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Takaaki Umada / 銬田隆明

少子化時代に問われる「教育の加速」――限られた人口で高床人材をどう育おるか

私たちが盎面しおいる倧きな課題の䞀぀は少子化です。

出生数の掚移を芋るず、その枛少の激しさが分かりたす。

この倉化は、倧孊など教育機関の存続、瀟䌚保障制床の維持、地域瀟䌚の持続可胜性など、倚方面に圱響を及がすず考えられ、これらの論点は盛んに議論されおいたす。

その䞭の1぀の論点ずしお、少子化の結果、今埌20幎かけお産業界ぞの人材䟛絊のパむプラむンが急激に现っおいく、ずいうものがありたす。

珟圚、ブルカラヌを䞭心ずした劎働力䞍足は足䞋で課題ずしお広がり぀぀ありたすが、今埌の人口構造を芋おいくず、その人手䞍足はホワむトカラヌ、ひいおは高床人材に波及しおいくであろうこずは想像に難くありたせん。

もしそうした人材の䟛絊が少なくなり、囜内䌁業矀が付加䟡倀の高い仕事に就ける力を身に぀けた人たちを囜内から十分に採甚できなくなるず、日本党䜓ずしお高付加䟡倀な補品・サヌビスを生み出すこずが難しくなり、産業や経枈の維持が危うくもなるでしょう。

今はただそれが明確に芋えおきおはいたせんが、今埌そうした䟛絊䞍足がより芋えおくるず、産業界から教育業界に察しお「高床人材の䟛絊量を䞊げる」ずいう芁請が高たっおくるのではないかず思いたす。

母数ずなる子どもが少ない状況を考えるず、それは぀たり「高床人材ぞの転換率を䞊げる」ずいう芁請ずなりたす。これはかなり難しいこずですが、これを本気で考えおいかなければならない状況は近づいおいるように思いたす。

もちろん教育は産業や劎働のためだけに存圚するものではありたせん。教逊や垂民性の涵逊、個人の自己実珟ずいった倚様な目的がありたす。本皿ではそれらを十分に認識した䞊で、議論を明確にするため、あえお「産業人材の育成」ずいう教育の䞀぀の重芁な偎面に焊点を絞っお考えたす。

簡易詊算「30䞇人の高床人材」が必芁だずしたら

日本の経枈氎準を維持するためには、高付加䟡倀産業に埓事できる人材を䞀定数、毎幎茩出し続ける必芁がありたす。

ここでいう「高床人材」ずは、特定の孊䜍を持぀人ずいう意味ではなく、耇雑な問題を蚭定し解決する力、新しい䟡倀を構想し実装する力、高床な専門知識を統合しお刀断する力――こうしたコンピテンシヌ胜力を備えた人材を指しおいたす。IT・゜フトりェア、先端補造、研究開発、金融、医療・バむオテクノロゞヌなどの領域で掻躍できる人材ず考えおください。

ここでは、その人数を幎間30䞇人皋床ず仮定したす。これは、珟圚の倧孊入孊者が幎間玄63䞇人、修士課皋進孊者が玄7䞇人ずいう構造の䞭で、高付加䟡倀領域に実質的に参入しおいる人数から掚定した抂数であり、仮の倀です。

※この詊算はあくたで「抂念モデル」です。 実際には、出生数だけでなく劎働参加率、移民・留孊生からの就劎、高霢者の就劎延長なども重芁な倉数であり、粟緻な分析にはコホヌト出生幎集団ごずのフロヌ・ストック分析が必芁です。たた、「高床人材」の定矩や必芁数は、産業構造の倉化やAIによる生産性向䞊によっお倉動しうる点にも留意が必芁です。

出生数を母数にした単玔化を行うず、次のような「転換率」が浮かび䞊がりたす。

  • 2005幎生たれ䞖代出生数玄106䞇人30䞇人 ÷ 106䞇人 ≒ 箄28%
  • 2025幎生たれ䞖代出生数玄70䞇人30䞇人 ÷ 70䞇人 ≒ 箄43%

぀たり、同じ「30䞇人」を確保し続けるには、20幎で転換率を28%から43%に匕き䞊げる必芁があるずいうこずになりたす。

この数字は粗い芋立おですが、「母数が枛る以䞊、同じ瀟䌚機胜を維持するには教育・育成の効率を䞊げざるを埗ない」ずいう構造的な圧力がかかりうるこずを瀺しおいたす。

もちろん、移民や倖囜人劎働者の受け入れ拡倧、䞀人あたりの劎働生産性向䞊AI・自動化による効率化を含む、産業構造そのものの転換など、「教育で人数を増やす」以倖のレバヌも圓然あり埗たす。しかし、それらの斜策を組み合わせたずしおも、教育の転換率向䞊が重芁な柱の䞀぀であるこずは倉わりたせん。

同時に進む瀟䌚倉化

少子化だけでも難題ですが、同時に以䞋の倉化が進行しおいたす。

代衚的な倉化は以䞋の3぀です。

  1. 産業高床化による教育期間の長期化
  2. AI を含む技術倉化による「高床職」化の圧力
  3. 教育長期化がもたらす少子化の悪埪環

a産業高床化による教育期間の長期化

技術が高床化するほど、専門知識を身に぀けるために必芁な教育期間は䌞びる傟向にありたす。

修士号がスタンダヌドずなり぀぀ある分野は増えおおり、もし将来、より倚くの人が博士課皋盞圓の蚓緎を必芁ずする状況になれば、劎働垂堎ぞの本栌的な参入は27歳前埌にたで遅れる可胜性がありたす。

bAIを含む技術倉化による「高床職」化の圧力

AIが䞭玚レベルの業務を代替するずいう議論がありたすこの圱響は産業・職皮により幅がありたす。仮にこの方向性が進めば、人間が就くべき仕事はより高床なものに集玄され、「より高い教育氎準」が良い職に就くための条件ずなりたす。

劎働者䞍足に䌎う産業甚ロボットや自動化の普及も、人が担う仕事をより䞊䜍の刀断・蚭蚈・統合ぞ抌し䞊げ、必芁な孊習氎準を匕き䞊げる圧力ずなるでしょう。

c教育長期化がもたらす少子化の悪埪環

教育期間の長期化は、少子化そのものをさらに深刻化させる恐れがありたす。劎働垂堎ぞの参入が遅れれば経枈的な安定を埗る時期が埌ろにずれ、結婚・出産の幎霢も䞊がりたす。その結果、出産可胜な期間が実質的に短くなり、出生数に䞋抌し圧力がかかるずいう悪埪環が生じたす。

もちろん、少子化の芁因は教育期間だけではありたせん。䜏宅費、育児支揎の䞍足、䟡倀芳の倚様化、雇甚の䞍安定さなど、耇合的な芁因が絡んでいたす。

「䞀郚の人だけで皌ぐ囜」は持続可胜か

既存の劎働者をリスキリング孊び盎しによっお高付加䟡倀産業ぞシフトさせるこずも重芁な手段です。しかし、劎働力が逌迫し賃金を埗る機䌚がある環境では、その機䌚費甚を手攟しお長期の孊び盎しに螏み切れる人は限られたす。北欧諞囜のように手厚い職業蚓緎ず所埗保障を組み合わせた制床蚭蚈も参考になりたすが、日本の珟行制床からの移行には盞圓の時間がかかるでしょう。

たた、転換率が今のたたでもなんずかなる産業䜜りは可胜かもしれたせん。たずえば、高床な職に就けた少数だけが高所埗を埗お、残りの倚くが䜎所埗になり぀぀も、うたく再分配をする――ずいった颚にです。しかしこうした極端に二分化された瀟䌚構造は、瀟䌚の䞍安定さを増しおいくこずになるのではないかずいう懞念がありたす。

瀟䌚党䜓の安定ず持続性を保぀ためには、少数の゚リヌトだけでなく、なるべく倚くの人が、なるべく倚くの「良い仕事」にアクセスできる状態が望たしいはずです。ここでいう「良い仕事」ずは、賃金だけでなく、安定性、成長機䌚、尊厳、瀟䌚参加を含む抂念です。

そう考えるず、問われおいるのはやはり教育党䜓の質の底䞊げなのではないかず思いたす。

教育に突き぀けられる2぀の課題

1教育の質の向䞊――転換率の匕き䞊げ

母数が瞮む以䞊、教育が生み出す成果をより倚くの人に届ける必芁がありたす。転換率を28%から43%ぞ匕き䞊げるずいうこずは、「少し良くする」皋床では間に合わない倉化です。しかもそれを20幎ずいうタむムスパンで実珟しなければなりたせん。

重芁なのは、前述したおずり、これが䞊䜍局のさらなる匕き䞊げではなく、底䞊げ――孊習機䌚の保障ず、より倚くの人が高い到達点に届く仕組みの構築――であるべきだずいうこずです。

2到達の早期化――理解を犠牲にしない孊びの高密床化

少子化の悪埪環を断ち、若い䞖代の人生蚭蚈の自由床を高めるためには、可胜であれば教育期間そのものも適正化できた方がよいず考えおいたす。たずえば、埓来27歳頃たでかかっおいた専門性の獲埗を、数幎単䜍で前倒しできないか、ずいうこずです。

「早期化」ずは、単に詰め蟌んで急がせるずいう意味ではありたせん。到達点を維持し぀぀、カリキュラムの抜本的な再蚭蚈、孊ぶべき内容の粟遞、技術を掻甚した孊習プロセスの革新によっお、理解を犠牲にしない圢で孊習の密床ず効率を高めるこずです。

もちろん、早期化が必ずしも可胜ずは限りたせんし、早期化すべきでない領域もあるでしょう。しかし、教育期間の長さを所䞎のものずせず、怜蚌の察象ずするこず自䜓には意味があるず考えたす。

2぀のアプロヌチ「孊習の加速」ず「到達点の再定矩」

限られた時間でより倚くの高床人材を育成するために、孊習プロセスそのものを倉えおいく必芁がありたす。そのアプロヌチは倧きく2぀に分けられたす。

1AIを掻甚した孊習プロセスの加速

AIは職を奪う偎面もありたすが、䜿い方次第で孊習を倧きく加速させる道具にもなり埗たす。特に効果が期埅できるのは以䞋の3぀の領域です。

  • 個別最適化孊習者ごずの匱点を蚺断し、最適な挔習を䞎えるこず
  • メタ認知支揎孊習蚈画の策定、振り返り、誀りの原因分析など、「孊び方を孊ぶ」プロセスを支揎するこず
  • リアルタむム孊習者のタむミングに合わせおフィヌドバックやヒントを䞎え、高速なる孊習ルヌプを回すこず
  • プロゞェクト䌎走芁件敎理、蚭蚈レビュヌ、リスク掗い出しなど、実践的な課題に取り組む際のコヌチ圹を担うこず

将棋゜フトの登堎が棋士の孊習を倉え、競技氎準を飛躍的に匕き䞊げたように、AI教育ツヌルによっお孊習経路そのものが倉わり、到達たでの時間が短瞮される可胜性がありたす。ここ1〜2幎でも、AIをうたく䜿いこなしおいる人のアりトプットの質は目に芋えお倉わっおきたした。文献や資料を軞に孊ぶ支揎ツヌルも実甚レベルに達し぀぀あり、教育分野ぞの本栌的な適甚に手觊りが出おきおいたす。

ただし、将棋AIのようにルヌルが明確で閉じた䞖界での成果が、教育党般にそのたた適甚できるかは慎重に怜蚎する必芁がありたす。

2AI前提での「到達点」の再定矩

さらに重芁なのは、AIが普及した瀟䌚では、人間がれロから暗蚘・習埗すべき知識の範囲が倉わるずいう点です。埓来型の教育目暙ず、AIを䜿いこなすこずを前提ずした教育目暙は、倚少異なるものになるはずです。

か぀お電卓の普及が数孊教育のあり方を倉えたように、AIの存圚を前提にしお「人間が到達すべき孊習の最終地点」を再定矩するこず。それが教育期間の適正化ず人材茩出の加速に぀ながるず考えおいたす。

たずえば、埓来の「博士課皋修了レベル」が到達点だったずすれば、AIを前提ずした新たな到達点は、仮説怜蚌胜力、文献統合力、実隓・実装の遂行力、研究倫理の刀断力――぀たり研究レベルの高床な認知的䜜業の遂行胜力を支える䞭栞的なコンピテンシヌを20代前半で身に぀けるこずかもしれたせん。孊䜍そのものが目暙なのではなく、それに盞圓するアりトカム成果物や実践力を達成できる教育蚭蚈を目指すずいうこずです。

この2぀の「孊習プロセスの加速」ず「到達点の再定矩」は車の䞡茪です。 どちらか片方だけでは、20幎埌に求められる転換率には到達できないでしょう。

だからこそ、今から探玢を始める

AIを䜿った孊習効率の改善には、最初から正解があるわけではありたせん。詊行錯誀が䞍可欠です。

しかし、仮に「2045幎には、20代前半で埓来の博士課皋修了者に近い氎準の研究遂行胜力を持぀人材を安定的に茩出できる教育システム」を目暙に掲げたずしたら、残された時間はたった20幎です。逆算すれば、この5幎で方策の倧枠を仮説化し、残りの15幎で怜蚌・実装を重ねるずいうスピヌド感になるかもしれたせん。

たた教育にAIを本栌導入するにあたっおは、個人デヌタの扱いや評䟡等、いく぀かの重芁な論点を芋萜ずさないようにしなくおはならないので、そのあたりの議論の深化も必芁でしょう。

教育の加速に぀いおは、教育孊の知芋、認知科孊の成果、そしお最先端のAI技術を総動員しおも、目指す目暙にたどり着けるかどうかはわかりたせん。しかし、取り組たなければ答えは決しお芋えおこず、もしたどり着けなければ、20〜30幎埌の日本瀟䌚はかなり厳しい状況に盎面するこずになりかねないのであれば、今から

 

特に私が担圓するアントレプレナヌシップ教育は、瀟䌚ず近いため、この課題がかなり早期に出おくる領域だず思っおいたす。ビゞネス起業の珟堎ではすでにAIを䜿うこずが前提ずなっおいお、それに远随する圢で授業の内容も倉えおいかなければ、「珟堎で䜿えない知識やスキル」を教えおしたうこずにもなりかねたせんビゞネス起業の知識䌝授がアントレプレナヌシップ教育ではないにせよ、です。

なので、4月から始たる授業では、こうしたAIを掻甚した教育の倉革――孊習の加速ず到達点の再定矩――に぀いお、自分なりに実践しながら答えを探っおいきたいず考えおいたす。到達床胜力ベヌスの評䟡、到達たでの時間、そしお家庭背景による成果の偏りが生じおいないかずいう公平性、ずいった芳点も抌さえながら、この20幎で実珟すべき教育倉革の端緒を、たずは自分の取り組みの䞭から芋぀けられないか、ずいうのが最近の問題意識です。