
世界の課題を解かなければ、世界的なスタートアップは作れません。
そうした大きな課題の例はこれまで気候変動やヘルスケアでした。そして昨今は、それらの世界課題に加えて、どのように世界の調和を図るか、という課題も出てきているように思います。
であれば、世界の課題に立ち向かうスタートアップとして、どのようにそうした課題に貢献していくかを改めて考えていく必要があるのでは、と思っています。
歴史と現在の位置づけ
1914年に終わった『イギリスによる平和』(パクス・ブリタニカ)のあと、世界恐慌を経て1930年代には保護主義や関税が蔓延し、それが第二次世界大戦の引き金になったとも言われています。
その後、『アメリカによる平和』(パクス・アメリカーナ)が訪れましたが、2010年代前半にはその座を降りるような動きがあり、その10年後の昨今、100年前と同様に関税の議論が始まっています。
特定の覇権国家がなき今、不安定になっていく世界情勢の中、ビジネスを行うのは従来よりも難しくなってきています。加えて、今後秩序を引き受けるとしたら、日本による平和(パクス・ジャポニカ)は難しく、次はおそらく『中国による平和』(パクス・シニカやパクス・チャイナ)になるため、そうした動きには対抗しようという動きが自由民主主義国の間で高まり、それがまた大きな波乱を呼ぶことになるでしょう。
おそらくはどこかが覇権を取ることはなく、このまま多極化が進むのではないかと思いますが、アメリカにべったりで良かった1990年から2020年の30年間に比べれば、常に不安定さを抱えることにもなります。そうした不確実性を嫌う日本人の多くは、多極化を好ましく思ってはいないようです。
しかし、多極化する世界の中において、日本は相対的に良い立ち位置にいるという指摘もあります。実際、まだまだ経済大国であり、市場規模も大きく、さらに地理的・地政学的に難しいけれども、世界各国のバランスを取る役目を担いつつ、利を得られる位置にいるように思います。
そうしてうまく立ち回れば、国同士の仲を取り持ちながら平和への貢献を行う『ハルモニア・ジャポニカ(日本による調和)』を、ある程度の影響度を持って実現できるのでは、と思っています。
スタートアップが世界平和に対してできること
ただ、それは国の努力によってなされるものだけではありません。むしろ、民間企業の実質的な活動が必要です。民間企業の強みや活動がなければ、国同士が手を結んだり、強調するメリットはないからです。
各国の社会を維持するためにクリティカルな技術を供与することなのかもしれません。エネルギーや交通などの社会課題を解決するソリューションを提供することかもしれません。エンターテインメントによるソフトパワーなのかもしれません。
政策を動かすにはそうした実弾が必要であり、実弾としての民間企業の活動が必要です。それがある国は強く、ない国は弱い立場に置かれます。
そうした環境に目を向けてみると、スタートアップ側が「日本による調和を作るために何の事業が必要か」という視点を持つことで、自社の事業を新しい意味づけをする一つの方法になるのではないかと思います。その上で、自社の戦略やメッセージの方向性を再定義もしやすくなります。
これは日本のスタートアップがアメリカのスタートアップの真似をしていれば良かった時代との違いにもなってきます。
旺盛な需要が国内にあり、いまだ人口を維持し続けるアメリカとは違い、日本は今よりも小さく、高齢化していきます。その結果、国として独自の戦略が必要であるように、日本のスタートアップはアメリカのスタートアップとは違う戦略を考える必要が増してきているように思います。
スタートアップは、足下の機会を見つけながら、10年から15年後の未来を見据えて事業を作ります。その中で、高邁な理想を掲げることもできます。
そうした意味で、「2040年に世界の調和を生み出すとしたら、どういう事業が必要か」ということについて考えてみるのは意味のあることではないかと思っていますし、自社の意義や価値を再定義することにもつながるのではないかと思っています。
まとめ
こう書くと壮大なように見えますが、私たちの活動一つ一つは世界とつながっており、世界に影響を与えることはすく中ならずできます。
そして、そうした大きなビューで世界情勢を見ることで、スタートアップの皆さんに新しい視点や戦略を促せるのではないかと考え、思考の断片として記事にしておきます。こうした話に興味がある人がいれば、イベント等で議論できればと思います。
(なお、世界平和や海外に目を向けるためには、基盤となる国内社会の安定を様々な手段で図らなければなりません。国内の経済活動も大事ですし、非営利の活動はもっと重要になっていくでしょう。2040年の日本の調和を生み出すための事業を考える活動ももっと必要だと思っています。)