🐴 (馬)

Takaaki Umada / 馬田隆明

アントレプレナーシップ教育の授業の設計支援ツール (日本版 EntreComp v1 ガイドを活用)

2025年12月6日(土)、7日(日)と2025年度 文部科学省主催 全国アントレプレナーシップ人材育成プログラムの FD (Faculty Development) プログラムを担当しました。

アントレプレナーシップ教育が広がるにつれて、「どうやって設計すれば良いのか分からない」といった声に答えるため、また授業の質保証という観点で、これまで 3 年ほど実施してきています。

今年は昨年度の倍にあたる約 60 名の先生にご参加いただき、2日間で合計約14時間を通して、私たちなりのアントレプレナーシップ教育のノウハウをお伝えしました。

 

今年の FD の中では、今年の3月に公開した日本版 EntreComp v1 をもとにした授業設計の方法 (案) について紹介し、さらに今年から授業設計にも生成 AI を使う試みを実施しました。この生成 AI を使った授業設計の部分については、ご参加いただかなかった先生方にも使っていただけるのでは、と思ったので公開しておきます。

 

▶ ツールを起動

 

ツールの概要

このツールはガイドを読み込ませている Google Gemini の Gem です。

このチャット欄にどういった授業をしたいかを入力するだけで、授業設計の骨子のドラフトを作ってくれます。

一度触っていただいた方が早いと思うので、ぜひ以下のサンプルプロンプトなどをコピー&ペーストしていただいて、お試しいただければと思います。

 

サンプル (1) 90 分 ×15 回の授業

コピペして上記に入力してください。

## 授業タイトル
アントレプレナーシップ概論(1)

## 授業の概要
1コマ90分
全15コマ
宿題あり
履修人数は50人
大学1年生
選択科目
ビジネスの前提知識はなし
階段教室で実施する
TAはいない
オフィスアワーを毎週1時間実施予定

## 学生に学んでほしいこと
自ら問いを立てて、その問いを解決するような仮説を考え、仮説検証をすることの重要性を体験すること。

## 押さえてほしいポイント
講義だけではなくワークショップを行いたい。ゲストは呼べないけれど、動機づけは多少したい。

## 重視したい EntreComp
① 問いを立てる
④ 今ある資源を認識する
⑧ 試してみる

サンプル (2) 90 分の課外活動

## 授業タイトル
地域の課題解決を通してアントレプレナーシップを体験してみよう

## 授業の概要
90分の課外授業1回
参加人数は30人
中学3年生中心
公民の授業の延長

## 学生に学んでほしいこと
インタビューして課題を見つけたり、検証するという基本動作。外に出て、協力者を探すことの大切さ。

## 押さえてほしいポイント
学校と地域との結びつきを強めたい。学生に課題解決の喜びを知ってもらいたい。

## 重視したい EntreComp
② 情報を探索する
⑥ 足りない資源を獲得する

サンプル (3) 現状の授業の批評と改善

これまではゼロからの授業設計を前提としていましたが、このGemを使って現状の授業の改善などにもつなげることができます。

たとえば、講義資料などを添付して、以下のようなプロンプトを投げることで、授業の改善提案を行ってくれます。

以下の情報や添付の資料は50分の小学生向けのアントレプレナーシップの授業です。EntreComp v1ガイドに沿って、この授業の良い点と悪い点、改善点を教えてください。

 

さらに追加のプロンプトで詳細設計まで実施可能

もしコース設計として良い成果物が出たら、「第○回の授業設計を詳細に行ってください」や「この授業構成を元に、以下の項目についてのシラバスを作ってください」といった追加プロンプトを入れることで、より詳しい授業設計支援をしてくれるようになるはずです。

またよく問題になる評価の設計については、別の Gem を用意中です。

 

参考情報

参考まで、日本版 EntreComp v1 は以下の10個です。

① 問いを立てる
② 情報を探索する
③ アイデアを作る
④ 今ある資源を認識する
⑤ 今ある資源を活用する
⑥ 足りない資源を獲得する
⑦ 不確実性、曖昧さ、リスクを見極める
⑧ 試してみる
⑨ 意思決定をする
⑩ 学びを得る

また、シラバスを作るときには、以下のような項目を入れると良いのではと思います。

#### 1. 基本・事務情報
* **科目名:** [科目名を入力]
* **担当教員名:** [教員名を入力]
* **対象学年・開講期:** [例:1年生・前期]
* **単位数:** [例:2単位]
* **授業形態:** [例:講義、演習、実習]
* **使用言語:** [例:日本語]
* **オフィスアワー:** [学生からの相談を受け付ける時間帯]

#### 2. 授業の核心(コンテンツ)
* **授業の概要 (Course Description):**
    * 授業のテーマ、背景、全体像を要約して記述する。
* **到達目標 (Learning Objectives):**
    * 主語を学生にし、「〜を理解する」だけでなく「〜ができる(行動変容)」という形式で3〜5点挙げる。
* **授業計画 (Course Schedule):**
    * 全15回(または指定回数)の各回のテーマと内容。
* **テキスト・参考文献:**
    * メインの教科書と、参考となる図書や資料。

#### 3. 教育学的要件(質の保証・実質化)
* **詳細な学習成果 (Specific Learning Outcomes):**
    * ブルームのタキソノミー(知識・理解・応用・分析・評価・創造)を意識し、具体的なコンピテンシーとして記述する。
* **予習・復習の指示と目安時間 (Out-of-class Study):**
    * 各回の授業に対して、具体的に何を読むか(予習)、終わった後に何をするか(復習)を記述する。
    * 時間目安(例:予習90分、復習90分)を明記する。
* **成績評価基準と方法 (Grading Policy & Criteria):**
    * 評価の内訳(試験〇%、レポート〇%など)。
    * 各項目の評価基準(何ができればA評価か)やルーブリックの有無を明記する。
* **ディプロマ・ポリシーとの関連 (Relation to DP):**
    * 学部・学科の人材育成方針(DP)のどの項目に寄与するか。
* **フィードバック方法 (Feedback Method):**
    * 課題提出後、どのように学生へフィードバックを行うか(個別添削、全体講評など)。
* **アクティブ・ラーニングの内容 (Active Learning):**
    * 一方的な講義以外に、どのような能動的学習(議論、グループワーク、PBL等)が含まれるか。

まとめ

日本版 EntreComp v1 ガイドを結構分厚く書いたので、「読んでもらえるかな…」と少し心配していましたが、直接先生方に読んでもらうのではなく、AI に知識として渡すことで、AI 側がうまく支援してくれるように思います。(分厚い分うまく機能しているように思います)

まだAIも若干信用がおけないところはありますが、この1年でずいぶんと実用性が高まりました。2025年現在の Gemini 3.0 Pro (Thinking) でも、ドラフトとしては十分使える授業設計が出てくる印象です。

 

アントレプレナーシップ教育の講義などを行うときに、今回のツール+EntreComp v1をうまくご活用いただければと思います。