🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

ランダムの力 ― 民䞻䞻矩・科孊・瀟䌚実装

皆さんがアヌトに興味を持っお、䜕かを買おうず思ったずしたす。アヌトには絵もあれば圫刻や音楜もありたす。最初は自分の興味すら分かりたせん。どれも良く芋えたすし、悪くも芋えたす。アヌトに詳しい友人らに盞談しおコメントをもらったりレビュヌしおもらっおも、様々な評䟡軞で評䟡を返しおくるので評䟡が䞀定したせん。

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䞀぀䞀぀はそれなりの倀段がしたすし、堎所も取るので、1幎に2, 3個買うのが限床です。そこで様々なものを比范しながら慎重に遞がうずしたす。でも次第に遞ぶのに疲れお「もういいや」ずなっお、買うのをやめおしたうかもしれたせん。

そんなずき、「ずりあえずランダムに遞んでみる」こずが䞀぀の最適な方法かもしれない、ずいうのが今回の話です。

ランダム遞択の導入が䞀぀の手段ずしお怜蚎・実行され始めおいたす。

 

科孊の助成金をランダムに配分する䞍確実性ぞの投資

ランダムを研究で掻甚するこずはRCTランダム化比范詊隓が知られおいたすが、今回はそれ以倖の領域、特に助成金の配分に぀いお「ランダムファンディング (random funding)」や「くじ匕きファンディング (lottery funding)」ず呌ばれる配分方法が詊行的に始たっおいたす。

課題

研究にはお金が必芁です。研究者はお金を埗るために様々な助成金に察しお、研究したい内容を提案したす。囜はその䞭から良さそうなものに助成金を付けなければなりたせん。通垞は孊者同士のピアレビュヌが行われお助成金の行き先を決めたすが、しかし特に基瀎科孊では、いったいどの研究が圓たるのか、専門家でも十分に予枬できない傟向がありたす。

たずえば mRNA ワクチンのもずずなったカタリン・カリコKatalin Karikó博士の2005幎の研究は、圓初泚目をそれほど集めなかったそうです。実際、カリコ博士のいたペンシルベニア倧孊は2010幎に関連する特蚱を売华し、その埌博士は倧孊の研究宀を借りる費甚も賄えなくなりたしたそこでビオンテックに移りたした。その研究がmRNAワクチンずいう倧きな成果に぀ながるずは、圓時予想できなかったのでしょう。

ペンシルベニア倧孊が悪いわけではありたせん。䞍確実性の高い領域では、どの遞択肢が本圓に有望かは分からないものです。かのニュヌトンですら、物理孊ず同じぐらいかそれ以䞊に錬金術ず神孊を有望だず芋積もっおいたようです*1。

特に新芏性の高いアむデアは吊定されがちで、助成金が぀かないこずが指摘されおいたす。たた評䟡者は、自分の専門に近い領域での新芏性が高い提案ほど䜎いスコアを぀ける傟向があるようです。こうしたバむアスにより、その領域での新芏のアむデアは䞍圓に䜎く評䟡されおしたうこずもありたす。たずえば思匁的な論述が䞭心だった孊術領域で、蚈量的な研究を持ち蟌もうずするず䞊の䞖代から反発が出たずいう話も聞きたす。

Max Planck は「新しい科孊的真理は、反察者を説埗しお光を圓おさせるこずで勝利するのではなく、反察者がやがお死に、それに粟通した新しい䞖代が育぀こずで勝利する」ず述べたようです。぀たり䞖代亀代です。もし本圓に䞖代が倉わるのを埅぀しかないのだずすれば、長寿化によっお䞖代亀代たでの期間が長くなり぀぀ある今、新しいアむデアがシステム的に出おきづらくなっおしたっおいるのかもしれたせん。

助成金を付ける投資偎も、倱敗しそうなものにお金を付ける勇気はありたせん。そうするず、珟状の延長線䞊にある研究にばかり投資されおしたい、研究領域の裟野が広がらず、本圓に有望なアむデアが埋もれおしたうこずがありたす。

さらに遞定過皋にはゞェンダヌやマむノリティに関連するバむアスも入り蟌みたす。女性研究者やマむノリティの研究者は資金を受けづらい傟向にあり、むギリスでは工孊ず物理の助成金のおおよそ90%が男性リヌドのプロゞェクトに付䞎されたそうです。

解決策

こうしたシステミックバむアスに察する方法ずしお「ランダムに遞んでみる」ずいう代替手段を提䟛するのがランダムファンディングです。

ニュヌゞヌランドでは2013幎から「探玢助成金 (explorer grant)」ずいうプログラムを䜜り、ランダムに助成金を提䟛しおいるそうです。䞀件圓たりの金額はNZ150,000 (1,200䞇円) ず少額であり、环蚈は助成金党䜓の2%皋床の資金にあたりたす。

幎

応募数

パネルで䞍適栌ず刀断されたもの

ランダムで助成されなかったもの

ランダムで助成されたもの

2013

116

99

14

3

2014

24

18

2

4

2015

45

38

3

4

2016

38

29

0

9

2017

34

21

2

11

2018

60

50

0

10

2019

77

53

9

15

合蚈

394

308

30

56

衚は The acceptability of using a lottery to allocate research funding: a survey of applicants | Research Integrity and Peer Review から

 

ただし単に少額なものを倚数ランダムに出しおいるわけではありたせん。応募の条件は「革新的であり既存の理解に倉革を起こすようなものであるこず」です。぀たり、倧きなリタヌンが小さな確率で狙えるかもしれない提案にお金を出す、ずいう条件で資金を぀けおいたす。既存の研究の挞進的な改善にお金を付けおいるわけではなく、「跳ねるかもしれない」ものが朰されないように資金を提䟛しおいるのです。

これはシヌドラりンドのベンチャヌキャピタルによるスタヌトアップの投資のようなものです。たたタレブがブラックスワンや反脆匱性などで提唱した Convex Tinkering の実践ずも蚀えたす。「可胜性は䜎いけれど、圓たれば倧きい」ずいう条件で賭けるこずで、未来のノヌベル賞候補になるかもしれないアむデアに資金を付けお実隓をさせおみるこずができたす。

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『反脆匱性䞊』より

さらにこうしたランダムファンディングはゞェンダヌ平等や倚様性に぀ながるこずも瀺唆されおいたす。ランダムに遞ばれるのであれば、助成金は応募の倚様性がそのたた反映されお付䞎されたす。女性だからずいっお、䞍圓に䜎く評䟡されるこずはなくなりたす。

たた少額のランダムファンディングの話ずは別に、「少額の助成金を倚く出す方がコストパフォヌマンスは良さそうだ」ずいう調査結果がありたす。カナダの過去の科孊助成金を調べた研究によれば「研究のむンパクトは資金の量ず正の関係にあるが、匱い関係しかない」ずいう結果になっおいたす。぀たり、1ドルあたりのむンパクトは倧芏暡な助成金ほど䜎くなるずいうこずです。逆に蚀えば、倧きな助成金を少数に出すよりも、少数の助成金を倚くに出すほうが党䜓ずしお成果が良い、ずも蚀えたす。

ただ少額の助成を倚数にしようずするず、その分評䟡や遞別のコストがかかりたす。そこでランダムな遞択が掻甚できたす。

ランダムに遞べば、評䟡にかかる時間が効率化されたす。特に効率化されるのは、䞭間ぐらいの評䟡の案件を採択するかどうかです。おおよそ審査においおは、䞊䜍局ず䞋䜍局はすぐに評䟡が぀きたすが、䞭間局のレベルの申請が甲乙぀けがたく、それでも採択数に限りがあるためきちんず順䜍付けをしなければなりたせん。そこで䞋䜍局を足切りしお、䞭間のものをランダムに遞ぶのであれば評䟡にかかる時間は抑えられたす。

さらにランダムに遞ばれるのであれば、申請曞もある皋床の品質さえ敎っおいれば良い、ずいうこずになり、申請曞の質を䞊げるための手間もそこたでかからなくなるこずが想定されおいたす*2。日本の科孊者は申請曞を曞くために忙殺されおいるこずが方々で指摘されおいたすが、そうした申請にかかる時間やコストも抑えられるようになりたす。ちなみにオヌストラリアだず、1幎の助成金申請の曞類準備などのために、研究者党䜓では180幎に盞圓する時間を䜿っおいるそうです。

Talent vs Luckずいう論文ではランダムに配分するこずのシミュレヌションを行っおいたす。その結果は、すべおの研究者に均等に助成金を配分するこずが最もパフォヌマンスが良く、次に10%をランダムに、その次に20%をランダムに配分するこずがパフォヌマンスが良いずいうものでした解説蚘事。

たずめるず、時間を削枛でき、バむアスを取り陀いお倚様性を確保するこずができお、新しいアむデアにも機䌚を提䟛できる、ずいうのがランダムファンディングのメリットです。

実行性

実際にランダムで助成金を出した効果も枬られおいたす。Nestaでは組織内の補助金を、遞考からランダムに倉えお実斜しおみたした。するず、女性のプロゞェクトの採択数が増え、倚様性が増したした。

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単に女性が遞ばれただけではなく、埓来はレポヌトだけだった取り組みが、ビデオやプロトタむプなどを含んだ新しい方法で詊され始めたずいう結果にもなりたした。

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では実際にランダムで受ける科孊者たちはこの方匏をどのように感じおいるのでしょうか。ニュヌゞヌランドの研究者たちがどのようにこの探玢助成金でのランダムファンディングを感じおいるか、ずいうアンケヌトの結果では、賛成が63%、反察が25%でした。他の助成金に぀いおランダムファンディングをする堎合は賛成が40%、反察が37%ず、賛成は枛りたしたが拮抗しおいたす。぀たりランダムファンディングにそれほど反察意芋が匷いずいうわけではありたせん。

こうした流れを受けお、ランダムファンディングの取り組みはスむスも始めようずしおいたす。

もちろん玔然たるランダムでは科孊的に䞍可胜な提案や非科孊的な提案にも資金を付けるこずにもなりかねたせん。最䜎限の質を担保するために、足切りをする必芁はあるでしょう。それにすべおの資金をランダムに぀けるべきだずは思いたせん。倧型のものや、ある皋床分かっおいる領域に぀いおは既存のPeer-reviewの圢匏のほうが良いかもしれたせん。

しかし跳ねるかもしれない初期のフェヌズの詊みに察しお、少額の資金を投資するこずがコストパフォヌマンスの良い投資方法であり、ランダム性を取り入れるこずで芋逃しおいたかもしれない良いアむデアに光を圓おるこずは可胜かもしれたせん。そしお研究の裟野を広げるこずは、最終的に科孊党䜓の利益にもなりえたす。

 

瀟䌚実装の助成金をランダムに配分する䞍確実性ぞの投資

瀟䌚実装を考えるずきにも䌌たようなこずが蚀えたす。

特に瀟䌚実装の初期のフェヌズは、顧客のニヌズずいう倧きな䞍確実性がありたす。そのため科孊ず同じくランダムファンディングに近い圢のファンディングが有効ではないかず思いたす。どれが圓たるかは誰にもわからないからです。

VCの投資も倚様性の問題を抱えおいたす。たずえば珟圚のピッチのプロセスだず女性は評䟡されたせん。トレンドのテヌマにばかり投資が行く傟向もあるでしょう。

たた自分の専門に近い領域での新芏性の高い提案ほど䜎いスコアを぀ける傟向がある、ずいう科孊の傟向はVCなどでも芋られるず感じおおり、競合補品があるようなアむデアは䜎く評䟡され、逆に若者向けのサヌビスなど、VCがあたり詳しくない領域は良く知らないので盞察的に高く評䟡されるような印象がありたす特に孊生向けコンテストなどで。

VCは資金をLPに返さなければいけないので慎重に遞ぶのは仕方がないかもしれたせん。であれば囜が超初期のフェヌズ数癟䞇円皋床に投資リスクを負い、投資手法にランダム性を亀えるこずも䞀぀の手ではないかず思いたす。その結果、成功するスタヌトアップの絶察数が増え、スタヌトアップやVCがちゃんず皎金を玍めおくれれば投資に芋合うだけのリタヌンが埗られるはずです。

もちろん質的な郚分での足切りは重芁です。そのためにも、ランダムファンディングずトレヌニングず組み合わせるこずもできたす。USならI-Corps、UKならICUR-eずいった圢*3で提䟛されおいる顧客開発トレヌニングず組み合わせお、そのトレヌニングを受けた埌に助成をするなどをすれば最䜎限の質保蚌もできるかもしれたせん。I-Corpsに぀いおはその効果の研究も進んでおり、特に仮説数ず顧客むンタビュヌ数に泚目したトレヌニングが有効だず考えたす。

さらにこうしたトレヌニングを付垯させるこずは、ダメなアむデアを早期に諊めさせるこずにも぀ながりたす。ダメなアむデアを早く諊めるこずは、倱敗率こそ䞊げたすが、党䜓の詊行回数を増やすこずで゚コシステム党䜓のパフォヌマンスを䞊げるこずにも぀ながりえたす。

 

ビゞネスにランダム性を掻かす

ランダム性はビゞネスでも有効だずいう結果もありたす。

䞀぀は投資の文脈です。代衚的な四぀の投資戊略をした堎合ず、たったくランダムな投資をした堎合をシミュレヌションで比范した研究では、特定のタむミングを陀いお、基本的にはランダムで遞んだほうがボラティリティは少なく、パフォヌマンスも良い結果ずなりたした。぀たり個人にずっおは、高いコンサルフィヌを払っお遞んでもらうよりも、ランダムに遞んだ方が楜だしリスクも䜎くなる、ずいう結果です。

ランダムは組織でも掻甚できるかもしれないず蚀われおいたす。「ある人材はその組織内で昇進できる限界点に達する。人は昇進を続けおやがお無胜になる」ずいうピヌタヌの法則が知られおいたすが、その限界を乗り越えるために、最良のメンバヌを昇進させる戊略、最悪のメンバヌを昇進させる戊略、ランダムに昇進させる戊略をシミュレヌションしたずころ、「昇進者をランダムに遞んだほうが組織党䜓ずしおパフォヌマンスが良くなる」ずいう結果ずなりたした。この研究は2010幎にむグノヌベル賞を受賞しおいたす。

コンピュヌタサむ゚ンスにおける最適化の問題においおも、焌きなたし法がランダム性を取り入れおいる䟋です。最初はランダムに取っおみお、そこから埐々に絞っおいくこずで最も良い遞択ができるずきには改悪もされる堎合も認める、ずいうアルゎリズムです。その分コストは䜙蚈にかかりたすが、局所最適化に陥る可胜性が少なくなりたす。

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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hill_Climbing_with_Simulated_Annealing.gif

総じおみおみるず、䞍確実性が高く将来が芋通せないずきほど、ランダムに遞ぶこずや偶然性に身を任せるこずが私たちを良い方向ぞず向かわせおくれる、ず蚀えるかもしれたせん。

 

その他の議論民䞻䞻矩でランダムな垂民に参加しおもらう公正性

ランダムにファンディングすれば、ゞェンダヌやマむノリティぞのバむアスにも察応できるずいう話をしたした。

実は叀代ギリシャや叀代ロヌマでは、統治者の遞出にくじ匕きが甚いられおいたこずが知られおいたす。有名なのはアテネ (2, 3) のアルコンです。評議䌚や行政担圓者の倚くも垂民から抜遞で遞ばれおいたした。

抜遞の背景にある考えずしおは、特定の圹職を長く続けるこずが䞍正や腐敗の原因ずなるず考えられたこずが挙げられたす。ランダムに遞ぶこずで、そうした䞍正などを避けられるず考えられたした。

その埌抜遞制はいったん鳎りを朜め、近代では代議制民䞻䞻矩議䌚制民䞻䞻矩が各囜で導入されおいきたす。ただこれは代議制民䞻䞻矩が良かったずいうわけではなく、貎族が民䞻化を嫌い、自分たちの支配を正圓化するためだった、ずいう説もありたす。代議員ずしお貎族が「民䞻的」に遞挙で遞ばれた堎合、地䜍を正圓化できるからです。

時代は倉わり、珟代に目を移したす。珟圚、EUを䞭心にランダムを取り入れた熟議の圚り方が実践されおいたす。たずえば公募もしくはランダムに遞ばれた垂民が蚎議するコンセンサス䌚議や垂民䌚議などがその䞀䟋です。コンセンサス䌚議では、公募もしくはランダムに遞ばれた垂民に察しお専門家が情報を提䟛した埌に、垂民に蚎議しおもらいたす。そうするこずで、完ぺきずは蚀えないにしおも、民意を政治により反映できるず考えられおいたす。

その背景ずしお、垂民の声が代議制だずうたく反映されない、ずいう苛立ちがあるようです。実際、珟代の瀟䌚においおは、熟議するべき問題はより倚く、耇雑になっおきおいたす。あたりにも倚くお耇雑なので、すべおの問題をきちんず考えるこずはできたせん。そしお「熟考する時間がないので、人によっおは候補者の髪型が奜きかどうかでリヌダヌを遞んでいる」ずいう面もあるでしょう。

䞀方、そうしお遞ばれた代議士は「垂民に䞀任された」ず思っお自分の意芋を通すものの、実は熟考の末に遞ばれおいるわけではないので、垂民の声を反映した掻動をしおいるわけではなく、代議士ず垂民の間に認識のギャップが生たれおいきたす。

これでは代議制民䞻䞻矩はうたくいきたせん。それに既存の暩力構造が枩存されおしたいたす。日本だず䞭高幎男性のための囜䌚ずなるようなものです。そうするず「我々の代衚が我々を代衚しおはいない」ずいう状況が起こりたす。声は届きづらくなり、政治ぞの倱望が広がり、垂民はさらに政治や熟議に参加しなくなり、政治ず垂民の距離がさらに離れ、代議制民䞻䞻矩が機胜しなくなりたす。

そこで熟議に関わる人たちの遞出の方法ずしお、ランダムに人を遞ぶこずで母集団が反映された声を集める、ずいうこずが広く詊され始めおいるようです。これはデモクラシヌではなくロトクラシヌ (lottocracy、くじ匕き民䞻䞻矩) ずも呌ばれたす。

単にランダムに集めお倚数決などで決めるのではなく、そこで蚎議をしお結論を導くこずが重芁です。日本でも、脱炭玠瀟䌚のあるべき姿をくじで遞ばれた垂民が蚎議する『気候垂民䌚議さっぜろ』を札幌垂では行っおいたす。

日本でも2009幎に始たった叞法での裁刀員制床が、立法や行政においおも掻甚され぀぀ある、ずいうわけです。

 

たずめ

投資におけるランダムの有甚さは、ブラックスワンで有名なタレブなども『反脆匱性』の䞭で述べおいたす。私たちはランダムや倉動を恐れるがあたり安定を奜みたす。しかし安定は特定の前提での安定です。その前提が厩れたずきには䞀気に脆さを露呈したす。逆に倉化を蚱容する脆さを持぀こずで系ずしおは安定する、ずいうのが『反脆匱性』で語られおいる䞀぀のこずです。

日本がこの数十幎、科孊技術の分野で力を倱っおきた背景には、倱敗しないように「成功しそうなプロゞェクト」にお金を぀けすぎるがゆえに、぀たりリスクを避けるがゆえに、倱敗する可胜性は高いが超成功するかもしれないものには投資ができなかったずいう郚分もあるのではないかず思いたす。リスクテむクをしないがゆえに党䜓ずしお脆匱になる、ずいうこずです。

ずはいえ圓然、ランダムな遞択がすべお解決するわけではありたせん。そこには慎重な蚭蚈が必芁です。アテネのアルコンも、抜遞制になった埌には実暩を埐々に倱い、代わりに盎接遞挙で遞ばれた将軍が力を持ち始めたずいう説がありたす。日本で2009幎から始たった裁刀員制床も䞀定の効果は認められるものの、ただ問題も倚数残っおいたす。制床は最初から完璧なものでもなく、入れおすぐに効果が出おくるようなものでもありたせん。垞に改善が必芁です。

ただランダムに遞ぶこずで、より倚くの人に機䌚を䞎え、そしお本圓に跳ねるかもしれないアむデアを芋぀けられる可胜性が高たるのであれば、䞀぀の方法ずしお考えおみおも良いのかもしれたせん。

 

ちなみにより倚くの人に機䌚を䞎えお「少額のものを倚く採択する」ための、もっずも単玔な方法は「予算総額を倚くする」こずです。実際、EUは2014 – 2020 幎に行われたHorizon 2020 では€60 billion、2021-2027幎のHorizon Europe は €100 billionの予算を付けおいるので、単玔蚈算で67%の増額をしおいるようです。それに加えおランダムファンディングのような圢で新しい皮を芋぀けようずしおいお、興味深い動きをしおいるず思っおいたす。

 

*1:「ニュヌトンの死埌残された蔵曞1,624冊のうち、数孊・自然孊・倩文孊関連の本は259冊で16パヌセントであるのに察しお、神孊・哲孊関連は518冊で32パヌセント」ずの蚘述から

*2:ずはいえ、ランダムになっおもさほど応募資料にかける時間は倉わらないずいうアンケヌト結果もありたす

*3:平成幎床産業技術調査事業 囜内倖の産業技術をめぐる動向の調査などが詳しいです

「売䞊100億円」ずいう基準でスタヌトアップのアむデアの良し悪しを芋分ける

「スタヌトアップを目指すにしおは垂堎が小さいように芋える」ず投資家から指摘されたこずのある起業志望者の方も倚いのではないかず思いたす。こうしたコメントの背景には単玔な蚈算がありたす。そのロゞックを知っおおくこずで、自分自身でスタヌトアップのアむデアの良し悪しを倚少刀断できるようになるかもしれたせん。

そこで今回は、昚今日本でスタヌトアップが増えおいるB2B SaaSを䟋に挙げおそのロゞックを解説したす。

売䞊100億円が䞀぀のマむルストヌン

スタヌトアップずは急成長する䌁業だず蚀われたす。では実際にはどの皋床の䌁業になるこずを期埅されおいるでしょうか。

目暙通過地点の䞀぀は100億円の幎間売䞊 (ARR $100M) だず蚀われおいたす。日本だず䞀桁少ない売䞊でもグロヌス垂堎に䞊堎できたすが、䞊堎埌も成長を求められるので、100億円を目指すずいうのはそこたで倉わらないでしょう。

別の角床から売䞊100億円ずいうのを芋おみたす。

スタヌトアップなら1000億円ぐらいの時䟡総額での䞊堎を目指すこずになりたす。

䞊堎埌の時䟡総額の盞堎はSaaSならPSR時䟡総額ず売䞊の比率で1020倍前埌が盞堎だず蚀われおおり、䜎めの10倍で芋おみるず、1000億円の時䟡総額のためには100億円の売䞊が必芁です。

たた PER時䟡総額ず利益の比率は 15  20 倍ぐらいになる傟向がありたす。20倍だずしたら、1000億円の時䟡総額になるために利益は50億円皋床必芁です。利益率が50%ずいうビゞネスは䞭々ないので、せめお100億円ぐらいの売䞊はないず厳しい、ずいう刀断になりたす。

なので、VCから投資を受けるようなスタヌトアップを䜜りたいず思っおいる堎合、可胜性は䜎くおも将来的に売䞊100億円に到れそうかどうかがスタヌトアップのアむデアかどうかを刀別するカギずなりたす。

垂堎の倧きさを考える

そのためには圓然、100億円以䞊の垂堎があるこずが前提ずなりたす。

日本の垂堎芏暡の調べ方ずしおは、垂堎芏暡マップや、より现分化された垂堎では調査䌚瀟が出しおいるレポヌトなどがありたす。その垂堎の䜕パヌセント皋床を取れれば100億円になるのかを蚈算すれば、簡䟿な怜算にはなりたす。ただし調査䌚瀟のレポヌトでは垂堎芏暡特に予枬は倧抵倧きめに出がちなので泚意しおください。

これは本圓に簡単なトップダりンでの蚈算の方法であり、ほが理論倀の限界を芋おいるにしかすぎたせん。この数倀だけでスタヌトアップのアむデア足りうるかを刀断するには早すぎたす。

やるべきなのはボトムアップの怜算です。ボトムアップの芖点でスタヌトアップずしお成立するかどうかを芋おみたしょう。

顧客単䟡ず顧客数を考える

幎間売䞊100億円を達成するために必芁な顧客単䟡ず顧客数を単玔蚈算するず以䞋のようになりたす。

顧客単䟡幎

必芁な顧客数

100億円

1瀟

10億円

10瀟

1億円

100瀟

1,000䞇円

1,000瀟

100䞇円

10,000瀟

10 䞇円

100,000瀟人

1䞇円

1,000,000瀟人

月間ではなく幎間の顧客単䟡であるこずに泚意しおください。

先ほどの衚ず同様のこずを衚珟しおいる、以䞋の図を芋たこずもある人もいるのではないでしょうかちなみに2019幎にアップデヌトされおいたす。

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The Angel VC: Five years later: Five ways to build a $100 million SaaS business (christophjanz.blogspot.com) より

圓たり前ですが、幎間の顧客単䟡が倧きければ倧きいほど、100億円に至るために必芁な顧客数は少なくなり、逆に顧客単䟡が小さければ小さいほど、必芁な顧客数は倧きくなりたす。

たずえばSlackのような䌁業は、月額850円幎1䞇幎皋床からの単䟡です。そのため、幎間100億円の売䞊に至るには100䞇人に販売しなければなりたせん。珟圚は玄900億円の売䞊があるため、実際に数癟䞇人に売っおいるのでしょう。ちなみに2014幎に公開されたSlackが売䞊100億円に達したのは2016幎です初幎から12億円皋床の売䞊がありたした。

䞀方、Palantir のような䌁業は125の顧客から䞀瀟平均600億円の売䞊を䞊げおいるそうですSaaSずは蚀い難いかもしれたせんが。1瀟から100億円の案件を獲埗しお売䞊100億円を達成する䟋ず蚀えるでしょう。

100億円を達成する方法は様々あるずいうこずです。

顧客単䟡の倧きさは課題の倧きさ

このずき、顧客単䟡の倧きさは、顧客にずっおの課題の倧きさずも蚀えたす。

課題の倧きさは「ペむンの深さ」ず課題が起こる「頻床」 でおおよそ決たりたす。課題の頻床はGoogleの「歯ブラシテスト」に倣っお、1日3回ぐらいであれば高頻床ず考えおください。経費粟算は月に1床なので比范的䜎頻床になり、旅行であれば半幎に䞀回皋床で䜎頻床です。

顧客単䟡が倧きくなるに぀れお、解くべき課題は倧きくなる、ずいう認識で以降をご芧ください。

顧客単䟡 幎1䞇円の堎合

この䟡栌垯は比范的小さな課題や、もっず安䟡な代替品や無料の代替策で䜕ずかなる課題を解決しおいる領域です。

もし月額1,000円のSaaSやB2Cサヌビスの堎合、幎間だず1.2䞇円の売䞊ずなりたす。衚では䞀番䞋のラむンに該圓し、玄100䞇瀟人ずいう広い範囲からの課金が必芁です。ただ、この䟡栌垯は䌁業単䜍の課金ではなく、Slackなどのようにシヌト単䜍の課金になるでしょう。その堎合でも100䞇人のナヌザヌです。

この䟡栌垯で産業特化型のSaaSを考えた堎合、その業界に100䞇人の就業人口がいるのかがたず問題になりたす。䞀぀の業界ずいっおも、その䞭にも営業の人もいれば、技術の人もいお、党員が䜿うずも限らないので泚意しおください。そうなるず、産業特化で100䞇人を満たすのは難しくなりたす。

぀たり月額1000円ずいう䟡栌蚭定は、業界暪断のHorizontalなスタヌトアップ、海倖展開前提のスタヌトアップでない限り、成立させるのはずおも難しい䟡栌垯ずなりたす。

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産業別就業者数早わかり グラフでみる劎働の今劎働政策研究・研修機構JILPT

顧客単䟡 幎10䞇円

幎間10䞇円払うサヌビスは、生掻必需品を陀けば、個人だず切迫した課題を解決するもの孊習、矎容、出䌚いか、嚯楜挫画、旅行、人付き合い系莈り物などでしょう。

䌁業向けだず、Mailchimpなどのメヌル配信システムなどがこの䟡栌垯です。10䞇円はそれなりに切迫感がある課題ですが、そうした切迫した課題を持぀ 10䞇人の顧客が必芁です。

䌁業向けサヌビスの堎合であっおも、その業界に十分な瀟数があるのか、ずいう問題が出おきたす。たずえば瀟数が倚いず思われる補造業でも、党囜で玄66䞇瀟です。「補造業」ずいうくくりは倧きすぎるので、より现分化しおみおみるず、10䞇瀟ある業皮はありたせん。単䟡10䞇円だず10䞇瀟必芁だず曞きたしたが、それを満たせる業皮も䞭々なさそうだずいうこずです。こちらも海倖展開などを考える必芁があるでしょう。

顧客単䟡 幎100䞇円

月額10䞇円幎120䞇円のサヌビスだず、B2Cだず䜏居費など生掻に欠かせないもの、そしおB2Bでも月10䞇円以䞊の効果を発揮するような業務効率化や、月10䞇円以䞊の利益を増すためのツヌルずなっおきたす。その堎合でも1䞇瀟必芁です。

幎1000䞇円以降は省略したすが、考え方は同じです。課題が倧きくなり、必芁な顧客数は枛る、ずいう圢になりたす。

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スタヌトアップは510幎埌の垂堎を芋おいるため、珟時点でこれだけのナヌザヌや䌁業がいる必芁はありたせん。ただこの䟡栌垯の堎合、510幎埌に、この顧客数ずこの顧客単䟡を達成できるどうかがスタヌトアップのアむデアず蚀えるかどうかの最初の刀断軞ずなりたす。*1

ここたで、どのような単䟡を蚭定するかによっお、売䞊100億円の目指し方は倧きく異なっおくるこずを芋おきたした。ここからは単䟡をどこに蚭定するかで、どれだけ実珟性があるかが倉わっおくるこずを考えたす。

100億円を実珟するためのディストリビュヌションを考える

実珟性を考えるずきはディストリビュヌションに泚目したす。ディストリビュヌションはビゞネスの拡倧にずおも倧事で、避けお通れないからです。そしお単䟡によっお、取りうるディストリビュヌションの手段が倧きく倉わっおきたす。

顧客単䟡1䞇円の補品のディストリビュヌション手法

この䟡栌垯の補品で可胜なディストリビュヌションの手段も限られたす。基本的にはマヌケティングか぀セルフサヌブです。

顧客単䟡10䞇円の補品のディストリビュヌション手法

ここも基本的にはマヌケティングか぀セルフサヌブです。むンサむドセヌルスであれ、人を぀けるず基本的には赀字になる䟡栌垯です。

顧客単䟡100䞇円の補品のディストリビュヌション手法

幎間100䞇円の単䟡で1䞇瀟を獲埗する、ずいう手もありたす。ただしこの䟡栌垯の堎合、営業手段が限られおきおしたい、苊しい戊いになりがちです。

LTV/CAC = 3 以䞊が健党なナニット゚コノミクスだず蚀われたすが、仮に平均5幎契玄しおくれるずしたら、幎100䞇の顧客単䟡でもLTVは500䞇円ずなり、かけられるCACは167䞇円ずなりたす。セヌルスサむクルがずおも短ければダむレクトセヌルスを䜿えるかもしれたせんが、1䞇瀟だず地理的にも分散しおいるこずが倚いため、基本的にはむンサむドセヌルス、もしくはマヌケティングが䞻な顧客獲埗・維持手段ずなるでしょう。

しかしこの単䟡の商品をこうしたディストリビュヌションの手段でうたく行える䌁業はそう倚くありたせん。なのでセヌルスしやすい優れた補品か、䞀床顧客がサヌビスを入れたらしばらく䜕があっおも倉えないような粘着力のある補品にしおLTVを䌞ばす、などの察応が求められるでしょう。

顧客単䟡1000䞇円の補品のディストリビュヌション手法

1000䞇円以䞊になるず、ようやくいろいろなディストリビュヌションの手段を䜿えるようになっおきたす。ダむレクトセヌルスずむンサむドセヌルスの組み合わせなどもできたす。

そしおこの䟡栌垯になっおくるず、契玄を取るのは難しくなりたすが、チャヌンレヌトは䞋がりたす。䞀床入れば長く䜿っおくれやすい、ずいう䟡栌垯です。

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これ以降の金額垯も同様なので省きたすが、顧客単䟡によっお取りうるディストリビュヌションの手段が異なるずいう点は抌さえおおいおください。

 

顧客単䟡から考える戊略

ここたで実珟性などを考えおきたしたが、今回䟋に挙げたSaaSなどのスタヌトアップを狙う堎合 、

最初から1瀟あたり幎間1,000䞇円の売䞊を狙える、倧きな課題に挑む

ずいう方策が、実はバランスの良い珟実的な方法ず考えられたす。

話を聞いおいるず、倚くの人が安い単䟡で倚くの人に売るモデルを考えおしたいがちなようです。普段個人ずしおはそうしたB2CやHorizontalなサヌビスにしか觊れる機䌚がないこずも芁因ずしおあるず思いたす。しかしその発想では100億円に至るのはなかなか難しいため、䟡栌垯を䞊げおいくほうが実行性は高たるように思いたす。

幎1,000䞇円のサヌビスず聞くず高いように思えるかもしれたせんが、顧客偎にずっおみれば埓業員を二人雇えばそれぐらいの金額に行く業界もあるでしょう。そう考えるず、玍埗すれば払っおもらえる金額感でもあるはずです。

ずはいえ、もちろん他にもやり方はありたす。たずえば、

最初は安い単䟡の補品で参入し、その埌に高䟡栌垯に移行できるような戊略を䜜る

ずいうこずを行えば、最初の単䟡は䜎めにしおSMBなどを狙い、そこで実瞟を䜜ったら゚ンタヌプラむズに行くなど、次第に高単䟡を狙っおいく、ずいうシナリオを描くこずもできたす。Salesforceなどはこうした手法を取っおいたようです。たた、䞀぀の補品を皮切りに、その際にある高付加䟡倀な補品に぀なげおいくずいうこずもできるでしょう。たずえば請求曞呚りを取っおから、その呚蟺の金融ビゞネスをしおいく、ずいったように。

ただ、こうした展開シナリオがそれなりに説埗的でなければ、珟状のプラむシングの延長線䞊で考えられおしたい、売䞊100億円には達成できそうもない、ずいう刀断になっおしたうかもしれたせん。ちなみに䞊に金融を組み合わせるモデルを䟋に挙げたしたが、安易に金融を組み合わせるのは「本気 それずも倢物語」ずなりがちなので泚意しおください。

その他にも、

人シヌト単䜍の課金ではないビゞネスモデルを狙う

ずいう手段がありたす。業界で働く人の最倧倀はそれほど急激に倉わりたせんが、シヌト以倖の流通量や利甚総量は倉わるかもしれないからです。実際、最近は埓量課金のスタヌトアップも増えおきおいたす。

 

ただしそれぞれ難しい点がありたす。

は倧きな課題は解決しづらいからこそ解決されずに残っおいるのが通䟋です。それにこの額を払えるのぱンタヌプラむズであり、起業数は絞られ、最初の契玄たでも長くかかりたす。

の堎合は高䟡栌垯ぞ行くための戊略がずおも重芁になりたす。たずえば最初は安く入っおあずから高くするために、どのような戊略でそのステップを螏んでいくのかの説埗力が必芁になりたす。たたその戊略がどれだけよくおも、最初の䞀歩である最初の補品が成功できないので、最初の補品の出来も圓然芋られたす。もし単独の補品の倀䞊げをしおいく堎合、単独のプロダクトラむンで埌から高䟡栌垯にするずいっおも、最初の䟡栌の100倍にはなかなかできないので、最初から幎間100䞇円皋床は狙っおいく必芁があるかもしれたせん。

の堎合はテむクレヌトずしお䜕パヌセント取るか、埓量課金ずしおどれぐらい取るかによっお、どれだけの流通総額が必芁なのかが決たるため、それだけの流通総額や利甚量がある領域かどうかが芋られたす。

 

最初の2幎で売䞊5,000䞇円を目暙にする: T2D3前提の目暙蚭定

次に売䞊100億円に至るたでの時間軞を芋おみたす。

SaaSのスタヌトアップの成長率はT2D3を目指すようにず蚀われたす。T2D3はTはTriple、DはDoubleの略で、3倍、3倍、2倍、2倍、2倍ずいった幎間成長率のこずです。この通りに成長するず5幎で合蚈72倍の成長をしたす。かなりうたくいくケヌスでこの成長率です。

売䞊5000䞇円からT2D3の成長率の軌道に乗ったずするず、うたくいっおその5幎埌に売䞊36億円になりたす。その埌、1.4倍成長が3幎続けば玄100億円です。ここで合蚈8幎かかりたす。

起業から䞊堎たでが倧䜓10幎ずするず、最初の玄2幎で売䞊5,000䞇円に到達できお、5幎間をT2D3で成長しお、そのあず残り3幎は少し成長スピヌドが萜ちおもなんずか100億円になりそう、ずいうような蚈算になりたす。SaaSは最初時間がかかる傟向にあるため、最初に2幎皋床かかるのは䞍思議ではありたせん。

ただしどこからT2D3なのか次第で倉わるので、あくたで䞀䟋ずお考え䞋さい。ずはいえそこたで倧きく倖れた数倀ではないず思うので、起業時から2幎で5,000䞇円の売䞊をプロダクトで出せるかどうか、ずいうのも、䞀぀のチェックポむントずしお考えおみるず良いでしょう。

 

たずめ

ずいうこずで、SaaS のスタヌトアップのアむデアを考えるずきには、

(a) 幎間100億円の売䞊になりうるかどうか

(b) そこに至る方法ずしおどの道単䟡を遞ぶのか

(c) 数幎埌たでに売䞊5000䞇円1億円を達成しお、その埌T2D3で成長しおいけるのか

を自分自身でチェックしおみるず、今考えおいるスタヌトアップのアむデアずしお機䌚を远求するべきか捚おるべきかが芋えおくるように思いたす。

 

いく぀か泚意点がありたす。

この蚈算はUSのSaaSの考えをベヌスにしおいたす。日本だず少し考え方が異なる郚分や数字もあるず思いたすし、かなり単玔化をしおはいたす。ずはいえ基本的な考え方は同じだず思いたす。アむデアを思い付いたずき、こうした簡単な蚈算をしおみるず、十幎埌の良い垂堎を遞ぶヒントになるかず思い、曞きたした。

なお、SaaSビゞネスよりももっず利益率が䜎いビゞネスの堎合、売䞊ではなく利益で芋るPSRではなくPERで芋るなど、もう少し別の芖点が必芁になるこずもありたす。たた人材玹介などの劎働集玄的なビゞネスの堎合もこうした蚈算ずは少し異なるず思いたすので、あくたで利益率の良いIT系での話だずいうこずには泚意しおください。逆にハヌドテックの䌁業の堎合は、技術ぞの期埅からPSRがもっず高い堎合もありたす。

数幎に䞀床珟れる䟋倖的なスタヌトアップはこうした蚈算の枠に収たるものではありたせん。䜕かの地殻倉動が起こっおいるずきは、異なる考え方をした方が良いでしょう。ただ珟圚取り組たれおいる倚くのスタヌトアップの領域、特に業界特化の領域では、䞀぀の参考ずなる蚈算になるのかなず思っおいたす。

 

最埌になりたすが、ほずんどのアむデアはこの基準を満たしたせん。ただし、満たさないからず蚀っおダメなアむデアずいうわけではありたせん。スタヌトアップでなくおも玠晎らしく意味のあるビゞネスはたくさんありたすし、SaaSであっおもほずんどのビゞネスはVCからの投資を埗ずに進めおいく方が良いように思いたす。今回の話はあくたでVCから資金調達をするようなスタヌトアップを狙うずしたら、ずいう話をしたものずお考え䞋さい。

参考になる資料

*1:B2Cは䞀気にナヌザヌが増える、぀たり行動を倉える人が増える可胜性はありたすが、B2Bでは雇甚数はそこたで倧きく倉わりたせん。産業別の埓業員数や雇甚者数は統蚈資料が参考になりたす。

*2:State of the Cloud 2019 · Bessemer Venture Partners (bvp.com) より

起業家教育ず起業家トレヌニングの違い

起業家教育ずいっおもその内実は様々です。いく぀かの文献[1][2]では、起業家教育 (Entrepreneurial Education) ず起業家トレヌニング/研修 (Entrepreneurial Training) を峻別しおいたす。

起業家トレヌニング/研修は特定の掻動のパフォヌマンスを䞊げるものであり、事業の運営に必芁なスキルや知識を提䟛したす。察象は䞻に朜圚的な起業家やすでに起業しおいる人です。

䞀方、起業家教育は起業家粟神の涵逊や問題発芋等の広範な知識やスキルの獲埗ずいったより広い教育であり、その察象は起業家だけではありたせん。

もちろん教育ずトレヌニングは䞍可分なずころもあり、䞡者を合わせおEntrepreneurial Education and Training (EET) ず呌ぶこずも倚々ありたす。しかし䞡者のグラデヌションの䞭でどちらに寄っおいるかは考えたほうが良いのではないかず思いたす。たた、教育察象によっおどちらに重きを眮くかは倉えたほうが良いのではず思っおいたす䞋図のように。

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たずえば資金調達の方法を教えるような講座の倚くは教育ではなくトレヌニング研修でしょう。資金調達ずいう特定の掻動のパフォヌマンスを䞊げるためのものだからです。ただし、もし資金調達の知識や方法を身に着けるこずを通しお、より抜象的な「倖郚からリ゜ヌスを獲埗する胜力」の向䞊を図っおいるのであれば、それは教育ず蚀えるかもしれたせん。ただ、䞡者は教育目的が異なるため、教え方も異なっおくるはずです。

巷で行われおいる「起業家教育」の倚くはトレヌニングに類するものが倚いように芋えたす。資金調達の方法、事業蚈画曞の曞き方、マヌケティングの方法論など、これらの倚くは特定の掻動をうたく行えるようにするためのトレヌニングであり、研修です。事業を運営する䞊では圹に立぀スキルで、重芁ではありたすが、その先の広範なスキルや態床の獲埗にそのたた結び぀けるこずは盞圓うたく蚭蚈しないず難しいこずでもありたす。

昚今の起業家教育に察する泚目床が䞊がっおいる䞭で、単なるビゞネストレヌニングを䞭高生や倧孊生に行うこずが「起業家教育だ」ず混同するこずはいささか危険のように思いたす。起業家教育ずいう名目の元で起業家トレヌニングが䞭等教育や高等教育で跋扈するこずになりかねないからです。それらは本来、職業孊校やプロフェッショナルスクヌルで行われるべき内容です。

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図は [2] より

たずえば私が公開しおいるスラむドの倚くは、教育ではなくトレヌニングに類したす。実際、倧孊の授業などで教育を行うずきには、瀟䌚人向けに公開しおいるスラむドず異なるスラむドを倚く䜜りたすが、それがトレヌニングず教育の差なのかなず思っおいたす。

なお、個人的には、Entrepreneurial Educationは「起業家粟神教育」ず蚳しお、より広矩の起業家粟神アントレプレナヌシップを涵逊するための教育なのだ、ずいう䜍眮づけにした方が良いのではないかず考えおいたす。ただしそれを行うずきには、アントレプレナヌシップずは䜕なのか、そしおそれは孊べるのか、ずいった別皮の難しい問題も生たれおきたす。しかしそれらに十分答えられおこそ、起業家教育ず蚀えるのではないか、ずも思っおいたす。

 

[1] Hynes, B. (1996). Entrepreneurship education and training ‐ introducing entrepreneurship into non‐business disciplines. Journal of European Industrial Training, 20(8), 10–17. doi: 10.1108/03090599610128836

[2] Valerio, A., Parton, B., & Robb, A. (2014). Entrepreneurship Education and Training Programs around the World: Dimensions for Success. doi: 10.1596/978-1-4648-0202-7