
これまで営利型のスタートアップにおけるカンパニークリエーションの記事とNon-Profit スタートアップの記事を何度か書いてきました。
これらを掛け合わせた『Non-Profit カンパニークリエーション』や『ソーシャルカンパニークリエーション』とも呼べる取り組みも、世界では始まっています。
世界での事例
1つの例は Charity Entrepreneurship という2018年設立のイギリスの団体です。『隷属なき道』や『Humankind』で有名なルトガー・ブレグマンの新著『Moral Ambition』という本でも紹介されているCharity Entrepreneurship (CE) は、CE 側で内部リサーチを行って大きなインパクトをもたらすアイデアを特定し、それを解く社会起業家を募集、一定のトレーニングを行った後、資金調達支援まで行います。これまで50団体以上を輩出しているそうです。
少し違うアプローチだと、Global Development Incubator (GDI) があります。アメリカのワシントン D.C. に拠点を置く GDI は、資金提供財団や現地のパートナーと共同で、解くべき社会課題を特定し、新しいプログラムを設計しています。その後、12 - 36 ヶ月間のインキュベーションプロセスを通して、主に非営利型の事業を作っていく、というものです。
上記の海外の団体は主に非営利の組織を次々に生み出しています。
『ソーシャルカンパニークリエーション』と言うと、社会貢献活動を実施する営利型の企業までも含まれる可能性があるので、どちらかというと『Non-Profit カンパニークリエーション』と言うほうが適しているかもしれません。
(※営利と非営利のどちらが良いという話ではありません。事業領域や課題によって、営利・非営利のグラデーションのどこがベストかは異なると思います。)

なぜ必要か - インパクトの最大化
非営利の領域で社会課題を解決し、大きなインパクトを生み出そうとしたときには、「解決できれば大きなインパクトをもたらす課題」や「その中で解決しうる課題」の特定がかなり重要です。
しかし、それらはかなり難しいことだと強く感じています。特に非市場領域における社会課題の原因は、表面的に見えている課題を深く掘った先にあり、さらに構造的で複雑な問題であることが多いため、解くべき課題を見つけるところに相当の労力がかかるからです。
しかし一度課題を定めて事業を始めてしまうと、取り組む課題から距離を置くことは難しくなってしまいます。特に社会的な事業はその傾向が強い印象があります。しかしそうして貴重な社会起業家の時間という資源が、あまり大きなインパクトにつながらない活動に使われてしまうのは、とてももったいないことです。
もちろん、小さな社会課題解決も大事であり、それには価値があります。ただ人の少なくなっていく現在の日本において、もう少し目を向けた方が良いのは、どれだけの成果や社会的インパクトが生まれる活動なのか、といったインパクトへの志向性のように思います。
Non-Profit カンパニークリエーションの可能性
そう考えると、Non-Profit カンパニークリエーションのように、誰かから提示される社会課題に取り組み、 大きなインパクトを短期間に最大化することは、1つの有効な手法であるように思います。
もちろんそのためには、オーガナイズをする人たちが大きなインパクトをもたらす社会課題を特定しなければならず、そのためにはリサーチ等も必要でしょうが、そうした取り組みが何かしらあり、それを解決する仕組みができると良いのだろうなと思っています。
あるいは大学や研究機関でも、社会現象の分析だけではなく、大きなインパクトを出すことを前提とした課題の分析や解決の取り組みなどがもっと行われると、教育的にも良いのかなと思います。
それをさらに発展させると、研究として高リスク高リターンな、人文社会版 DARPA とも呼べるような取り組みをすることにもつながりうると思います。
Will からインパクトへ
ただこうした話をすると、「そこに意思や情熱があるのか」と問われることはあるでしょう。非営利の領域だとその傾向が営利型よりも強くなるように思います。
もちろん、意思や情熱といったWillがないよりはあるほうが良いことは比較的多いとは思いますが、Willが薄いからといって、誰かが何かを始めることを止めていては誰も何も始められなくなります。
それに人の意思や情熱は、次第に育っていくものでもあり、最初から「何をしたいか」が決まっている人はわずかです。むしろほとんどの人はちょっとした興味関心から物事に関わり始め、そこから次第に芽吹いていくものが多いのでは、と思います。
また、私たちが人を助けるのに理由が必要かというと、決してそんなことはありません。
困っていた人がいたら、特段の Will や理由がなかったとしても、手を差し伸べれば良いはずです。そうした支援の結果、より多くの人が助かるという成果があれば、それは素晴らしいことのはずです。
「せっかくであれば、社会に良いことをしたくて、大きな社会的インパクトを生み出したい」というのも立派な意思です。
もちろん、当事者でない分、その手の差し伸べ方には配慮や謙虚さ、公正性やNothing about us without us の考えなどが必要ですが、Willと同じぐらい、どれぐらい成果やインパクトがある活動なのかを、改めて考えたとき、改めて非営利領域でのこうしたカンパニークリエーション的な活動には、大きな価値があるのでは、と考えています。
参考