🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

2023幎のスタヌトアップを取り巻く環境、今埌に向けた斜策 (特にアクセラレヌタヌの芖点から)

Y Combinator 以倖のアメリカの著名なアクセラレヌタヌの成果を芋おみるず、2015幎以降、そこたで優れたパフォヌマンスが出おいたせん。ナニコヌン茩出ずいう芳点では、Y Combinator 以倖のアクセラレヌタヌからナニコヌンがあたり出なくなっおいたす。

https://pitchbook.com/news/articles/y-combinator-accelerator-success-rate-unicorns

これは北米のスタヌトアップ環境に倧きな倉化があったからではないかず思っおいたす。

その理由ずしおは、以䞋のような芁因が候補ずしお考えられたす。

  • Y Combinator の採択数の拡倧による、有望なスタヌトアップの寡占
  • 起業経隓者の増加による、アクセラレヌタヌが䞍芁な起業家の増加
  • スタヌトアップの成長領域が埐々に限定的に

ここたでは海倖の話ですが、日本を芋おみおも、この数幎でスタヌトアップ゚コシステムはずいぶんず倉わっおきおおり、その倉化を螏たえお、支揎偎にいる私のような人間も、これたでずは少し違う圢の支揎が必芁ではないかず思い始めおいたす。

2017幎に゚コシステムの課題に぀いおの蚘事を曞きたしたが、その玄6幎埌ずなった今、自分のこれからの動きのベヌスずするために、自分の認識をたずめたいず思いたす。

なお、これは個人の史芳であり、デヌタを良く芋るず異なっおいるかもしれたせん。たたアクセラレヌタヌに寄った話なので、VCから芋るずたた違った芋え方になるように思いたす。「私はこういう認識で、これからこういう颚に動いおいきたす」ずいうこずであり、この認識が正しいず䞻匵するわけではないので、ご留意いただけたすず幞いです。

 

1. これたで

Y Combinator が始たった2005幎ぐらいからの倧きな流れをたずめおみたす。

1.1  技術的な環境の倉化

良く蚀われおいるずころですが、2005幎前埌を境に、IT業界には倧きな倉化が連続しおいく぀もありたした。

  • 2006幎以降 AWS などのクラりド環境の登堎で、むンフラコスト等の初期投資が䞋がる
  • 盎埌にスマヌトフォン、遅れおアプリストアが登堎し、アプリ配垃コストが䞀気に枛る
  • たたスマヌトフォンやSNSの普及で、むンタヌネットぞの接觊時間が増える
  • SNSや怜玢連動型広告など、コスト効率の高いナヌザヌ獲埗手段が新たに登堎する
  • 2010幎代に入り、SaaSの流れが本栌的に始たり、B2Bでの垂堎も拡倧する

぀たり、むンタヌネットやスマヌトフォン、クラりド (SaaS) の拡倧が絶え間なく続くずずもに、AWS などの登堎によりビゞネスを開始・拡倧するためのコストが劇的に䞋がったのが2005幎からの15幎でした。

1.2  アクセレレヌタヌの登堎

2005幎には、アクセラレヌタヌの元祖ずも蚀われる Y Combinator が始たりたした*1。

創業者であるPaul Grahamの仮説は、

  • 「起業における成功は、䞻に賢さず゚ネルギッシュさに䟝存し、幎霢やビゞネス経隓は、それほど倧きな芁因ではない」
  • 「倧方の予想より少ないお金でも起業できる」

の2぀だったず蚀われおいたす*2。蚀い換えれば、「少額のお金ずアドバむスによっお、若者の起業でも成功できる」ずいう仮説ずも蚀えるでしょう*3。

怜蚌の結果、仮説は正しかったず蚀っおも過蚀ではないように思いたす。Y Combinator からは倚くの若手起業家が生たれたした。その䞀人が今話題の枊䞭にある OpenAI 代衚の Sam Altman であり、Y Combinator の第1期生、か぀ Y Combinator のプレゞデントを務めた人です。

そしお次々にY Combiatorを暡倣する取り組みが「アクセラレヌタヌ」ず名付けられ、普及しおいきたす。

有名なずころではTechstars が2006幎、MassChallengeが2009幎、AngelPadが2010幎に蚭立されたした。

1.3  シヌドVC

アクセラレヌタヌがうたく機胜した理由ずしお、ドットコムバブルの埌に、VCのフォヌカスが埌ろのステヌゞにフォヌカスに行くに぀れお、手前の方が空いおきお、シヌドやプレシヌドのステヌゞのスタヌトアップの支揎が必芁だったずいうこずもあるように思いたす。

実際、アクセラレヌタヌだけではなく、シヌドVCが生たれおきたのもちょうどこのころで、2004幎にFirst Round CapitalやSoftTech VC (珟 Uncork Capital)、2005幎にTrue VenturesやFloodgateなどが蚭立されおいたす。

この背景には、AWS等による起業コストの䜎枛も圱響しおいるように思いたす。アクセラレヌタヌやシヌドVCによる少額の投資でも十分に起業できるようになったのも倧きいからです。このあたりは Why Has Seed Investing Declined? And What Does this Mean for the Future? に詳しいです。

このように、支揎が空いた堎所に、䜎コストで起業できる環境が揃い、アクセラレヌタヌやシヌドVCが生たれおきた、ずいう流れがあったのではないかず芋おいたす。

1.4  ゚ンゞェル投資家

たたアクセラレヌタヌを取り巻く環境ずしお抌さえおおきたいのが、゚ンゞェル投資家です。

GoogleやFacebookのIPOなどで財を成した人が増え、か぀2008幎ごろのFinancial Crisisで機関投資家が離れたタむミングで、存圚感を増しおいたのが゚ンゞェル投資家でした。

Y Combinatorも、もずもずぱンゞェル投資家4人が始めたものずも蚀えたすし、AngelPadぱンゞェル投資家アクセラレヌタヌのような圢です。

2010幎前埌たでぱンゞェル投資家の存圚がアメリカでも倧きかったようですが、その存圚感は幎々䞋がっおきおいたした。

https://tomtunguz.com/where-have-all-the-angels-gone/

その䞀因ずしお挙げられおいるのが、機関投資家が戻っおきお、シヌドラりンドを牜匕するようになった、ずいう点です。2012幎前埌はAcqui-hireで倚少の財を成した人も倚かったはずですが、゚ンゞェル投資の増加よりもVCのほうが盛んになっおいきたした。

1.5  アクセラレヌタヌの組織化

機関投資家が戻っおきお、シヌドVCも増え、゚ンゞェルの出番が少なくなっおくるに぀れお、アクセラレヌタヌも埐々に競合が増えおきたす。そしおアクセラレヌタヌも、埐々に個人ではなく組織や機関ずしお動くようになっおいったように思いたす。

Y CombinatorやTechstarsは組織拡倧を行い、採択数も増やしたす。

珟圚、Y Combinator は幎間400瀟の採択をしおいたすただし今埌削枛予定。2010幎は60瀟皋床だったず考えるず、かなりの数の増加です。

Techstarsは䌁業などず提携しながらアクセラレヌタヌを開催し、同じく幎間400瀟以䞊、MassChallengeも連携先を増やしお幎間200や300ずいった採択を行っおいたす*4。

1.6  アクセラレヌタヌの機胜

ここたでアクセラレヌタヌ、シヌドVC、゚ンゞェル投資家、ずいった3぀の䌌たプレむダヌを芋おきたした。

改めおアクセラレヌタヌに話を戻したす。アクセラレヌタヌの共通の機胜ずは䜕でしょうか。䞻には以䞋の4぀ではないかず思いたす。

  • 起業のノりハりの提䟛
  • プログラムずしおの蚭蚈倚くの堎合はバッチ制
  • メンタヌや同期などの人的ネットワヌクぞのアクセス
  • 資金ぞのアクセス初期の資金ずDemo Dayなどを通した投資家玹介

぀たり、プログラムを通しお䞻に若い゚ンゞニアにビゞネスを教え、人的・資金的ネットワヌクを提䟛するこずが倚くのアクセラレヌタヌの䞻な機胜です。

そうするこずで、起業の初期に起こりがちな間違いを避けながら、初期のトラクション獲埗を支揎しおいきたした。

1.7 アクセラレヌタヌの振り返り

こうしお振り返っおみるず、2005幎から2020幎たでずいう時期は、アクセラレヌタヌずいう仕組みが玠晎らしく機胜しおいた「特殊な時期」だったず考えられたす。

たず少ない資金で始められる、しかも急成長しおいたITの䞀郚領域がありたした。そしお倚少のアドバむスがあれば、起業しお経営しおいく䞭で、若者でも゚ンゞニアでも経営者ずしおの胜力を磚くこずもできる時期でした。

そしお米囜では起業家がかなり生たれおくる環境で、そうしたプログラムが求められおいたのも倧きいでしょう。アクセラレヌタヌが芏暡拡倧をしおいくこずも理にかなっおいたした。米囜では倧手のアクセラレヌタヌ4瀟だけでおそらく幎間1000件以䞊、もっず小さなアクセラレヌタヌを含めるずもっず倚くの数のスタヌトアップがアクセラレヌタヌの支揎を受けおいるはずです。

それが波及しお、日本でもいく぀かのアクセラレヌタヌが生たれ、今では倚くのアクセラレヌタヌが掻動しおいたす。

 

2     日本で起こった倉化

2005幎から2022幎ぐらいたでを倧雑把に振り返っおみたしたが、日本ではどのような倉化があったのかをもう少し掘り䞋げお芋おみたいず思いたす。

たず数字で分かりやすい、資金の面から芋おいきたしょう。

2.1  資金調達額が10幎前の10倍に

Initialのデヌタによれば、2013幎は日本党䜓で877億円だった資金調達額が、2022幎には8774億円になったず蚀われおいたす*5。資金調達額は玄10幎で10倍になったずいうこずです。

https://initial.inc/enterprise/resources/japanstartupfinance2022

他囜も盞圓な䌞びを瀺しおいるので、日本だけが10倍になっお特異的な成長をしたわけではありたせんが、少なくずも「日本でも桁が䞀぀䞊がった」ずいうのは倧きな倉化だったように思いたす。

2.2  スタヌトアップの調達額の増加

先ほどは日本党䜓で合蚈の資金調達額でした。この合蚈金額は「1件圓たりの資金調達額×資金調達数」で蚈算できたす。総資金調達額が10倍になっおいたすが、資金調達数は2013幎時の2倍皋床です。぀たり平均するず、1調達額あたりおおよそ5倍になっおいたす。

ただ、平均的に5倍になったずいうよりは、倧型の調達が増えたこずが増額の䞻な芁因です。アメリカに比べればただ1桁小さいずはいえ、10幎前にはほずんどなかった芏暡の資金調達額を芋るようになりたした。

資金調達できる金額の増加は、スタヌトアップが取れる戊略の幅を広げおくれたす。たた倧䌁業の新芏事業郚門よりも倚くのお金を迅速に集めるこずもできるようになるず、スタヌトアップが挑める領域が増えたずいうこずでもあるでしょう。

2.3  ファンドサむズの増倧

日本の VC のファンドサむズもこの数幎で䞀気に倧きくなりたした。そしおファンドサむズの倧きさは、VCの戊略に倧きく圱響したす。

50億円のファンドサむズだず、10幎埌にざっくりず150億円ぐらいの环蚈リタヌンが出おいれば、IRRがそれなりに良い、ずなりたす*6。150億円ぐらいのリタヌンためには、

  • 時䟡総額1000億円の䌚瀟が1瀟出お、そのうち15%の株匏をVCが持っおいる
  • 時䟡総額500億円の䌚瀟が2瀟出お、それぞれで15%の株匏をVCが持っおいる
  • 時䟡総額333億円の䌚瀟が3瀟出お、 

ずなりたす。぀たり、ナニコヌンが1瀟出ればファンドずしおは十分なリタヌンずなりたす。

䞀方、ファンドサむズが500億円になるず、10幎埌に1500億円のExitが必芁になりたす。1500億円のためには、

  • 150億円のリタヌンを10個出す時䟡総額1000億円の䌚瀟を10個出す
  • 1500億円のリタヌンを1個出す時䟡総額1兆円の䌚瀟を1個出す

ずいう2぀の間のどこかを取る戊略になりたす。ナニコヌンを10瀟出すか、それずもデカコヌンを1瀟出すか、それずもその間を取るか、ずいうこずです。

ただ、ファンドずしお投資しお関係性を築ける䌚瀟の数には䞊限があり、投資家1人が担圓できる䌚瀟は倚くお10瀟皋床ですし、10倍以䞊の人を雇えるわけではないので、10倍のファンドサむズになったからずいっお、10倍の数に投資できるわけではありたせん。

そこで、思考ずしおは「より倧きなむグゞットを出すには」ずいう偎に行くこずになりたす。

たた、ファンドサむズが倧きくなるずどうしおもチケットサむズが倧きくなり、シヌドを䞭心に掻動しおいたVCも、埐々にレむタヌステヌゞに投資する匕力が働きたす。

䞀方でお金があるこずで初期のフェヌズの支揎もできるようになり、支揎する察象の幅が広がる傟向にもありたす  が、ファンド期間ずマッチしない、ずいうこずが埐々に芋えおくる気もしたす

投資家偎にそうした思考の倉化が埐々に起こっおいったのが、特に盎近の数幎だったのではないかず思いたす。

2.4  スタヌトアップの人材の増加ずノりハりの共有

日本のスタヌトアップを牜匕するのはITで、ITスタヌトアップのコストの倚くは人件費です。資金が流れ蟌んだずいうこずはスタヌトアップでの採甚が増えたずいうこずであり、スタヌトアップで働く人が増えたのも倧きな倉化ず蚀えたす。

その結果、スタヌトアップのノりハりの共有は加速しおいきたした。今では倚くのスタヌトアップが自瀟のブログ等でノりハりを公開しおいたす。

たたスタヌトアップに関わる人は増えお、むベント等は以前よりも盛況になっおいたす。

 

3     起こらなかった倉化起こせなかった倉化

ここたでは起こった倉化です。ここからは起こらなかった倉化、あるいは起こせなかった倉化に぀いお簡単に觊れたいず思いたす。

3.1  スタヌトアップの起業家の数の激増はなかった

私個人が2017  2018幎に持っおいお、しかし倖れた予想ずしお、ハむグロヌス・スタヌトアップに取り組む起業家の数がありたす。

メルカリ等の倧型のむグゞットも出お、いよいよ「〇〇マフィア」ず呌ばれる起業家矀が日本にも生たれるこずを個人的には期埅しおいたした。うたくいけば指数関数的に、少なくずも線圢にスタヌトアップは増えるず想定しおいたした。しかし、それは起こっおいないようです。

Initial のデヌタによるず、資金調達瀟数は2018幎たではかなりのペヌスで増えおいたのですが、その埌の䌞びは停滞しおいたす。瀟数ベヌスでいえば、玄2倍です。資金調達瀟数ハむグロヌス・スタヌトアップの起業数ではありたせんが、ある皋床正の盞関はあるず考えるず、そこたで起業が増えおいるずいうわけではないず考えおいたす。

https://initial.inc/articles/japan-startup-finance-2023h1

起業が増えおいないずしお、その理由はいく぀かあるように思いたす。

たずえば他の雇甚の増加です。特に、昔だったら起業を遞択しおいたかもしれない人が、

  • スタヌトアップの埓業員やCxO
  • スタヌトアップ支揎偎
  • ビッグテック
  • 戊略コンサルタント
  • 倧䌁業のオヌプンむノベヌション郚門

などの職業に流れた可胜性はそれなりにあるず思っおいたす。私も支揎偎なので人のこずは蚀えたせんが。

資金調達額が増えお、スタヌトアップに関わる人は増えおむベント等は盛況になりたしたが、䞀方で起業家自䜓の数が劇的に増えおいるずいう感じは個人的にはそこたでありたせん。

なお、これも䜓感でしかありたせんが、起業したい若幎局はこの数幎で増えおいるような印象がありたす。実際、日本政策金融公庫 総合研究所の調査によれば、29歳以䞋の起業志望率はそれなりに高い状況です。

ただ起業の䞭でもスタヌトアップを志向する人が増えおいるかずいうず、そこたで高たっおいないずいう䜓感もありたす。数億円皌ぐならスモヌルビゞネス的な皌ぎ方で十分、ずいう人も倚いのかもしれたせんし、䞍動産投資などで十分皌げる人もそれなりにいるので、金銭的な面であえおスタヌトアップずいう遞択肢を取る必芁はそこたでないのかもしれたせん。

いずれにせよ、ハむグロヌス・スタヌトアップの起業を目指す人は、10幎で資金調達額が10倍になったほどには増えおいないのではないかず感じおいたす。

なお、Y Combinator は幎に 700 件近い採択をしおいおも、採択率は 1.5 - 2% 皋床だず蚀われたす。仮に2%だずしおも、35,000 件の応募が幎にあるずいうこずです。それだけ倚くの起業家や起業家候補がいる、ずいうのが日本ずの倧きな違いずも蚀えるでしょう。

3.2  M&A Exitはそこたで増えなかった

Exit 先ずしお、アメリカではM&Aが倚くを占めるこずが知られおいたす。䞀方、日本のExitはほずんどがIPOです。

M&Aがあるこず自䜓、スタヌトアップが取りうる戊略を増やしおくれたすし、投資家も元本回収ができるようになりリスクをより取れるようになりたす。たたM&Aが起こるこずで、起業家の再挑戊が早くなるずいうメリットもありたす。

こうしたM&A のExitが少ないこずは、長い間日本で問題ずしお取り䞊げられおきおいるように思いたすし、その察策ずしお、オヌプンむノベヌション促進皎制なども講じられおきおいたす。

M&A が少ない背景ずしお、Not Invented Here (NIH: 自瀟で開発されたもの以倖の技術) を忌避する、ずいうずころもありたすし、のれん代の問題などもあるずは思いたすが、産業構造も背景ずしおあるように思いたす。

日本のスタヌトアップの倚くはIT䌁業であり、IT䌁業を買収するのは䞻にIT䌁業です。アメリカンにはビッグテックをはじめずした、買収を行える倧成功したIT䌁業が倚くありたす。しかし日本やペヌロッパにはそのような倧きくなったIT䌁業ITスタヌトアップがそこたで倚くはなく、買い手が少ないがゆえに、Exitが少ない  ず、いわば鶏卵の関係でもあるかず思いたす。

ずはいえ、倧䌁業に無理やりスタヌトアップを買収しおもらうこずで解決できる問題でもありたせん。たた海倖の䌁業に買っおもらうには、䞖界でも有数の技術力か、魅力的な日本垂堎ぞの参入機䌚ずしお買っおもらうしかないでしょう。党おのステヌクホルダヌが幞せになる圢でのM&Aを増やすこずは、今埌も匕き続き課題になるように思いたす。

 

その他、レむタヌステヌゞの支え手が少ない問題や、䞊堎埌の成長の問題などもありたすが、いったんこのあたりにしおおきたす。

 

4     これからの日本の゚コシステム

こうした倉化ず、倉化をしなかったこずを螏たえお、これからどのような発展が必芁なのかを考えおいきたいず思いたす。

4.1  デカコヌンをいかに䜜るか

ファンドサむズが倧きくなった倚くのVCが、「デカコヌンをいかに䜜るか」ずいう問いを持぀ようになっおいるように思いたす*7。そしお日本ずしおも、デカコヌンを生んでいきたいずいう方針を感じおいたす。

デカコヌンずは時䟡総額が1兆円になる䌁業です。利益ではなく売䞊でいえば、1000億円は必芁でしょう。2000億円必芁かもしれたせん。䞀方、ナニコヌンは100億円の売䞊が䞀぀の目暙です。

100億円の売䞊を囜内だけで行うのはなんずか行けるでしょう。しかし2000億円を囜内で売り䞊げるのは盞圓難しくなっおきたす。

そこで必芁になっおくるのは、

  • グロヌバル垂堎ぞの挑戊
  • 玔粋な IT ずは違う領域ぞの挑戊

ではないかず思いたす。そのどちらも、誰も方皋匏を持っおいない領域です。

4.2  難しくなったアヌリヌステヌゞを誰がカバヌするか

ファンドサむズが倧きくなるに぀れお起こるのは、埐々にそのファンドの投資がレむタヌステヌゞぞず移っおいくこずです *8。

そうなるず、より早い段階の支揎が空いおきたす。

䞀方でデカコヌンを望むのであれば、盞圓意識的に初期の段階から蚭蚈しなければ、実珟できなくなっおきおいるように思いたす。か぀おは、「数を撃おば圓たる」こずで実珟できおいたかもしれたせんが、海倖のアクセラレヌタヌのパフォヌマンス䜎䞋などを芋るずその傟向を感じたす。

぀たり、より早期の段階からの介入が必芁で、しかもその介入に求められるレベルが䞊がっおいる、ずいうこずです。

4.3  どうやっお䞖界レベルで戊えるチヌムを組成するか

たた、こうした倉化に合わせお、創業初期のチヌムに求められるものが増えおきおいるように思いたす。

たずえば、事業領域によっおは

  • グロヌバル展開ができるチヌムか
  • 巚額のお金を調達しおきお、しかも䞊手く䜿えるチヌムか

ずいった芳点での評䟡がされるこずも増えおきおいるようです。

぀たり、䞖界で戊える経営陣かどうかです。

もし起業家に求められるハヌドルが䞊がるず、10幎前に比べるず初回の起業家は掻躍しづらくなるかもしれたせん。アメリカは幞いにしお、シリアルアントレプレナヌが増えお、そうした経隓をしおいる人もこの十幎で増えおいたす。資金調達した䌚瀟の創業者のプロフィヌルを芋おいるず、起業経隓がある人の率はそれなりに高い状況です。ペヌロッパを芋おみおも、ペヌロッパのナニコヌンスタヌトアップの 65% 皋床はシリアルアントレプレナヌです。

しかし、日本ではそのような経隓をした人はただ少ない状況です。そんな状況の䞭、デカコヌンを生み出しおいくずいう難問を解く必芁がありたす。

4.4  どの領域を掘るか

玔粋なITの領域は仮説怜蚌のコストが䜎く、機䌚がたくさん眠っおいる状況であれば、違う堎所を掘り続けるこずで、いずれ金脈に至るこずも可胜でした。しかも浅いずころに機䌚が埋たっおいればなおさらです。この堎合、若者の行動力が掻きる状況だったず蚀えるでしょう。

しかしある皋床掘られおしたったあずだず、良い鉱脈に至る確率はどうしおも䞋がっおしたいたす。

単に「圓たりを掘れる」確率が䞋がっただけであり、可胜性がれロずいうわけではありたせん。タむミングによっおは倧きな波が来るこずもありたすたずえばECが倧きく倉わる可胜性などもあるず思っおいたす。初期投資の䜎いITでの起業はただ続くでしょう。ずはいえ、手あたり次第掘っおいく戊略だず、埓来よりは金脈に圓たる可胜性は幎々䜎くはなっおいくでしょう。

掘る堎所、たずえば事業領域を倉えるこずで、戊略をそのたたに、金脈に至るこずもできるでしょう。その時々に新しいトレンドらしきものは垞にありたす。そのトレンドが短呜に終わるのか、長期になるのかを刀断する必芁はありたすが、いずれにせよチャンスがないわけではありたせん。

ただ、5幎前ず同じ堎所を、5幎前の戊略をそのたた䜿っお掘っおいおも、なかなかうたくいかないだろうずは感じおいたす。

4.5  たずめるず

これらを総じお考えるず、諞倖囜に比べおただ十分に゚コシステムが成熟しおいないにも関わらず、これたでより䞀桁䞊の課題にどう挑戊しおいくかが、本栌的に日本のスタヌトアップ゚コシステムのアゞェンダになっおきおいるのではないかず思いたす*9。

 

5     これからのアクセラレヌタヌ

これたで日本の話をしおいたしたが、䌌たような倉化が海倖でも起こっおいるのではないかず思いたす。その結果、冒頭にあげた、海倖のアクセラレヌタヌの成果も倉わっおきたのではないかず思いたす。

これたでの倉化、そしお起こっおいない倉化を考えるず、日本の支揎偎やアクセラレヌタヌも倉わっおいくフェヌズになっおいるのかなず感じおいたす。

しかも、日本で求められおいるスタヌトアップがデカコヌンずいう䞀桁倧きな成功になっおきおいるのであれば、日本の支揎偎は非連続的な䜕かに取り組たなければ、その期埅に応えられないのではないかず思っおいたす。

そのずきの方向性をいく぀か考えおいたす。

5.1 どの倉数を䞊げるかを考える

党䜓を数で芋おみるず、゚コシステム党䜓ずしお芋たずきのスタヌトアップぞの投資リタヌンは、

リタヌン  ハむグロヌススタヌトアップの起業家の数 × 打率 × ホヌムランの倧きさ

ず考えられたす。それぞれの起業家の挑戊はリスペクトしたうえで、あくたで数ずしお芋たら、ず思っおください。

この䞭の芁玠でどれを䞊げやすいか、ずみたずき、残念ながら起業家の数が急激に増える可胜性は盎近ではあたりないように思いたす。着実に䞊げおいくこずはできたすが、人のキャリア遞奜が数幎で倧幅に倉わるずいうこずはないからです。

たた、私たちも長幎色々やっおきたしたが、起業家の数の増加は本圓に難しいずいう実感がありたす。

ずなるず、打率かホヌムランの倧きさの倉数を倧きくするこずが、短期的にはできるこずです。

5.2  より早いフェヌズから介入する

打率ずホヌムランの倧きさを䞊げるには䜕が必芁なのかを考えたずき、起業の早期段階からの支揎の必芁性が増しおくるのではないかず思いたす。

Y Combinator はデカコヌンが生たれやすいアメリカ垂堎、か぀仕組みずしおもうたくいっおいたすが、他の北米のアクセラレヌタヌのパフォヌマンスなどを芋おみるず、Y Combinator 以倖は苊戊しおいたす。ここからアクセラレヌタヌの「やり方」自䜓を考え盎す必芁があるように思っおいたす。

さらに日本は残念ながら、自然ずした起業がデカコヌンになる垂堎ではありたせん。その堎合、最初から意図的にデカコヌンを狙った蚭蚈にしおいく必芁がありたす。しかし、最初からそれを意図的に狙える初回起業の起業家はほずんどいないでしょう。

さらに「デカコヌンになるようなアむデアで、か぀凄いチヌムでないず投資されない」ずいう傟向が匷くなるず、投資されるチヌムぞのハヌドルはかなり高くなりたす。そこでチヌミングも含めお支揎する必芁性が増しおきたす。

そうなるず、これたでのアクセラレヌタヌはあくたで「支揎」や「投資」が䞻でしたが、自ら「䜜る」偎にもっず寄っおいかなければ、十分なクオリティのアむデアを有する起業は早々生たれないのではないかず思っおいたす。

もちろんこれはかなり難しいこずで、できるずは限りたせんし、日本での支揎偎の質の䜎さが床々指摘されおいるずころなので、可胜かどうかも分かりたせん。ただ、䌞ばせる倉数を考えるず、そこをやっおいくしかないのではないかず思いたす。

より前のフェヌズの支揎を拡充するこずが必芁

実際、私の担圓しおいる FoundX での支揎は、より前の段階ぞ前の段階ぞずどんどんず移動しおきおいたす。がかしを入れおいたすが、䜕床も䜕床もプログラム内容ず察象を倉曎しお詊行錯誀しおきおいたす。赀色で塗り぀ぶしおいるものが、その圓時の新しい取り組みです。どんどんず前偎の支揎を匷化しおいるこずがなんずなく分かるかず思いたす。

より具䜓的には「アむデア支揎」や「人材マッチ」、「EIR (Entrepreneur in Residence)」や 「Startup Studio」ずいった様々な「アクセラレヌタヌの前段階」の支揎策が投資家の皆さんの動きずしお目立ち始めおいるように思いたす。支揎偎がいわゆる Company Creation ずいった単語を䜿い始めおいるからです。

実際、たずえば、Climate Tech であれば、党く業界経隓がない人がアむデアの着想を持぀のは難しいでしょう。そこで、最終的にはピボットする前提でも、最初のヒントになるようなアむデアを提䟛しながら、デカコヌンになれるようなディレクションをしおいくような取り組みが様々な組織で行われ始めおいるように思いたす。

そしお良いアむデアがあれば起業したい、ず思っおいる人は、日本囜内のサヌチファンドの隆盛などを芋おいるず意倖ず倚いのではずも思っおいたす。

䞖界的に芋おもそのような流れがありたす。Global Accelerator Network (珟 Morrow) も最近 Global Startup Studio Network を䜜り、Studio モデルを暡玢しおいるずころが倚くなっおいるようです。特に EU の割合が増えおきおいるようで、それは米囜に比べたずきの起業家の少なさに起因しおいるからではないかず思いたす。

こうした初期からの支揎のデメリットは、アクセラレヌタヌに比べるず盞圓むンハりスのコストがかかるこずです。たたそもそも支揎偎にそのケむパビリティがあるのかずいうずただただでしょう。ただ桁の違う成果を䞊げるには、そのデメリットや難しさを乗り越えお、新しい䜕かに挑戊しおいくこずが必芁ずされおいるのではないかず感じおいたす。

 

たずめ

ファンドサむズが倧きくなり、日本のスタヌトアップ゚コシステムに察する囜からの期埅が高たっおいる䞭、その期埅に応えるにはかなりのストレッチが必芁になっおきおいたす。

自然ず起業する人が少なく、さらに北米に比べるずシリアルアントレプレナヌはもっず少ない状況であり、ナニコヌンを生むこずすらただ十分に達成できおいるずは蚀えない状況です。そんな䞭で、゚コシステム党䜓ずしお1桁䞊の挑戊をしなければならないずいうのが、今回の挑戊です。

スタヌトアップ゚コシステムの䞭心はあくたで起業家であるべきだず思っおいたす。ただ、゚コシステム党䜓ずしお、その挑戊を支揎するための仕組みづくりを改めお考え盎すタむミングではないかず思い、蚘事ずしおたずめおおきたす。

*1:初期の Y Combinator | by Taka Umada | Medium や Y Combinator はどのようにしお始たったのか などを参照

*2:らいおんの隠れ家 : ポヌル・グレアム「今幎の倏にしたこず」 - livedoor Blogブログから。

*3:なお、この仮説の背景には、Paul Graham のハッカヌに察する思いもあったのではないかず考えおいたす。2000幎前埌のドットコムバブルにおいおは、MBAやビゞネスサむドの人が䞭心にスタヌトアップを牜匕しおいたした。Paul Graham はそれに察するアンチテヌれ、぀たりハッカヌでもビゞネスを孊んで、起業できるずいう考えがあったのではないかず、圌の蚘事等を読んでいるず思いたす。

*4:なお、1぀の連携でかなりの金額をフィヌずしお取るずいう話も聞いおおり、むしろそちらで儲けおいるのでは、ずいう気すらしたす。

*5:2023幎䞊半期のデヌタでは9459億円ずなっおおり、さらに増えおいたす。ただ2013幎ず比范できないため、叀いデヌタのグラフを甚いおいたす。

*6:VC 3x fund size などで怜玢しおみおください。たずえばこの蚘事など。

*7:たずえば老舗VCのGlobis Capital Partnersの蚘事など: デカコヌン創出ぞず続く、日本のスタヌトアップが倉わった10幎――テクノベヌト経営研究所蚭立蚘念 特別察談 #1 | GLOBIS 知芋録

*8:そうしたこずを避けるために、ファンドサむズをなるべく倧きくしない、ずいう戊略を取るVCもいたす。たずえばアヌリヌに特化する Benchmark Capital などは垞に $500M ぐらいのファンドサむズです。

*9:ただ、こうしたアゞェンダに察する海倖投資家の意芋は、そこたで肯定的ではないずいうこずを聞きたす。海倖投資家からは「十分に倧きな垂堎を持぀日本で勝おば良い」ず蚀われるこずもある、などです。

たしかに5幎などの短期で利益を最倧化しようずすれば、囜内の垂堎に集䞭した方が確実性も高く、成長もできるもしれたせんその投資家にずっおは、5幎保有するのは十分に長期に芋えるかもしれたせんが。

ただ10幎や20幎で芋たずきや囜ずしお芋たずきには、囜内垂堎はほが間違いなく小さくなっおいくこずを考えるず、囜内垂堎だけを狙うのはその海倖投資家の利益を最倧化する局所最適解のようにも思いたすし、䞀䌁業にずっおもグロヌバル展開を䞊堎前にするのか、䞊堎埌にするのか、どちらがやりやすいのか、ずいった問題ではないかず思いたす。