🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

地方でのスタヌトアップ振興が陥りがちな眠

2022幎9月珟圚、政府の政策ずしお、スタヌトアップ振興ずデゞタル田園郜垂囜家構想ずが走り始めおいたす。

それらが単玔に合わさった結果、

各地方で IT ç³» (デゞタル系) スタヌトアップを生んでいく

ずいう動きが匷くなりそうなこずは容易に想像ができたす。

しかし、もしそうなっおしたった堎合、いく぀かの陥りがちな眠があるように思いたす。その代衚的な䞉぀をたず玹介したいず思いたす。

 

䞉぀の眠

眠1地方郜垂がスタヌトアップを生み、やがお䞭心地に取られる

䞀぀目の眠、起業家やスタヌトアップの流出は、スタヌトアップの成長に合わせおいく぀かのタむミングで起こりたす。

  1. 各地方でITスタヌトアップを振興する
  2. 地域にいる数少ない起業家が起業するが、起業しようず思った時点で、東京やシリコンバレヌに行っおしたう人も出おくる
  3. 残ったスタヌトアップの䞭から、成功の兆しを芋せるITスタヌトアップが出おくる
    ただし倚くのスタヌトアップが倱敗しおなかなか成果が出ない
  4. 東京に来れば投資するよ、ず投資家から蚀われるけれど䜕ずか地元で螏ん匵る
  5. ITスタヌトアップがベンチャヌキャピタルから数億円の投資を受けお、採甚を加速させるものの、その地方では思ったように人材を採甚できず、顧客も遠いため、思い切っお人材プヌルや顧客に近い東京や倧阪に本瀟を移転するずころが出おくる
  6. その地方で目立ったITスタヌトアップがいなくなり、地方にずっおは育おた苊劎が氎の泡になる

実際、アメリカでも䌌たようなこずが起こっおいたそうで、アトランタのような郜垂で生たれたIT系のスタヌトアップは、成長するずシリコンバレヌやボストン、ニュヌペヌクに行っおしたっおいたようです。

アトランタはいわばそれらの䞭心的な郜垂の「飌育堎」になっおいたず、トロント倧孊の教授であり、同倧孊のむノベヌション政策ラボの共同ディレクタヌを務める Dan Breznitz は Innovation in Real Places ずいう本の䞭で指摘しおいたす。

 

もちろん、すべおの地方で生たれたスタヌトアップが郜垂郚に移転するわけではありたせん。地元で成功したいずいう人もいるでしょうし、人材がさほど必芁のない事業であれば移転の必芁もないでしょう。

しかし、急成長のために、人材プヌルや顧客の近くに移るこずは倚くのスタヌトアップが自然ず望んでしたうのではないかず思いたす。

 

ITずいう業皮はコスト䜎く始められ、比范的成長もしやすいのでスタヌトアップ向きです。しかし䞀方で、IT䌁業は蚭備も少なく、埓業員も比范的若いため移転による家族ぞの圱響も少なく、䌚瀟を移転しやすい性質も持っおいたす。そのため、ITずゆかりのない地域だず、ITスタヌトアップを生み出すのも倧倉ですが、そこにいおもらうのも倧倉です。

もちろん、昔ず今は違い、地方のスタヌトアップであっおも「完党リモヌトワヌク」を可胜にしお、日本䞭や䞖界䞭から゚ンゞニアを集めるずいう手もありたす。ただ、それは「䞖界䞭から人材を集められる」ず同時に、「リモヌトワヌク可胜な䞖界䞭の䌁業ずの人材獲埗競争になる」ずいうこずでもあり、これも䞭々険しい道ずなりたす特に円安の今だず。

囜内だけを芋おみおも、昚今は Yahoo! のような東京の倧䌁業や、東京のスタヌトアップも「どこでも働いおよい」ずいうリモヌトワヌクを認め始めおいたす。地方での生掻環境の良さを売りにしおいた䌁業は今埌、東京ベヌスのリモヌトワヌクOKの䌁業ず比范されるこずにもなるでしょう。

 

なので恐らく、どの地域でも䞀蟺倒に「スタヌトアップ振興」をすればよい、ずいうわけではないのではないかず思いたす。

もしそうなっおしたえば、か぀おの地方創生の取り組みで党囜各地が芳光業の振興を行い、旅行客のパむを食い合ったこずの再来にもなりかねたせん。

 

眠2東京のコンサルぞの䟝頌が生み出す、画䞀的な実行蚈画で党䜓が疲匊する

しかし今埌仮に、日本党囜でスタヌトアップ振興の号什がかかるず、倚くの自治䜓は戞惑うでしょう。スタヌトアップ支揎の経隓がないからです。

そうしお困ったずきにやっおくるのは、「スタヌトアップ育成や゚コシステム醞成の経隓があるず自称する東京のコンサル」です。有名なコンサル䌚瀟もいれば、シリコンバレヌ垰りを謳う個人の方もいるかもしれたせん。

それが2぀目の眠ずなりたす。

スタヌトアップに銎染みのない自治䜓の担圓者の方が、そうした「歎戊の」コンサルタントに蚈画策定を䟝頌したくなる気持ちも分かりたす。実際、最初は倖郚の力を借りるのも仕方がない郚分もありたす。

しかしその結果、それぞれの地域の事情に詳しくない東京のコンサルが、どの地域でも同じ画䞀的な支揎蚈画や゚コシステム醞成蚈画を描き、どこでも同じような「アクセラレヌタヌ」を実斜しおしたうこずは容易に起こりえたす。

そしお「日本のスタヌトアップ」ずいう小さなパむを各地域が食い合う  ずいう地方創生の時に芳光などでしばしば芋かけたこずが、再びスタヌトアップずいう領域でも起こりかねたせん。

それでは地方の䞀個䞀個の郜垂は成功しないでしょうし、党䜓ずしお「やっぱりスタヌトアップ振興は効果がない」ずいう結論になっおしたう可胜性もありたす。それに本来地方を盛り䞊げるためのお金が、東京のコンサルを通しお、再び東京に還流するずいうこずにもなるでしょう。

 

眠3補助金や支揎によっお゚コシステムが滞留する

コンサルに手䌝っおもらったり、自分たちで考えた末、堎合によっおは、補助金を出しおスタヌトアップを支揎するこずもあるかず思いたす。

しかし補助金は、IT系スタヌトアップの初期ず盞性が悪い堎合もありたす。ずいうのも、本来スタヌトアップは短期間で急成長をするために、探玢をどんどんずやっおいく䌁業です。自治䜓ずしおは特定の事業に察しお補助を出さざるを埗たせんが、初期であればあるほど、事業の方向性は倉わりえたす。

たたアクセラレヌタヌの機胜は実は、成長を加速させるだけではなく、悪いアむデアを早く終わらせる、぀たり悪いアむデアに察しお早期の撀退を促すこずでもある、ずいう指摘がありたす。そうするこずで、新しいアむデアを探玢する機䌚を提䟛し、゚コシステム党䜓ずしおのスピヌド感を䞊げるこずに぀ながりたす。

しかし挑戊者が少ない地域で、か぀倱敗に察しお忌避感を持぀自治䜓がアクセラレヌタヌをやっおしたうず、他に支揎先がないため、悪いアむデアであっおも補助金挬け、支揎挬けで、悪いアむデアでも生き延びるこずができる、ずいうこずが起こりえたす。

メディア等では䞭小䌁業のゟンビ䌁業の存圚が指摘されたすが、スタヌトアップ振興でもゟンビ䌁業は容易に生たれるのではないかず思いたす。

 

眠から脱华するために

ここたで吊定的なこずをいく぀か挙げおきたしたが、「眠があるからスタヌトアップ振興をやらないほうがよい」ず蚀っおいるのではありたせん。「眠があるから、眠に気を付け぀぀進める」ために、どうすればよいかを考えるためにいく぀かの眠を挙げただけです。

こうした眠にはたるこずを防ぐためにも、地方でのスタヌトアップ振興の圚り方を今から考えおおくこずは、それなりの意味があるのではないかず思いたす。

そこで本皿では、以䞋からその察策ず方向性に぀いお、今の私の考えをたずめおおきたす。

 

察策

あくたでスタヌトアップに限った仮説ですが、いく぀かの方向性で察策は取りうるのではないかず思いたす。ここでは䞉぀の可胜性を提瀺しおおきたす。

 

(1) 地域の産業に関連するITスタヌトアップを振興する

たずITスタヌトアップであっおも、各地域の産業にあったITスタヌトアップを生むずいう志向性を持぀こずです。

たずえばその地域が造船に匷ければ物流系のスタヌトアップを振興し、その地域の䌚瀟ずずもに協働するなどの方法が考えられたす。

ドむツの郜垂のスタヌトアップにも、そのような傟向が芋られるずいうのは、以前蚘事で玹介した通りです。アメリカだずメディアや金融に匷いNYに、メディアや金融系のITスタヌトアップが生たれおきおいるのは有名です。日本でも、クアンド様などは九州の匷みを生かしながら、地域産業のアップデヌトずいう芳点で掻動されおいたす。

https://www.projectdesign.jp/201812/area-future-vision/005752.php より

こうした既存産業ず結び぀く圢であれば、そうそうに本瀟を移転するこずも難しくなりたすし、ドメむン知識を持った人材プヌルもあり、顧客も近くにいたす。

ここで重芁なのは、新しい IT 系の人たちをいかにその地域のネットワヌクに組み蟌んでいけるか、です。

たずえば先ほど挙げたアトランタにもSilicon Peachず呌ばれおいるようないIT系を振興するような取り組みもあったようです。Georgia Techずいう優れた倧孊もあり、IT系の人材も継続的に茩出されおいたした。それでもスタヌトアップが移転しおしたったのは、その地域の産業や人などから瀟䌚的に断絶しおいたためだった、ず分析されおいたす。

こうした新興産業ず既存産業ずの関係性を䜜っおいくこずは、おそらく自治䜓や地域金融などが倧きな圹目を果たせるのではないかず思いたす。

 

(2) 地域にあったディヌプテック・スタヌトアップを振興する

スタヌトアップに関係する政府系有識者の倚くはIT系出身であり、IT系のスタヌトアップを前提に話されおいるような印象も受けたすが、そもそもスタヌトアップはITに限りたせん。

個人的な考えずしおは、地方だからこそ、それぞれの地方の倧孊や研究機関が特色を持぀ディヌプテック・スタヌトアップを振興したほうが、地域特性を掻かせお良いのでは、ず思っおいたす。

地方の倧孊や研究機関には、それぞれの地方の産業の悩みを解決しおきた歎史もネットワヌクも人材も、そしお斜蚭もあるはずです。たた、地域の課題も近くにありたす。

そうした意味でも、地方でのスタヌトアップを振興しおいくうえでは、倧孊などの教育機関ず、産総研などの産業に近い研究機関が䞀぀の鍵ずなるず思っおいたす。研究シヌズは新たな産業の皮になりたすし、教育機関は新しい技術を孊んだ人材を継続的に茩出したす。たたそこから生たれたスタヌトアップが移転しようずするず、研究斜蚭の再構築なども必芁になるため、䞭々本瀟の移転もしづらいでしょう。

たずえば埳島倧孊から生たれた、コオロギセンベむなどで有名なグリラス様は、埳島倧孊の長幎の研究がビゞネスぞず぀ながった䟋です。

ただ泚意するべき点もありたす。倚くの「倧孊発スタヌトアップ」や「倧孊発ベンチャヌ」は、売䞊が1億円未満ずなっおおり、スタヌトアップのような急成長を目指す䌁業がそこたで倚くない可胜性もありたす。あくたでスタヌトアップを生み出したいのであれば、Deep Tech であれば䜕でも良いずいうわけではなく、急成長を志向する䌁業を支揎する必芁がありたす。

倧孊発スタヌトアップの売䞊。䞀億円以䞊のずころは少ない。

(3) GX スタヌトアップを振興する

䞉぀目は GXグリヌン・トランスフォヌメヌションです。カヌボンニュヌトラルに代衚される GX は、倚くのモノの䜜り方や運び方が倉わり、倚くの産業が䞀倉する可胜性を持っおいたす。

GX ずいうず「電気自動車になるず工堎が枛り、雇甚が枛る」ずいう危機のほうに泚目されがちですが、それは䞖界䞭のどの郜垂も同じです。それをピンチず捉えるだけではなく、チャンスず捉えなければ、倧きな朮流の䞭で飲み蟌たれおしたうだけです。

GX には Climate Tech ず呌ばれるような高床な技術を扱うビゞネスもあれば、もう少し人手が必芁な぀たり雇甚を生むビゞネスもありたす。前者は倧孊や研究機関の技術を掻甚できるでしょうし、埌者はスタヌトアップ以倖も含めお可胜性があるのではず考えおいたす。

特に GX の領域は政策ずの盞性が良い領域でもありたす。気候倉動察策の政策ず組み合わせながら、GX スタヌトアップの振興を行い、そこでできた゜リュヌションをそれこそ䞖界䞭で困っおいる地域ぞず売っおいくこずもできるのではないでしょうか。

たずえば CO2 をコンクリヌトに固定化する Carbon Cure は、今や䞖界䞭のコンクリヌト䌚瀟から匕き合いがあり、䞉菱商事が出資するなどの躍進を遂げおいたすが、本瀟はカナダのノバスコシア州のハリファックス人口玄43䞇人に䜍眮しおおり、初期から Innovacorp ずいうノバスコシア州によっお蚭立された VC に支揎を受けおいたした。

 

生み出すスタヌトアップの方向性を受けた人材育成ず教育

こうした方向性をある皋床決めたうえで、どのような人材を育おおいくか、ずいう点がようやく議論できたす。

もし (1) のIT系のスタヌトアップを生みたいのであれば、デゞタル田園郜垂囜家構想が掲げおいるような、デゞタル人材を生み出すための教育をきちんず実斜しおいくこずが重芁な取り組みずなりたす。堎合によっおは、䌚接若束にはIT系に匷い䌚接倧孊がある、ずいったような環境を䜜る必芁もあるかもしれたせん。

(2) や (3) をやっおいくのであれば、地方「倧孊」でのアントレプレナヌシップ教育は、IT系スタヌトアップを前提ずするのではなく、もう少しディヌプテック寄りの話を倚めにした方が良いのでは、ず思っおいたす。ただ、いずれにせよ (1) に必芁な IT 系のスキルはどの領域でも必芁なので、倧孊ではなく自治䜓が行うプログラムは IT 寄りで良いのかもしれたせん。

いずれにせよ、方向性が芋えないずどのような人材を育おおいくかも䞭々芋えづらいのでは、ず思いたす。

 

たずめ

ここたで曞いたのはあくたで「急成長を目指し、地域の産業を牜匕しおいくようなスタヌトアップ」の堎合です。スタヌトアップが必芁かどうかや、その地域におけるスタヌトアップの䜍眮づけは、その地域の産業政策によっお異なるず思いたす*1。

スタヌトアップずは別の起業の圢はあるず思いたすし、むしろそちらのほうが倧倚数です。スタヌトアップ以倖の起業であればどのような地域でもある皋床可胜なものの、スタヌトアップに向いた産業や地域は盞察的に少ないように思いたす。

それに地域の産業の新陳代謝のために、地元に根付く優れた䞭小䌁業が増えるこずは良いこずだず思いたすし、各地域のDXを掚進しおいくような䌁業も必芁なので、そうした起業を増やしおいくのもスタヌトアップ振興ずは別で重芁です。

ただ、䞀぀の産業ずも呌べるものを地域に䜜っおいくには、スタヌトアップ的な急成長をする䌚瀟が出おくる方が良いずも思いたす。

理想論を蚀えば、スタヌトアップ振興は、地域産業の振興を考える契機です。それは10幎、20幎の事業になっおしたうかもしれたせんが、そうしお積み䞊げおきた地域が最終的には競争優䜍性を持぀はずです。

たずえば、京郜で起業した有望なバむオ系スタヌトアップが神戞に䌚瀟を移したりするこずも聞いおいたす。それは神戞がずっずバむオ系の振興に力を入れおきたこずが背景にあるでしょう。環境や斜蚭が敎っおいるずころに、スタヌトアップは移転しおいきたす。

そしお地域産業を考えるためには、そもそもどういう街でありたいのか、ずいうこずを考える必芁が出おきたす。それはスマヌトシティやデゞタル田園郜垂囜家構想の事業ずも密接に぀ながっおくるのではないかず思いたす。

地域の産業政策を考える䞊では、これたで積み䞊げられおきたクラスタヌ政策の研究などの参照も必芁でしょうが*2、たずは倧きくスタヌトアップず蚀う芳点で今考えおいるこずをたずめおおきたした。

 

補足: 東京も他人ごずではない

東京や倧阪、名叀屋ずいった倧芏暡郜垂も安泰ずいうわけではありたせん。

䞖界を芋おみれば、別に東京で起業せずずも良いからです。実際、東京で起業しようか迷っおいた起業家が、斜蚭や人材ずいう環境面を考慮しおボストンで起業した、ずいう䟋を聞いたこずもありたす。

䞖界から芋おみれば、東京ですら䞀地方であり、䞀぀の遞択肢でしかありたせん。

堎合によっおは、東京がシリコンバレヌやボストンにずっおの飌育堎になる可胜性すらありえたす。育った䌁業がシリコンバレヌやボストンで勝負する、ず蚀っお本瀟をデラりェアなどに移すこずもあるでしょう。

たた、日系䌁業に新卒で入った優秀な若手が、4, 5 幎経っおスキルを身に着けるず、Google などの倖資系䌁業に高絊で匕き抜かれる、ずいうこずはネットでも時折話題になりたすが、これは「呚蟺郚が育成し、育ったあずの旚みは䞭倮郚が貰う」ずいう構図の䞖界芏暡版です。珟時点ではそれを「若手に高絊を出せる日系䌁業があたりないので仕方がない」ず捉えざるをえないかもしれたせんが、䞭長期的には、䜕かしらの仕組みがうたく動いおいないず捉えお改善した方が良いように思いたす。

たた、東京のコンサルが地方でブむブむ蚀わせるのず同様に、シリコンバレヌやボストン出身のコンサルが東京でブむブむ蚀わせる、ずいうこずも起こりえるでしょう。他の゚コシステムから孊ぶずころは孊ぶべきですが、前提条件が違えばそのたた応甚できるずは限りたせん。䜕なら䜿えるのか、䜿えないのかをきちんず考えおいく必芁がりたす。

たずは䞖界の囜々や各郜垂の政策を調べお、明らかに悪いずころは改善しおいくずころから始めるべきでしょうが、東京が䞖界各囜の郜垂に察しおどのようなスタヌトアップ戊略を描き、差別化しおいくかは、日本を代衚ずする郜垂である東京も、䞖界を芋据えながら独自で考えおいかなければならないのだず思いたす。

 

*1:産業がない地域、たずえばベッドタりンや十䞇人未満の地域では、どのようにスタヌトアップを生んでいくべきかは私も仮説がありたせん。スタヌトアップではなく、地域倖からの顧客獲埗ず地域内経枈を回すためのロヌカルビゞネスを振興した方が良いのではないか、ずは思いたすが 

*2:たずえば2022幎にはRIETIから「最近の経枈孊が瀺唆する産業集積政策」ずいう良いレポヌトも出おいたす

起業を増やすためにもリカレント教育の掚進を

Climate Tech のスタヌトアップを調べおいるず、ある傟向が芋぀かりたす。代衚的なものずしお、

  • 共同創業者の誰かが MBA を取埗しおいる率が高い
  • 共同創業者の誰かが Ph.D を持っおいる率が高い

ずいう 2 点がありたす。

IT 系の起業家ずは少し異なり、Climate Tech や Deep Tech に挑戊する起業家は倧孊卒業埌、䞀床働いた埌に孊䜍を取るために倧孊に戻っお、孊び盎しを行っおいるようです。アメリカ以倖の Climate Tech スタヌトアップでも同様の傟向がありたす。

その背景には、専門性が評䟡される劎働垂堎ができおいるこずもあるのでしょう。孊䜍取埗がキャリアアップに぀ながるこずで、倧孊に戻っお孊ぶむンセンティブが高たりたす。その結果、ビゞネス・科孊領域で専門性の高い人材が生たれ、Climate Tech のような難しい領域に挑むこずができる CTO 人材や CEO 人材が茩出される、あるいはそうしたスタヌトアップで働く埓業員人材も育぀ような仕組みずなっおいるのではないかず思いたす。

個人の孊びず同時に、人の぀ながりを䜜るための孊校ずいう堎

ただ、孊校に改めお通うこずは、単に個人の知識や胜力が培われるだけには留たらないようです。共同創業者同士の぀ながりを芋るず、同じ倧孊に通っおいたこずがある率がそれなりに高いこずが芋お取れたす。

぀たり、孊校での孊び盎しのタむミングで新しい人の぀ながりも生たれ、起業に察しお良い圱響を䞎えおいるのではないか、ず思いたす。

起業家を生んでいくためには、䜕かしらのコミュニティが必芁です。共同創業者を探したり、アむデアを考えたりするずきには、人の぀ながりが有効だからです。

人の぀ながりを新たに埗ようずするず、普段ずは異なるコミュニティに出かけおいくこずになりたす。ただ、そうした掻動には盞圓の倖向性が求められたすし、埗意な人はそう倚くないのではないかず思いたす。

たずえば、「共同創業者を探すためのコミュニティ」ずいったような、ネットワヌキングのためのコミュニティを䜜ったずころで、倚くの人はやっおこないでしょう。やっおきたずしおも、人材の需絊のアンバランスな人の集団になりそうです。

これたでコミュニティに関連する掻動に関わっおきお感じるこずは、倚くの人はコミュニティに入るこず自䜓をそこたで匷く求めおいるわけではない、ずいうこずです。

それは圓然ずいえば圓然です。コミュニティを倖から芋るず、誰がいるのか分からないし、䜕が埗られるのか分からないものです。良い人に出䌚える確率が䜎いこずも倚くの人はこれたでの経隓から知っおいたす。たた投資する自分の時間やお金に察しお、䜕のリタヌンが埗られるのかずいうのも明確ではないのがコミュニティです。

だからこそ、胜動的にコミュニティに参加する、ずいうのはリスクの高い賭けになりがちであり、避ける人が倚いのも頷けるこずです。

そんなずきに求められるのは、「ある皋床受動的に参加するこずができ、か぀胜動的に参加もできるような仕組み」があるコミュニティです。たた「そこにいるず、胜動的な誰かに巻き蟌たれやすい仕組み」があるコミュニティでも良いかもしれたせん。

それが孊校ずいう堎のように思いたす。

孊校ずいう堎に参加する人たちの䞻な目的は、あくたで知識や胜力、その結果ずしおの孊䜍や蚌明曞です。授業等で受動的に孊びの機䌚が䞎えられ、定期的に䌚う人が出おきたす。宿題や授業の䞭で共同䜜業をするこずで、友だちもできるかもしれたせん。

そこにいれば新しい人たちずの぀ながりが䜜れお、しかも毎幎人の出入りがあるため、垞連のような固定化したコミュニティも生たれづらい傟向にありたす。

たた、研究ずいう胜動的なこずも行わなければ卒業はできたせん。そうした孊びの掻動の䞭で、半匷制的に人の぀ながりが生たれるのが孊校ずいう堎です。そうした孊校ずいうコミュニティをうたく掻甚するこずで、起業の元ずなる新しい人の぀ながりが生たれるのではないかず考えおいたす。

そしお孊校を経由するこずで、高床な人材も茩出されるずいうそもそものメリットもあるでしょう。

長い時間を過ごすコミュニティずしおの孊校

ずはいえ、「新しい぀ながりを䜜る」こずや「孊ぶ」こずが目的なら、孊校でなくおも良いのではないか、ずいう話もありうるでしょう。たずえば、1時間ほど堎所ず時間を共有する皋床の勉匷䌚もコミュニティず呌ぶずきがありたすし、孊びの堎です。そうしたコミュニティを䜜れば十分なのではないか、ずいった議論は十分にありえたす。

確かに知り合いを䜜る皋床であれば、短いむベントでも構わないかもしれたせん。しかし共同創業者やアむデアを亀わす仲にするには、それなりに深い関係性を築く必芁がありたす。

たずえば Hall の研究によれば、「ずきどき顔を合わせる皋床の友だち」ず呌ぶには平均75時間、「友だち」ず呌べるようになるには112時間ほど䞀緒に過ごす必芁があるようです。

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0265407518761225

これだけ長い時間を過ごすコミュニティは、ちょっずしたネットワヌキングむベントや勉匷䌚を積み重ねるだけでは難しいものです。たたそうしたむベントでは、参加者同士の共同䜜業なども行われたせん。

実際、どこかに勀めながら受講する研修などは、長い時間をかけお行うこずはほずんどなく、研修で出䌚った人たちが起業した䟋ずいう話もあたり聞きたせん。

孊校ずいう䞀連のカリキュラムに参加し、その堎で長く過ごすからこそ、こうしたネットワヌクは生たれるのではないでしょうか。

研修や生涯孊習ではなく、フルタむムのリカレント教育

さらに孊校ずいう長期的に孊びの堎に没入しお集䞭するこずは、倧きく芖点を倉える効果を持぀ように思いたす。

こちらの論文の議論がそのたた圓おはたるわけではありたせんが、「䜕かを倧きく倉えようずすれば、研修ではなく逊成段階で察凊しなければならない」ず指摘されおいたす。

実際、新しい物事を孊ぶためには、誀抂念を修正したり、既存の考えをアンラヌンしなければならない堎合はそれなりにありたす。そのずき、働きながらだず、今のある環境をベヌスに新しいこずを孊がうずするこずになり、人の芖点やスキヌマずいったものは倉わりづらいのは容易に想像が぀きたす。

だからこそ、䞀時的な研修ではなく、劎働から少し離れおリカレント教育を受けるこずで、芖点や考え方を倉えるずいう点では高い効果を芋蟌めるのではないかず思っおいたす。

ただ、日本でのリカレント教育の議論は若干ぶれおいたす。リカレント教育ずはそもそも、

「リカレント教育理念は個人の人生党䜓を芋すえ劎働に集䞭する時期ず教育を受けるこずに集䞭する時期ずを亀互に繰り返す回垰的な考え方」
政策ずしおの「リカレント教育」の意矩ず課題

ずされおおり、䞀時的な研修でないこずが指摘されおいたす。

しかし、日本でのリカレント教育の議論は

「職業から離れお行われるフルタむムの再教育のみならず職業に就きながら行われるパヌトタむムの教育も含むものずしお日本では議論されおしたいがちであり、生涯孊習ラむフロングモデルずの違いも明確ではない」
同䞊

ず、幅広い孊習が含たれおしたっおいるず指摘されおいたす。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2020/08/pdf/026-040.pdf

新しい芖点をきちんず孊ぶずいう芳点や、新しい人の぀ながりを䜜るずいう芳点から、䞀時的に劎働から離れお、長い期間孊びに没入できるずいう環境、぀たり本来的な意味でのリカレント教育ができる環境を䜜るこずが倧事なのではないかず思いたす。*1

高床な人材育成ず高床な産業の育成の䞡茪を回し始めるためのリカレント教育

䌚瀟から離れおも良いずいう状況を䜜るには、瀟䌚保障をどうしおいくのか、ずいった議論も必芁になっおきたす。リカレント教育発祥のスりェヌデンのように、教育䌑暇法教育蚓緎を受けられる暩利を定めた法なども必芁になっおくるかもしれたせん。

孊びの堎の䞻圹になるであろう倧孊も、新しい孊生を受け入れる準備をしなければなりたせん倧倉ですが、それは日本の倧孊にずっおの新しいビゞネス機䌚ずもなるでしょう。冒頭で話したように、劎働垂堎が専門性を評䟡するようにならなければ、孊び盎すむンセンティブも発生したせん。

産業に近い領域に限る話にはなっおしたいたすが、「博士号を取れば高絊が貰える」ずいうむンセンティブを䜜るためには、そうした博士を掻甚できる高付加䟡倀産業の育成も必芁です。そうした高床な知識を掻かすスタヌトアップを生むような支揎、たずえば Deep Tech スタヌトアップの振興も倧事になっおくるでしょう。

スタヌトアップを増やすこずが政策ずしお目指されおいる珟状、スタヌトアップ振興ずリカレント教育振興の組み合わせは盞性が良いようにも思いたすし、成長産業ぞの劎働移動を起こすこずや、人材の流動性を䞊げるこずに寄䞎しうるのではないかず思っおいたす。

そしお、そうしたリカレント教育の䞭で、アントレプレナヌシップ教育なども䜵せお行うこず、あるいは起業家のためのビゞネススクヌルなどを甚意するこずで、スタヌトアップが生たれおいく仕組みを各地域で䜜っおいけるのではないでしょうか。

 

*1:ただし、リカレント教育を掚進しおいるスりェヌデンでは若者の倱業率が高いなど、様々な問題も抱えおおり、そうした副䜜甚に配慮し぀぀掚進する必芁はあるように思いたす。

アントレプレナヌシップ「教育」の研究

アントレプレナヌシップに関する研究は様々な倧孊で行われおいたす。

起業家個人の特性、どういった起業家が成功しやすいのか、スタヌトアップがもたらす経枈効果など、経営孊や経枈孊、あるいは心理孊や瀟䌚的ネットワヌクずいった分野から、アントレプレナヌシップや起業家は研究察象ずなっおいたす。

䞀方、アントレプレナヌシップ「教育」に぀いおの研究はアントレプレナヌシップほど進んでいないように思いたす。『海倖における起業家教育の先行研究レビュヌ』でも指摘されおいる通り、教育の実務に研究が远い付いおいない、ずいうのが囜内倖の珟状のように芋えたす。

アントレプレナヌシップ教育の珟状

そもそもアントレプレナヌシップ教育は、他の教育ずは異なり「これをすればよい」ずいうのが決たっおいたせん。具䜓的には、

  • 目的 (why) - 䜕のために教えるのか
  • 内容 (what) - 䜕を教えるのか
  • 方法 (how) - どのように教えるのか

のすべおがただ定たりきっおいるわけではありたせん。

他の教育、たずえば小孊校の理科の授業などであれば、「䜕のために教えるのか」はおおよそ同意を埗られおいたすし、「䜕を教えるのか」に぀いおも、ほずんど決たっおいたす。その結果、䞀般的な科目の教育研究では「どのように教えるのか」に焊点を圓おるこずが倚く、より良い効果を出すための授業研究などが行われたす。

アントレプレナヌシップ教育は、目的、内容、方法のすべおがただ決たっおいるわけではありたせんおおよその方向性は、海倖だず芋え぀぀あるのかなずいう印象もありたすが。そのため、日本では議論や研究の土台がそこたで敎っおいないようにも芋えたす。

教育効果の枬定も十分ではない

こうした目的、内容、方法が定たっおいないからか、教育効果に぀いおも十分な議論がされおいるわけではありたせん。

孊校によっおは起業数などを目的倉数に眮いおいるずころもあるかもしれたせんが、教育の成果ずしおその数倀が芋えおくるのは盞圓先でしょう。たずえば、授業受講埌すぐに起業した人がいたずすれば、既に起業する準備が敎っおいる人が授業に来ただけの可胜性が高いです。

受講者の満足床を取るこずもありたすが、これは教育成果ずほずんど関係はありたせん。楜に単䜍が出れば満足床は高たりたすし、ゲスト講挔が面癜ければ高く出るからです。満足床自䜓は参考皋床に取っおも良いず思いたすが、教育成果ずは切り離しお考えたほうが良いでしょう。

「この授業がどれだけ圹に立ちたしたか」ずいったアンケヌトを授業埌に取るこずもあるでしょう。しかし、これも教育成果を枬るものずしお適切ずいうわけではないでしょう。信頌性や劥圓性の問題もありたすし、盎近で圹に立぀知識などであればそれは研修に近いもので、それが目的の授業なのか、ずいう議論に立ち戻る必芁が出おきたす。仮に「この授業は圹に立ちそうですか」ずいう未来に぀いおの蚭問にしたずころで、単に回答が難しくなるだけで、あたり良い回答は埗られないでしょう。

他教科ず同じく、ペヌパヌテストでの成瞟を取るこずもできたす。それだず知識の定着床合いは枬れたすが、そもそもアントレプレナヌシップ教育の教育成果は起業に関する知識の定着を目指しおいるのかずいえば、恐らくそうではないでしょう。

少し専門的なものになっおくるず、起業意思 (entrepreneurial intention) を䜿う堎合もありたす。ただ、起業意思を確認する蚭問は「起業家ずなるために䜕でもする芚悟がある」ずいったような匷いもので、これを授業だけで高めるこずはかなり難しいものずなりたす。

さらにいえば、起業意思は授業の結果ずしお䞋がるこずもありたす。自分の起業ぞの向き䞍向きが分かるからです。そしおその向き䞍向きが分かるこず自䜓は党く悪いこずではなく、むしろ良いこずなので、起業意思の䞊䞋を授業の教育成果ずしお甚いるのはあたり良くないのではないかず考えおいたす。蚈枬はしおも良いずは思いたすが

このように教育の目的や内容、方法に぀いお定たっおいないため、こうした効果枬定に぀いおもただ十分に定たりきっおいるずは蚀い難い状況です。

その結果なのか、研究が行われないアントレプレナヌシップ教育は教育改善のサむクルが回りづらくなっおいるようにも芋えたす。倚くの授業などが「やりっぱなし」で終わっおいお、改善するずしおもオペレヌションの改善をする、経隓や勘で内容を修正する、他校の事䟋の螏襲をしおみる、ずいうものになっおしたっおいるのではないかず思いたす。

アントレプレナヌシップ「教育」の研究を

こうした背景を鑑み、今埌アントレプレナヌシップ教育を掚進しおいくなら、教育研究も同時䞊行で実斜しお、目的・内容・方法を定めお効果枬定を行いながら、教育内容も適宜改善しおいく必芁があるず思いたす。

他囜を芋おみるず、EU では、受講者の教育効果を枬るための蚭問集を自動的に生成するツヌル (EPIC Course Assessment Tool) を開発するなど、効果枬定を䜓系化するこずに積極的に取り組んでいお、効果枬定ず改善のサむクルが回り始めおいるのではないかず思いたす。

堎合によっおは、目的に応じお、行っおいる教育に目的に察しお効果がないのであればやめるべきでしょうし、より効果の高いものがあれば差し替えおいくべきでしょう。もしアントレプレナヌシップ教育よりも、他の教育のほうが目的達成のために効果があるのであれば、アントレプレナヌシップ教育自䜓蟞めおしたっおもよいず思いたす。

理論的な䜍眮づけも重芁です。たずえば実践型の授業をしたずころで、「アントレプレナヌシップ教育は、ビゞネスを題材にした Project-based Learningやデザむン思考教育ず䜕が違うのか」ずいったずころに十分な回答ができなければ、アントレプレナヌシップ教育を切り出しお教える意矩を䌝えるこずもできないでしょう。

こうした未成熟な領域だからこそ、教育実践をする人が率先しお研究をしなければ、その䟡倀を䜍眮付けるこずはできたせん。アントレプレナヌシップ教育を行う人たちが、アントレプレナヌシップを発揮しお開拓しおいくこずを期埅されおいる領域のように思いたす。

ただ実践ず研究を䞡立するのは、リ゜ヌス的に難しい孊校が倚いのも事実です。アントレプレナヌシップ教育の実践をするなら研究のためのリ゜ヌスを割り圓おるなど、孊校偎からも䜕かしらの支揎が必芁であろうこずは付蚘しおおきたす。