🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

Entrepreneur in Residence (EIR) ずいうキャリアの機䌚ずプログラムの改善

海倖でたたに芋かける「Entrepreneur in Residence (EIR)」の仕組みが日本でも埐々に広がり぀぀ありたす。

アントレプレナヌ・むン・レゞデンスは、ざっくりず蚀うず「おおよそ数か月から2幎皋床たで、䞀定皋床の絊料をもらいながら起業準備ができる」ずいうプログラムやそのプログラムに参加しおいる人のこずを指したす。

略称はEIRやEiRです。キャリアを積んだ人がそのポゞションになるこずも倚いため、Executive in Residence ず蚀われるこずもあり、これも略称でEIRになりたす。日本では「客員起業家」ず呌ばれるこずもありたす。

 

かねおからEIRの取り組みは日本でも暡玢されおいたしたが、最近になっお改めおその名前を聞くようになりたした。

その背景ずしお、2022幎床の経枈産業省による客員起業家EIRの掻甚に係る実蚌事業、2023幎床の NEDO の MPM 事業 (倧孊発スタヌトアップにおける経営人材確保支揎事業) などの補助事業があるように思いたす。補助を受けたいく぀かのVCや事業䌚瀟がEIRを雇い始めおいたす補助を受けおいないずころも始めおいる話を聞きたす。

珟圚の日本は起業家を増やすずいう倧方針があるので、今埌も囜からの補助があり、EIR の実瞟が出おくれば、この EIR の取り組みはより広がっおいく可胜性がありたす。

 

裏返せば、今埌、起業志望者にずっおEIRずいうキャリアは有力な遞択肢になりうるのではないかず思いたす。たた今はその萌芜段階ですが、囜からの補助が出おいる間はVC偎のリスクが䜎い分、EIRにずっおは割ず良い条件蚭定になるはずなので*1、経隓のある方々はこのEIRの機䌚があればぜひ積極的に怜蚎しおみるず良いのではず思っおいたす。

ずはいえ、EIR の䜍眮づけなどを考えないずお互いにずっお䞍幞なマッチングになるかもしれたせんし、初期の EIR の取り組みで成功䟋が出なければ EIR ずいう制床自䜓が短呜に終わっおしたうように思うので、少しだけ敎理ず自分の考えを曞いおおきたす。

 

EIRずいうキャリアの䜍眮づけ

「経営者になりたい」ず思ったずきには様々な遞択肢がありたす。

䞀぀が経営コンサルティングで、孊生などには人気です。ただあくたで盞談圹であり、経営刀断そのものができるわけではありたせん。

「もっず経営や事業に関わりたい」ず思った人が次に行くキャリアが、事業䌚瀟の経営䌁画、Private Equity、そしお起業だったりしたした。

そこに2010幎代埌半から新たな遞択肢ずしお、日本でもサヌチファンドが台頭しおきたした。サヌチャヌず呌ばれる経営者候補は、自分が瀟長ずしお承継する䞭小䌁業を探しながら、投資家からお金を集め、良い䌁業が芋぀かったら買収し、4  7 幎かけおバリュヌアップを行っお、その埌むグゞットする、ずいうモデルです。

そこに加えお、EIR経由で経営者になる、ずいう遞択肢も出おき぀぀ありたす。

 

リスクずリタヌンで考えたずきに、それぞれのキャリアは倧たかには以䞋のようなリスク・リタヌンの関係になるのではず思いたす。

リスク

リタヌン

遞択肢

高

高

起業

äž­

äž­

サヌチファンド、EIR

䜎

䜎

䌁業内起業

EIRは起業のリスクよりもやや䜎く、瀟内新芏事業よりもリスクをやや高い遞択肢ずしお䜍眮付けおいたす。

ミドルリスク・ミドルリタヌンであっおも、䞻に既にある事業を承継しお拡倧や再建をするサヌチファンド経由での経営者ず、あくたで新芏事業を立ち䞊げるのが目的のEIRは、事業の改善ず事業の立ち䞊げで倧きく異なりたすし、リスクもEIRのほうが倧きいずは思いたすので、あくたで倧雑把に分けたずきのものだずお考え䞋さい。

 

EIRのパタヌン

この EIR ですが、EIR の䞭にもいく぀かのパタヌンがありたす。

  • VC の EIR - 投資先のバリュヌアップに携わりながら、次の起業の準備を行うある意味で、アむデアができる前の「人」ぞの投資
  • 䌁業の EIR – スピンアりトをある皋床の前提ずした䌁業内起業の準備を行う
  • Startup Studio のEIR – スタゞオ内のアむデアの起業準備を行う
  • 倧孊の EIR - 倧孊の技術の商業化やスピンアりトに向けた取り組みを行うビゞネススクヌルでの教育に関わる堎合もある

䞀口に EIR ずいっおも、どの組織の EIR かによっお動き方は結構異なりたすし、埅遇も異なる印象を受けたす。どの EIR が自分にあっおいるかはそれなりに考えたほうが良いのではず思いたす。

それぞれのパタヌンでの事䟋は、Beyond Next Venturesさんのむベントレポヌトなどにもたずたっおいたす。

 

EIR ずしお採甚される人

倚くの堎合、EIR はシリアルアントレプレナヌや、スタヌトアップ・倧䌁業での重圹やチヌムリヌダヌを務めた人が採甚されたす。少なくずも経営者やマネヌゞャヌずしおの胜力があるこずが求められるからです。

しかし、そうした人たちはえおしお良い埅遇の他の機䌚を芋぀けられたす。それに起業をするず収入のない期間が続き、みるみるず銀行口座の貯金が枛っおいくこずになりたす。そこである皋床の絊䞎を保蚌するこずで、そうしたリスクを緩和しお、起業ずいうキャリアを遞びやすくしおもらう、ずいうのがEIRを提䟛しおいる䞀぀の理由だず考えられたす。

このような背景もあるため、普通、EIR ずいう職皮の募集は衚には出たせん。既にある぀ながりの䞭から採甚されるのが普通だからです。

ずはいえ、日本においおはそのような人材は少ないため、そこそこのトラックレコヌドで起業家ずしお可胜性がありそうな人も盞察的に䜎い埅遇で迎え入れられるこずもあるようですし、公募されるこずもあるため、それはそれで日本では起業家候補にはチャンスを埗やすいずも考えられたす。

 

EIRのコミットメント

どれぐらいの期間、どれぐらいの量をEIRがその事業に関わるのかは、プログラムによっおかなり異なりたす。

2015幎時点の海倖の EIR のサヌベむでは、時期もコミットメントの量、絊料も随分ず違いたす。

たた内容を聞いおみるず、それぞれの EIR プログラムには「プログラム」っぜいものがない堎合も倚く、その分自由なのがEIRずも蚀えたす。

Jessica M. Silvaggi & Orin Herskowitz & Carlton J. Reeves, 2015. "Entrepreneur-in-Residence Programs: One Size Does Not Fit All," Technology Transfer and Entrepreneurship, Bentham Science Publishers, vol. 2(1), pages 37-50, April.

Jessica M. Silvaggi & Orin Herskowitz & Carlton J. Reeves, 2015. "Entrepreneur-in-Residence Programs: One Size Does Not Fit All," Technology Transfer and Entrepreneurship, Bentham Science Publishers, vol. 2(1), pages 37-50, April.

 

EIR プログラムの改善に向けお

EIRは新しい詊みではありたせん。䞀説によれば、1980幎代初めに詊みられ、1997幎にはサヌベむが出おいるぐらい叀くからある取り組みです*2。

ただそれがそこたで広がっおいないのは、EIR が倧成功には繋がっおはいない、ずいうこずでもあるのかなずも思いたす。成功しおいれば、こぞっお倚くの組織が真䌌るからです。

実際、EIRをか぀おやっおいたけれど、数幎しおやめたずころや瞮小したずころも倚数ありたす*3。

しかし䞀方で、倧倱敗しおいるわけではないので、今もただ詊みられおいるずいうこずでしょう。

これは改善の機䌚もあるずいうこずでしょうし、たた普通にやっおいたら倧成功はしない、ずいうこずではないかず思いたす。特に起業家の数が盞察的に少ない日本においおは、EIR プログラムぞの参加者数ず成功率を䞊げるこずは、゚コシステム党䜓にずっおも良いこずではないかず思っおいお、プログラム実装の改善に取り組むこずは必芁ではないかず思いたす。

 

EIRの話を聞いた限りでは、以䞋のような課題があるようです。

  • EIRが攟任になりがち
    • プロセスがあたりなく、テむラヌメむドであるために予芋性が䜎く、管理にコストがかかりがち
    • VCでEIRを行うず投資が優先されがち
    • その結果、EIR が攟任になりがち
  • EIRにアむデアを任せっぱなしにするず、小ぶりになりがち
  • ノりハりが溜たりづらい
    • 1瀟あたりの EIR の人数が少なくパタヌン化が難しい倚くが13名
  • EIR 同士の亀流が少ない
    • 䞊述の通り人数が少ない
    • 文脈が違うEIR同士だず䌚話が成立しづらい
  • アメリカ以倖の囜の堎合はそもそもEIR候補がいない
    • そもそも EIR ずいうキャリアが知られおいないサヌチファンドなどのほうが有名
    • US の堎合、EIR 候補が倚数いたずしおもあたりうたくいっおいなかった

これらの倚くは EIR のコンセプトそのものの課題ずいうよりは、EIR のプログラムの実装の課題です。実装面ではもう少し改善の䜙地があるのではないかず思いたす。

たずえば、あたりにも攟任だず「EIR が成功した/倱敗した」皋床の孊びだけで終わっおしたうので、もう少しEIRの動き方をある皋床芋れる人をアサむンしお、ある皋床構造化された圢で詊行錯誀しおいった方が次に぀ながるのではず思っおいたす。

 

個人的には以䞋のような取り組みで倚少は改善できるのではず思っおいたす。

  • 受け入れ偎でもう少しだけリ゜ヌスアむデアや技術シヌズのリストを揃える
    • これはやっおいるずころもありたす
  • できれば攟任ではなく、プログラム化する
    • 補助金を受けおいるEIRプログラム同士で連携する週に1回ぐらいEIR同士が集たるなど 

話を聞いおいるず、EIR にアむデア党䜓を任せるよりも、緩やかにアむデアの方向付けなどもプログラム偎で行った方が良さそうな気がしおいたす。ただこの堎合、EIR ずいうよりは Startup Studio/Venture Creation に近いモデルになるのでは  ずも思いたす。

EIRを䞀か所に集めたほうが良いんじゃないかずは思いたすが、各VCの傍にいるずいうのもEIRのメリットではあるので、週に1回ぐらいEIR同士が集たっお課題などを話すずころから始めるず良いのかな ず。

今埌「EIRの手匕き仮」が経産省のEIR実蚌事業の成果物ずしお出おくるはずなので、そこでも色々な提案があるず思いたすが、䜕かしらEIRの成功モデルが䜜れるず良いなず個人的には思っおいる次第です。

2022幎床の EIR 実蚌事業をもずに、「EIR の掻甚に関するガむダンス」が出おいるので、こうしたガむドを基に今埌も改善を繰り返しお成功のモデルが䜜れるず良いなず思っおいる次第です。

 

たずめ

VCにずっおみおも、ファンドサむズが倧きくなるずずもに、狙うべき䞊堎時の時䟡総額が倧きくなっおいるこずを考えるず、VCの戊略ずしおは海倖投資を行うか、自瀟でより倧きなスタヌトアップを䜜っおいく、ずいう手を考え始めるのではず思っおいるので、経隓のある起業家を増やすずいうEIRの流れは増えおくるのではないかず思いたす。

゚コシステム党䜓ずしおも、EIR ずいう遞択肢があるこずを広く䌝えおいき、優れた経営者候補に、別の経営者キャリアではなく EIR ずいうキャリアに目を向けおもらうよう業界ずしお働きかけおいく必芁もあるでしょう。

 

そしお起業家志望者の皆さんも、こうした波があればうたく䜿っおいただくず良いのかなず思っおいたす。

*1:普通は絊䞎を払う分、そこそこの株匏が取られおも仕方がないずころが、VCに察しお補助などが出おいる珟状はある皋床緩和されおいたり、亀枉可胜なはずなので。

*2:本ゞャヌナルは賌読しおおらず、読めおいたせんが、存圚だけを蚀及しおいたす。

*3:たずえば有名どころでは Benchmark Capital が結構やっおいたしたが、最近はあたり聞きたせん。他の有名 VC も 2010 幎前埌に色々ずやっおいたしたが、最近はほずんど聞きたせん。