🐴 (馬)

Takaaki Umada / 馬田隆明

スタートアップはアドバイザーに株を簡単に渡さないほうが良い(渡すとしたら 0.1% ぐらいから)

最近スタートアップのアドバイザーになる人が増えてきているようで、それ自体は良いことだと思うのですが、アドバイザーに多くの株やストックオプションを渡してしまう起業家(特に初回の起業家)が中にはいるようです。

配分を考える前に:出資してもらえないかを考える

ただ個人的には、アドバイザーには基本的に株を渡さない、という姿勢を基本的にはお勧めしています。そもそも善意の人なら無償である程度は応援してくれるはずですし、本当に事業に可能性を見出してくれているならフルタイムで参加してくれるはずです。可能性を感じてくれているものの関わることが時間的に難しい人であれば、エンジェル投資をお願いをしてみてください(Venture Hacks でもまずはそうお勧めされています)。

またアドバイザーの評価は、相談時間を確保してくれるとか、インプットをしてくれるとか、あるいは箔がつくとか、そういう評価基準ではなく、結果や成果(採用や商談、紹介など)をきちんと持ってきてくれるか、という評価基準を持って、アドバイザーとして適切かどうかを判断することをお勧めします。おおよそ私の知る範囲では、箔をつける目的で株を偉い人に渡してもほとんど何の効果もありません(動いてくれません)。

配分の基準

そのうえでスタートアップに継続的に価値を提供してくれる人だと判断したなら、現在の会社のステージとアドバイザーのコミットメントレベルに応じて株の配分をすることをお勧めします。

たとえば Founders Institute では FAST (Founder / Advisor Standard Template) というアドバイザー契約のテンプレートを提供しています。FAST では以下のような配分が提案されています。

FAST v2 の表を翻訳

それぞれのステージについてはアイデアステージが「全員がパートタイム」、スタートアップステージが「最初の従業員を見つけるところ」、グロースステージが「ある程度トラクションが出てきたところ」と、契約書テンプレート中にガイドラインが書かれています。

また FAST では 3 か月のクリフと 2 年間の毎月のべスティングも設定されていて、アドバイザーの存在が有効でないと初期に分かった場合のダメージも少ないようになっており、個人的にもこれぐらいのクリフとべスティングの条件があってもよいと感じています。

別のソースですと、Venture Hacks の 2008 年の記事では、ポスト Series A で標準的なアドバイザーは普通株で 0.1–0.25%、会社の進捗をかなり手伝ってくれるスーパーアドバイザーなら 1 - 2% という基準が提案されており、また Series A 前ならそれらに対して 30–50% ぐらいアップさせる、という基準が提示されています。

また別の Silicon Hills Lawyer は、Pre-equity ラウンドで 0.25–0.50% が通常で、1% はとても戦略的に獲得するアドバイザーだとしています。

いずれにせよ、従業員がわずかしかストックオプションを持っていないのに、週に一度も顔を見せないアドバイザーなる人が多くの株を持っている状況では、日々価値を生み出している従業員のモチベーションが上がりづらくなってしまいます。そうしたことを考えながらアドバイザーへの株の配分を考えてみることをお勧めします。

(追記) あくまで US や英語圏で、 シリアルアントレプレナーや業界のレジェンドがアドバイザーとして入る際のガイドラインであり、日本だとここまで貢献できるレベルのアドバイザーを探すのが難しいため、日本でのガイドラインとしては正しくないのでは、という指摘を受けました。私も基本はアドバイザーに株を渡さないことをお勧めしています。上述の通り、あくまで渡すに値する人がいた場合の参考ケースだとご承知おきください。たとえば日本だと、関連する技術を長年かけて開発してきた教授レベルの人がアドバイザーに入るケースなどは一つの参考になると思います。また計算の時には、Paul Graham の Equity Equation の考え方を参考にしてください。

アドバイザーの効用

なお、アドバイザーやメンターが不要かというとそんなことはなく、Stanford 大学の Startup Genome Report によれば、良いメンターを持っているスタートアップは資金調達額が多いそうです。また Spotify の初期のグロースは Facebook の Open Graph をうまく使ったからであり、それはFacebook の Sean Parker が Spotify のアドバイザーに入っていたことが影響したのでは、という話もあります。このように成長に寄与してくれる人にはきちんと対価を支払うつもりでいたほうが良いかと思います。

技術顧問的なアドバイザーボードについては以下のポッドキャストなどがお勧めです。

https://a16z.com/2015/09/21/building-the-right-technical-advisory-board/

※この記事は2018 年に投稿した記事の改稿版です。日本でも相場観を醸成していくのが大事なのはないかなと思います。