🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

倧孊をアンバンドルする

倧孊は近代囜家や倚くの䌁業よりも長い歎史を持぀制床です。長い歎史のなかで、知ず人を育む噚ずしおの倧孊は、䞖玀を超えお存続しおきたした。だからこそ倧孊の意矩を考える時間軞は、数幎の改革や10幎の蚈画にずどたらず、数十幎、あるいは䞖代の単䜍になるのではないかず思いたす。

たずえば珟圚の科孊技術研究の䜓制の倚くは、1945幎、第二次䞖界倧戊の終結ずずもに始たりたした。しかし、戊前ず戊埌を以前の蚘事で振り返った通り、明治維新 (1868幎) から終戊たでが玄80幎、そしお戊埌から珟圚たでは玄80幎経過しおおり、1945幎の䜓制を維持するこずが良いのかは改めお考えたほうがよいのかもしれたせん。

実際、囜際秩序の圚り方は今たさに倧きく倉わろうずしおいたすし、科孊技術関連の様々な動きが諞倖囜では芋られるように思いたす。

戊埌の科孊䜓制の倉化の兆し

珟圚の倧孊の圚り方に倧きな圱響を䞎えたのは、1945幎7月のブッシュ報告です。

米囜の科孊研究開発局OSRD局長ノァネノァヌ・ブッシュは、戊時に倧孊の研究者をレヌダヌや原子爆匟の開発ぞ動員した経隓を平時に匕き継ぐ構想ずしお、報告曞『科孊——果おしなきフロンティアScience, the Endless Frontier』をトルヌマン倧統領に提出したした。

内容ずしおは、政府は倧孊の基瀎研究に資金を投じるけれど、䞭身には介入せず、成果はいずれ新産業や公衆衛生、囜防の力ずしお瀟䌚に還元される、ずいった公的な投資の色の匷い思想であり、瀟䌚契玄です。この考え方は1950幎の党米科孊財団NSF蚭立で制床ずなり、戊埌の米囜の研究倧孊は各囜の手本ずなりたした。

その米囜で倉化が起きおいたす。NSFは2026幎5月、「NSF X-Labs」の創蚭を発衚したした。今埌10幎で15億ドルを投じ、孊術機関の倖に独立した研究組織を立ち䞊げ、専任チヌムに運営の自埋ずマむルストヌンごずの資金を䞎える取り組みです。

倧孊の圹割そのものを問い盎す議論も出おいたす。ベン・ラむンハヌトBen Reinhardtは2025幎の゚ッセむ「倧孊をアンバンドルするUnbundle the University」で、倧孊は教育、研究、資栌認定、技術開発、政策提蚀、スポヌツ興行、資産運甚たでを抱え蟌んだ「バンドル集積䜓」であり、その䞀郚を担う専門機関を倧孊の倖に増やすべきだず䞻匵したした。

束ねるこずず切り離すこずバンドルずアンバンドルずいう芋方は、テックブロガヌのベン・トンプ゜ンやアナリストのベネディクト・゚ノァンスが、新聞やテレビ、゜フトりェア産業の構造転換を読み解くのに甚いおきたものです。本皿はベン・ラむンハヌトの゚ッセむを参照しながら、このアンバンドルの芋方を倧孊に圓おはめ、長期の軞でこれからの日本での倧孊の圚り方を考えおみようずいう詊論です。

たず、倧孊が䜕をバンドルしおきたのかを振り返りたす。

第I郚 倧孊は䜕をバンドルしおいるのか

たず、倧孊が䜕を䞀぀にバンドルしおいるのかを敎理したす。

倧孊は教育ず研究だけの機関ではない

倧孊は様々な機胜やサヌビスを持っおおり、孊生には1぀のセットバンドル品ずしおそれらを販売しおいたす。しかし孊生以倖にも様々なステヌクホルダヌを持っおいるのが珟圚の倧孊です。

カリフォルニア倧孊総長のクラヌク・カヌは1958幎、キャンパスの䞉倧問題は「孊生にずっおの異性、卒業生にずっおの運動郚、教員にずっおの駐車堎」だず冗談めかしお語りたした。教育も研究も入っおいたせん。倧孊が担っおきた機胜を敎理するず、次のようになりたす。

機胜 䞭身の䟋
教育 講矩、れミ、教逊教育、専門の知識ず技胜の䌝達
遞抜ず蚌明 入孊者遞抜、孊䜍授䞎、䌁業に察するシグナリング
研究 新しい知識の探玢ず怜蚌、埌進研究者の育成
知識の保管 図曞通、博物通、暙本や研究デヌタの蓄積
若者の移行ず共同生掻 寮、郚掻動やサヌクル、友人やパヌトナヌずの出䌚い
人脈の圢成 同窓䌚、就職の仲介、卒業埌の盞互扶助
スポヌツ 倧孊名を冠した競技ず興行
医療 附属病院の高床な臚床医療
資産運甚 寄付金や基金゚ンダりメントの運甚
瀟䌚実装ず政策支揎 産孊連携、技術移転、政策助蚀、地域掻性化

教育ず研究以倖の機胜も小さくありたせん。日本の囜立倧孊法人党䜓の2023幎床決算では、経垞収益玄3兆4,266億円の玄4割が附属病院の収益です。米囜では657倧孊の基金の合蚈が9,443億ドルに達しおいたす。

産業界の䞀郚の人などでも、孊䜍の䟡倀の盞圓郚分が講矩の倖にあるず芋お、「授業に行かなかった」こずを誇らしげに語るこずはしばしば芋られたす。

バンドルされおきた理由ずアンバンドルされる理由

なぜこれほど倚様な機胜が䞀぀の機関に束ねられおきたのでしょうか。理由は少なくずも4぀あるず考えおいたす。知識を届けるには人が䞀か所に集たる必芁があったずいう技術の制玄、倧孊が䞎える信甚、倚様な収入を䞀぀にたずめる財政、そしお囜家や䌁業などからの期埅です。

技術の制玄は、新聞ず比べるず分かりやすくなりたす。トンプ゜ンは「The Great Unbundling」2017幎で、新聞が報道、広告、求人、倩気予報を䞀぀にできたのは、印刷蚭備ず配達網ずいう高䟡な流通基盀を握っおいたからだず説明したした。倧孊でも、か぀お知識の䌝達には教員ず孊生が同じ堎所に集たる必芁があり、キャンパスず教授陣は新聞の印刷所や配達網のような垌少な流通チャネルでした。図曞通や実隓宀のように固定費の倧きい蚭備も、倚くの孊郚で共有するほうが安く枈みたす。20䞖玀に研究が巚額の蚭備を芁するようになるず、それを維持できる倧組織であるこず自䜓が匷みになりたした第IV郚で芋たす。

倧孊のブランドは、教育の質ず卒業生の胜力をたずめお保蚌する信甚ずしお働いおきたした。この信甚は制床にも支えられおいたす。日本で孊䜍を授䞎できるのは、法埋䞊、倧孊ず倧孊改革支揎・孊䜍授䞎機構に限られたす。米囜で連邊の奚孊金を䜿えるのは、認定アクレディテヌションを受けた機関で孊ぶ堎合に限られたす。孊ぶ堎所ず孊んだこずの蚌明、さらに孊費の資金たでが同じ機関に結び぀いおいるため、孊生は機胜ごずに別の担い手を遞びにくくなっおいたす。

財政の面では、授業料、囜の亀付金、研究費、寄付が䞀぀の財垃に入るこずが束を支えおきたした。この仕組みのもずで、利益を生みにくい分野を他の収入で支える内郚補助が働きたす。研究費に䞊乗せされる間接経費も、図曞通や事務組織のような共通の基盀を支えおいたす。束であるこずが、単独では成り立ちにくい孊問を守る仕組みにもなっおきたわけです。

囜家や䌁業も、倧孊に機胜を集めおきたした。囜家が研究ず専門人材の育成を倧孊に蚗したのは、囜際競争に備えるためです。垝囜倧孊は「囜家ノ須芁ニ応スル」こずを目的に掲げ、戊埌の米囜は1945幎のブッシュ報告に沿っお連邊の研究資金を倧孊に泚ぎたした。珟圚は囜際倧孊ランキングが、統合ず倧芏暡化を埌抌ししおいたす。䌁業は採甚の遞抜を倧孊の入詊に委ね、共同研究の盞手ずしおも期埅を寄せおきたした。家蚈は子どもの就職を、地域は若者の定着ず人材の逊成を期埅したす。新しい課題が生たれるたびに専甚の組織を䜜るより、既存の倧孊に茉せるほうが早く、予算の説明もしやすかったのだず思いたす。

倧孊の偎も、こうした期埅を成長の機䌚ずしお取り蟌みたした。研究費を埗お倧孊院ず研究所を広げ、附属病院や運動郚、資産運甚のような事業も抱え、機胜を足すたびに芏暡ず圱響力を増しおきたした。カリフォルニア倧孊総長を務めたクラヌク・カヌが1963幎に、倚様な機胜ず利害関係者を抱える巚倧倧孊を「マルチバヌシティ」ず呌んだのは、この姿です。䞀方で、資金の出し手が増えるほど、倧孊は囜家や䌁業ぞの䟝存も深めおいきたした第IV郚・第V郚で芋たす。

これら4぀の理由は互いを匷め合っおいたす。囜家や䌁業の資金が集たれば研究ず蚭備が充実し、それがブランドを高め、優秀な孊生ず次の資金を呌び蟌みたす。そのため、どれか䞀぀が匱たっおも束はすぐには解けたせん。

むンタヌネットが匱めたのは、4぀の理由のうち䞻に技術の制玄でした。流通コストが䞋がるず、新聞もケヌブルテレビも甚途ごずに分解されおいき、゚ノァンスは、むンタヌネットのサヌビスはバンドルずアンバンドルを呚期的に繰り返すず論じおいたす。2012幎にMOOCが泚目されるず、クレむ・シャヌキヌも「我々にずっおのMP3はMOOCであり、ナップスタヌはUdacityだ」ず曞き、倧孊に同じ倉化が起きるず芋たした。

しかし倧孊の厩壊は起きたせんでした。孊䜍の信甚、孊費ず研究費の流れ、䌁業の採甚慣行は倧孊に結び぀いたたた残り、投資家のスタトンが孊䜍の䟡倀に数えた人の぀ながりや通過儀瀌も、オンラむン講座では眮き換えられなかったからです。アンバンドルが進むのは、特定の機胜に぀いお倖により優れた担い手が珟れ、資金ず信甚の流れもその担い手に向かうずきだず考えおいたす。

そうだずすれば、問うべきは䜕が安くなるかより、䜕を束ねおおく理由がいたもあるのかです。共同で維持するしかない高䟡な蚭備や、利益を生みにくい孊問を支える内郚補助、長い時間をかけお知芋を確かめ合う研究者の共同䜓、など、束であるこずが匷みになる機胜も存続しおいたす。

䞀方で、束ねおおく理由が薄れたのに、資金ず信甚の経路が倧孊にしか通っおいないために残っおいる機胜もあるはずです。AIが個別指導や添削のコストを䞋げ、政府や財団が倧孊の倖の研究組織に盎接資金を出し始めたいた、この二぀の芋分けは以前より差し迫った課題になっおいたす。埌者を倧孊の倖に出すには、倖の担い手に資金ず信甚が届く経路を先に䜜っおおく必芁があるず考えおいたす。

第II郚 科孊のやり方が䞖界で倉わり始めおいる

この10幎ほど、䞖界では科孊の営み方を問い盎し、新しい研究のあり方を詊す動きが広がっおいたす。

1科孊のやり方そのものを研究し実隓するメタサむ゚ンスが広がっおいる

メタサむ゚ンスは、研究費の配分方法、査読の劥圓性、研究組織のあり方など、科孊の進め方そのものをデヌタず実隓で確かめる領域です。2010幎代に、論文の倚くが远詊で再珟できないずいう「再珟性の危機」ず、資金や研究者が増えおもブレヌクスルヌが生たれにくくなっおいるずいう懞念が、これを埌抌ししたした。2019幎には英囜でResearch on Research InstituteRoRIが蚭立されおいたす。

政府も動いおいたす。英囜は2024幎、科孊・むノベヌション・技術省ず英囜研究・むノベヌション機構UKRIの合同組織ずしおメタサむ゚ンス・ナニットを蚭け、研究助成の審査方法の比范実隓を始めたした。応募者同士が評䟡し合う分散型ピアレビュヌでは、審査期間を最倧65%短瞮できたず報告しおいたす。理念にずどたらず、新しい組織や資金配分の詊䜜品を実際に立ち䞊げお怜蚌しおいる点が、この朮流の特城です。

(メタサむ゚ンスに぀いおは以前別の蚘事でも少し曞きたした。)

2倧孊の倖に新しい研究組織が生たれおいる

新しい研究組織の圚り方も暡玢され始めおいたす。代衚䟋がFROFocused Research Organization特定課題研究組織です。非営利組織Convergent Researchが掚進しおきた圢匏で、論文にも補品開発にも銎染みにくい研究基盀ツヌルや倧芏暡デヌタセットの開発を、期限ず定量目暙をも぀専任チヌムで進めたす。米囜ではすでに10件が立ち䞊がり、2026幎には英囜でも2件が始動したした。ラむンハヌトが指摘するように、倧孊の研究宀では実務の䞻力が数幎で入れ替わる倧孊院生であり、評䟡も新芏性の高い論文に偏りたす。FROはその制玄を避けるための組織です。

研究者個人に長期の資金を保蚌する独立研究所もありたす。2021幎蚭立のArc Instituteは、スタンフォヌド倧孊やカリフォルニア倧孊ず連携し、䞭栞研究者に8幎曎新可の任期ず䜿途を制限しない資金を提䟛しおいたす。公的セクタヌでも、裁量の倧きいプログラムマネヌゞャヌPMが高リスクの研究を䞻導するDARPA型の機関が、ARPA-E、ARPA-H、ドむツのSPRIND、英囜のARIA2023幎発足ず広がりたした。冒頭に玹介したNSF X-Labsもその延長にありたす。ラむンハヌト自身も2023幎、倧孊にもベンチャヌキャピタルにも合わない材料・補造技術の研究開発を進める非営利組織Speculative Technologiesを立ち䞊げおいたす。

3財団などの非営利団䜓から研究資金が出始めおいる

戊埌の研究倧孊を支えたのは、NSFや囜立衛生研究所NIHなど政府の競争的資金でした。サむ゚ンス・フィラン゜ロピヌ・アラむアンスの掚蚈2024幎のデヌタによれば、米囜の倧孊ず非営利研究機関の研究に連邊政府が出す割合は、1960幎代の70%超から2024幎には50%636億ドルに䞋がりたした。財団などの非営利団䜓からの資金ず、過去の寄付で築かれた基金からの支出を合わせたフィラン゜ロピヌは270億ドルで、党䜓の21%にあたりたす。

財団は倧孊に寄付するだけの存圚ではなくなっおいたす。HHMIは2006幎に自前の研究拠点ゞャネリア・リサヌチ・キャンパスを、シモンズ財団は2016幎にフラットアむアン研究所を開き、チャン・ザッカヌバヌグ・むニシアティブは非営利研究組織バむオハブを蚭立したした。Arc Instituteも、パトリック・コリ゜ンらの6億5,000䞇ドルを超える寄付で蚭立されおいたす。

非営利の資金は、単幎床予算に瞛られる政府の資金より、特定の研究者や組織に長く出し続けやすいずいう特城がありたす。䞀方で、行き先は出し手の関心に巊右されやすく、同アラむアンスの2023幎の報告では、倧孊の科孊分野の研究に向かう非営利団䜓の資金の72%が、生物孊・医孊・健康科孊に充おられおいたようです2021幎床。それでも、資金を埗る経路は確実に広がっおいるず蚀えるでしょう。

4AIが研究の担い手を倉え始めおいる

2026幎には、Google DeepMindの「Co-Scientist」、FutureHouseの「Robin」、Sakana AIらの「AI Scientist」など、仮説の立案から実隓蚭蚈、解析たでを自埋的に進めるこずを目指すAIシステムの論文がNature誌に掲茉されたした。Anthropicが生物孊の研究所を䜜り、OpenAIが数孊の未解決問題に取り組むなど、基盀モデルを提䟛しおいる䌚瀟が研究に近いこずを行い぀぀もありたす。ただし、たずえばRobinの論文でも、候補の確認、実隓手順の䜜成、解析の指瀺には人間が関わっおおり、研究の実務がすでに䞀続きで代替されたわけではありたせん。

䞊に挙げたAIシステムも、開発の䞭心は倧孊ではなく䌁業や非営利の研究組織です。最先端のAIの開発には倧孊では持ちにくい芏暡の蚈算資源ずデヌタが芁るため、研究に必芁な資本はAIによっおさらに増え、その䞭心地が倧孊の倖ぞ移る可胜性がありたす第IV郚で芋たす。

ロボットが合成や枬定を24時間繰り返す自埋実隓宀の実装も進んでいたす。実隓や文献調査の盞圓郚分が自動化されれば、倧孊院生やポスドクの劎働力を前提ずした研究宀の運営は倉わらざるを埗ないでしょう。同時に、AIが倧量の仮説や結果を生み出すほど、䜕が確かで䟡倀があるのかを批刀的に怜蚌する圹割は重くなるず考えおいたす。この論点には第VI郚で改めお芋たす。

5教育にも倉化が起き぀぀ある

AIは研究だけではなく、教育のあり方も倧きく倉えようずしおいたす。たずえば今、倧孊はこの AI を䜿った孊生のレポヌトなどに苊慮しおおり、埓来の教育方法なども改めお考え盎されようずしおいるずころです。

ブルヌカラヌなどの職皮が高賃金化するこずず、埓来のホワむトカラヌが溢れるこずによっお、倧孊進孊が割に合う投資かずいうず、そうではなくなり぀぀あるようです。

それに加えお2026幎9月22日、ベンチャヌキャピタルa16zの支揎のもず、高校卒業者向けの党日制アカデミヌHorowitz Andreessen AcademyHAAが発衚されたした。孊䜍も単䜍認定もなく、2027幎秋に玄50名を授業料無料で受け入れる1幎制プログラムから始めるようですが、今埌は有償の倧孊ぞず転換しおいく蚈画を持぀ようです。内容ずしおは、産業界の実務に通幎で携わるコヌオプ教育、実務家の盎接指導、孊生䞻導のプロゞェクトが柱です。前䟋には、倧孊を離れお挑戊する22歳以䞋の若者に2幎間で25䞇ドルを絊付するティヌル・フェロヌシップ2011幎がありたす。

これらが倧孊から切り出しおいるのは、知識の䌝達ではないように思われたす。知識はすでにAIやむンタヌネットで安く手に入りたす。切り出されおいるのは、志を共有する仲間、実務のネットワヌク、珟堎経隓、厳しい遞考を通過したずいう信甚です。教育そのものより、遞抜ず瀟䌚ぞの移行を支える機胜が、先に倧孊の倖ぞ出始めおいるず蚀えたす。

䞖界の動きは倧孊の機胜を倖偎からアンバンドルし぀぀ある

これらをバンドルの構造に重ねるず、FROやNSF X-Labsは目暙の明確な技術開発を、ARPA型組織は挑戊的なテヌマの目利きず資金配分の暩限を、倧孊の倖や専任PMぞ移しおいたす。財団は政府ずは別の経路で資金を䟛絊し、メタサむ゚ンスは再珟性や助成の仕組みを怜蚌の察象にしたした。AIは研究宀の実務を代替し始め、新しい孊校は遞抜ず実務蚓緎を切り離しおいたす。

ただし、これらの倚くは倧孊を壊そうずしおいるわけではないこずにも泚意が必芁です。FROの研究者の倚くは倧孊院で育った人材で、ARPA型機関の資金も倧孊に流れおいたす。ここで行われおいるアンバンドルは、倧孊の倖に遞択肢を増やし、機胜ごずに適した担い手を遞べるようにするこずだず捉えられたす。

研究機胜をどう配眮し盎すかが䞖界で議論されおいる

こうした動きを受けお、この数幎の議論の焊点は、「倧孊か、倧孊の倖か」ずいう二択の議論ではなく、どの研究機胜を、どの資金・雇甚・評䟡ずいった圢で担わせるかぞず移り぀぀ありたす。

倧孊の倖に研究組織を䜜っおきた圓事者自身、自らの詊みを倧孊の代替ではなく補完ず䜍眮づけおいたす。FROを運営するアダム・マヌブルストヌンらは2025幎の振り返りで、FROは倧孊研究党般の代替ではないず明蚘したした。倧孊の倖の研究所の倚くは、孊郚教育から博士の育成たでを自前では構築しおいたせん。

同時に、研究者個人を支えるのか、専任の組織を支えるのかずいう蚭蚈の察立も浮䞊しおいたす。米囜の2026幎の科孊政策構想が倧孊ずいう組織より研究者個人を重芖する方向を打ち出したのに察し、欧州研究倧孊連盟LERUは、優れた個人にも長期研究、育成、蚭備、孊問の自由を支える倧孊が必芁だず反論しおいたす。

評䟡ず基盀のあり方も芋盎されおいたす。RoRIのゞェヌムズ・りィルズドンらは、AIが申請曞を曞き、AIが審査する時代には、文章の説埗力が研究の質を芋分ける手がかりにならなくなるず問題提起したした。共有デヌタや研究゜フトりェアのように、個人の論文では評䟡されにくい仕事をどう担うかも論点です。ずはいえ、倧孊の倖に出れば研究者が自由になるずは限りたせん。たずえば連邊研究費ぞの䟝存床が高い米囜の倧孊で、経枈孊の論文から政治的に敏感な䞻題が枛ったずいう報告もありたすが、政府の資金に頌ったたたでは自由な研究ができない可胜性もありたす。

さらに、技術移転制床を支えるバむ・ドヌル法ず、倧孊による発明の管理に぀いおも、芋盎しを求める議論が出おいたす。1980幎のバむ・ドヌル法は、連邊資金による発明に぀いお、倧孊などの非営利組織や小䌁業が䞀定の条件で暩利を保持するこずを遞べるようにした法埋です。近幎は、特蚱取埗ずラむセンスを䞭心ずする技術移転に加え、倧孊の蚭備や専門人材ぞのアクセスを通じお技術を普及させる方法も提案されおいたす。ラむンハヌトも、発芋を特蚱化し、ベンチャヌキャピタルの資金で補品化する創薬のモデルを、長期の工孊開発や耇数技術の統合を必芁ずする他分野に、そのたた䞀般化するこずには限界があるず論じおいたす。

日本では、日本孊術䌚議が2025幎11月の提蚀で、競争的資金だけでは研究時間、安定した雇甚、蚭備を支えられないずし、基盀的経費の回埩ずあわせお、倧孊以倖の法人を䜿った研究者の雇甚も怜蚎しおいたす。

日本の話も出おきたので、では、日本の倧孊はいたどのような状況にあるのかを芋おいきたす。

第III郚 日本の倧孊ず日本の瀟䌚課題

䞖界では䞻に「研究の進め方」が再蚭蚈され぀぀ある䞀方で、日本の倧孊は足元の構造的な課題に盎面しおいるのでは、ず考えたす。

日本の倧孊が抱える機胜ず期埅

日本の倧孊で最も比重が倧きかったのは、遞抜ず胜力蚌明だず考えおいたす。第V郚で芋るように、日本の䌁業は長く、倧孊で䜕を孊んだかより、どの難易床の倧孊に入ったかを採甚の基準にしおきたした。

期埅を寄せる䞻䜓も倧きくは4぀に別れたす。囜家は先端研究ず専門人材を、䌁業は遞抜のシグナルず共同研究を、家庭は子どもがよい職に就くこずを、地域は若者の定着、教員や医療人材の逊成、産業の維持を期埅したす。どれも正圓ですが、向かっおいる方向や望んでいるこずは異なりたす。たずえば地方の囜立倧孊は、囜からは論文指暙や倖郚資金の獲埗を、自治䜓からは教員や看護垫の安定した䟛絊を求められたす。これらの異なる期埅が、限られた教員の同じ時間を奪い合っおいるわけです。

しかもこの束は、匕き算なしに増えおきたした。この10幎䜙りでも、地方創生、リスキリング、倧孊発スタヌトアップ、経枈安党保障などが倧孊に課されたしたが、代わりに既存の業務を枛らす刀断はほずんどされおいたせん。

研究の担い手が现っおいる

日本の倧孊研究は、実務の倚くを倧孊院生に頌っおきたず蚀われたす。文郚科孊省の調査では、2023幎床に職務時間のうち研究に充おた割合は、倧孊教員の32.2%に察し、博士課皋の孊生は84.6%でした。それぞれの時間の䜿い方であっお研究党䜓ぞの貢献の割合ではありたせんが、教員の研究時間の割合が2002幎床の46.5%から䞋がり続けるなかで、研究の実務の倚くを院生が担う構造がうかがえたす。教育ず劎働の境界が曖昧なたた、院生の意欲ず自己負担が研究を支えおきたず蚀うのが実態に近いのでは、ず思いたす。

その環境は倉わり぀぀ありたす。2021幎床以降、科孊技術振興機構JSTの次䞖代研究者挑戊的研究プログラムSPRINGなどで、博士課皋の孊生に生掻費盞圓額を絊付する支揎が広がりたした。博士課皋の孊生を凊遇されるべき研究者ずみなす考え方が定着すれば、研究宀の実務を担う孊生には察䟡を払うか、専任の職員を雇う必芁が生たれたす。぀たり、倧孊や研究宀にずっおは、無償の劎働力でカバヌしおいた分の費甚負担が増えるずいうこずです。

䞀方で担い手の数も枛っおおり、博士課皋の入孊者は2003幎床の18,232人をピヌクに2024幎床は玄1.6䞇人、修士から博士ぞの進孊率は14%前埌から10.4%に䞋がりたした。円安で研究費の賌買力も萜ちおいたす。

孊生ず財源が枛っおいる

文郚科孊省の将来掚蚈では、玄63䞇人の倧孊進孊者は2040幎に玄46䞇人になる芋蟌みです。定員割れの私立倧孊の比率は、日本私立孊校振興・共枈事業団の調査で2024幎床に59.2%に達し、2026幎床も46.2%です。

孊費に頌る私立倧孊では、孊生の枛少がそのたた財務の危機になりたす。囜立倧孊の運営費亀付金は、2004幎床の1兆2,415億円から2015幎床には1兆945億円に枛りたした。物䟡高ず円安で費甚が膚らむ䞀方、賃䞊げなどは遅れおおり、家蚈の偎には孊費を倧きく䞊げる䜙地はありたせん。

研究力ず地域での圹割も揺らいでいる

科孊技術指暙2026では、泚目床の高い論文数を瀺すTop 10%補正論文数で、日本は䞖界13䜍です。先端科孊は倧芏暡な蚭備ず孊際的な専任チヌムで進む傟向を匷め、教授1名ず院生数名の講座制の研究宀では扱いきれない課題が増えおいたす。

地方倧孊は教員や医療人材を地域に送り出しながら、存続を問われおいたす。ゞョブ型雇甚や孊び盎しの広がりは、偏差倀による遞抜ずいう倧孊の最倧の機胜を盞察化し始め、2015幎のいわゆる「文系䞍芁論」のように、倧孊の瀟䌚的な益を問う声も繰り返されおきたした。研究者個人に最長10幎の資金を出す創発的研究支揎事業のような斜策もありたすが、資金の倧半は既存の倧孊や囜立研究開発法人に流れ、倧孊の倖に新しい研究組織を生む契機にはなっおいたせん。

課題が先行し倖の遞択肢が远い぀かない日本

米囜ず日本の最倧の違いは、アンバンドルが進む順序にあるず考えおいたす。米囜では、新しい研究組織、節志家の資金、実践型の孊校、孊䜍にこだわらない採甚ずいった遞択肢が先に倧孊の倖に立ち䞊がり、それによっお倧孊の機胜が切り出され始めおいたす。

日本では順序が逆で、担い手の枛少、進孊人口の急枛、財政の逌迫が先に倧孊を盎撃しおいるのに、倖偎の受け皿は限られおいたす。理化孊研究所や産業技術総合研究所のような公的研究機関、倧孊共同利甚機関はありたすが、新しい研究組織を立ち䞊げる道や、研究者が倧孊ず行き来できる雇甚、所属を問わない蚭備の利甚は乏しいたたです。十分な受け皿がないたた機胜が切り離されれば、それは移転ではなく、孊問や教育の機胜の喪倱になりかねたせん。

しかも日本のアンバンドルは䞡端から進むおそれがありたす。䞊䜍では少数の研究倧孊ぞの集䞭が進み、䞋䜍では地方私立倧孊の撀退や統廃合が続くでしょう。倧孊が撀退した地域では、教員や医療人材の育成基盀も、地域の知の拠点も倱われかねたせん。

日本の倧孊は、「蚭蚈されたアンバンドル」に向かうのか、それずも「厩壊ずしおのアンバンドル」に呑み蟌たれるのかずいう分岐点にありたす。厩壊を避けるには、解䜓が進む前に倧孊の倖偎を構想し、どの機胜をどこぞ移すかを合意しおおく必芁がありたす。その手がかりを、たず䞖界の倧孊の歎史に探りたす。

第IV郚 䞖界の倧孊はバンドルずアンバンドルを繰り返しおきた

どの機胜がい぀、なぜ倧孊に組み蟌たれ、䜕が倧孊の倖に眮かれおきたのかを、各囜の歎史でたどりたす。

日本が倧孊の仕組みを取り入れおきた囜々

近代日本は、単䞀の囜を手本にしたせんでした。明治初期は工孊をむギリスずくにスコットランド、法孊ず教育行政をフランス、蟲孊をアメリカ、医孊をドむツから孊び、1886幎の垝囜倧孊はそれらを統合しおドむツの研究倧孊の理念ず講座制を据えたした。戊埌は米囜を手本に新制倧孊が始たり、1990幎代末以降も米英の制床が続けお取り入れられたした。

時期 日本における䞻な出来事 手本ずした囜
1871〜1877幎 工孊寮・工郚倧孊校の蚭立 むギリススコットランド
1872幎 孊制の公垃、叞法省法孊校の蚭立 フランス
1876幎 札幌蟲孊校の開校 アメリカ
1886〜1893幎 垝囜倧孊什、孊䜍什、講座制の導入 ドむツ
1949幎 新制倧孊の発足、倧孊院制床の再線 アメリカ
1998〜1999幎 TLO法、日本版バむ・ドヌル制床の導入 アメリカ
2004幎 囜立倧孊法人化 むギリス
2004幎 専門職倧孊院法科倧孊院等の創蚭 アメリカ
2022幎〜 囜際卓越研究倧孊制床、倧孊ファンド アメリカ

以䞋では、䞭䞖・近䞖のペヌロッパを抂芳したうえで、各囜が倧孊の内ず倖にどんな分業を築いたのかを芋おいきたす。

䞭䞖の倧孊は専門職の逊成ず認蚌を担う組合ずしお始たった

倧孊は12䞖玀前埌の西欧で、ギルドりニノェルシタスずしお生たれたした。ボロヌニャでは孊生が、パリでは教垫が組合を䜜りたした。教逊の孊芞孊郚の䞊に神孊、法孊、医孊の䞊玚孊郚を眮き、聖職者、法埋家、医垫を逊成したした。修業ず口頭詊問を経た者に䞎えられる「教授免蚱」は資栌蚌明を兌ね、13䞖玀には゜ルボンヌ孊寮やマヌトン・カレッゞなど共同生掻の孊寮も生たれおいたす。珟代的な意味での研究はただなく、䞭䞖の倧孊は、専門職の逊成、資栌の認蚌、共同生掻による人栌圢成の束だったず蚀えたす。

近䞖の倧孊は囜家ず教掟に仕え新しい科孊は倧孊の倖で育った

宗教改革ず䞻暩囜家の圢成を経お、倧孊は宗掟ごずに分かれ、聖職者ず官僚を育おる囜家機関になりたした。17䞖玀の近代科孊は䞻に倧孊の倖、1660幎のロンドン王立協䌚や1666幎のパリ王立科孊アカデミヌで育ちたす。ラむンハヌトが匕くように、王立協䌚の創蚭メンバヌで倧孊に本務をも぀人は4分の1に満たなかったずされたす。䟋倖ずしお、ラむデン倧孊は18䞖玀前半に臚床医孊教育を確立し、その流れは日本の蘭孊にも及びたした。

フランスは倧孊をいったん廃止し機胜ごずに別の機関を䜜った

フランス革呜期の1793幎、倧孊は旧䜓制の特暩的なギルドずしお廃止されたした。代わりに理工科孊校゚コヌル・ポリテクニヌクや高等垫範孊校など、囜家が求める機胜ごずの専門孊校矀グランれコヌルが䜜られたした。総合倧孊の法的な埩掻は1896幎で、先端研究は1939幎蚭立の囜立科孊研究センタヌCNRSが担いたした。゚リヌト逊成、研究、囜民の高等教育を別々の機関が担う䞉元䜓制です。

分けられた機関は孀立しおいたわけではなく、いたではCNRSの研究員ず倧孊教員が同じラボで働く「混成研究単䜍UMR」が䞀般的です。䞀方、2010幎代以降は統合に舵を切り、2020幎には囜際ランキングでの存圚感を狙っお、耇数のグランれコヌルや倧孊を統合したパリ・サクレヌ倧孊が発足したした。

日本がフランスから取り入れたのは、孊制の党囜䞀元的な孊区制床ず叞法省法孊校のフランス法教育でした。グランれコヌル、研究センタヌ、倧衆倧孊ずいう䞉元構造は取り入れたせんでした。

むギリスはカレッゞず実孊ず詊隓機関を䞊べおきた

むギリスは、成り立ちの異なる組織を䞊べおきたした。オックスフォヌドやケンブリッゞのカレッゞ制は、共同生掻ず少人数のチュヌトリアルによる教育です。スコットランドには実孊の䌝統があり、グラスゎヌ倧孊のランキンの掚挙で来日したヘンリヌ・ダむアヌが、工郚倧孊校の前身である工孊寮のカリキュラムを蚭蚈したした。1858幎にロンドン倧孊が始めた「孊倖孊䜍」は、どこで孊んだかを問わず詊隓の合栌で孊䜍を䞎え、教育ず認蚌を切り離した先駆䟋です。

1919幎には、政府が財源を出し、配分は孊者の委員䌚が決める倧孊補助金委員䌚UGCが蚭けられ、政府が孊問の䞭身に介入しないための緩衝機関ずしお玄70幎間機胜したした。政策の知も、1920幎蚭立のチャタムハりス王立囜際問題研究所のように倧孊の倖で育ちたした。1992幎にポリテクニクを倧孊に䞀本化した埌は、研究評䟡珟圚のREFや授業料の導入が進みたした。

日本がむギリスから取り入れたのは、工郚倧孊校の工孊教育、REFを暡した研究評䟡、法人化の理念でした。カレッゞ制の共同生掻の基盀や、緩衝機関は取り入れたせんでした。

ドむツは研究倧孊を生み同時に研究を倧孊の倖にも眮いた

1810幎創立のベルリン倧孊は、フンボルトの構想に基づく「研究ず教育の統䞀」の理念から、れミナヌル、実隓宀、正教授が講座を統括する講座制、近代的な博士号を生み、䞖界に広めたした。同時にドむツは、倧孊の倖にも機関を重ねお育おたした。高等技術孊校は1899幎に博士号を出せる工科倧孊ずなり、研究はカむザヌ・ノィルヘルム協䌚1911幎ずその系譜のマックス・プランク協䌚、応甚研究のフラりンホヌファヌ協䌚1949幎などに眮かれ、1970幎前埌には職業専門教育の専門倧孊も敎備されたした。

フラりンホヌファヌ協䌚では、囜や州の基盀的補助金は予算の玄3分の1で、残りは受蚗研究費です。受蚗で埗た資金に応じお基盀的補助金が増えるため、産業に圹立぀研究を続ける動機が組織に組み蟌たれおいたす。倧孊に実甚化を求めるのではなく、倖に産業連携専門の組織を蚭けた䟋です。

ドむツの倧孊はほがすべお州立で、孊費も原則ずしお無償です。財政は公的資金に頌っおいたすが、自治は、基本法憲法が保障する孊問の自由ず、研究者自身が審査ず配分を担うドむツ研究振興協䌚DFGのような自治的な組織によっお支えられおきたした。財源が公的でも、配分の刀断を孊術の偎に眮く仕組みがあれば自治を保おるこずを瀺す䟋です。

日本がドむツから取り入れたのは、研究倧孊の理念、講座制、ドむツ医孊、博士の制床でした。倧孊の倖の研究所矀や、機関の皮類の分化は取り入れたせんでした。

アメリカは英独の郚品を接ぎ朚しおマルチバヌシティを䜜った

米囜の高等教育は、1636幎創立のハヌバヌド・カレッゞのように、むギリスのカレッゞを手本にした寄宿制の孊寮から始たりたした。䞻な目的は教䌚の聖職者を育おるこずでした。

19䞖玀には二぀の芁玠が加えられたす。䞀぀は、1862幎のモリル法で連邊の公有地の売华益をもずに䜜られたランドグラント倧孊で、倧孊は地域の産業ず公共に奉仕すべきだずいう考え方を根づかせたした。もう䞀぀は、1876幎開校のゞョンズ・ホプキンズ倧孊で、ドむツ型の研究ず倧孊院教育を䞭心に眮きたした。米囜の研究倧孊は、英囜流の教逊教育、ドむツ流の研究、アメリカ独自の地域奉仕を組み合わせたハむブリッドです。倧孊の倖にも、カヌネギヌ財団やロックフェラヌ財団、ベル研究所などの䌁業研究所、2幎制のゞュニア・カレッゞ珟圚のコミュニティ・カレッゞ、ブルッキングス研究所やランド研究所のような独立したシンクタンクが育ちたした。

第二次䞖界倧戊埌、ブッシュ報告ずNSF蚭立が連邊政府の研究支揎を恒久化し、GI法が倧孊を倧衆化したした。連邊資金には間接経費が䞊乗せされ、契玄管理が倧孊本郚に集たった結果、事務組織が巚倧化したした。1963幎、カヌは倚様な機胜ず利害関係者を抱える巚倧倧孊を「マルチバヌシティ」ず名づけ、同じ講矩で、連邊資金に頌る研究倧孊を「連邊助成倧孊federal grant university」ず呌んで、資金の出し手が倧孊の䞭身を方向づけるこずぞの懞念も瀺したした。ブッシュの蚭蚈はピアレビュヌず耇数の資金配分機関によっお政府の介入を抑えようずしたしたが、囜家の資金が増えるほど、倧孊は囜家ぞの䟝存を深めおいったわけです。

そのカヌが1960幎に䞻導したカリフォルニア州のマスタヌプランは、研究ず博士教育をカリフォルニア倧孊、孊郚教育ず実務修士をカリフォルニア州立倧孊、広い門戞をコミュニティ・カレッゞに分けたした。䞀぀の倧孊に機胜を束ねる䞀方、州のシステムずしおは機関の皮類を分けおいたわけです。巚額の基金で䞀定の財政的な独立性を持぀のは䞀郚の私立倧孊に限られ、孊生の倚くは州の予算ず孊費に頌る州立倧孊に通っおいたす。

日本がアメリカから取り入れたのは、札幌蟲孊校の理念、新制倧孊、課皋博士制床、TLOず日本版バむ・ドヌル制床、法科倧孊院、倧孊ファンドなどです。取り入れなかったのは、䞉局の機胜分化、民間財団ず独立したシンクタンクの厚み、研究者が倧孊・䌁業・研究所を行き来する劎働垂堎でした。

研究は20䞖玀に巚額の蚭備を芁する資本集玄的な営みになった

19䞖玀の研究に必芁だったのは、䞻に図曞通ず小さな実隓宀で、倧孊や節志家が賄える芏暡でした。倉化が倧きかったのは20䞖玀です。1930幎代にアヌネスト・ロヌレンスがカリフォルニア倧孊でサむクロトロンを倧型化し、第二次䞖界倧戊のマンハッタン蚈画を経るず、加速噚、原子炉、研究甚の蚈算機のように、䞀぀の倧孊では持おない蚭備が研究の前提になりたした。1961幎に物理孊者アルノィン・ワむンバヌグは、こうした研究を「巚倧科孊ビッグサむ゚ンス」ず呌んでいたす。米囜は倧孊の連合が運営する囜立研究所を、欧州は囜際共同のCERNを䜜り、日本も高゚ネルギヌ物理孊研究所珟圚のKEKやSPring-8のような共同利甚の斜蚭を敎えたした。

この倉化は、倧孊のバンドルず自治の䞡方に圱響したした。高䟡な蚭備を持ち、それを維持する技術職員を雇い、安党管理を担えるこずが倧きな組織の匷みになり、倧孊を束ねる力ずしお働きたした。同時に、その費甚を賄える囜家や䌁業ぞの䟝存も匷たりたした。

AIによっお、研究に必芁な資本はさらに増える可胜性がありたす。最先端のAIモデルの開発には倧孊では持おない芏暡の蚈算資源が必芁で、スタンフォヌド倧孊の「AI Index」は、泚目されるAIモデルの倧半が近幎は䌁業から生たれおいるず報告しおいたす。第II郚で芋た自埋実隓宀や、倧芏暡なデヌタの敎備にも倚額の投資が必芁です。䞀方で、AIが蚈算や解析の䞀郚を安くし、小さな研究宀の力を底䞊げする面もありたす。どちらに振れるかは、蚈算資源やデヌタを誰が持ち、誰に開くかずいう制床蚭蚈に巊右されるでしょう。

研究を完党にアンバンドルした゜連ず䞭囜のアカデミヌ

察極にあるのが、研究を倧孊から制床的に切り離した䜓制です。゜連は研究を科孊アカデミヌの研究所矀に集め、倧孊を䞻に教育の機関ずしたした。䞭囜科孊院1949幎もこれを螏襲し、珟代の䞭囜は科孊院䜓制を維持しながらトップ倧孊に資金を集䞭させおきたした。科孊技術指暙2026では、䞭囜は論文総数、Top 10%補正論文数、Top 1%補正論文数のすべおで䞖界1䜍です。日本はこの䜓制を手本にしたせんでしたが、第VI郚で囜際競争力を考える際の比范察象になりたす。

䞖界の歎史から芋えおくる4぀の芖点

䞖界の倧孊史からは、4぀の芖点が埗られたす。

たず、バンドルずアンバンドルは振り子のように繰り返されおきたした。䞭䞖の束から、科孊革呜での研究の倖郚化、フランスの分割、ドむツの再統合、米囜のマルチバヌシティぞず揺れ、いたは欧州で再統合が、米囜で先端機胜の倖郚化が進んでいたす。

次に、珟代で倧孊を倧きな束ぞたずめる最倧の誘因は、機関の芏暡が評䟡されやすい囜際倧孊ランキングです。倧孊間での囜際的な芏暡拡倧の競争に駆り立おおいる䞀因ずも蚀えるでしょう。

さらに、孊術ず産業が繁栄した囜は、䟋倖なく倧孊の倖に厚い知の゚コシステムを持っおいたした。フランスのグランれコヌルずCNRS、むギリスの孊倖孊䜍ずUGC、ドむツの研究協䌚ず専門倧孊、アメリカの財団、䌁業研究所、シンクタンク、コミュニティ・カレッゞがその䟋です。

最埌に、アンバンドルの議論は䞀時の流行ではなく、1858幎の孊倖孊䜍や1963幎のマルチバヌシティ論に連なる制床論の系譜の䞊に䜍眮づけられたす。

第V郚 日本の倧孊はアンバンドルされた状態から出発し政策でバンドルされおきた

ここたで䞖界のバンドルずアンバンドルの歎史を芋おきたした。次に芋るのは日本です。日本の高等教育は、担い手が分散した状態から出発し、政策によっお機胜が䞀぀の機関ぞ束ねられおきたした。

江戞の孊びは藩校ず私塟ず蘭孊に分かれおいた

歊士の教育は藩校や昌平坂孊問所が、実務や思想の教育は適塟や懐埳堂などの私塟が、西掋の知の導入は『解䜓新曞』に象城される圚野の蘭孊のネットワヌクが担いたした。人栌圢成、専門技術の蚓緎、新しい孊問の探玢などが別々の担い手に委ねられおいたこの分業は、倧孊の倖の担い手を構想する際の歎史的な参照点になるず考えおいたす。

明治初期の日本は各省が自前の孊校を持぀アンバンドルな状態だった

明治政府の各省は、必芁な人材を育おるために自前の孊校を䜜りたした。工郚省の工郚倧孊校はスコットランドの工孊教育、叞法省法孊校はフランス法、開拓䜿の札幌蟲孊校は米囜の蟲科倧孊、東京医孊校はドむツの医孊講座を手本ずしたした。

各省が機胜ごずの孊校を盎蜄する姿はフランスのグランれコヌルに近く、日本の近代高等教育はアンバンドルな状態から出発したず蚀えたす。

垝囜倧孊は省庁の孊校を束ねドむツ型の講座制を茉せた

これを束ね盎したのが1886幎の垝囜倧孊什です。東京倧孊ず工郚倧孊校などを統合し、目的を「囜家ノ須芁ニ応スル」孊術技芞の教授ず研究ず定めたした。法科・文科の卒業生は䞀時期、詊隓を免陀されお官吏芋習いに任甚され、卒業蚌曞が官僚ぞの任甚資栌を兌ねたした。1893幎にはドむツ型の講座制が導入され、ドむツでは総合倧孊から倖されおいた工孊も孊郚ずしお取り蟌みたした。官僚逊成、囜家資栌、基瀎研究、工孊教育が䞀぀の組織に束ねられたこの時点が、日本の倧孊の耇合的なバンドルの出発点だず考えおいたす。

倧孊の自治もこの垝囜倧孊の䞭で圢䜜られたした。1913〜14幎の沢柳事件を経お、教授の人事には教授䌚の同意を埗るずいう慣行が生たれ、これが日本の倧孊自治の原型になりたす。ただしそれは、囜家が蚭眮し予算を出す倧孊の䞭で人事を守る自治であり、囜家や政暩以䞊に長く続き、䞀定の財政的な自埋性を保぀諞倖囜の『倧孊』の自治ずは異なるものでした。1933幎の滝川事件では、文郚省が京郜垝囜倧孊の教授を䌑職凊分ずし、その限界が瀺されおいたす。

倧孊什は私孊を倧孊にし倧孊を䌁業の人材䟛絊源にした

1918幎の倧孊什は、公立・私立の倧孊を認め、慶應矩塟や早皲田などが倧孊ずなりたした。䌁業が倧孊卒業生を䞀括採甚する慣行が定着し、倧孊は䌁業のホワむトカラヌの䟛絊源にもなりたす。それでも教逊教育は旧制高校、教員逊成は垫範孊校、職業教育は実業専門孊校が担い、1917幎には理化孊研究所理研が倧孊の倖に䜜られたした。䞀方で倧孊の䞭に研究機関を眮く附眮研究所も始たり、倖に眮く動きず内に束ねる動きが䞊行しおいたした。

戊時の科孊動員が倧孊に研究成果そのものを求めた

1939幎、珟圚の科研費の前身ずなる科孊研究費亀付金が䜜られ、附眮研究所ず理工系の定員が拡充されたした。囜家は倧孊に、人材だけでなく技術開発の成果そのものを求めるようになりたす。

1943幎の孊埒出陣では文科系孊生の城兵猶予が停止される䞀方、理工系ず教員逊成系の孊生は猶予されたした。このずき刻たれた文系ず理系ぞの期埅の非察称や理系文系の分け方は、珟圚たで぀ながっおいるようにも芋えたす。

1949幎の新制倧孊は機関の皮類を䞀぀に収斂させた

戊埌の1949幎、米囜を手本に新制倧孊が発足し、旧制高校、垫範孊校、実業専門孊校がすべお倧孊に吞収されたした。䞀府県䞀囜立倧孊の原則のもずで、教逊教育、教員逊成、実務教育、地域振興ずいう、戊前は倧孊の倖に分散しおいた機胜が䞀぀の組織に束ねられたわけです。フランスもドむツもアメリカも耇数の皮類の機関を保ち続けたなかで、日本だけが高等教育の圢をほが4幎制倧孊に収斂させたした。

自治の面では、憲法第23条が孊問の自由を保障し、1949幎の教育公務員特䟋法が教授䌚に教員人事の暩限を䞎えたした。戊前の慣行が法に曞き蟌たれた䞀方で、財源は囜の予算に頌るたたでした。

高床成長期に倧孊の実質的な機胜は遞抜になった

高床成長期には理工系の定員が拡倧され、進孊率は1960幎の玄1割から1970幎代半ばには4割近くに達したした。䌁業は入瀟埌にOJTで育おる前提から、倧孊での孊びより、どの偏差倀の倧孊に合栌したかを採甚の基準にし、倧孊の実質的な機胜は入口での遞抜のシグナルに絞られおいきたした。産業の応甚研究は䌁業の䞭倮研究所が担い、倧孊が経枈成長を牜匕するこずはあたり求められたせんでした。このずきに倧孊の倖に䜜られた数少ない教育機関ずしお、高専1962幎ず専修孊校1976幎がありたす。

1990幎代に日本は長期の研究ず早い実甚化を同時に倧孊に求め始めた

1991幎の倧綱化で教逊郚が解䜓され、倧孊院重点化が進み、1995幎の科孊技術基本法で、基本蚈画による科孊技術政策の展開が始たりたした。ほが同時に、1998幎のTLO法、1999幎の日本版バむ・ドヌル制床、2001幎の「倧孊発ベンチャヌ1000瀟蚈画」で、研究成果を早く産業化せよずいう芁請も重ねられたす。米囜が時間をかけお定着させた産孊連携の枠組みを、日本は基本蚈画による研究支揎の拡充ずほが同時に䞀挙に導入し、特蚱出願や倧孊発ベンチャヌの数を倧孊の成果ずしお数えるようになりたした。この背景には、バブル厩壊埌の䌁業の䞭倮研究所の衰退があり、䌁業が担っおいた長期開発の負担が倧孊に移されおきたず考えおいたす。

法人化以降倧孊は機胜を足され続けおいる

2004幎、囜立倧孊は英囜のNPM (New Public Management) を取り入れた囜立倧孊法人に移行したしたが、運営費亀付金は毎幎ほが1%ず぀削枛され、競争的資金で補う構造に倉わりたした。その埌も、専門職倧孊院、教育基本法ぞの「瀟䌚貢献」の明蚘2006幎、囜立倧孊の3類型の重点支揎枠2016幎、囜際卓越研究倧孊ず倧孊ファンド、地方創生、リスキリング、起業家育成、経枈安党保障、修孊支揎新制床の芁件察応ず、機胜は足され続けたした。䞍芁になった業務を廃止する匕き算は、実質的に行われおいたせん。

自治の圢も倉わりたした。法人化で囜立倧孊は法人栌を埗たしたが、䞭期目暙は文郚科孊倧臣が定め、亀付金の削枛ず競争的資金ぞの移行によっお、囜の関䞎はむしろ評䟡ず資金を通じお匷たりたした。2014幎の孊校教育法改正では、教授䌚は孊長が決定する際に意芋を述べる機関ず䜍眮づけられ、2023幎の囜立倧孊法人法改正では、芏暡の倧きな囜立倧孊に孊倖者を含む運営方針䌚議が眮かれるこずになりたした。

倧孊の倖に生たれた孊校ず研究所は吞収されるか呚瞁に眮かれおきた

倧孊の倖に生たれた機関の倚くは、倧孊に吞収されるか呚瞁に眮かれおきたした。工郚倧孊校は垝囜倧孊に、旧制高校や垫範孊校は新制倧孊に吞収されたした。理研は戊前に「理研コンツェルン」ずしお事業化に成功したしたが、戊埌の財閥解䜓で産業の基盀を倱いたした。高専、攟送倧孊、倧孊共同利甚機関なども圹割を果たしながら、4幎制倧孊に代わる遞択肢にはなりたせんでした。

政策の知も、倧孊の倖の独立した研究機関にはあたり育ちたせんでした。日本では、倧孊の教員が個人ずしお省庁の審議䌚や有識者䌚議の委員ずなる圢が䞻な経路でした。䌁業系のシンクタンクや総合研究開発機構NIRA、1974幎はありたすが、米英のような独立した非営利のシンクタンクの厚みはありたせん。倧孊ず産業界の距離も、「産孊協同路線反察」が叫ばれた倧孊玛争期から、スタヌトアップ創出が泚目される珟圚たで、政策によっお䞡極端に揺れおきたした。

日本の倧孊の類型は生たれた時代ごずに分かれおいる

類型 䞻に圢成された時代背景
研究倧孊旧垝倧等 1886幎の垝囜倧孊什ず垝囜倧孊網の敎備
地方囜立倧孊 1949幎の新制倧孊䞀府県䞀囜立倧孊の原則
倧芏暡私立倧孊 1918幎の倧孊什ず高床成長期の倧衆化
䞭小私立倧孊 1990幎代以降の蚭眮基準の倧綱化ず芏制緩和による新蚭
公立倧孊 戊埌の自治䜓による蚭眮ず、近幎の私立倧孊の公立化

問題は、これらの類型が圹割の違いではなく、論文数ず入詊偏差倀ずいう同じ物差しによる序列ずしお固定されおきたこずです。2005幎の䞭倮教育審議䌚答申は倧孊の機胜を7぀に敎理しお各倧孊に遞ばせようずし、2016幎の3぀の重点支揎枠も圹割を遞ばせる詊みでしたが、分化は進みたせんでした。類型が序列ずしお受け止められおいる限り、䞋䜍に芋える機胜を自ら遞ぶ動機がない、ずいうのが䞀぀の理由でしょう。論文数や偏差倀ずいう少数の分かりやすくモノサシは、圚り方の倚様性を消しおしたうずも蚀えたす。

倚機胜化の代償は評䟡の食い違いず遞択肢のなさだった

あらゆる圹割を束ねおきた代償は䞻に2぀にたずめられるず思いたす。1぀は、期埅ず評䟡の食い違いです。長期的な基瀎研究を期埅されながら、特蚱数や倧孊発スタヌトアップ数ずいった短期の成果でも評䟡され、時間軞もリスクも違う芁請を同じ研究宀ず教員が䞀぀の評䟡制床のもずで匕き受けおいたす。もう1぀は、遞択肢のなさです。機関の皮類は4幎制倧孊に、資金の出し手は囜に、評䟡は論文ず倖郚資金に、キャリアは倧孊教授ぞの䞀本道に偏り、䞀床぀たずくず逃げ堎がありたせん。

研究力䜎䞋の䞻因ずしお、長期的に研究できる䜙癜の喪倱がよく挙げられたす。しかし私は、時間軞の短さは原因ずいうより結果ではないかず考えおいたす。講座制の身分保障は長期研究を育んだ䞀方で閉鎖性も生みたしたし、米囜でも研究費の倧半は3〜5幎呚期の競争的資金です。

より深い芁因は、性質の異なる期埅を䞀぀の評䟡枠組みに抌し蟌め、しかも倖に遞択肢が乏しい、逃げ堎のないバンドル構造にあるのではないか、ずいうのが本皿の仮説です。

盎面する課題 日本で深刻な打撃ずなる構造的芁因
進孊人口枛ず定員割れ 機関の皮類が倧孊に䞀本化され、倧孊の撀退が地域の高等教育の喪倱に盎結する
院生・若手䟝存の研究䜓制 講座制が研究の基本単䜍で、専任チヌムの研究組織を新蚭するこずが難しい
教員の研究時間の枛少 研究、実甚化、経営、入詊、孊生指導が同じ教員に積み重なる
雇甚流動化ず孊び盎し 倧孊の機胜が入詊遞抜に偏り、卒業時や瀟䌚人向けの胜力蚌明が未成熟
財政制玄ずむンフレ 資金源が囜庫ず家蚈に偏り、民間財団や寄付の局が薄い

日本は倧孊を茞入したが倧孊の倖偎を茞入しなかった

日本の倧孊史を振り返るず、垝囜倧孊や新制倧孊のように、機胜を䞀぀の組織ぞ束ねる力が䞀貫しお匷く働いおきたした。倧孊の倖に生たれた組織は吞収されるか呚瞁に远いやられ、機胜は匕き算のない足し算で膚らみ続けおきたした。囜家、䌁業、家蚈、地域ず、倧孊に期埅する䞻䜓が入れ替わるたびに、過去の期埅が枅算されないたた芁求が積み重なっおきた経緯もありたす。さらに、日本が海倖の制床を取り入れる時期は、本囜でその限界が芋え、芋盎しが始たる時期ず重なる傟向も芋られたす。

そしお同じような匱点ずしお、日本は倧孊ずいう制床を茞入したしたが、倧孊の倖偎を茞入しなかった 、ずいう面がありたす。第IV郚の各囜の節の末尟で芋たように、日本が取り入れなかったものの倚くは、フランスのグランれコヌルずCNRS、むギリスの緩衝機関、ドむツの研究所矀ず専門倧孊、アメリカの財団、シンクタンク、コミュニティ・カレッゞのように、倧孊ず䞊んで倧孊の倖偎に眮かれた機関や仕組みでした。

日本にも、理研、産総研、倧孊共同利甚機関のような倖偎の機関はありたす。しかしその倚くは囜が蚭けた少数の皮類にずどたり、新組織の参入、リヌダヌぞの予算・人事裁量の付䞎、期限埌の人材ず成果の継承、所属を問わない蚭備の共甚、倧孊ず倖郚の行き来は難しいたたでした。日本が茞入しなかったのは、倖偎の倚様さず開かれ方だったず蚀えたす。そのため、本来は倖に眮かれるべき機胜たで倧孊が抱え蟌んできたした。担い手ず資源が现り始めたいた、日本の倧孊が身動きのずれない倧きな芁因は、この倖偎の乏しさにあるず考えおいたす。

第VI郚 次の80幎に向けお倧孊の圹割を仕分け倧孊の倖偎を構築する

ここからの提案は、倧孊をアンバンドルする、぀たり倧孊に蚗す仕事ず倖の組織に委ねる仕事を仕分け、倧孊の倖偎に倚様な受け皿を䜜るこずに集玄されたす。

80幎先の最終圢は描けないからこそどの未来でも倖れない遞択をする

本皿では冒頭に、明治維新から戊争たでの80幎、戊埌の80幎、そしおこれからの80幎ずいうスパンで芋おいくこずを話したした。

今埌80幎を芋据えたずき、人口に぀いおは確床の高い予枬がありたす。囜立瀟䌚保障・人口問題研究所の掚蚈では、日本の総人口は2070幎に玄8,700䞇人、2120幎に玄5,000䞇人になるずいう掚蚈です。珟圚の半分以䞋の人口で、研究や倧孊を支えおいく時代が、80幎埌には埅っおいるずいうこずです。

䞀方、AIが研究をどこたで自埋的に進めるようになるかは予枬しにくいたたです。資金の面でも、科孊技術関係予算は2000幎床の玄1.5倍になりたしたが、論文の囜際指暙は奜転しおいたせん。条件を揃えた比范ではないので増額が無効だずは蚀えたせんが、額を増やすだけで解決するずも蚀い切れたせん。

こうした䞍確実さのもずでは、80幎埌の完成図を描くより、どの未来でも䟡倀を倱わない遞択に力を泚ぎ、䞍芁な芏制や所属芁件を倖しお、小さく倚様な実隓を積み重ねるほうが賢明だず考えおいたす。

どの未来でも倧孊に残る4぀のコア事業

どの未来でも倧孊に残る栞は、次の4芁玠だず考えおいたす。即効性を求めない長期の問いに向き合う探玢、䞻匵や実隓結果の確からしさを専門家共同䜓が吟味する怜蚌、知識、文献、暙本、デヌタを散逞から守り次代ぞ匕き枡す継承、そしお先達や同䞖代ずの察話ず共同生掻を通じお、答えのない領域に自前の問いを立おる力を育おる問いを立おる人の育成です。

第II郚で芋たように、AIが倧量の仮説や論文草皿を出力する䞖界では、䜕が信頌に倀する知芋かを刀定し保蚌する共同䜓の圹割、ずりわけ怜蚌の責任が重くなるず考えおいたす。

倧孊に蚗す仕事ず倖の組織に蚗す仕事を分ける

第V郚で瀺した仮説に立おば、機胜䞍党の根は、䞍確実な長期の探玢ず、玍期ず成果を求められる産業実装を、䞀぀の組織ず䞀぀の評䟡枠組みで抱えおきたこずにありたす。そこで、仕様ず玍期に責任を負う技術開発や基盀ツヌルの構築は、FROのような倖の組織に委ね、合意した成果物を玍めたかで評䟡したす。

同じ仕分けは研究以倖にも圓おはたりたす。教育では入詊難易床ではなく卒業時の胜力蚌明を重んじ、地域貢献では教員や医療人材の逊成を、自治䜓ずの間で期間、予算、達成基準を定めた委蚗契玄ずしお匕き受ける、などです。

仕事をその性質で仕分ける

仕分けの基準の䞀぀は、探玢ず統合の区別です。倧孊の匷みは個々の研究者が䞀぀の問いを䜕十幎も远えるこずで、匱みは倚分野の専門家を倧人数集めお䞀぀の工孊的目暙ぞ統率するこずです。個人の功瞟を誘因の基盀ずするアカデミアでは倧芏暡な゚ンゞニアリング・チヌムを長く維持できない、ずラむンハヌトは指摘したす。

もう䞀぀は、着想を埗る研究ず成果を玍める研究の区別で、次の3぀の問いで芋分けられたす。

  1. 成果物の仕様ず玍期に厳栌な責任を負う必芁があるか —— Yesなら、研究宀ずは別の䜓制ず評䟡で担いたす。
  2. 耇数分野の専任の専門家を長期に統合する必芁があるか —— Yesなら、研究宀の倖の専任チヌムの仕事です。
  3. 倧孊院生が研究の実務に参加するこずに、確かな教育的意矩があるか —— Yesなら、倧孊の研究宀の仕事です。

ただし、評䟡や䜓制を分けるこずず、別の法人にするこずは別の刀断です。研究宀の倖に眮く方法には、専任の職員ず別の評䟡をも぀郚門を孊内に䜜る、倧孊共同利甚機関や技術研究組合のように耇数の機関で共同運営する、FROや独立研究所のように別の法人にする、の少なくずも䞉぀がありたす。

研究デヌタの基盀のように、倧孊院生が䜜り方を孊ぶ意矩ず専任の技術者による保守の必芁が䜵存し、問いの答えが衝突する仕事は、孊内の郚門か共同運営の組織に眮き、倧孊院生はそこで研究に参加する圢が考えられたす。法人たで分けるのは、孊内や共同運営では必芁な裁量や雇甚を確保できないずきに限るのが劥圓です。倧孊が党額を出資しお経営を握る子䌚瀟では、絊䞎䜓系や人事が倧孊の芏則に準じやすく、法人を分けた意味が薄れる点にも泚意が必芁です。

教育でも、䜓系的な講矩は倧孊間の単䜍互換やデゞタル講矩に集玄し、キャンパスには少人数で問いを立お、原兞を批刀的に読んで議論するれミナヌルを残せたす。ここたでの仕分けは䞻に理工系を念頭に眮いたもので、人文・瀟䌚科孊に぀いおは次の䞉぀の節で考えたす。

人文・瀟䌚科孊を倖に出すなら自立できる財源ず統治を先に䜜る

人文・瀟䌚科孊で倖に出しうるのは、政策の分析や評䟡、瀟䌚調査のデヌタ基盀、史料の保存ず公開、垂民の孊び、翻蚳や出版ずいった、政府、自治䜓、䌁業、垂民ずいう倖の需芁がある仕事です。䞀方で、理論研究、批刀的な研究、長期のフィヌルドワヌク、叀兞語や叀文曞の読解のように、垂堎に任せれば消えおしたう仕事もありたす。そこで、需芁のある仕事は倖に出しお自立の基盀を敎え、垂堎で成立しにくい仕事は倧孊に残しお公共財ずしお予算で守るこずなどはできるかもしれたせん。倖に出した組織が、需芁のある仕事の収入で需芁のない研究を支えるずいう、倧孊ず同じ内郚補助に頌らないためです。

倖に出した組織の財源は、䞀぀の出し手に頌らない四぀の局で組み立おるこずを考えおも良いでしょう。緩衝機関を通じた耇数幎の運営費や基金による基盀、倧孊図曞通や自治䜓などの䌚費による共同負担、フルコストで䟡栌を蚭定した受蚗や出版による事業、資金源を公開し寄付者が結論に関䞎しない寄付です。財政的な独立や自埋ずは、どこからも資金を受けないこずではなく、どれか䞀぀の出し手を倱っおも、その意向に逆らっおも、掻動を続けられるこずだからです。

瀟䌚科孊の政策知を審議䌚の倖に開きシンクタンクずしお切り出す

第V郚で芋たように、日本では瀟䌚科孊の知が政策に届く䞻な経路は、教員が個人ずしお審議䌚の委員になるこずでした。分析の倚くは事務局の省庁が甚意し、分析を専門に担う組織には安定した財源も独立性もありたせんでした。

倖に切り出す仕事の䞀぀目は、政策の分析ず評䟡です。英囜は2011幎、教育省の拠出で教育寄付財団EEFを䜜り、教育斜策の効果を独立に怜蚌させたした。日本でも、䞀定芏暡以䞊の政策事業には予算の䞀郚を独立した評䟡に充お、その発泚を所管省庁ではなく緩衝機関に委ねるこずなどはできるかもしれたせん。評䟡される省庁が評䟡者を遞ぶ利益盞反をなくし、倖の評䟡機関に安定した需芁を生むためです。審議䌚は利害を調敎し合意を䜜る堎ずしお残し、根拠ずなる分析は倖の組織に任せる、ずいった分担も可胜でしょう。

二぀目は瀟䌚調査のデヌタ基盀で、そのたびの科研費に頌っおきた長期調査を垞蚭の基盀ずし、デヌタの提䟛はミシガン倧孊のICPSRのように利甚機関の䌚費で賄いたす。䞉぀目は独立したシンクタンクそのもので、公的資金を受ける条件ずしお、財源の分散、資金源ず分析手法の公開、委蚗者が結論に介入できない公衚暩の確保を求めたす。

䞀方、政策の需芁に合わない理論研究や批刀的な瀟䌚孊は、倧孊に残しお公共財ずしお支えたほうがよいかもしれたせん。第II郚で芋たように、資金の出し手の圧力は研究課題の遞び方を倉えうるからです。

人文孊は倧孊に残る栞の䞭心に眮き盎し倖偎の担い手ず぀なぐ

文献や史料を読み解き、蚀葉ず抂念の意味を確かめ、それを次の䞖代に手枡すずいう人文孊の䞭心の仕事は、倧孊に残る4぀の栞、ずくに怜蚌ず継承そのものです。叀文曞や叀兞語の読解のように身に぀けるのに長い幎月がかかる技胜は、倧孊が職を保障しなければ途絶えたす。AIが倧量の文章を生み出す時代には、文章の出所、文脈、意味を批刀的に吟味する技胜の重みはむしろ増すでしょう。

ただし、人文孊の研究は内郚補助の䜙りで支えられおきた面があり、収支を透明にすれば真っ先に削られかねたせん。倧孊の䞭の人文孊は明瀺的な予算で支え、史料の敎備、校蚂、翻蚳、長く読み継がれる著䜜を、専門家のピアレビュヌで評䟡する必芁がありたす。

そのうえで、人文孊の掻動の堎ず財源を倧孊の倖に広げるこずはできたす。江戞の私塟や蘭孊がそうであったように、いたも図曞通、文曞通、博物通、出版瀟、孊䌚、圚野の研究者が人文知を支えおいたす。地域の博物通や文曞通に研究職を眮くこずや、英囜のオヌプン・ラむブラリヌ・オブ・ヒュヌマニティヌズのように倧孊図曞通の䌚費で孊術誌を無料公開するこず、遺莈などを受け入れる地域人文基金を眮くこずが考えられたす。寄付から基金を぀くり、その運甚益で継続性を担保するこずなども可胜なはずです。

倧孊は専門家を育お、職を保障し、質を刀断する栞であり続け、倖の担い手は人文孊の掻動の堎ず財源を広げたす。人文孊自䜓を守るこずず、人文孊を倧孊の䞭で守るこずは別の問題ずしお捉える必芁があるように思いたす。

倧孊の倖偎の生態系を描く

ここたでに仕分けた仕事の受け皿ずしお、次のような分業を描けたす。

担い手 䞻なミッション
研究倧孊 長期的な探玢、怜蚌、埌進研究者の育成
地域の倧孊連合䜓 地域の人材逊成、むンフラず事務の共同保有
教育特化型倧孊 リベラルアヌツ教育、瀟䌚人の孊び盎し
倖郚の専門研究組織 目暙ず期限を定めた技術開発・ツヌル構築
独立系政策シンクタンク 政策分析ず評䟡、瀟䌚調査のデヌタ基盀
産業界䞻導の教育機関 実務技胜の蚓緎ず胜力認蚌
人文知のアヌカむブず垂民の孊び 史料の保存ず公開、生涯にわたる教逊教育
共甚の研究基盀 倧型蚭備、蚈算資源、デヌタを所属を問わず提䟛
自埋的な緩衝機関 政治的な干枉を排した研究資金の配分・評䟡
人材流動化の基盀制床 倧孊ず倖郚組織を研究者が行き来できる雇甚環境

短期的に䜜っおいくずしたら、目暙を定めお先端開発を進める倖郚の専門研究組織FROなどなのではないかず思いたす。ずはいえ寄付文化が成熟しおいない日本では、産業界のコン゜ヌシアムず政府資金がマッチングファンドで出資する日本版FROが珟実的です。ただし、その財源を倧孊の基盀的経費を削っお捻出するのは避けるべきでしょう。

倧孊の類型ごずに異なるアンバンドルのあり方

ずはいえ、䞀埋のアンバンドルは適甚できたせん。第V郚で芋た類型ごずに、遞びうる方向の䟋を挙げたす。

  1. 研究倧孊は、方向の定たった技術開発を日本版FROなどぞ移し、探玢、怜蚌、若手の育成に集䞭したす。
  2. 地方囜立倧孊は、地域の人材逊成を保ち぀぀、斜蚭、事務、基瀎的な講矩を近隣倧孊ずの倧孊連合䜓で共同保有したす。
  3. 倧芏暡私立倧孊は、倧人数の講矩をオンラむンの共有基盀ぞ移し、少人数れミ、コヌオプ教育、瀟䌚人の孊び盎しに資源を振り向けたす。
  4. 䞭小私立倧孊は、連携や分野の転換を詊み぀぀、撀退する堎合に圚孊生の孊びを保蚌し、キャンパスを転甚する道筋を描いおおきたす。
  5. 公立倧孊は、蚭眮自治䜓ずの近さを生かし、地域の政策課題を分析する機胜を持぀道を遞べたす。

これらは囜が䞊から割り振る凊方ではなく、各倧孊が自らの歎史ず匷みから方向を遞ぶための遞択肢の䟋です。

囜際競争力を順䜍ではなく䞖界の研究を぀なぐ力で枬り盎す

人口ず研究開発投資の芏暡で倧きな差があるなか、論文の量で米䞭ず競うのは、日本にずっお勝ち目の薄い消耗戊だず蚀わざるを埗たせん。そこで囜際競争力を、論文ランキングの順䜍から、䞖界の知のネットワヌクをどれだけ深く、代わりのきかない圢で結び぀けおいるか結節点の力 ぞず枬り盎すこずなどです。囜際共著や研究人材の埪環、SPring-8のような共甚斜蚭や長期の蚘録の囜際利甚ずいった指暙です。この物差しで芋るず、日本が培っおきた長い芳枬、コホヌト远跡、史料や暙本の保管は、他囜がたねしにくい匷みに倉わりたす。ただし、競争力の物差しず、垂民を育お地域の知を受け継ぐ公共性の物差しは、別の評䟡軞ずしお扱うべきです。

アンバンドルは新しいゞレンマを生む

アンバンドルは矛盟を消すのではなく、組織の内郚にあった矛盟を、組織ず組織の間の調敎の問題に眮き換えるものずも蚀えたす。最倧のゞレンマは、長期の探玢研究を倧孊に玔化させるず、産業界のニヌズから離れ、支持基盀を倱いかねないこずです。このほかにも、次のようなゞレンマがありたす。

制床的ゞレンマ 衝突する二぀の䟡倀 克服に向けた方向性
䜙癜か説明責任か 䜙癜を無条件に認めるず怠惰になり、説明責任を厳しくしすぎるず長期の賭けができない 䜙癜は講座でなく個人に䞎え、節目の事埌ピアレビュヌで評䟡する
開攟か経枈安党保障か オヌプンな研究が技術流出防止の芁求ず衝突する 機埮な研究は倧孊倖の管理された機関に集め、倧孊は原則オヌプンな堎ずしお守る
グロヌバル化か母語の知か すべお英語化するず、日本語の思玢や垂民向けの教育が痩せる 倧孊院ず先端研究は二蚀語、孊郚の教逊教育や瀟䌚人教育は日本語を基盀にする
構造改革か移行コストか 改革を急ぐず既埗暩、砎綻、地方経枈ぞの打撃など摩擊が倧きい 新しいルヌルは新芏採甚者から段階的に適甚し、経過措眮を甚意する

内郚補助の扱いも移行の条件になりたす。本皿は内郚補助を明瀺的な公共財ぞの盎接予算に眮き換えるこずを求めたすが、その財源が確保されるたでは内郚補助を解䜓したせん。研究を倧孊から切り離しおも成果が出るずは限らない、ずいう懞念も圓然です。ラむンハヌト自身、プリンストン高等研究所などは創蚭初期を陀けば期埅ほどの成果を生み続けおはいないず評䟡しおいたす。

再びバンドル化が進むこずを芋越した再アンバンドルの蚭蚈

歎史が瀺すように、いた機胜を切り離せおも、時間がたおば新たな芁求がたずわり぀き、再び束ねられおいくこずは確実でしょう。目指すべきは䞀床限りの完璧なアンバンドルではなく、バンドルが再び膚らんだずきに切り分け盎せる仕組みを、あらかじめ制床に組み蟌んでおくこずだず考えおいたす。

新蚭機関には10〜15幎皋床のサンセット条項を課し、期限が来たら延長、解散、別組織ぞの匕き継ぎのどれにするかを評䟡しお決めるなど、工倫はできたす。デヌタや史料の保存を担う機関は、恒久的な組織ずしお別に眮いたり、倧孊本䜓に新機胜を課す政策には定期芋盎し条項を組み蟌み、新しい圹割を求めるずきは既存の矩務のどれを廃止するかを同時に決める「1機胜远加に぀き1機胜返䞊」を原則にするなども察策ずしお考えられたす。

第II郚で芋たHAAも、孊䜍を出さない身軜な孊校ずしお発衚されながら、2028幎からは䌝統的な私立倧孊䞊みの授業料の2幎制プログラムを始める蚈画です。評䟡が高たれば、修了蚌明や寮や研究機胜を求められ、再バンドル化の道を歩む可胜性は十分にありたす。倖偎を䜜る偎にも、自らを切り分け盎せる蚭蚈が必芁です。

次の80幎を䞉぀の時期に分けお進める

次の80幎を䞀気に蚭蚈するこずはできず、挞進的に進んでいくこずになるでしょう。そのずきどのように進めば良いのか、たずえば以䞋のような進み方があるのでは、ず思いたす。

第䞀期2026幎〜2040幎敎理ず実隓の時期
18歳人口の枛少が最も急な時期に、芏制や所属芁件を緩めお実隓しおいきたす。優先課題は、日本版FROの創蚭、政策評䟡枠ず地域人文基金の詊行、䞭小私立倧孊の撀退・転甚モデルの構築、共甚蚈算資源ずデヌタ基盀の敎備です。成果だけでなく、総費甚や、同じ額を孊内の改革に投じた堎合ずの比范も蚘録し、次の刀断材料にしたす。

第二期2040幎〜2070幎再線ず定着の時期
実隓を怜蚌し、成功したモデルを恒久化し、機胜しなかった詊みは撀退させたす。独立研究組織、シンクタンク、実務専門の孊校、人文知のアヌカむブずいった倖の受け皿が、瀟䌚の䞭で厚みず信頌を埗おいる状態を目指したす。

第䞉期2070幎〜2100幎代初頭定垞の時期
人口枛少が萜ち着くなかで倧孊ず倖郚機関の分業が安定し、時限性や定期芋盎しが圓たり前の手続きになっおいる状態を目指したす。

䞉぀の時期を通じお守る原則は、倧孊の芏暡や数より知の結節点ずしおの぀ながりを優先するこず、機胜を切り離す前に倖の受け皿を敎えるこず、長期の䜙癜を組織ではなく人に䞎えるこず、定期的な再アンバンドルをあらかじめ組み蟌むこずなどです。ただし珟時点の䞀案であっお、今埌私の考えも倉わる可胜性は十分にありたす。

終章 アンバンドルを経お倧孊は初めお自埋的な目的を持぀機関になる

倧孊の意味を䜍眮づけ盎す

1886幎の垝囜倧孊什が倧孊の目的を「囜家ノ須芁ニ応スル」こずず定めお以来、日本の倧孊の目的は、囜家の必芁、䌁業の遞抜、家蚈の䞊昇志向、地方創生やむノベヌションの芁請ず、倖から䞎えられ続けおきたした。目的を倖から䞎えられる組織の䟡倀は、課された目暙をどれだけ満たしたかで決たり、評䟡指暙が増えるほど、倧孊の日垞は探求から離れおいきたす。

雑倚な機胜を倖の専門機関が分担するようになれば、倧孊には自ら目的を遞ぶ䜙癜が戻っおきたす。その目的ずは、暫定的ではありたすが、問いを立おる人を育お、新しい知を探り、その知を批刀的に確かめ、䞖代を超えお長く保党するこずだず考えおいたす。

教育の堎ずしおの倧孊は、18歳で䞀床だけ通過する堎ではなく、人生の䞭で䜕床でも立ち戻れる知の枯になっおいくでしょう。組織ずしおの倧孊は、独立研究組織、シンクタンク、自治䜓、図曞通や博物通、垂民の孊びの堎ず連携する、倖の倚様な知の担い手を぀なぐハブにもなりたす。慶應矩塟の「独立自尊」や早皲田倧孊の「孊問の独立」のように、囜家の芁請ずは別の堎所に孊問の拠点を築こうずした私孊の建孊の粟神は、日本の高等教育党䜓の道暙になるのかもしれたせん。

たずめ

本皿の䞻匵は、倧孊をアンバンドルするこずは、倧孊の倖偎を䜜るこずだずいうものです。

ブッシュ報告から80幎、科孊技術政策は、倧孊の基瀎研究に資金を投じれば成果はいずれ瀟䌚に還元されるずいう前提で進められおきたした。いた䞖界では、FROやARPA型組織、財団の資金、AIによる研究、新しい孊校など、倧孊の倖に遞択肢が立ち䞊がっおいたす。䞀方の日本は、担い手の先现り、進孊人口の急枛、財政の逌迫に盎面しながら、倖の受け皿が乏しいたた既存のバンドルが厩れかけおいたす。各囜の倧孊はどの時代にも倧孊の倖偎に知の゚コシステムを䞊べおきたしたが、日本は倧孊ずいう制床だけを茞入し、倖で担われるべき期埅たで倧孊に抱え蟌たせおきたした。

次の80幎に向けお取り組むべきは、倧孊に蚗す仕事ず倖の組織に委ねる仕事を仕分け、倧孊が独占しおきた蚭備、資金、地䜍、組織構造を開いお倖偎を䜜り、再び膚らんだずきに切り分け盎せる仕組みを組み蟌むこずです。倧孊の自治は、財源の分散、緩衝機関、圹割の限定によっお支え盎したす。そうするこずで、日本の倧孊が自らの目的を远求できる条件が広がるず考えおいたす。

次の80幎は、いたキャンパスで孊び、教壇や研究宀で働く若い䞖代が人生の倧半を過ごす時代です。そもそも倧孊は瀟䌚の䞭でどのような圹割を果たしおおり、どの仕事を倧孊に残し、どの仕事を倖に委ね、どんな倖偎の生態系を䜜っおいくのかずいう制床蚭蚈を、倧孊の内偎にいる人ず倖偎の挑戊者たちずが察話しながら進めるきっかけに、本皿がなればず願っおいたす。

カンパニヌクリ゚ヌションを12マスで敎理する創薬・゜フトりェア以倖

カンパニヌクリ゚ヌションに぀いお、これたで蚘事を曞いおきたした。

以前の蚘事では、起業家ずは異なる䞻䜓投資家等が䌚瀟の蚭立前から関䞎しお立ち䞊げるカンパニヌクリ゚ヌションを、技術起点、需芁起点、アりトカム起点、ミッション起点ずいう四぀の「起点」で分けたした。その埌に曞いた「カンパニヌクリ゚ヌションを時間軞で考える」の末尟では、起点の分類ず時間軞の敎理を掛け合わせれば、怜蚎䞭の案件がどこに䜍眮し、䜕で勝負すべきかがいくらか明確になるのではないか、ず敎理しおいたした。さらに最近は「12のマスで考えるむノベヌションの戊い方ず時間軞」ずいう蚘事を曞きたした。

こうしおいく぀かの蚘事積み䞊げながら、最埌の12マスの蚘事のフレヌムワヌクを䞻に䜿い぀぀、カンパニヌクリ゚ヌションの䟋をマッピングするずどうなるのか、ずいうのをChatGPTなどず敎理しおいたした。今回の蚘事はその敎理の結果をたずめたものです。

カンパニヌクリ゚ヌションは単䞀の手法ではなく、「誰がどの資源を拠出し、どう匕き受けるか」が異なる耇数の型の集たりだずいう芳点で敎理しおいたす。

カンパニヌクリ゚ヌションを行う事業者投資家

たず、カンパニヌクリ゚ヌションを行っおいる代衚的な組織を玹介したす。

2020幎以降のカンパニヌクリ゚ヌションやスピンオフを䞭心にChatGPTに調べおもらったずころ、20組織・104件のクリ゚ヌション・事業化事䟋 がありたした。明らかな間違いは修正したしたが、党件チェックしおいるわけではないので、傟向ずしお捉えおください。なお、VCやPEに加えお、ベンチャヌビルダヌ、䌁業内スタゞオ、倧孊・研究機関の事業化プログラムも含めおいたす。

なお、おそらく最もカンパニヌクリ゚ヌションの事䟋が倚いのは創薬なのですが、今回察象からは創薬・医薬品・バむオ医療機噚の事䟋を陀いおいたす。これらは事業化の進み方が異なるためです。たた、゜フトりェアだけを扱うスタゞオは察象倖ずしたした。そのため Sutter Hill などは含たれおいたせん。

その結果、以䞋の件数は、気候、玠材、防衛、AI・IT基盀、宇宙、゚ネルギヌなどが䞻なものずなっおいたす。たた非医療の蟲業バむオも含めおいたす。創薬も手がける組織を䞞ごず陀くのではなく、個々の事䟋で分けおいたす。

カンパニヌクリ゚ヌションの䞻導のスタむルによっお倧きく2぀に分別しおいたす。組織が探玢テヌマや内郚案件を持ち、専任の人材ず初期組成を運営しお䌚瀟を䜜った堎合を「組織䞻導」、組織ず創業者が䌚瀟化前から構想・知財・チヌム・初期運営の実行を分担した堎合を「組織・創業者の共同䞻導」ずしおいたす。実態はグラデヌションがある郚分かず思いたすが、䟿宜的に2぀に分けおいたす。

組織 䞻な創蚭機胜・プログラム 掲茉事䟋抜粋 組織䞻導 共同䞻導 掲茉件数
Eclipse Eclipse Venture Equity Mytra、Peak Energy 0 4 4
8VC 8VC Build Program Saronic 0 1 1
Lux Capital Lux Labs2024幎公衚。以前の案件は前身の創蚭機胜 Thematic、Osmo 0 2 2
Xora Innovation 䌚瀟創蚭担圓チヌム Amperesand 0 1 1
Red Cell Partners National Security PracticeCyber Practice DEFCON AI、Claros 0 7 7
Flagship Pioneering Flagship Labs Terrana Biosciences 1 0 1
Deep Science Ventures 本䜓の䌚瀟創蚭チヌム Mission Zero Technologies、Parallel Carbon 19 0 19
Technofounders 本䜓のベンチャヌビルディング Bliss Ecospray、ION-X 0 3 3
Cambridge Future Tech 本䜓のベンチャヌビルディング Mimicrete、Literal Labs 0 10 10
Marble 気候テックのベンチャヌスタゞオ Aerleum、Vema Hydrogen 0 13 13
Wavemaker Impact100x100 気候テックのベンチャヌビルディング WasteX、Rize 1 13 14
Vargas 本䜓の䌚瀟創蚭機胜 Stegra、Aira、Syre 4 0 4
Actis Energy Infrastructure BluPine Energy、Nozomi Energy 4 0 4
EnCap Investments Energy Transition Linea Energy、Bildmore 1 1 2
Prosemino Prosemino Venture BuilderProsemino Labs Sention Technologies、Super6 0 2 2
MIT MIT Proto Ventures Hyperion Transport Systems、Vertical Horizons 4 0 4
TandemLaunch TandemLaunch Startup Foundry LATYS、Waveshaper AI 6 0 6
Atomic Co-found with Atomic Butter Payments、Exowatt 0 3 3
TNO TNO VenturesTech Transfer Programme LionVolt、TORWASH 0 3 3
Founders Fund パヌトナヌ䞻導のむンキュベヌション General Matter 1 0 1
合蚈 20組織   41 63 104

結果、組織䞻導41件、共同䞻導が63件ずなりたした。

組織䞻導の内蚳はDeep Science Ventures が19、TandemLaunch が6、Vargas が4、Actis が4、MIT Proto Ventures が4などです。いずれも創業候補者、経営者、Venture Builderずいった人を組織の絊䞎で先に雇い、案件を持たせおから䌚瀟にしおいたす。共同䞻導の63件は、倖にいる経営者や研究者ず䌚瀟化前から実行を分担するのに近い圢です。

12マスで芋たカンパニヌクリ゚ヌションの珟圚地

以前の12マスの蚘事では、䟛絊偎で「次の状態ぞの移行を最も匷く劚げおいるもの」を四皮類に分け、需芁偎で「取匕可胜な需芁をどれだけ特定できおいるか」を䞉段階に分けたした。

これを衚にしたのが以䞋です。

䟛絊偎の支配的リスク需芁リスク 䜎い 䞭皋床 高い
導入・運甚リスク (1) ロヌルアりト競争 (2) 案件組成型実装 (3) 有償ナヌスケヌス探玢
スケヌルアップリスク (4) キャパシティ競争 (5) 段階的スケヌルアップ (6) 量産ず甚途の同時探玢
゚ンゞニアリングリスク (7) 目暙仕様開発 (8) ロヌドマップ先行開発 (9) 補品ず甚途の同時探玢
サむ゚ンスリスク (10) ミッション型怜蚌 (11) オプション圢成研究 (12) フロンティア探玢

この12マスの䞊に、104件のうち事業を停止した2瀟を陀く102瀟の珟圚䜍眮をAIに分類しおもらうず次のようになりたした。

䟛絊偎の支配的リスク需芁リスク 䜎い 䞭皋床 高い
導入・運甚リスク (1) 1瀟 (2) 26瀟 (3) 0瀟
スケヌルアップリスク (4) 3瀟 (5) 16瀟 (6) 0瀟
゚ンゞニアリングリスク (7) 4瀟 (8) 42瀟 (9) 5瀟
サむ゚ンスリスク (10) 0瀟 (11) 5瀟 (12) 0瀟

この分垃から読めるこずがいく぀かありたす。

(1) 䞭皋床の需芁リスクの(8)に集䞭する

102瀟のうち89瀟が需芁リスクが䞭皋床の列䞭倮の列にありたす。需芁リスクの䜎い列巊の列は8瀟、高い列右の列は5瀟です。

需芁リスクが䞭皋床の列の䞭でも、(8)ロヌドマップ先行開発だけで42瀟ず、党䜓の4割を占めたす。甚途ず顧客候補は芋えおいお、ベヌスずなる技術もある皋床あり、その技術を顧客仕様に合わせお補品化する工皋が残っおいる案件です。次に倚いのは(2)案件組成型実装の26瀟で、技術は既存のもので、䟛絊者・顧客・資金・契玄の組み合わせを蚭蚈するこずが事業の䞭身になっおいたす。サむ゚ンス行の5瀟はすべお(11)にあり、(10)ず(12)には案件がありたせん。

ただし、104件の採甚幎は2022〜2025幎が84件で、停止2件ず再線1件を陀けば、倧半はただ起業したばかりです。぀たりこの分垃は、各組織が反埩しお着手できた数を瀺しおいるのであっお、リタヌンが出た䜍眮を瀺しおはいたせん。分垃は「うたくいくマス」ではなく「始めやすいマス」を教えおいるず考えおください。

(2) 需芁リスクが䜎い列ず高い列は担い手が偏る

需芁リスクの䜎い列の8瀟は、Eclipseの3瀟Mytra、Peak Energy、Gambit、8VC BuildSaronic、Red CellDEFCON AI、Claros、VargasAira、MIT Proto VenturesAmerican Fusion Instrumentsです。

AiraずAmerican Fusion Instrumentsを陀く6瀟は、米囜のVCが「経営者垂堎仮説」の方匏で共同蚭立した䌚瀟で、防衛、AIデヌタセンタヌの電源、定眮蓄電、物流ロボットの領域にありたす。需芁が具䜓化しおいる領域に、実瞟ある経営者を先に組み合わせる方匏です。

需芁リスクの高い列の5瀟はすべお(9)で、Deep Science VenturesのDunia、MarbleのAtmoCooling、TandemLaunchの3瀟Waveshaper AI、Recho AI、Wisemotionです。TandemLaunchは倧孊技術を先に遞定しおから創業チヌムを線成する方匏で、技術を補品化しながら採甚甚途を探す案件が需芁リスクの高い列に来おいたす。(3)(6)(12)には案件がありたせん。

(3) 各組織の案件は䞀぀か二぀のマスに固たる

Actisの4瀟ずEnCapの2瀟はすべお(2)、Wavemaker Impactの14瀟は11瀟が(2)、Cambridge Future Techの10瀟は9瀟が(8)、Deep Science Venturesの19瀟は13瀟が(8)です。TandemLaunchの6瀟は(8)ず(9)に3瀟ず぀、Flagshipの1瀟は(11)にありたす。

Vargasの4瀟は(1)、(2)、(5)に分かれおいたすが、いずれも需芁契玄や産業パヌトナヌを先に組んでから䌚瀟を䜜る方匏は共通です。Marbleは(8)を䞭心に(2)、(5)、(9)、(11)たで広がっおおり、人から入る組織では案件のマスが分散したす。

停止ず再線のケヌス

調査衚が確認した事業停止は2件です。Red CellのEyrisは2024幎12月に閉鎖され、MarbleのCenteonは公匏サむトで掻動停止ず衚瀺されおいたす。どちらも芁因は公衚されおおらず、技術の倱敗か需芁の䞍成立かは刀定できたせん。この2瀟は䞊の分垃から陀いおいたす。

倧幅な再線は1件で、(5)にありたす。Stegraは2026幎6月に14億ナヌロの远加資金調達を完了し、建蚭工皋の芋盎しを公衚しおいたす。停止や倒産ではありたせんが、需芁の芋通しがあっおも初号の倧型蚭備の費甚ず工皋のリスクは残る、ずいう埌述の点に察応したす。

需芁リスクが䞭皋床の列ぞの集䞭ず、組織ごずのマスの固たりは、マスごずに蚭立前に残る仕事が違い、その仕事を反埩しお担える組織が限られおいるこずの衚れだず考えおいたす。

列需芁リスクが蚭立前に残る仕事を決める

需芁リスクの列は、蚭立前に䜕が「未確定な芁玠」ずしお残っおいるかを衚しおいたす。人材ず資本はどの列でも必芁になりたす。そのうえで投資家が創業を䞻導する合理性が生たれるのは、賌入の玄束、蚭備、知財、顧客接点、あるいは案件組成の胜力ずいった、起業家が通垞の出資や提携では揃えにくい資源を運営䞻䜓が提䟛できる堎合です。そうした資源を掻甚しお蚭立前に必芁な仕事の費甚や期間を倧幅に削枛できるからこそ、投資家䞻導の圢が成り立ちたす。

各列の違いを敎理するず、次のようになりたす。

列 蚭立前に残る仕事 投資家䞻導が有利になる条件 列を実際に動かす䞻䜓 調査衚の䟋
需芁リスクが䜎い列巊 需芁条件の実効性を確かめ、その条件で䟛絊するための技術・人材・蚭備・資金を揃える。迅速な立ち䞊げ速床が問われる 賌入の玄束、補造を担う経営陣、蚭備、開発期間を支える資金など、起業家単独では確保に時間がかかる資源を運営䞻䜓が提䟛できる堎合 買い手オフテむク契玄や産業パヌトナヌずしおの参画 VargasSyreはH&Mずの7幎間・総額6億米ドルのオフテむク契玄、Airaは既存技術のヒヌトポンプを月額・盎販・保守䞀䜓で提䟛、Eclipse・8VC・Red Cellの「経営者垂堎仮説」Peak Energy、Saronic、DEFCON AI
需芁リスクが䞭皋床の列䞭倮 未確定事項を、顧客怜蚌で孊べるこず芁求性胜・導入負担・䟿益ず、他者の刀断や合意が必芁なこず予算承認・蚱認可・融資・賌入契玄に分け、埌者の刀断䞻䜓ず合意順序を組成する 案件の組成に必芁な専門性、信甚、関係者ぞの接点を運営䞻䜓が持ち、耇数の刀断を同時に動かせる堎合。顧客怜蚌が䞭心なら創業チヌムに委ね、運営䞻䜓は資金ず接点の提䟛に培する 需芁偎の刀断䞻䜓ず政策。公共調達、差額支揎倀差支揎、倧䌁業のオフテむクなどによっお、支払䞻䜓・予算・期間・仕様が具䜓化すれば「䜎い」偎ぞ動く Deep Science Ventures19瀟䞭13瀟が(8)、Wavemaker Impact14瀟䞭11瀟が(2)。Rizeは4者が構想しCEOを遞任、Actis・EnCap経営者を先に確保し、資産・契玄・資金を組成
需芁リスクが高い列右 甚途・顧客・支払う理由の組み合わせを探玢する。仮説を倉曎できる裁量ず、探玢費甚の負担者をあらかじめ蚭蚈する 実隓蚭備、知財、デヌタ、顧客接点などを共通資源ずしお耇数の案件に䜿える堎合。少人数・䜎コストの実隓で枈む案件では、投資家の承認を頻繁に求める䜓制はかえっお負担になる 探玢チヌム自身(12)から(11)ぞは需芁の仮説を絞る仕事、(10)から(7)ぞは科孊を成立させる仕事で、どちらも公的研究費ず倧孊の偎にある Flagship探玢費を組織で負担し、吊定された仮説の費甚を成立した䌚瀟の持分で回収。Terranaは玄4幎の非公開開発を経お公開、TandemLaunch(9)の5瀟䞭3瀟。技術ず人の組み合わせを先に固める

需芁が固たったからずいっお、倧芏暡な蚭備投資が䞀括で正圓化されるわけではありたせん。実環境での性胜や量産歩留たりが未確認であれば、その怜蚌結果を芋極めながら次の投資を段階的に刀断しおいく工皋が欠かせたせん。以前の蚘事でも觊れたNorthvoltは、巚額のオフテむク契玄を持ちながらも技術開発ず量産の実行リスクを同時に抱え蟌んだこずで行き詰たりたした。たた前節で觊れたStegraも、確実な需芁契玄を持ちながら(5)にずどたり、初号プラントの工皋ず資金蚈画の組み盎しを迫られおいたす。

需芁リスクの䜎い列や(5)で、実際に列を動かしおいる䞻圹は買い手需芁家です。SyreではH&Mが長期契玄によっお需芁を匕き受け、Mission Zero TechnologiesにはAnglo Americanが共同創業者ずしお参画し、ArctialにはRio Tintoや䞉菱商事が産業パヌトナヌずしお加わっおいたす。米囜のVCが「経営者垂堎仮説」のモデルでこの列に案件を成立させおいるのも、防衛調達やデヌタセンタヌ向け電源のように、垂堎仮説が制床や確固たる需芁で裏づけられた領域に限られたす。

政策によっお぀くられた需芁も同様で、以前の蚘事で「ミッション起点」ず呌んだものがこれに圓たりたす。その䌚瀟の補品に察しお「誰が、どのような条件で支払うのか」が決たっお初めお列のマスが動きたす。支払䞻䜓の倉曎や予算終了によっお列が右需芁リスクが高い偎ぞず逆戻りするこずもあるため、蚭立前の段階で契玄の拘束力や期間を慎重に芋極める仕事が残りたす。

(10)ず(12)には、今回調べた20組織の䞭にも事䟋が1件もありたせんでした。サむ゚ンス行の䞉぀のマスは、科孊が最倧の制玄である点では同じで、異なるのは需芁偎の芋通しです。「需芁は明確だが科孊が未確立」ずいう(10)は、創薬の領域に倚いずいう印象ですが、それ以倖の領域だず政府のミッション型研究や倧䌁業の研究開発が担う領域です。科孊が成立すれば(7)ぞ動きたす。

需芁も科孊も未確定の(12)は基瀎研究の領域で、投資家が扱えるようになるのは、甚途ず顧客候補の仮説が絞られお(11)に来るか、科孊が成立しお(9)に来おからです。投資家䞻導がサむ゚ンス行で扱っおいるのは、科孊は未確立でも需芁の仮説があり、耇数の仮説を䞊行しお詊すオプションを組める(11)に集䞭しおいたす。(3)に事䟋がなく(9)も5件にずどたるのは、共有できる知財やプラットフォヌムなどの共通資源がない限り、投資家が䞻導する合理性が立ちにくいためだず考えられたす。

行䟛絊リスクが運営䞻䜓の胜力を決める

列が蚭立前の仕事の性栌を決めるのに察し、行は、運営䞻䜓が䜕を怜蚌し、どんな組織胜力を反埩しお提䟛できる必芁があるかを決めたす。どのマスでも䌚瀟化の時点で共通に確かめるこず䌚瀟ずしお進める合理性、資源の利甚暩、チヌム、次の怜蚌資金、刀断ず䞭止の暩限は衚から倖し、行に固有の条件だけを挙げたす。䟋のうちVersant、Third Rock、The Production Boardは創薬䞭心のため調査衚の察象倖ですが、クリ゚ヌション機胜の䟋ずしお挙げおいたす。

出発点の行 蚭立前に運営䞻䜓が揃えるもの 行に固有の創業条件 䌚瀟化の時点で残る䞻なリスク 必芁な創蚭機胜ず採っおいる䟋
サむ゚ンス行 仮説を吊定できる実隓、再珟性の確認、甚途・事業化経路の怜蚎 䌚瀟ずしお研究を続ける合理性ず、次の実隓矀の蚭蚈 効果量ず再珟性の拡匵、需芁偎の絞り蟌み 自前の研究・実隓斜蚭Versant、暫定経営Third Rock、恒久資本の持株䌚瀟The Production Board、仮説の反埩工皋Flagship、瀟内研究・怜蚌予算Marble
゚ンゞニアリング行 甚途候補、顧客の芁求仕様ず䟡栌、詊䜜品。䞊行しお事業責任者の遞定 知財の利甚条件、狙う甚途、技術ず事業の責任者 実環境での統合・認蚌、顧客ずの擊り合わせ 倧孊技術の遞定ず創業チヌムの線成TandemLaunch、研究機関内の事業・資金蚈画ず倖郚経営者・ラむセンス・持分の調敎TNO、圹割分担した創業チヌムCambridge Future Tech、自瀟ラボの提䟛Prosemino Labs
スケヌルアップ行 䟛絊技術、原䟡ず補造方法の技術経枈分析、経営・補造チヌム、賌入条件の亀枉 顧客の具䜓的な玄束、䟛絊の実珟性、蚭備資金の芋通し 歩留たりず単䜍コスト、初号機の実行 需芁契玄ず産業コン゜ヌシアムの組成Vargas、経営者ず垂堎仮説の組み合わせEclipse、工堎資金の組成
導入・運甚行 最初の導入先、販売・斜工・保守の䜓制、初期案件の取埗ず入札、資金契玄 顧客の経枈メリットず自瀟が利益を埗る運甚の芋通し、実行可胜な資金契玄 珟堎ごずの差の孊習、運甚の反埩、数量ず時期の倉動 実瞟ある経営者の採甚ず案件組成Actis、EnCap、金融・流通ず組み合わせた導入蚭蚈Wavemaker Impact、盎販・斜工・保守の䞀䜓運営Aira

行ごずに探玢の期間や費甚の性質が倉わりたす。同じ運営䞻䜓が耇数の行を扱うこずは可胜ですが、行ごずに別のクリ゚ヌション機胜が必芁ずなっおくるため、各組織の案件が䞀぀か二぀のマスに固たっおいるのは、こうした背景があるず考えられたす。

行を跚ぐずきに芋萜ずしやすいのは、運営䞻䜓の探玢期間の倖にある時間です。AmperesandはNTUの説明では2016幎に研究が始たり、詊䜜ず怜蚌を経お2023幎にスピンアりトしおいたす。Xoraが関䞎した時点でサむ゚ンスリスクはクリアしおいたので、Xoraの案件ずしおぱンゞニアリング行の出発点ですが、そこに至る7幎の研究開発は倧孊偎で先行しおいたす。゚ンゞニアリング行の案件を評䟡するずきは、この前段の時間や費甚を誰が負担したかを確かめる必芁がありたす。創薬はサむ゚ンスから導入・運甚たでの流れが芋えやすく、早い傟向にありたす。ただし需芁や䟡栌の源泉は保険料や瀟䌚保障費なので、需芁リスクがないずも蚀い切れたせん。

行ず列は、必芁な資本の皮類も決めたす。(8)を担っおいるDeep Science Ventures、Cambridge Future Tech、Marble、TandemLaunchは、探玢費を組織党䜓で負担しお短期で䌚瀟にする型です。制床䞊の目安は、TandemLaunchが12〜18か月、Marbleが12か月、Proseminoが12〜24か月、TNOの䌚瀟化準備が6か月です。(2)ず(5)を担うVargas、Actis、EnCapは、PEやむンフラ資本で過半数の持分を持ち、案件ごずに資産・契玄・借入を組む型で、資本の芏暡も回収の圢も違いたす。(11)は、Terranaの玄4幎、Amperesandの前段の7幎のように、期間が違いたす。10幎で償還する通垞のVCファンドで無理なくできるのは、このうち(8)型ずなりたす。぀たり、案件の性質ではなく資本の制玄が取り組める領域を決めおいるこずになりたす。その制玄を倖しお考えるためには、政府系ずの連携などが必芁になっおくるかもしれたせん。

探玢の入口はマスずは別に扱う

案件のマスずは別の「探玢の入口」を考えたずき、入口には倧きく3皮類がありたす。

  • 人から入る特定領域の専門性ず実行力を持぀候補者を先に確保し、本人に合う課題ず顧客を探す。Marbleの募集はチヌム・知財・具䜓的なアむデアを必須ずせず、専門性ず䌚瀟を率いる朜圚力を重芖しおいたす。EIRもこれに近い仕組みだず蚀えるでしょう。
  • 課題から入る達成したい成果ず支払䞻䜓の仮説を先に眮き、解決手段ず人を探す。Deep Science VenturesやMIT Proto Venturesがこの䟋です。
  • 資産から入る既に動䜜する科孊技術、既存の顧客、斜工・運営胜力、あるいは資金のような資源を先に確保し、それを生かせる案件を探す。TandemLaunchやTNO、Vargasがこの入口です。

General Matterは、World Nuclear Newsの報道2025幎4月によれば、Founders Fundのパヌトナヌが米囜のりラン濃瞮䌁業を投資先ずしお探したものの芋぀からず、自ら創業した案件です。玄1幎間、Founders Fund内でむンキュベヌトされたした。入口は人ですが、調査衚では濃瞮技術ず蚭備の開発が残る段階ずしお(8)に眮いおおり、政府ずの契玄条件が確認できれば需芁リスクの䜎い列ぞ動きたす。この圢は組織ずしお反埩する仕組みではなく、パヌトナヌ個人の刀断で起きた個別案件です。

人から入る入口は、候補者を継続しお確保できる経路ず、候補者に提䟛できる資源ず裁量を持぀組織にしか䜿えたせん。経路が匱い組織は課題か資産から入り、創業候補者に提瀺できる事業条件マスの䜍眮ず、蚭立前に枈たせた仕事を具䜓化しおから人を迎えるこずになりたす。その分の怜蚌ず調敎は運営偎が匕き受けるため、共通チヌムの胜力ず費甚も含めお入口を遞びたす。

起業家の偎から芋るず

同じ枠組みは、起業家偎から芋るず、投資家䞻導の案件に参加するかどうかの刀断材料になりたす。たずえば以䞋のような項目を聞いおみるず良いでしょう。

  • 運営䞻䜓が提䟛する資源顧客の玄束、知財、蚭備、資金、経営人材
  • 自分が担圓する仕事行が瀺す怜蚌ず、列が瀺す需芁偎の仕事
  • 蚭立時の持分
  • 仮説倉曎・採甚・远加予算・䞭止の暩限をどちらが持぀か

列ず行の敎理は、「自分が担圓する仕事」を教えおくれたす。需芁リスクの䜎い列なら䟛絊の実行、䞭皋床の列なら顧客怜蚌ず合意の組成、高い列なら甚途ず顧客の探玢が䞻な仕事です。行は匕き受けるリスクの皮類を瀺し、サむ゚ンス行なら実隓結果、゚ンゞニアリング行なら統合ず認蚌、スケヌルアップ行なら歩留たりず原䟡、導入・運甚行なら珟堎の反埩です。自分の経隓がその仕事に合っおいるかが、参加を決める第䞀の条件になりたす。

持分ず裁量に぀いおは、投資家偎の蚭立前の貢献が倧きいほど蚭立時の持分が倧きくなり、それが優れた起業家を惹き぀ける力を匱めるずいう緊匵関係にありたす。Flagshipのように投資家偎が過半を持぀構造から、Marbleのように最初の投資家にずどたる構造たで幅があり、蚭立前にどこたで仕事を枈たせるかず、蚭立時に起業家ぞどれだけ枡すかも芋おおくず良いでしょう。ただし持分の倧きさず日々の裁量は別なので、暩限の配分たで確かめお刀断するこずをお勧めしたす。

日本で始める偎から芋るず

同じ枠組みを、これからカンパニヌクリ゚ヌションを始めようずする偎、぀たりVC、䌁業、倧孊・研究機関、政府系機関に圓おるず、それぞれが持っおいるものず欠けおいるものが違うこずが芋えおきたす。衚にするず次のようになりたす。䟋は調査衚ず本文で觊れた組織に限っおいたす。

䞻䜓 持っおいるもの 欠けおいるもの 向くマス 向く入口 察応する先行䟋
VC 資本、経営人材の網、刀断ず䞭止の芏埋 実隓蚭備、前段の研究費、需芁偎の接点、蚭立前の人件費 (4) (7) (8) 人経営者垂堎仮説 Eclipse、8VC、Red Cell
䌁業 需芁自瀟の賌買、蚭備、雇甚、案件組成の信甚 仮説倉曎・䞭止の暩限を珟堎に枡す仕組み、持分を倖に出す慣行 (1) (2) (5) 資産、課題 H&MSyre、Anglo AmericanMission Zero、Rio Tinto・䞉菱商事Arctial
倧孊・研究機関 技術、前段の研究費ず期間、実隓蚭備 事業責任者、甚途の遞定、知財条件を早く決める仕組み (8) (11) 資産技術 TandemLaunch、TNO、MIT Proto Ventures、Cambridge Future Tech
政府系機関 前段の研究費、調達、初号蚭備向けの融資・保蚌、政府系投資䌚瀟の資本 案件の遞別ず䞭止の刀断、経営人材 (10)から(7)、(12)から(11)や(9)ぞの移動、列の移動、(5)の初号蚭備 入口を持たない TesiArctial、Temasek・GenZeroRize、DOE契玄General Matter、皎額控陀金融Bildmore

VCに぀いおは前節で述べたずおりで、通垞のファンドで反埩できるのは(8)型です。(2)や(5)をやりたければ商瀟やむンフラ資本ず組む必芁があり、(11)をやりたければ前段の研究費を持぀䞻䜓ず組む必芁がありたす。VCが単独で持ち蟌めるのは、資本ず経営人材の網ず、刀断ず䞭止の芏埋ずなりたす。

䌁業がもっずも力を発揮できる圹割は最初の買い手です。列を動かしおいるのは需芁偎の䞻䜓だず前に述べたしたが、出資者ずしお参加するより、オフテむクを出す、初号案件の実蚌蚭備を貞す、自瀟の賌買を最初の導入先にするほうが、この枠組みでは案件のマスを動かす力が倧きくなりたす。

䞀方で䌁業の匱点は暩限です。需芁も蚭備も人もあるのに、䌁業内スタゞオがこの蚘事で蚀う共同䞻導に届かず瀟内新芏事業にずどたるずすれば、仮説倉曎、远加予算、䞭止の刀断を珟堎に枡せおいないからです。䌁業が持぀需芁ず蚭備をカンパニヌクリ゚ヌションに䜿うなら、暩限ず持分の蚭蚈だけを倖郚に委ねる、ずいう分担が考えられたす。

倧孊・研究機関が持っおいるのは、技術ず、前段の研究費ず期間です。Amperesandの7幎はNTUが負担し、TNOは内郚プロゞェクトで事業・資金蚈画を䜜っおから䌚瀟化しおいたす。欠けおいるのは事業責任者ず甚途の遞定で、TandemLaunchやCambridge Future Techはそこを組織ずしお担っおいたす。投資家䞻導のカンパニヌクリ゚ヌションはサむ゚ンス行では(11)からしか始たらないので、倧孊が甚意すべきなのは、そこたで研究を進める前段ず、知財条件を早く決める仕組みず、倖から来る事業責任者を受け入れるこずなどでしょう。

政府系機関が持っおいるのは、前段の研究費、需芁、初号蚭備の資金、政府系投資䌚瀟の資本です。(10)や(12)の研究のTRLを䞊げお䞊の行に移す仕事は投資家䞻導のカンパニヌクリ゚ヌションに含たれず、公的な研究費が担うこずになるでしょう。公共調達や倀差支揎は列需芁を動かすための政策ですが、実際の資源ずしおカりントできるようになるのは契玄の拘束力ず期間が確かめられおからで、General Matterの政府契玄がその䟋です。政府系銀行の融資や保蚌が生きるのは、需芁契玄ず技術怜蚌が揃った埌の(5)です。

逆に政府系機関が持っおいないのは、案件を遞別しお䞭止する刀断ず経営人材です。なお、助成金は需芁のように芋えるので、補助を受けた案件を需芁リスクが䞭皋床の列ず誀刀定しやすくなりたす。

そしおそれぞれが持っおいないものは、他の人が持っおいる、ずいうこずです。であれば、日本に足りないのは資本でも需芁でも技術でもなく、それらを䞀぀の案件ずしお組み䞊げるオヌガナむザヌプロデュヌサヌアレンゞャヌではないか、ずいう仮説が蚀えそうです。Vargasが電力、氎玠、顧客、資本、経営陣を䞀぀の事業ずしおくみ䞊げたり、Wavemaker Impactが蟲家、金融、買い手を䞀぀の事業にしおいるのは、たさにこうした組成の仕事であり、こうし取り組みをどのように行うのかが問われおいるずも蚀えるかもしれたせん。

カンパニヌクリ゚ヌションずむンダストリヌクリ゚ヌション

ここたでの敎理は、䞀぀の運営䞻䜓が䞀぀の案件をどう䌚瀟にするか、ずいう単䜍で曞いおきたした。

しかし䞀方で、カンパニヌクリ゚ヌションを反埩できる条件は、前段の研究費、共通資源、バリュヌチェヌンの盞手方ずいう、䌚瀟の倖偎にあるものが揃っおいるこず、ずいう暗黙の前提がありたす。日本でカンパニヌクリ゚ヌションを構想するなら、運営䞻䜓の蚭蚈ず同時に、この倖偎を誰が担うかを蚭蚈しないず、結局立ち䞊がらないのでは、ずも思っおいたす。

たずえば、「スタヌトアップず地域ずの『むンダストリヌ・クリ゚ヌション』」で曞いたように、倪陜光パネルのハむグロヌス・スタヌトアップの候補を䜜れたずころで、その郚材、装眮、斜工、保守を担う呚りの䌁業矀が埋速ずなればその成長も止たりたす。これらの䌚瀟も䜜っおいかなければ、ハむグロヌス・スタヌトアップのような倧きな䌁業も生たれづらいでしょう。

この意味で、カンパニヌクリ゚ヌションず呌ばれるものには2぀の型があるのだろうず思いたす。䞀぀は、倧きな需芁ず倧きなリスクを取りに行く、急成長するスタヌトアップを぀くる型です。そしおもう䞀぀は、産業党䜓を芋たずきに欠けおいる呚蟺䌁業です。呚蟺䌁業は急成長を前提にしたせんが、アンカヌ䌁業が育぀ための条件ずしお必芁になっおくるものです。

ここたで範囲を広げお考えるず、カンパニヌクリ゚ヌションは、䌚瀟を䞀瀟ず぀䜜る掻動ずいうより、耇数の運営䞻䜓の分業、共通資源の持ち方、䟛絊者ず需芁家ず資金の同時組成を含めた、産業の創蚭むンダストリヌクリ゚ヌションに近い問いずなっおきたす。

12マスの分垃で芋るず、この2぀は別のマスを担圓しおいたす。VC型の資本で(8)や(11)を反埩しおいる組織は前者に、PEやむンフラ資本で(2)や(5)を案件ごずに組成しおいる組織は埌者に近い掻動をしおいるず読めたす。

そしお日本は米囜や䞭囜等ずは違い、新しい需芁に機敏に反応しお生たれおくるスタヌトアップの数がそう倚くないので、こうした呚蟺事業も同時に䜜るか、それずもスタヌトアップ自身がかなりバリュヌチェヌンを䌞ばしお自瀟事業ずするか、なども考慮する必芁があるかもしれたせん。䞀方で、EUなどに比べるず補造業が残っおいるので、倧䌁業や䞭小䌁業の連携でなんずかなる可胜性もありたす。

このあたりの産業の偎からの敎理や思考に぀いおは、別の蚘事で扱いたいず思いたす。

たずめ

カンパニヌクリ゚ヌションは、䟛絊リスクの皮類ず需芁リスクの段階が䜜る12のマスで案件の状態を衚し、蚭立前に残る仕事を誰が担えるかで䞻導方匏を遞ぶ掻動、ずしお敎理しおきたした。衚の䞭の列は需芁偎に残る仕事の性栌、行は運営䞻䜓が反埩しお提䟛すべき怜蚌ずクリ゚ヌション機胜をそれぞれ敎理しお、どういった機胜が必芁かを教えおくれるものではないかず思いたす。そしお人ず資本はどのマスでも必芁で、人から入るか、課題から入るか、資産から入るかは、これらの12マスずは別の遞択ずなっおいたす。

25幎刻みで敎理する、戊埌日本ず2020幎代の問い

2020幎代も埌半にさしかかり、私たちは今、䜕を問うべきなのか、最近よく考えおいたす。

その問いの1぀が最近よく蚘事ずしお曞いおいる『思想』です。思想の方向性は事業の土台ずなり、今埌の事業やスタヌトアップの圚り方に倧きく圱響するず考えおいるからですこれに぀いおは別蚘事参照。

思想を、

  • 認識の地図
  • 評䟡の基準のものさし
  • 実践の指針ずしおの進路

の䞉぀で捉える敎理をしたずきMullinsのむデオロギヌの定矩を参考にしおいたす、1番目に挙げた「認識の地図」の構成芁玠には「過去・珟圚・未来の認識」が含たれるず蚀われおいたす。぀たり、これからの思想を考える䞊では、未来を考えるのず同時に、これたでの歎史を捉え盎す䜜業も欠かせたせん。

そしお最近、戊埌を振り返る曞籍が倚く発刊され぀぀あり、そうした歎史の芋取り図を匕こうずいう䜜業が方々で行われおいるように思いたす。そんな䞭で、専門家ではない自分が歎史を倧たかに芋るのは少し気が匕けるずころもありたすが、資本や事業にかかわる今埌の思想を考えおいく䞊で、ここ数十幎の歎史に぀いお、ビゞネスに圹立぀圢でざっくりずした芋取り図を描く䜜業もあっおもよいのでは、ず思うようになりたした。

そこで䞀぀の詊みずしお、ここでは戊埌を1945–1970幎、1970–1995幎、1995–2020幎、2020–2045幎ず25幎ず぀に区切り、四半䞖玀ごずの倉化を敎理しおみたいず思いたす。そうするこずで、これからの2020–2045幎の茪郭が芋えやすくなるのではないか、ずいうのがその背景の意図です。

これから詳しく話しおいきたすが、それぞれの時代が盎面した課題や、そこから生じた問い、そしおその䞻な匕き受け手を振り返るず、倧たかには次のような流れをたどっおきたように思われたす。

  • 1945幎の終戊埌には、どのような囜家や瀟䌚を぀くり盎すかずいう問いを、囜家ず䌁業が䞭心ずなっお匕き受けたした。
  • 1970幎ごろからは、豊かになった瀟䌚でどのような暮らしを築くかずいう問いを、家族や地域、組合などの身近な集団が匕き受けたした。
  • 1995幎以降は、所属する組織による保障が揺らぐなかで、自分はどう生き、働き、支え合うかずいう問いを、䞻に個人が匕き受けるようになりたした。同時に、個人が自ら事業や掻動を立ち䞊げ、組織を぀くる自由も広がっおいきたした。ただし、雇甚や資本配分を決める力は個人ではなく、䌁業ず囜境を越える資本の偎に集たっおいきたした。

そしお2020幎代以降は、感染症や安党保障、脱炭玠、そしお人口枛少など、「個人や個別の組織では匕き受けきれない芏暡の問い」が、改めお前面に出おきおいるず感じおいたす。

そうした問いに向き合うには、集団ずしおの意思ず力が必芁です。しかし、埌述するように、この数十幎をかけお、問いの匕き受け手は埐々に個人ぞず移行しおきたように思いたす。そこから再び䞀気に囜家のような集団ぞ暩力をたずめようずするず匷い反発を生みかねたせんし、たた安易に暩力の集䞭を進めれば、囜家を䞭心ずした党䜓䞻矩的な統制に傟く危険も吊定できたせん。特に昚今はテクノロゞヌの進展により、過去に比べお囜家等の匷暩を持぀䞻䜓による統制がしやすくなっおいるずいう面もあり、そのリスクは増しおいたす。

そしお䞀方で、囜境を越えお圱響力を持぀民間プラットフォヌム䌁業が台頭するなかでは、囜家に暩胜を集めたずころで解決できるずは限らないずいう面もありたす。そうした意味でも、過去に戻るこずずは異なる圢で、今からの圚り方を考えおいかなけらばならないのだろう、ず感じおいたす。

その意味で、個人の自由を保ちながら、倧きな問いを共同で匕き受ける仕組みをどう圢成しおいくかが、いた私たちが盎面しおいる課題なのではないかず考えおいたす。

25幎単䜍で補助線を匕いお比范する問いず匕き受け方

ここからは、終戊の幎である1945幎を起点ずしお、四半䞖玀25幎ごずの補助線を匕きながら時代を振り返っおいきたす。

25幎ずいう区切りはあくたで䞀぀の補助線にすぎたせんが、この単䜍を遞んだのにはいく぀かの理由がありたす。

  • 100幎ずいう時間を思想の芖点から捉え盎す際、10幎単䜍では现かすぎ、50幎では倧たかすぎるため、20〜25幎皋床の間隔で眺めたほうが珟圚ぞの芋通しを立おやすいこず
  • 倧阪䞇博が開催された「1970幎」ずいう象城的な節目があるこず以前の「思想ず資本」シリヌズでも1970幎を䞀぀の区切りずしお扱いたした
  • 阪神・淡路倧震灜や地䞋鉄サリン事件が起きた「1995幎」ずいう倧きな転換点があるこず蟻田真䜐憲氏も1990幎代を区切りずし、ずりわけ1995幎ではないかず論じられおいたす
  • 新型コロナりむルスCOVID-19の感染拡倧が始たった「2020幎」ずいう明確な断絶があるこず
  • 次の「2045幎」がちょうど戊埌100幎の節目にあたるこず

もちろん、石油危機など他の出来事を契機ずしお区切るこずも可胜ですが、党䜓の構造を把握しやすくするためにこの四半䞖玀区分を採甚しおいたす。その䞊で、各期間における「本皿で泚目する問い」ず「その䞻な匕き受け手」を敎理するず、次のような察応関係になりたす。

時期 本皿で泚目する問い 䞻な匕き受け手
1945–1970幎 戊埌の日本を、どのような囜や瀟䌚に぀くり盎すか 囜家・䌁業
1970–1995幎 豊かになった瀟䌚で、どのような暮らしを築くか 家族・地域・組合
1995–2020幎 自分はどう生き、働き、支え合っおいくか 個人
2020–2045幎掚枬 個人の自由を保ちながら、誰ず䜕を、どう共同で匕き受けるか 問い盎される「私たち」連携する共同の䞻䜓

ここからは䞉぀の道筋で時代を芋おいきたいず思いたす。たず囜内を1945幎から珟圚たで進み、次に1945幎から1870幎たで遡っお戊埌の長さを盞察化し、最埌に1870幎から䞖界の偎で珟圚たで時間を進めたす。

囜家ず䌁業が再建ず成長を担った1945–1970幎

1945幎8月に日本は終戊を迎えたした。終戊盎埌の日本が盎面した課題は、生掻や産業の埩旧にずどたらず、囜家の制床そのものを組み盎すこずでした。連合囜軍による占領のもずで日本囜憲法の制定や民法改正が進み、統治の仕組みや家族に関わる諞制床が倧きく刷新されたす。「これからの囜や瀟䌚をどう぀くり盎しおいくか」ずいう課題が、切実な問いずしお人々の目の前にありたした。

政府は占領圓局ず折衝しながら制床を敎え、䌁業は生産ず雇甚の回埩を急ぎ、さらに朝鮮戊争による特需などを契機ずしお、日本は安党保障の倚くを米囜に委ね぀぀経枈発展に資源を集䞭させ、䌁業も急速な成長を遂げおいきたす。

その成長の過皋では、劎働組合や瀟䌚運動が掻発化し、暩利の確立や成果の公平な分配を求める匷い動きも芋られたした。しかし、瀟䌚を動かす力の実質的な䞭心にあったのは、やはり囜家ず䌁業だったず考えられたす。䞡者は政策や方針をすり合わせながら、その実行に必芁な資金や組織を動かす䞻圹ずしお機胜しおいたした。

特に䌁業は、人々が働いお所埗を埗る堎であるず同時に、豊かな生掻に必芁な物資を䟛絊する䞭心的な担い手でもありたした。高床経枈成長期には家電補品や自動車が急速に普及し、日々の生掻様匏も䞀倉したほか、生産や雇甚の拡倧を牜匕する䌁業の掻動を通じお、囜党䜓の経枈成長が䞀人ひずりの働き方や家庭の暮らしず盎接に結び぀いおいた時代だったず蚀えたす。

あわせお、生掻を支える瀟䌚保障の網も広がっおいきたした。1961幎には囜民皆保険・皆幎金が実珟し、雇甚者だけでなく自営業者や蟲業埓事者も含めお、公的な医療保険や幎金に加入する䜓制が敎いたす。病気や老埌のリスクに備える仕組みを囜が蚭蚈し、囜民が保険料を拠出しお支え合う構造は、生掻を安定させる匷固な柱ずなりたした。䌁業からの勀劎所埗ず公的な瀟䌚保障制床が䞡茪ずなるこずで、家族の生掻を支える基盀が確立されたのがこの時代です。

ずはいえ、そうした成長ず分配の恩恵から取り残された人々も少なくありたせんでした。深刻な公害に苊しむ地域が生じ、安定した正芏雇甚の枠倖に眮かれた局も存圚しおいたした。家庭内では、家事や育児・介護ずいったケア劎働の倚くを女性が無償で担い、倖での経枈掻動ぞの参加が制玄されおいたした。たた、1972幎たで米囜の斜政暩䞋におかれおいた沖瞄のように、この時期の「私たち」の枠組みから構造的に倖偎に眮かれおいた地域や人々もいたした。

このうち家庭内の性別分業は、この時期には解決すべき問題ずしおより、䌁業が男性の長時間劎働を前提に成長し、その男性を家庭が支えるずいう成長モデルの前提ずしお扱われおいたように思いたす。負担は課されおいながら、それが負担ずしお数え䞊げられず、囜家ず䌁業が匕き受けた「囜や瀟䌚をどう぀くり盎すか」ずいう問いの倖偎に眮かれおいたのです。

所埗が向䞊し物質的な豊かさが実珟した䞀方で、公害問題やケア負担の偏りずいった歪みが蓄積しおいったのが、この最初の四半䞖玀でした。そのため瀟䌚の関心は次第に、「手にした豊かさをどのような暮らしに結実させるか」ずいう、家族や地域ずいった身近な集団における問いぞず移っおいくこずになりたす。

暮らしの芁求ず遞択が広がった1970–1995幎

1970幎ごろからの四半䞖玀では、䌁業の雇甚ず囜の瀟䌚保障に支えられた暮らしを前提ずしながら、人々が䜕を求め、生掻の質をどう高めようずするのか、その力点が倧きく倉化しおいきたした。

人々の豊かさに察する意識に顕著な倉化が珟れたのもこの時期です。厚生劎働癜曞が匕く内閣府の䞖論調査を振り返るず、1970幎代に入っお「物質的な豊かさ」を重んじる回答ず「心の豊かさやゆずり」を重芖する回答が拮抗し始め、70幎代埌半には埌者が前者を䞊回るようになりたす。生掻の質的な充実を求める動きの背景には、䜕を豊かさず芋なすかずいう䟡倀芳自䜓の転換があったず考えられたす。

そしお、この時代に暮らしの基本単䜍ずなったのが「家族」でした。䜏たいの遞択や家蚈の䜿途、子どもの教育や老埌の生掻蚭蚈に向き合う䞭心は家族でした。家族はその䞭で誰が働き、誰が育児や介護を担うかを配分・調敎しながら、望たしい暮らしを具䜓化しようずしたした。生掻䞊の倚様な遞択やケアの責任ずいった問いを日垞的に匕き受けおいたのは、たさにこの家族ずいう単䜍であり、特に1960幎代に急増した栞家族だったず蚀えたす。

しかし、公害による健康被害や生掻環境の悪化、賃金や劎働時間、食品の安党性ずいった問題は、個別の家族の努力だけで解決できるものではありたせん。こうした共通の生掻課題に察しおは、䜏民組織や地域コミュニティ、劎働組合、生掻協同組合などの倚様な䞭間集団が結成され、行政や䌁業に察しお環境改善や制床拡充を求めおいきたした。

単独の個人ではなく、たず家族ずいう芪密圏があり、さらにその家族ず囜家ずの間を媒介する䞭間的な集団が掻発に機胜しおいたのが、この時代の特城でした。

もっずも、こうした家族や集団は人々を守るセヌフティネットずなった䞀方で、その内郚の圹割分担には前の時代ずは別の問題が珟れたした。前の四半䞖玀に成長モデルの前提ずしお定着した、男性の終身雇甚ず女性の無償のケア劎働ずいう䞖垯モデルが、今床は家族が暮らしの問いを匕き受けるずきの初期条件になったのです。䜏たいや教育、老いた芪の介護ずいった問いを家族が匕き受けるほど、その負担は家庭内の女性に集䞭したした。しかも、䜕を遞び誰が担うかを決める力は䞖垯内で察等ではなく、負担を担う偎が決定に関䞎しにくいずいう構造が、家族ずいう単䜍の内偎に再珟されおいたず考えおいたす。

同時にこの時期には、この圹割分担そのものが争点になりたす。女性の瀟䌚進出や男女平等を求める運動が広がり、雇甚の平等が制床の課題になる䞀方で、専業䞻婊䞖垯を前提ずした皎や幎金の仕組みも敎えられおいきたした。家族は問いを匕き受ける䞻䜓であるず同時に、その内郚の配分が問い盎される堎でもあったのです。

たた、地域コミュニティの同調圧力やわずらわしさに息苊しさを感じる個人も少なくありたせんでしたし、䌁業の正瀟員雇甚や暙準的な家族の枠組みから倖れた人々に察する包摂の䞍十分さも䟝然ずしお倧きな課題でした。

こうした抑圧や䞍平等を解消しようずする瀟䌚運動や制床改革の詊行錯誀を経お、問いを匕き受ける単䜍は、埐々に集団から個人ぞずシフトしおいくこずになりたす。

個人の遞択ず負担が問われた1995–2020幎

1990幎代に入り、バブル経枈の厩壊を経おグロヌバリれヌションずリベラリズムが浞透するなかで、さたざたな課題や問いを匕き受ける単䜍は、組織や集団から個人ぞず本栌的に移行しおいきたした。

個人の自埋的な遞択ず自己責任を重んじる朮流は、圓時の政策方針にも明確に瀺されおいたす。1999幎の経枈䌁画庁による「経枈瀟䌚のあるべき姿ず経枈新生の政策方針」では、個人の自由ず自己責任を行動原理の基本に据え、倚様な職業遞択や挑戊を埌抌しする環境敎備が提唱されたした。䞀人ひずりが自らの意思で進路を切り拓くこずが促され、その自由な遞択を支えるための制床的基盀が暡玢されおいたず蚀えるでしょう。

同時に、個人が䞻䜓ずなっお掻動を起こすための道具や環境も倧きく広がりたした。むンタヌネットの普及によっお個人が䞖界に向けお盎接発信し、志を同じくする協力者や顧客を芋぀け、倧組織に属さずずも事業を立ち䞊げるこずが可胜になりたした。たた非営利の領域においおも、1995幎の阪神・淡路倧震灜における広範なボランティア掻動の高たりを契機ずしお、1998幎に特定非営利掻動促進法NPO法が制定・斜行され、垂民が自発的に瀟䌚課題の解決に取り組む新たな回路が開かれたした。

この四半䞖玀においお個人は、家族や地域、䌁業ずいった既存の共同䜓の拘束から解攟され、生掻や雇甚の遞択を自ら匕き受けるこずを求められる存圚になりたした。その反面、新しい仕事や支え合いの仕組みを自埋的に生み出しおいく䞻䜓ずしおの自由を獲埗したずも蚀えたす。自ら問いを立お、仲間を募り、必芁に応じお自前の組織を立ち䞊げるずいう匕き受け方です。埓来の固定的な圹割に銎染めなかった人々にずっおも、自らの可胜性を切り拓くための技術や制床的基盀が敎っおいきたした。

この時代の埌半、ずりわけ2010幎代に掻発化したスタヌトアップや起業、あるいはSNS等で目立぀個人むンフル゚ンサヌずいった珟象も、個人を起点ずしお問いを匕き受けるための代衚的な装眮ずしお機胜したず考えおいたす。

 

ただし、問いの匕き受け手が個人ぞ移ったにも関わらず、力の所圚が個人ぞ移ったかずいうず、そうではない面も倚くありたした。この四半䞖玀に雇甚の圢や資本の配分を実際に決めおいたのは、個人ではなく䌁業ず、囜境を越える資本でした。

1999幎の劎働者掟遣法改正で掟遣の察象業務は原則自由化され、2004幎には補造業ぞの掟遣も解犁されたす。非正芏雇甚の比率は1990幎の玄2割から2019幎には4割近くに達し、雇甚の倉動リスクは個人の偎ぞず移されたした。同じ時期に䌁業の内郚留保は積み䞊がり、2015幎のコヌポレヌトガバナンス・コヌド以降は、劎働者ではなく、株䞻ぞの還元が重芖されるようになりたす。個人の自己責任ずいう芏範は、資本ず劎働の移動可胜性を高めるために芁請された芏範でもあったように思いたす。

䞀方で、日本䌁業そのものは、1945–1970幎に担っおいた匕き受け手の圹割から降りおいきたした。バブルの埌始末等を行いながら、䞊行しお電機や半導䜓で囜際的な地䜍を倱い、終身雇甚ず䌁業内犏祉を瞮小するなかで、䌁業は雇甚ず生掻保障を匕き受け、その察䟡ずしお瀟䌚的な正統性を持぀存圚ではなくなっおいきたす。その空癜を埋めたのが、海倖の投資家や栌付け機関ずいった囜境を越える資本ず、個人自身でした。

個人の゚ンパワヌメントを支えた道具もたた、倚くは海倖のプラットフォヌムでした。個人が䞖界に発信できたのはGoogleやFacebookの䞊であり、スタヌトアップはベンチャヌキャピタルの資本の䞊で、個人の商売もプラットフォヌムが甚意した垂堎の䞊で成り立぀ようになっおいきたす。個人の自由の基盀を䟛絊しおいたのは囜境を越える䌁業であり、その基盀の利甚条件を決めおいたのも圌らでした。

そしおそうしたプラットフォヌムを持぀起業家やVCずいう個人が力を持぀ようになり、富ず名声、そしお暩力を集めおいくこずになりたす。

総じお2020幎たでの四半䞖玀は、日本䌁業が長期雇甚等による実質的な瀟䌚保障の担い手だったずころから退き、個人の゚ンパワヌメントが倧きく前進した時代でした。しかしその䞀方で、構造的な栌差やセヌフティネットの䞍備が「自己責任」の名のもずに個人の努力䞍足ぞず転嫁され、個人間の過酷な競争が起こり、自己責任や胜力䞻矩の芏範を個々人が内面化しおいった時代でもあったず蚀えたす。

䟛絊ず調敎の課題が重なる2020幎代

2020幎代を迎えるず、瀟䌚が盎面する課題や問いの質が倧きく倉容しおきたした。

2020幎に始たった新型コロナりむルスの䞖界的な流行では、医療サヌビスの䟛絊胜力そのものず、逌迫する資源をいかに配分するかずいう調敎胜力の双方が厳しく詊されたした。たた、2010幎代埌半から先鋭化しおきた米䞭の地政孊的察立は、個々の䌁業の努力で察凊できる範囲をはるかに超えた囜家芏暡での察応を迫っおいたす。さらに2022幎のロシアによるりクラむナ䟵攻を契機ずしお、゚ネルギヌや食料、半導䜓をはじめずする重芁物資のサプラむチェヌン確保が、囜家の安党保障に盎結する死掻問題ずしお再認識されるようになりたした。

加えお脱炭玠瀟䌚ぞの移行には、瀟䌚むンフラ党䜓の抜本的な再構築ず、数十幎におよぶ巚額の長期投資が必芁になりたす。しかもその需芁偎はグロヌバル垂堎であり、囜内の刀断だけで完結したせん。囜内に目を向けおも、急激な人口枛少ず少子高霢化が進むなかで、様々な構造的課題に盎面しおいたす。たずえば医療や介護の担い手をいかに維持するのか、瀟䌚のむンフラや居䜏地域をどのように蚈画的に瞮退・再線させおいくのか、そしおその過皋で生じる過重な負担を誰がどのように分担するのか、ずいった課題です。

もちろん、感染症の脅嚁や戊争、地球環境の危機、あるいは人口動態やむンフラの老朜化ずいった問題は、2020幎を境に突劂ずしお生じたわけではありたせん。しかし、これらの難題が耇合的に重なり合うなかで、「個人の自由な掻動を支えおいるはずの䟛絊基盀や瀟䌚制床、そしお秩序そのものを、䞀䜓誰が維持し、支え続けるのか」ずいう問いが、改めお瀟䌚の前面に浮䞊しおきたず捉えられたす。

歎史に厳密な25幎呚期が存圚するわけではありたせんが、こうしお四半䞖玀の歩みずしお振り返っおみるず、いた私たちが立っおいるのは、たさに問いの次元そのものが根本から転換し぀぀ある過枡期なのではないかず感じられたす。

そしおここたでの内容だけを芋お事業を考えるず、「囜家ず同䞀化した事業構築やスタヌトアップをしおいくこずが、今埌儲けるための近道では」ず思われるかもしれたせん。そうした結論に飛び぀く前に、もう少し匕いお歎史を芋おみたいず思いたす。

戊埌を盞察化するために1945幎から1870幎ぞ遡る

ここたで1945幎から2020幎代たでの歩みを、問いの匕き受け手が囜家や䌁業から家族や地域ぞ、そしお個人ぞず移っおいく過皋ずしお芋おきたした。この節では䞀床芖点を切り替え、1945幎から25幎ず぀時蚈の針を巻き戻しお1870幎たで遡っおみたいず思いたす。目的は、戊埌の75幎ずいう時間を、その手前にある同じ長さの75幎ず䞊べるこずで盞察化するこずです。遡る際にも、その時代の問いを誰が匕き受けおいたのかずいう、同じ芖点を䜿いたす。

たず起点ずなる1945幎時点では、生産、資金、劎働力、蚀論のすべおが囜家総動員法1938幎のもずで戊争遂行に組み蟌たれおいたした。問いを匕き受けおいたのは囜家であり、囜民は動員される担い手ずしお、負担だけを匕き受けおいた状態です。

その䞀぀手前にあたる1920–1945幎は、囜民が匕き受け手の偎に加わりかけた盎埌に、匕き受け手が再び囜家ぞず固定されおいった四半䞖玀でした。1925幎の男子普通遞挙法によっお玍皎芁件が撀廃され、有暩者の数は玄4倍に急増したす。しかし同じ1925幎には治安維持法が制定され、囜家のあり方そのものを問う議論は蚀論の枠倖ぞず远いやられたした。女性の参政暩も認められないたたです。さらに1932幎の五・䞀五事件によっお政党政治の慣䟋が厩壊し、決定の重心は軍郚や官僚機構ぞず移っおいきたす。普通遞挙の実珟からわずか10幎䜙りで、囜民は問いの匕き受け手ではなく、囜家が匕き受けた問いぞの動員の察象ぞず戻されおいったのです。

さらに䞀぀手前の1895–1920幎は、負担を担った人々が、自らも匕き受け手になるこずを求めお立ち䞊がった四半䞖玀でした。1895幎に終結する日枅戊争、1904幎から始たる日露戊争、そしお1914幎の第䞀次䞖界倧戊を支える戊費ず兵力は、増皎や城兵ずしお囜民に広く課されたした。その意味で、1905幎の日比谷焌打事件は戊争の負担に耐えた囜民が講和条玄に玍埗しなかったこずぞの抗議であり、1918幎の米隒動は戊時むンフレによる生掻困窮に察する異議申し立おでした。この米隒動を契機ずしお本栌的な政党内閣が誕生し、普通遞挙を求める運動が党囜的な高たりを芋せるこずで、1925幎の普通遞挙の実珟ぞず぀ながっおいくず芋るこずができたす。

そしおもう䞀぀手前の1870–1895幎は、明治維新1868幎の盎埌に近代囜家の骚栌を぀くり䞊げた四半䞖玀です。「近代囜家をどう぀くるか」ずいう問いの匕き受け手は明治政府であり、政府が䜕よりも優先しお敎えたのは、囜民から負担を城収するための制床的な経路でした。1872幎の孊制、1873幎の城兵什ず地租改正によっお、教育、兵圹、玍皎の矩務が、旧来の藩や村の仲介を経ずに囜民䞀人ひずりぞ盎接課されるようになりたす。䞀方で、囜民が匕き受け手の偎に加わるための回路の敎備は倧きく遅れ、囜家や華族が䞀手に牜匕するこずになりたす。1890幎にようやく垝囜議䌚が開蚭されたものの、有暩者は盎接囜皎15円以䞊を玍める満25歳以䞊の男性に限られ、その数は総人口の1%匷にすぎたせんでした。自由民暩運動は、負担を担う偎からこの回路を求めた運動だったず蚀えたす。

こうしお1870幎たで遡っおみるず、戊前の75幎は、問いの匕き受け手が䞀貫しお囜家に固定されおいた時代だったこずが芋えおきたす。囜民や䌁業は負担の担い手ではありたしたが、匕き受け手の偎に加わるこずは最埌たで限定的なたたでした。これに察しお戊埌の75幎は、匕き受け手そのものが囜家から䌁業ぞ、家族や地域ぞ、そしお個人ぞず降りおきた時代ずも蚀えたす。

その䞊で、時間の長さそのものにも目を向けおみたいず思いたす。1870幎から敗戊に至る75幎ず同じだけの時間を、戊埌日本はすでに2020幎の時点で歩み終え、珟圚地はそれを超えた先にありたす。

戊前 75幎   1870 ---- 1895 ---- 1920 ---- 1945
                                          |
戊埌 75幎                                 1945 ---- 1970 ---- 1995 ---- 2020 -- 珟圚

戊前の75幎の間に、日本は近代囜家の土台を築き、列匷の䞀角ぞず登り぀め、やがお囜家総動員に至りたした。戊埌の75幎は同じ長さの時間のあいだに、匕き受け手の所圚がそれぞれ倧きく動いおいたす。戊埌の75幎ずいうのは急速に倉化した時代だったず考えられたすし、2020幎から今埌に぀いおも、倧きな倉化が起こっおもおかしくはないずいうこずです。

ただし、この遡行はあくたで囜内の出来事だけを远ったものです。1870幎の囜づくりも、その埌の75幎の歩みも、実際には䞖界から日本に向けられた問いに答える圢で進められおきたした。そこで次の節では、1870幎に立ったたた向きを倉え、今床は䞖界の偎から時間を進めおみたいず思いたす。

䞖界からの問いは誰に届いたか 1870–2020幎代

日本における各四半䞖玀の倉遷は、垞にその時々の囜際環境のなかで進んできたした。ずりわけ戊埌の日本は、安党保障ず囜際垂堎の秩序維持の倚くを米囜に委ねるこずで繁栄を築いおきたした。その委ねおきたものが䜕で、それがどのように倉化しおきたのかを把握しおおかなければ、2020幎代以降に私たちが問うべき問いを芋誀っおしたうず考えおいたす。

そこでこの節では、芖点を䞖界の偎に眮き盎しお眺めおみたす。䞖界が日本に䜕を問うお、その問いが囜内の誰に届き、日本は䜕を匕き受けお、逆に䜕を委ねおきたのかを、囜内線ず同じ四半䞖玀ごずの補助線を甚いながら、1870幎から時間順に蟿っおみたいず思いたす。囜内の歩みを远った節が、問いの匕き受け手の移り倉わりを「内偎」から芋たものだずすれば、この節は同じ移動を囜際環境ずいう「倖偎」から捉え盎す詊みです。

時期 䞖界が日本に向けた問い 問いの宛先 日本の答え方匕き受けたもの委ねたもの
1870–1895幎 開囜せよ 囜家 近代囜家を急いで぀くる
1895–1920幎 列匷の䞀角ずしお振る舞え 囜家 アゞアの列匷の䞀角に。総力戊に耐える囜家を぀くり、負担を囜民に広げる。債暩囜ぞ転じる
1920–1945幎 恐慌ず察立のなかでも、囜際協調を保お 囜家 倧囜間の協調が匱たるなか、日本も察倖拡匵を進める。連盟脱退を通告1933幎し、やがお総力戊ぞ向かう
1945–1970幎 西偎の䞀員ずしお埩興せよ。安党保障は委ねよ 囜家。茞出ず雇甚の担い手ずしお䌁業ぞ届き始める 安党保障の倚くを米囜に委ね、囜家・䌁業が埩興ず成長を担う
1970–1995幎 経枈倧囜ずしお、垂堎を開き、貿易䞍均衡を調敎せよ 䌁業・囜家 䌁業ず囜家が貿易摩擊・円高ぞの察応を担い、家族・地域・組合が囜内の暮らしを支える
1995–2020幎 グロヌバル・スタンダヌドに合わせよ 䌁業・個人 海倖の資本・掻動基盀を利甚し、個人の自由を広げる䞀方、察応の責任も個人に求める
2020幎代 秩序のコストを分担せよ  答えは定たっおいない。少なくずも、委ねおいたものぞの支払いや、先送りしおいたこずぞの問い盎しが行われ始めおいる

1870幎から1945幎たでの䞉぀の四半䞖玀においお、䞖界からの問いの宛先は䞀貫しお囜家でした。最初の問いは「開囜せよ」でした。その埌、日枅戊争を通じお列匷間の競争に参入し、日英同盟1902幎を経お列匷の䞀角に加わり、第䞀次䞖界倧戊を経お債暩囜ぞ転じるころには、䞖界からの問いは「列匷の䞀角ずしお振る舞え」ぞず倉化しおいたした。

1920幎以降になるず、䞖界からの問いは「恐慌や察立のなかでも協調を保ち、囜際秩序の内偎に留たれ」ずいうものぞず倉わりたす。しかし1929幎の䞖界恐慌ののち、䞻芁囜は自囜通貚圏によるブロック経枈ぞず閉じこもり、圓時最倧の経枈力を持っおいた米囜も囜際秩序の維持を胜動的に匕き受けようずはしたせんでした。秩序の内偎に留たれず求める䞖界の偎にも、その秩序を支える匕き受け手が存圚しなかったのです。

日本はやがお満掲事倉を経お囜際連盟を脱退し、その延長線䞊で総力戊ぞず突き進むこずになりたした。第二次䞖界倧戊末期に構想されたブレトンりッズ䜓制や囜際連合の蚭立は、たさにこの反省の䞊に蚭蚈されたものでした。

1945–1970幎に䞖界が、実質的には米囜が日本に向けた問いは、「西偎の䞀員ずしお埩興せよ、安党保障は委ねよ」ずいうものでした。同囜は金・ドル本䜍制やマヌシャル・プラン、GATTやNATOなどを通じお自由䞻矩陣営の同盟囜に防衛䜓制ず開かれた垂堎を提䟛し、その芋返りずしお囜際秩序の意思決定を䞻導したした。

日本は日米安党保障条玄のもずで防衛の倚くを委ね、経枈成長に資源を集䞭させたす。このずきの問いの宛先は囜家でしたが、その答えを実質的に担ったのは茞出ず雇甚を牜匕した䌁業であり、問いの届き先が囜家から䌁業ぞず広がり始めたした。前の節で觊れた囜家ず䌁業による埩興・成長モデルは、防衛ず囜際垂堎ずいう倖郚環境を倖偎に委ねた䞊で初めお成り立っおいた仕組みだったず蚀えたす。

続く1970–1995幎には、ニク゜ン・ショックや二床の石油危機、倉動為替盞堎制ぞの移行を経お、米囜は新自由䞻矩的な垂堎経枈モデルぞず舵を切りたす。日本はこの時期、米囜が維持する秩序の内偎で最倧の経枈的挑戊者ずなり、䞖界からの問いは「貿易黒字を還流し、囜内垂堎を開攟せよ」ぞず倉わりたした。日米貿易摩擊や1985幎のプラザ合意はその象城です。摩擊の最前線に立っおいたのは茞出䌁業であり、察倖的な察応も䌁業の自埋的な行動ずしお求められたため、䞖界からの問いの宛先はこの段階で䌁業ぞず移っおいきたした。

ここで泚目したいのは、倖からの問いず内からの問いが、それぞれ別々の盞手に届いおいたずいう「ずれ」です。倖偎からは垂堎開攟をめぐっお䌁業に問いが届く䞀方で、内偎では暮らしの問いを家族や地域、組合ずいった䞭間集団が匕き受けおいたした。䞖界においお問いの匕き受け手が垂堎や䌁業ぞず移行し぀぀あったこの四半䞖玀においお、日本囜内では䟝然ずしお芪密圏や地域瀟䌚がただ比范的機胜しおいた、ずいうこずです。囜内で問いの単䜍が垂堎や個人ぞず本栌的にシフトするのは1995幎以降のこずであり、この時間差が、埌の時代においお短期間での急激な倉化を匷い、過酷な自己責任論ぞず぀ながっおいった可胜性もあるず考えおいたす。

1995–2020幎には、WTO䞖界貿易機関の発足や䞭囜の加盟を経お、ヒト・モノ・カネ・情報が囜境を越えお掻発に行き亀うグロヌバル化が進展したす。䞖界からの問いは「グロヌバル・スタンダヌドに合わせよ」ぞず倉わり、その宛先は䌁業を飛び越えお䞀人ひずりの生掻者ぞず盎接降りおいきたした。1999幎の政策方針が個人の自由ず自己責任を行動原理に据えたこずや、非正芏雇甚の拡倧によっお雇甚の倉動リスクが働く人々の偎ぞ移された背景には、こうした倖的な芁請があったずも考えられたす。自己責任ずいう芏範が資本や劎働の流動性を高めるために求められたものだったずすれば、それは囜際瀟䌚ず個人が盎接぀ながり、そしお囜際瀟䌚から個人ぞず盎接投げかけられた問いでもあったず考えられたす。

そしお日本はこの四半䞖玀の間に、経枈の基本ルヌルやデゞタル基盀、そしお資本の調達を海倖、特に米囜に委ね、その前提の䞊で個人の掻動の自由を広げおいきたした。個人が䞖界に向けお情報発信できたのは巚倧な海倖プラットフォヌムの䞊であり、その利甚条件を決定しおいたのも囜境を越える巚倧テック䌁業です。

結果ずしお、囜内における囜家の存圚感は盞察的に埌退しおいきたした。同じころ、2008幎の䞖界金融危機を経お䞭囜がGDPで日本を远い抜き、米囜瀟䌚の内郚でも「なぜ自囜が莫倧なコストを払っおたで䞖界の秩序を支え続けなければならないのか」ずいう䞍満が噎出するようになり、「米囜は䞖界の譊察官ではない」ずいう2013幎のオバマ倧統領の発蚀に぀ながりたす。䞖界が米囜に委ねおいたものぞの支払いは、すでにこの時期から甚意され始めおいたず蚀えるでしょう。

そしお2020幎代を迎え、米䞭察立の激化やロシアによるりクラむナ䟵攻を経お、䞖界からの問いは「囜際秩序のコストを分担せよ」ずいう厳しい芁求ぞず倉貌したした。米囜は関皎措眮や先端技術の茞出芏制を通じお、同盟諞囜に察しおも盞応の負担分担を匷く迫るようになっおいたす。か぀お秩序を䟛絊しおくれた倧囜が、負担の察䟡を厳しく求める偎ぞず転じたずいうこずです。

そしお、ここたで述べおきた「䞖界」ずいうものは、䞻に欧米を䞭心ずした「䞖界」でしたが、この20幎、グロヌバルサりスを含めお、様々な囜々がこの䞖界の茪の䞭に入っおきおいたす。そしおこうした囜々は、たさに今、気候倉動などのコスト負担を倧きく受ける囜々であり、そのコストをどのように䞖界䞭で分担するのかずいう問いは、ただ解決できおいたせん。

同時期、各囜囜内でグロヌバリれヌションの圱響による雇甚等の䞍安定化に䌎っお、政治的にも産業政策が埩暩し、さらに経枈安党保障の危機が叫ばれるようになっお、問いの宛先は再び囜家ぞず戻っおきたした。ただし、その匕き受け手の候補は囜家だけにずどたりたせん。二囜間・倚囜間の同盟や地域ブロック、さらには囜境を越えお匷倧な圱響力を持぀米囜のメガプラットフォヌム䌁業が、か぀おずは違い倧手を振るう䞭で、日本ずEUなどのミドルパワヌの囜々はそれに察する察案を持おおいたせん。力関係がいび぀なたた、誰がこの秩序を匕き受けるべきなのか、その枠組みはいただ定たっおいない状況です。

しかも、問いの宛先が囜家に戻っおきたずしおも、それに答えるために必芁な手段が囜家の手元にあるずは限りたせん。雇甚のあり方を決めるのは個々の䌁業であり、資本の配分を決めるのは囜境を越える投資家等による資本であり、サプラむチェヌンを実際に動かしおいるのも民間の事業者だからです。

぀たり、問いの匕き受け手は1995幎以降に個人ぞず降り、決定のための暩力ず胜力はグロヌバルな資本に集たり、そしお秩序の維持にかかる請求曞が囜家や䌁業、囜民宛おに届いおいる、ずいうこずです。2020幎代の困難の根底には、こうしたねじれが同時に生じおいるずいう構造的な珟実があるず考えおいたす。

こうしたなか、日本囜内では明治初期の政治䜓制や戊埌の高床経枈成長期のような、か぀おの囜家像ぞ回垰しようずする蚀説を目にするこずが増えおいたすが、日本を取り巻く囜際環境が根本から倉容し、䞖界ずの結び぀きを断ち切るこずができない珟状を螏たえるず、過去の枠組みぞの単玔な回垰は珟実的な解決策ずは蚀えないように思いたす。

合流点ずしおの2020幎代

こうしお囜内の歩みず䞖界からの芖座ずいう二぀の道筋をたどっおみるず、双方が同じ構造的な移動を内ず倖から映し出しおいたこずが芋えおきたす。

内偎では、問いの匕き受け手が囜家や䌁業から家族や地域ぞ、そしお個人ぞず移っおいきたした。倖偎では、䞖界からの問いの宛先が囜家から䌁業ぞ、そしお個人ぞず向かっおいきたす。戊埌日本の䞉぀の四半䞖玀は、米囜が支える囜際秩序を自明の前提ずし、その安党な内偎で「囜内の誰が課題を匕き受けるべきか」を暡玢しおきたしたが、この内偎ず倖偎は、実は絡み合いながら䞊行しお進んでいたした。

2020幎代に起きおいる事態ずは、この二぀の道筋が合流したこずである、ずも蚀えたす。囜内では少子高霢化やむンフラの老朜化ずいった構造課題が限界を迎え、もはや個人や個別の組織だけでは抱えきれない芏暡の問いが前面に噎出しおきたした。同時に䞖界からは、これたで囜際秩序を䟛絊しおくれおいた倖郚の䞻䜓が、その維持コストを共同で分担するよう迫っおきおいたす。囜防や公正な垂堎ルヌル、゚ネルギヌや食料、重芁物資の安定䟛絊ずいった基盀は、もはや無条件に䞎えられる前提ではなく、日本自身が他囜ず協調しながら胜動的に匕き受け、支えおいくべき察象ずなりたした。

そんな倧きな問いが出され、それを誰が匕き受けるのかが決たらないたた、そのコストの支払いを求める請求曞が手元に届いおいる、ずいうのが、私たちの珟圚地なのではないかず思いたす。

こうした倉化の事業ぞの圱響

そしお請求曞の宛先には、囜家だけでなくビゞネス偎も含たれおいたす。戊埌の日本䌁業は米囜の安党保障や開かれた垂堎、海倖のデゞタル基盀に乗り、秩序の恩恵を享受しおきたした。その秩序が厩れ぀぀ある今、関皎や調達コストの䞊昇、防衛費を賄う皎負担ずいった圢で、か぀お誰かが負担しおいた支払いが今たさに事業にも届き始めおいたす。

そこで囜家ず事業が再び䞀䜓化する道もありうるでしょう。しかし戊埌の䞀䜓化が機胜したのは、倖からの進路の提䟛や、囜内での配分、米囜のコスト負担ずいう䞉぀の条件が揃っおいたからです。珟圚の囜家は進路を迷っおおり、米䞭に比べるず実効的な手段も持おおおらず、日本の囜家ず事業が䞀䜓化したずころで、明治時代あるいは戊埌のような経枈的繁栄は戻っおこないでしょう。雇甚や䟛絊網を握る事業偎が囜家を支える偎に回り、䜕のためにそれを担うのかを自ら問わざるを埗なくなりたす。

しかも、䞀䜓化の盞手は自囜の囜家だけずは限りたせん。AIや半導䜓のような資本集玄型の領域では米䞭が抜きん出おおり、日本単独の䞀䜓化では勝負にならないからです。同盟や地域ブロック、巚倧プラットフォヌムも匕き受け手の候補ずなるなかで、誰を信甚し、䜕を自前で持ち、䜕を誰ず共同で担うのかを、事業の偎で刀断し盎す必芁がありたす。

さらにいえば、誰かが蚭定した芏範やルヌルのうえで戊い続ける限り、その胎元に勝぀こずは難しいでしょう。

それに囜家が進路を芋誀れば事業も立ちゆかなくなりたす。よっお、事業が囜家ず䞀䜓化しおいくのであれば、なおのこず、囜家の進路ずその決め方を事業の偎が䞻䜓的に考え抜く必芁性が高たっおいるず考えおいたす。それを間違えおしたうず、さらに倧きな支払いをし続けるこずにもなりかねたせん。

2045幎に向けお問い続けたい五぀のこず

ここたでの歎史的な敎理を螏たえ、私たちは2020幎から2045幎に至るこれからの四半䞖玀においお、䜕を問い続けおいくべきなのでしょうか。

前の節で芋たように、この問いはビゞネスから遠いものではありたせん。以前の蚘事で曞いたように、思想は政策レゞヌムや個別の政策、垂堎を経お、ビゞネスの条件そのものを倉えおいきたす。安党保障や脱炭玠をめぐる政策がすでにそうであるように、これからの四半䞖玀にどういった問いが前面に出お、それがどのような思想によっお束ねられおいくのかを远うこずは、次に圢成される事業条件を先読みし、危機が来る前に䜕を守るかを決めるための䜜業でもあるず考えおいたす。

戊埌日本の䞉぀の四半䞖玀においおは、時代ごずの課題も、その匕き受け手ずなる䞻䜓も、瀟䌚党䜓である皋床共有されおいたした。しかし2020幎代の困難は、個別の課題に察凊する以前に、「そもそもどのような枠組みで問いを立お盎すべきなのか」ずいう前提そのものを再蚭蚈する必芁がある、ずいう点にあるのではないか、ずも思いたす。

私自身ただその答えを出すこずはできおいたせんが、私たちが未来に向けお問い続けるべき論点を五぀に敎理しお提瀺しおみたいず思いたす。その䞊で、この2020–2045幎ずいう四半䞖玀を、2045幎以降の瀟䌚の暮らしを支える「新たな土台づくりの時期」ずしお䜍眮づけたいず考えたす。

1870幎からの四半䞖玀が1895幎以降の近代産業ず囜家の基盀を築き、1945幎からの25幎間が1970幎以降の豊かな生掻の土台を぀くったように、瀟䌚の基盀を築き盎すには四半䞖玀ほどの時間を芁するように思われたす。人口枛少ず高霢化が䞍可逆的に進行しおも人々の暮らしが穏やかに成り立ち、激倉する囜際秩序の䞭で自埋的な䜍眮を保ち続けるための、持続可胜な生掻ず統治の基盀をどう䞖界ず日本の䞭で䜜っおいくのか、ずいう問いです。

(1) 「私たち」ずは誰か

感染症の危機や安党保障環境の激倉、脱炭玠ぞの移行、さらには人口枛少ずいった課題は、単独の個人や個別の䞀組織だけで抱えきれるものではなく、䜕らかの共同の䞻䜓、すなわち「私たち」を結成しお匕き受けるほかありたせん。しかし、その「私たち」の茪の䞭には、䞀䜓誰が含たれるべきなのかずいう問いがたず生じたす。

珟圚を生きる囜内の有暩者だけを芋おみおも、今は䞖代間で「私たち」の察立が芋られたす。それに加えお、珟圹䞖代だけにずどたるのか、将来においお重い負担を背負うこずになる未来䞖代を含むのか、あるいは医療・介護や物流、生産の珟堎を最前線で支えおいる倖囜人劎働者や地域倖の生掻者たで包摂するのかずいう問いです。

誰を成員ずするかは、「私たち」をどのような原理で束ねるかによっお倧きく巊右されたす。近代日本の既定路線は「囜民囜家」、すなわち囜籍による統合でした。しかし、未来䞖代ぞの配慮も、囜境を越える移動者ぞの察応も、囜籍ずいう単䞀の基準だけでは十分に扱い切れたせん。

統合の基盀ずなる遞択肢ずしおは、䟋えば次のような道が考えられたす。あくたで遞択肢です

  • 憲法や立憲䞻矩の手続きぞの合意によっお結び぀くこず
  • 同じ地域圏で暮らし、道路や医療などの生掻むンフラを共有する事実によっお結び぀くこず
  • 共通の生掻リスクに盎面し、盞互扶助や瀟䌚保険を共有する連垯を基盀ずするこず
  • 望たしい瀟䌚像ずしおの「共通善」を共有するこず
  • 特定の瀟䌚課題をずもに解決するずいう事業目的に賛同しお結び぀くこず

どの原理を遞択するかによっお、誰が内偎に入り、誰が倖偎に眮かれるのかずいう境界線は倧きく倉わるはずです。囜籍は未来䞖代や倖囜籍䜏民を包摂しにくく、地域生掻圏は移動の倚い珟代人を捉えにくく、共通善の共有は合意圢成が難しい代わりに匷固な結束力を生み出したす。単䞀の基盀に䟝存するのか、耇数の基盀を重局的に重ね合わせるのかずいう構想が求められるのではないでしょうか。

あわせお、安党保障や気候倉動のように囜際秩序そのものを共同で維持しおいくのであれば、「私たち」の茪は囜境の内偎に閉じるわけにはいきたせんし、閉じたずころで実効的でもありたせん。どの囜や地域ず、どのような課題を共同で匕き受けるのかずいう察倖的な連垯のあり方も、この問いに含たれたす。「私たち」を課題の匕き受け手ずしお構想するこずは、䜕によっお結束し、誰をその枠組みの倖に眮くのかを決める䜜業そのものでもありたす。

(2) 䜕を誰がどう共同で匕き受けるか

この問いは、「どこたでを共同で担うかずいう線匕き」ず、「それを具䜓的に誰が担うのかずいう割り圓お」の二段構えで考える必芁があるず思いたす。

たず、どこたでを共同で担うかずいう「線匕き」に぀いおです。戊埌の玄75幎間における䞻芁な関心事は、経枈成長によっお生み出された果実を「どのように公平に分配するか」ずいう点が䞻でした。

しかし2020幎代の日本においお、私たちが盎面しおいるのは、生掻に必芁な基盀を「そもそも安定しお䟛絊し続けられるのか」ずいう、䞀段手前にある生産ず䟛絊の限界に関する問いです。医療や介護、゚ネルギヌ、食料、物流の担い手䞍足に加えお、資源䟡栌の高隰にいかに瀟䌚党䜓で察凊するかずいう課題も、すべお䟛絊の維持に関わる問題です。

さらに前述したように、防衛や垂堎ルヌル、基幹物資の調達ずいった、これたでは自明のものずしお倖郚に委ねおいた囜際秩序の維持たでもが、いたや日本瀟䌚も胜動的に匕き受けるべき課題ずなっおきたした。

これらの課題のうち、どこたでを瀟䌚が䞀䜓ずなっお匕き受け、どこからを個人の自己責任に委ねるべきかが問われたす。共同の範囲を広げすぎれば、囜家による個人の統制ずいう党䜓䞻矩的なリスクを呌び蟌みかねたせんし、逆に個人の領域に残しすぎれば、1995幎以降の過酷な自己責任論をさらに加速させおしたい、珟圚のアメリカのような状況になるかもしれたせん。

さらに、急激な人口枛少のもずでは、これたでの拡倧を前提ずした制床蚭蚈から、芏暡の適正化を前提ずした「瞮小の蚭蚈」ぞず舵を切る必芁があるず考えおいたす。䜕を畳み、䜕を守り、どの地域にどういった生掻機胜を集玄しおいくのか、ずいう刀断です。もし受け皿ずなる拠点に十分な医療や亀通の担い手が存圚しなければ、拠点の集玄は䜏民にずっお長時間の移動や埅機ずいう過重な生掻負担ずなっお跳ね返りたす。撀退する偎に残される䜏宅やむンフラの維持管理をどうするのかずいう問題も、未解決のたた残されたす。

高床成長期に䜜られた諞制床は拡倧局面の意思決定しか想定しおおらず、瞮小や撀退を決定するための公正な手続きず責任の所圚は、ほずんど確立されおいたせん。あわせお、政策の目暙を「栌差の是正」に眮くのか、それずも「最䜎限の生掻の安定」に眮くのかずいう優先順䜍の敎理も必芁です。統蚈䞊の栌差が拡倧しおいなくおも、むンフレやサヌビス瞮小によっお生掻実感が困窮しおいく事態は十分にあり埗るからです。

もう䞀぀の偎面ずしお、それらの䟛絊を具䜓的に誰が担うのかずいう「割り圓お」の論点がありたす。1945幎以降の囜家ず䌁業は公共サヌビスの䟛絊基盀を、1970幎以降の家族や地域は生掻を支える調敎の回路を、1995幎以降の自立した個人は自ら問いを立おる自由を、それぞれ次の時代ぞの遺産ずしお残しおきたした。

しかし、珟代の耇合的な危機に察しお、過去のいずれかのモデルぞず単玔に回垰すれば解決するずいうものではありたせん。囜家は䜕を盎営すべきなのか、民間䌁業はどこたで公共的な責務を負うべきなのか、機胜䞍党に陥った地域や家族の穎を䜕が埋めるのか、そしお起業家によるむノベヌションはどこたで公共課題を解決しうるのか、ずいった圹割分担の再蚭蚈が求められたす。

この割り圓おは囜内だけではなく、囜際関係でも問われおいたす。䞖界の偎から芋た節で觊れたずおり、2020幎代には同盟や地域ブロック、囜境を越えるプラットフォヌム䌁業も匕き受け手の候補に䞊んでおり、䜕を囜内で担い、䜕を他囜や囜倖の䌁業ず共同で担うのかも、この割り圓おに含たれたす。

これらの線匕きず割り圓おは、実際には䞍可分の䞀䜓ずしお決定されたす。たずえば介護や育児を瀟䌚党䜓で匕き受けるず決めるこずは、その担い手を家族の無償劎働から解攟し、公的な専門職ずしお適正に凊遇するこずを決めるのず同矩だからです。介護や育児の公的な支揎を、働く人たちを増やすためのむンフラずしお芋るのか、家族や個人で察応するべき仕事ずしお芋るのかは、倧きく意芋が分かれる可胜性もありたす。

(3) 利益ず損倱をどう配るか

いかに瀟䌚的な課題を共同で匕き受けるず理念を掲げたずころで、その取り組みから生じる利益ず損倱が誰に垰属するのかずいう配分のルヌルが明確でなければ、珟堎の担い手も、民間の投資資金も、負担を匕き受ける生掻者も集たりたせん。

1945幎以降の囜家ず䌁業による開発䜓制が囜民に広く受け入れられた最倧の理由は、高床成長によっお生たれた利益が、賃金の継続的な䞊昇や終身雇甚ずしお瀟䌚の隅々たで還元されたからだず考えおいたす。ここで論じるべき配分ずは、単に䜙剰を分け合うための事埌的な分配ではなく、人々が困難な圹割を進んで匕き受けるための動機づけずなる配分蚭蚈です。

たず、生み出された利益は誰に垰属するのかずいう問いがありたす。劎働者の賃金ぞず還元されるのか、それずも資本の偎に配圓ずしお集䞭するのかずいう問題です。劎働組合や産業別の劎䜿亀枉など、分配を調敎しおきた埓来の回路が现るなかで、䜕がその代わりを果たしうるのかが問われたす。

同時に目を向けるべきなのは、構造倉化に䌎う損倱を誰がどう匕き受けるのかずいう点です。技術革新や貿易構造の倉化、産業の瞮小によっお倱われる雇甚や地域コミュニティの打撃は、特定の局に偏っお集䞭し、その圱響は長期化しがちです。打撃を受けた人々が、利益の生たれる新たな成長分野ぞ容易に移行できるずは限りたせん。

さらに、リスクを取った結果ずしおの「䞊振れ」の果実を誰が享受するのかずいう論点もありたす。共同で匕き受けた䟛絊基盀の敎備や公共投資が倧きな成果を䞊げたずき、そのリタヌンは挑戊した起業家のものなのか、投資した公共のものなのか、あるいは広く利甚者に還元されるべきなのかずいう、成果配分の公正さが問われたす。

そしお時間軞の芖点ずしお加えたいのが、䞖代をたたぐ配分の問題です。すでに資産を蓄積した局ず、これから圢成する若い䞖代ずでは眮かれた条件が根本から異なりたす。将来䞖代ぞの負担の先送りも、時間軞䞊の䞍公正な配分だず蚀えたす。2040幎代以降に実を結ぶ長期投資の原資を誰が拠出し、経枈成長を前提に䜜られた瀟䌚保障などの分配モデルを、䜎成長・人口枛少の前提でどう再蚭蚈できるのかも、この問いに含たれたす。

さらにここたで説明しおきたずおり、2020幎代には、囜の倖から求められる負担を囜内でどう配るかずいう論点が入っおきたした。合流点の節で芋たずおり、秩序のコストは倖郚から無条件に䞎えられるものではなくなり、日本自身が分担を求められ始めおいたす。防衛費の増額、経枈安党保障の名のもずに゚ネルギヌや重芁物資を自囜や同盟囜内で調達するこずに䌎う䟡栌の䞊昇、関皎による茞出産業ぞの打撃は、いずれも囜内の誰かが負う負担になりたす。

このコストを皎ずしお広く薄く負うのか、䟡栌ずしお消費者が負うのか、あるいは雇甚ずしお特定の産業や地域が負うのかは、ただ決められおいたせん。逆に、経枈安党保障の名のもずで進む産業政策や公共投資が利益を生んだずき、その垰属も同じ問いの察象ずなりたす。

珟代においお譊戒すべき病理があるずすれば、利益は特定の富裕局や倧䌁業に狭く集䞭し、構造改革に䌎う損倱や負担は同じ瀟䌚的匱者に重ねられ、政策の決定暩は利益を享受する偎の声に偏っお傟いおいく、ずいう構図に向かう重力です。しかもそれが䞖界芏暡で起こり、AIやクラりド等の技術においおは米䞭ぞず偏るかもしれない䞭で、日本がどのように冚を䜜り、それをどのように配分しおいくかは改めお倧きな問いずなっおいくでしょう。

(4) どう決めお、どう修正し続けるか

感染症の急激な流行や地政孊的有事ずいった突発的な出来事に察する迅速な察応に加えお、そうした出来事ぞの準備、そしお2040幎代を芋据えた長期的なむンフラ敎備や研究開発ぞの投資ずいった時間軞の異なる意思決定を、どのように䞊行しお行っおいけるのかずいう難題がたず挙げられたす。

たた、人口枛少に䌎うむンフラの撀退など、䞀床決断を䞋せば埌戻りができない重倧な刀断に察しお、目先の利害に流されやすい通垞の倚数決手続きをそのたた適甚しおよいのかずいう点も怜蚎を芁したす。これは気候倉動察策も同様で、珟圚投祚暩を持たない将来䞖代の長期的な利益ず負担を、いかにしお珟圚の意思決定に制床的に組み蟌むかずいう課題も無芖できたせん。さらに、共同で政策や事業を匕き受けたものの倱敗に終わった際、その倱敗を客芳的に怜蚌しながら、ずきには柔軟に軌道修正を図る仕組みが瀟䌚に備わっおいるかも問われたす。

さらに2020幎代には、決め方を問う以前に、決定の堎そのものが囜内になく、圱響力を及がしづらいずいう事態も出おくるようになりたした。関皎や先端技術の茞出管理は米囜が決め、同盟内の負担分担は倖亀亀枉の堎で決たり、個人や䌁業が掻動の基盀ずするプラットフォヌムの利甚芏玄は、その運営䌁業が定めたす。

囜内でどれほど公正な手続きを敎えおも、負担を巊右する重芁な刀断の䞀郚が倖で䞋されるのであれば、その決定にどう関䞎し、あるいはどう自埋的な距離を取るのかたでが、決め方や統治の問いぞず぀ながっおいくこずになりたす。そうした意味で、委ねおいたものを匕き受けるずは、倖で決たった方針やルヌルに沿うだけの立堎から、決定の堎に参加する偎ぞず移り、参加するためのコストや発蚀や提案をするためのコストを匕き受けるこずでもあるず考えおいたす。

あわせお泚芖すべきなのは、「なぜ明らかな䞍備を抱えた制床がい぀たでも修正されないのか」ずいう政治経枈孊的な問いです。劎働法制や皎制、瀟䌚保障制床に構造的な歪みがあるず広く認識されおいながら、その抜本的な改革は遅々ずしお進みたせん。資産や匷固な組織力を持぀既埗暩局ず、非正芏雇甚や䞍安定な就劎状況に眮かれた局、あるいは新芏のやり方を提案する局ずでは、政治や政策圢成の堎に持続的にアクセスし、自らの声を届けるためのリ゜ヌスに著しい差が存圚したす。

経枈的な優䜍性が政策決定における優䜍性を生み出し、その有利な政策が既存の経枈的栌差をさらに固定化・再生産するずいう悪埪環は、匷く譊戒しおおくべき構造的なリスクだず蚀えたす。意思決定のあり方ずそれを芋盎すプロセスを問い盎すこずは、2020から2045幎の瀟䌚においお䞻圹ずなるべき若い䞖代を、いた瀟䌚党䜓でどのように育み、支揎しおいくのかずいう教育や機䌚の保障の問いにも盎結しおいるず考えおいたす。

(5) その䞭で個人の自由をどう保぀か

1995幎以降の四半䞖玀においお確立された、個人が生き方や働き方、協働する仲間を自埋的に遞び取る自由は守るべき前提であり、ただその自由を享受できおいない人たちに察しおも最倧限拡匵しおいくべきだず考えおいたす。しかし䞀方で、集団ずしおの意思ず力を持たなければ、感染症や気候倉動、安党保障等の倧きな課題にも取り組めない、ずいうゞレンマがありたすし、個人の自由を担保する前提ずしおの互いの協力や基盀も必芁です。

そしお自由を実際に行䜿するには、圢匏的な遞択肢の倚さだけでなく、それを行䜿できる実質的な条件が敎っおいなければ、圢骞化しおしたいかねないように思いたす。たずえば、䞍圓に条件の悪い仕事を断れるこずや、より良い環境や機䌚を求めお移れるこず、そしお予期せぬ困難によっお䞀時的に収入が途絶えおも耐えられるこずなどです。こうした条件が敎っおいなければ、圢匏的には遞択の自由があったずしおも、それを仕えないたた終わっおしたいたす。

そしおこうしたこずを実珟するには制床的基盀が欠かせたせん。劣悪な条件の劎働を断るためには、圓面の生掻を支える資産や確実な公的絊付が必芁ですし、別の仕事や地域ぞず移るためには、職業的な孊び盎しの機䌚や、介護・育児ずいったケア負担を軜枛するための時間ず経枈的支揎が求められたす。䞍枬の事態に耐え抜くためには、雇甚圢態や就業状況が倉わっおも途切れるこずのない普遍的なセヌフティネットが支えずなりたす。

戊埌日本の瀟䌚蚭蚈においお、これらの生掻保障は䞻に䌁業の正芏雇甚ず䞖垯内の扶逊関係に匷く玐づけられる圢で提䟛されおきたした。1995幎以降に起きたのは、個人の自由が謳われる䞀方でこの旧来の玐づけが急速に解䜓され、生掻を支える保障の基盀が倖されたたた、過酷な自己責任だけが個人の肩にのしかかるずいう状況だったように思いたす。

だからこそ、様々な䞖界的な状況の倉化を芋぀぀も、自由を行䜿するための前提条件を、瀟䌚党䜓ずしおどう保障しおいくかずいうこずを忘れおはならないのだろうず思いたす。その際、か぀お䌁業や家族が果たしおいた生掻調敎の機胜を誰がどう匕き受けるのかが倧きな論点になりたす。そこでもたた、共同䜓ずしおの圚り方が問われるようになるでしょう。

あわせお、個人が発信したり、商売をしたり、仲間を募る基盀の倚くが、珟圚は囜境を越えるプラットフォヌムの䞊にあり、その利甚条件を個人の偎では決められないこずも、「断れる」「移れる」の実質を巊右しおしたっおいたす。特定の雇甚䞻に埓属しない自由は、特定のプラットフォヌムに埓属しない自由でもあるはずです。これをどこたで担保するのか、たずえばSNS等を囜ずしお持぀のか、それずも海倖のプラットフォヌマヌに制裁できる力を持぀のか、ずいった様々な方法があり埗たす。

たた、瀟䌚保障を共同で手厚く担うこずによっお、かえっお過床な受絊芁件による束瞛や監芖が匷たり、個人の尊厳やプラむバシヌが損なわれるリスクをどう防ぐかずいう点も、慎重に芋極めるべき論点です。家族に過床なケア負担を背負わせず、特定の雇甚䞻に埓属しなければ生きおいけない脆匱さを克服する瀟䌚の蚭蚈が求められおいるのではないかず考えおいたす。それは、自由を犠牲にした代償ずしお保障を䞎えるのではなく、「自由を真に行䜿するための基盀ずしお保障を敎える」ずいう思想の転換だず考えおいたす。


こうした五぀の問いぞの答え、すなわち誰が䜕をどう匕き受けるかを定めるこずが、そのたた思想の芁玠である芏範や進路になるず考えおいたす。

そしお五぀の論点は盞互に深く連動しおおり、䞀぀の問いに察する遞択が、他のすべおの問いの前提を根本から芏定するような関係性もありたす。共同で匕き受ける範囲を広く取れば「私たち」の境界は広がっおいきたす。負担を負う人たちに決定暩を枡せば、その負担を避けようずしお集玄の速床は遅くなるかもしれたせん。答えを互いに敎合させお進むためには、䜕をもっお望たしい瀟䌚ずするのかずいう芏範ものさしを遞ばざるを埗たせん。

そしおもしそうした芏範を私たち自身が蚭蚈できなければ、その空癜に察しお、海倖から茞入される芏範が入り蟌んできおしたうでしょう。『スタヌトアップの思想の空癜』の蚘事で論じたずおり、私たちは考え方や補品を茞入するこずになれおしたっおいたすし、昚今はデゞタルプラットフォヌムやAIなどを通しお、その芏範は入り蟌みやすくなっおいるようにも芋えたす。

逆に蚀えば、戊埌長く委ねお埌回しにしおいた、戊埌の囜際瀟䌚における日本のアむデンティティや思想を改めお問うべきタむミングずも蚀えるのではないでしょうか。

そこで珟時点で確たる結論が出おいるわけではありたせんが、これたで玹介しおきた新しい経枈孊や海倖の政策アゞェンダを手がかりにするず、ものさしの候補ずしお以䞋のような方向性が考えられたす。

敎理の軞にしたのは、それぞれの構想が䜕によっお結ばれた「私たち」を想定しおいるか、ずいう違いです。問い(1)で挙げたように、「私たち」を結ぶ原理には、生掻圏の共有、生掻リスクの共有、事業目的ぞの賛同、共通善の共有などがありたした。結び方が決たれば、囜内で誰を「私たち」に含めるかも、囜の倖で誰ず䜕を共同で担うかも、同じ原理から導かれたす。以䞋は各議論の芁玄ではなく、本皿の問いに匕き぀けた私なりの芋取り図であり、それぞれの詳しい怜蚎はリンク先の蚘事に委ねたす。

どの敎理にも匱点はありたす。生掻で集団を䜜ろうずするず圏倖の人や囜の扱いが曖昧になり、垰属意識で䜜ろうずすればそこに入らない人たちを排陀しおしたいたす。ただ、これらの候補は盞互に排他的ではなく、実際の「私たち」は耇数の方法を重ねおも成り立぀はずですし、重ねるこずで互いの死角を補うこずもできたす。その䞊で、どういった地図ず芏範ず進路を遞ぶか、ずいうこずが「思想を遞ぶ」ずいう営みであり、遞ばれた思想に応じお適切な事業は異なっおくるでしょう。

2045幎は、日本にずっお戊埌100幎の節目にあたりたす。私たちはいた、戊埌第4の四半䞖玀、すなわち次の時代の匕き受け手ずなる䞻䜓のあり方を圢づくる時期に入っおいるず考えおいたす。そしお同時に、䜕かしらの集団や共同䜓を䜜らなければ、珟圚の問いにも答えられない状況でもありたす。そんな䞭で思想を考えるずいうのはおそらく、どういった「私たち」を遞び、その䞭でどのような圚り方を遞ぶか、ずいうこずでもあり、それが私たちに課せられおいる問いではないか、ず考えおいたす。

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