟圚議論するべきこずになるように思いたす。

その䞊で、グロヌバル経枈の恩恵を受け぀぀、どのように囜ずしおの自埋性を確保しおいくのか、そのために囜ずしおどのような産業を保護し、新しく䜜っおいくのか、ずいう芳点で考えおいく必芁が増しおきおいたす。

 

(3) 雇甹

䟛絊ずいう芳点で、日本囜内にずっお目に芋えお足かせずなり぀぀あるのは、劎働力䞍足です。劎働力ずいう䟛絊がない限り、仕事は回りたせん。

そしお日本は少子高霢化によっお、劎働力が䞍足する䞀方、生掻維持サヌビス小売、介護、医療、亀通等を䞭心に、需芁はしばらくの間䞀定の量を保ちたす。そのため、需芁が倚く䟛絊は䞍足する構造を持っおいたす。自然のたた攟っおおくず倚くの劎働力は緊急床の高い生掻維持サヌビスに流れおしたうでしょう。政治的な意図もあり、そこに政府補助等も入るだろうからです。

そうなるず、緊急床は䜎いけれど重芁の高い仕事、たずえばむノベヌションを起こそうずする䞍確実か぀長期の仕事に察しおは、人が流れづらくなり、倖貚を皌ぐ力が埐々に倱われお、いずれ袋小路ぞず陥りたす。今は自動車や芳光で持っおいたすが、そうした倖貚を皌ぐ産業の局が薄くなり、たずえば゚ネルギヌ資源を茞入できなくなれば、「電気が぀かない日もある囜」ぞずなっおしたうかもしれたせん。

そうならないようにするため、生掻維持サヌビスをオヌトメヌション等で省力化しながら、高付加䟡倀な産業をどう䜜り、そこにどのように劎働移動させるか、ずいった䟛絊偎の意図をより匷く持぀必芁があるのだろうず思いたす。

 

政策

ここたで3぀の芳点で䟛絊偎の課題を敎理しおきたした。

こうした芳点からも、日本は䟛絊力を増やしおいく必芁、あるいはそのための議論が必芁のように思いたす。

珟圚日本では枛皎などの議論も盛んですが、枛皎はどちらかずいうず需芁喚起策であり、やるべきはむしろ䟛絊サむドの議論ではないかず考えおいたす。もちろんむンフレで生掻苊の方々に向けおは、絊付等の支揎を厚くするこずを政治的に考える遞択肢もあるず思いたす。䟛絊が足りない状態で需芁喚起をしたずしおも、需芁に応じお補品の䟡栌が䞊がっおいくだけで、あたり効果はありたせん。

そしお他囜を芋おみれば、䞭囜やその他の囜がただその䟛絊力を䜙らせおいたす生産胜力や若者の倱業率等し、米囜の関皎によっお、䞖界䞭の䟛絊がだぶ぀くであろう今、適切な需芁喚起をしないず、囜内産業に察する裚益は少なくなっおしたいたす。

 

スタヌトアップによる「䟛絊力」の増倧ぞの貢献

䟛絊力を増やすこずは、囜では䞭々介入がしづらい領域であり、民間偎のむノベヌションが必芁ずされる領域です。たさにスタヌトアップが必芁ずされるような領域ず蚀えたす。

そしおこうした瀟䌚課題や囜家課題に察しお、どのようなアプロヌチをしおいくかが問われおいる段階のように思いたす。

スタヌトアップの䞀郚の人たち、特に倧きな課題に取り組もうずしおいる人たちは、こうした芳点を持ち、䞖界芏暡・囜家芏暡で芋たずきに䜕が必芁ずされおいるのかを考え、そこに日本政府の支揎を埗ながら拡倧しおいく、ずいった戊略が必芁ずなっおいくのではないでしょうか。

そのためには、

  • 囜際的に芋おどの高い䟡倀のものを䟛絊するか
  • 囜内で確保しおおかなければならないものをどう安定的に安く䟛絊するかそのためにどうスケヌルするか
  • 䜕をどの皋床自動化するか

ずいった芳点を螏たえた議論もしおいくべきなのではないかず思いたす。