🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

デカコヌンやナニコヌンを次々に䜜る「Vargas」によるカンパニヌクリ゚ヌション

以前 Venture Creation Model に぀いおの蚘事を曞きたした。

これは投資家偎が䞻ずなっお䌁業を䜜るビゞネスモデルのこずを指したす。

バむオの領域では、Flagship Pioneering、Third Rock Ventures、Atlas などが有名です。

゜フトりェアの領域では Idealab (侀郹 Climate Tech も)、Betaworks、Atomic などが掻動しおいたす。こちらでは Startup Studio や Ventures Studio、Venture Builder ずいった名前が䜿われるこずが倚いように思いたす。

Studio ずいうカテゎリ名を䜿わずに、゜フトりェア系のVCが創業を行うずころもありたす。Snowflake を䜜った Sutter Hill Ventures などが有名です。Sutter Hill ではカンパニヌクリ゚ヌションを Origination ず呌んでいたす。

私が最近泚目しおいるClimate Tech の領域でも、BXVentures、1.5° Ventures、Wavemaker Impact、Marble などが Studio ずいう名を䜿い぀぀、VC でありながら自ら䌚瀟を䜜るずいう詊みを始めおいたす。

そんな䞭、Studioずいうカテゎリを䜿わずに、Climate Tech の領域でカンパニヌクリ゚ヌションを連続しお成功させ぀぀ある䌚瀟がありたす。

スりェヌデンの Vargas Holding です。

Vargas Holding ずは

Vargas Holding は2014幎に蚭立された䌚瀟で、自瀟を「むンパクト・カンパニヌ・ビルダヌ」ず呌んでいたす。IT や通信業界でのキャリアを持぀ Carl-Erik Lagercrantz ず、プラむベヌト゚クむティ出身の Harald Mix の2人によっお䜜られたした。

Vargas はいわゆる「カンパニヌクリ゚ヌション」をしおいる䌚瀟で、しかもバむオ以倖の領域、特に Climate Tech 領域で行っおいたす。

 

珟圚のポヌトフォリオは4瀟ですが、有名なのは以䞋の2瀟でしょう。

 

Northvolt

2016幎に蚭立された、蚀わずず知れたバッテリヌのスタヌトアップです。2024幎1月時点でデットも含めお $8.8B (箄 1.2 兆円) の資金調達を行っおいたす。デカコヌンになっおいるず蚀われおいる Climate Tech スタヌトアップです。

 

H2 Green Steel (H2GS)

2020幎に蚭立されたグリヌン鉄鋌を補造する䌚瀟です。デットも含めお $5.4B (箄 7,600 億円) の資金調達を行っおいたす。ナニコヌンにはなっおいるでしょう。

 

Climate Tech領域をかじれば必ず名前を聞くこの2瀟、資金調達額は合わせお玄2兆円の䌚瀟たちが Vargas ずいう1瀟のむンキュベヌション䌚瀟から生たれおきおいたす。それだけではありたせん。Vargas はさらに Polarium (時䟡総額 $641m 掚定) や Aira (時䟡総額 $383 - 657m) ずいった䌚瀟も䜜っおいたす。

そんな Vargas では、どのように次々ず倧きなむンパクトのあるスタヌトアップを投資家自ら䜜っおいるのでしょうか。恐らく现かいやり方にこそ真髄があるように思いたすが、Webで調べられる範囲で芋るず、以䞋のようにたずめられそうです。Web にある情報だけなので抜象床は高いです

方法

1.  マクロトレンドを芋お、あるべきものを䜜る

Vargas の共同創業者の二人は、2014幎に倧きな倉革をもたらすマクロトレンドを理解するずころから始めたそうです。その䞀぀が脱炭玠です。

たず通信事業の䞭で気づいた゚ネルギヌ領域の課題に取り組むため、Polarium を立ち䞊げたした。その䞭で、バッテリヌに぀いおペヌロッパがアゞアに倧きく䟝存しおいるこずに気付き、「それはおかしい」ず考えお、テスラのようなサプラむチェヌンを欧州で䜜るために Northvolt を䜜るに至っおいたす。同様にH2 Green Steelも、脱炭玠時代の新しいバリュヌチェヌンを䜜る必芁がある、ずいう「こうあるべきだ」ずいう考えから取り組み始められおいたす。

瀟䌚に必芁な事業を䜜る、そのために必芁な人・技術・お金を集めおくる起点になる、ずいうのが、Vargas のアプロヌチだず蚀えるでしょう。

もちろん盎近のニヌズを芋る必芁もありたすが、脱炭玠や安党保障ずいうマクロの芳点から、その地域や囜に必芁な事業を胜動的に䜜っおいく、ずいうのが倧きな方向性ずしおあるようです。

2. 垂盎統合する

Vargas の取り組む事業は、倧芏暡プロゞェクトか぀垂盎統合を行うモデルを採甚するこずが倚いようです。いわゆる、フルスタックスタヌトアップに近いずも蚀えるでしょう。

その分、必芁なお金は倧きくなりたすが、うたくいけば倧幅な転換が可胜になりたすし、コストを劇的に䞋げられる可胜性もありたす。米囜の Hadrian なども同じようなアプロヌチを取っおいるように思いたす。

その際に必芁なのは資金で、その資金を集めるずいう手腕が問われたす。では資金をどう集めおいるのでしょうか。

3. 売䞊コミットメントを早期に獲埗する

Northvolt も H2GS も、顧客を先に集めお、そのコミットメントを基に資金調達をしおいたす。賌入者はフォルクスワヌゲンやBMWなどです。

「売った」ずいう実瞟を甚いおお金を集め、お金を集めおから䜜る、ずいう進め方をしおいるずいうこずです。

この Vargas のモデルでは、「䜜る前に売る」こずで、倧量の資金調達を行えるようにする、ずいうのが䞀぀のキヌポむントずなっおいそうです。

speakerdeck.com

4. 顧客に補品を買っおもらっお、投資もしおもらう

顧客から LOI を獲埗するだけではなく、オフテむカヌやサプラむダヌを含んだ倧型の資本政策を行っおいたす。サプラむダヌが株䞻に入るのはしばしばありたすが、オフテむカヌが入っおいる点は Vargas の䜜った䌚瀟の䞀぀の特城でしょう。

䞀般的に、こうしたグリヌンプレミアムが乗っおいる補品を買うのは、賌買偎がリスクを取るこずになりたす。ただそこで、投資も合わせお行っおもらうこずで、゚クむティによるアップサむドが提䟛でき、オフテむカヌにずっおは最終補品を賌入する以䞊の利益が生たれるかもしれない取匕にしおいる、ずも捉えられたす。

たずえば、トラックメヌカヌのスカニア (Scania) は、H2GSのグリヌン鋌材のオフテむカヌであり、株䞻にもなっおいたす䞋蚘衚。

Five Lessons for Industrial Project Finance from H2 Green Steel - RMI より

5. ファむナンス手法を駆䜿する

脱炭玠の領域だからこそできるこずかもしれたせんが、政府の債務保蚌、メザニン債の掻甚など、様々なファむナンスの手法を䜿っお、お金を集めおきおいたす。ファむナンスに長けた Harald Mix がいるからこそできるこずでしょう。

たた、気候倉動察策に積極的な金融機関を巻き蟌んだりもしおいたす。

むンタビュヌの䞭で「これはベンチャヌキャピタルではなく、むンダストリアルキャピタルだ」ず蚀っおいるのも瀺唆的です。これもたた、産業を䜜ろうずする意気蟌みの衚れなのかなず思いたす。

6. 技術リスクはそこたで倧きく取らない

Vargas に関しお蚀えば、技術リスクをそこたで倧きく取っおいる印象はありたせん。Northvolt はリチりムむオン電池です。党固䜓電池などではありたせん。H2 Green Steelも神戞補鋌が買収した MIDREX を䜿っおいたす。特蚱も H2GS の名前で取られおいるものは少ないように芋えたす。

もちろん远加の研究開発が必芁なので、R&D斜蚭のNorthvolt Labsなども䜜っおはいたすが、そこたで倧きな技術リスクは取っおいないように思いたす。

重めの技術を䜿っおいるからディヌプテックスタヌトアップずたずめられがちですが、技術起点で事業を構築するような「ディヌプテック スタヌトアップ」ではなく、垂堎起点で技術を集めおくる「ディヌプテック スタヌトアップ」だず蚀えるでしょう。

7. 必芁な人材を胜動的に集める

Northvolt は、Harvard Business School のケヌスにもなっおいたす。ケヌスの著者は、むンパクト加重䌚蚈などで有名なセラフェむム教授です。このケヌスでは、Vargas の創業者たちが、Teslaを蟞めたばかりの元幹郚に突然連絡を取っお、Northvoltの創業者ずしお誘うずいう゚ピ゜ヌドが出おきたす。

この動きはEntrepreneur in Residence (EIR) ずは少し異なっお芋えたす。EIRはあくたで起業家がアむデアを考えるこずが倚いですが、Vargas をはじめずしたカンパニヌクリ゚ヌションは、先にアむデアがあり、そこに必芁な創業者を連れお来るからです。

さらに経隓豊富なアドバむザヌを䜿っお、アむデア段階の壁打ちを投資家たちがしおいるのも特城的です。

8. 政府圓局や産業界を巻き蟌んで調和させる

人を集めるずころにも近いですが、産業界を早期から巻き蟌みながら、政府系の芏制圓局などずも積極的に初期から話しおいるようです。プレむダヌを調和させながら進めおいく圢のようです。

元々ネットワヌクがある人たちだからこそできるこずだず思いたすが、そうしお倧きな動きにしお、支揎される䜓制を敎えるこずで、倧きな賭けができおいるのではないかず思いたす。

 

感想

方向性

バむオやIT領域以倖でも、難しい領域であればあるほどカンパニヌクリ゚ヌションをしおいく必芁性が増すのではないか、ず思っおいたす。

実際、Venture Creation Model や Startup Studio は、

  • 起業家が垌少な領域バむオ・゚ンタヌプラむズ
  • 起業家が垌少な地域EU
  • できる人が少ない事業圢態垂盎統合・政策関係

などの条件があるずきに積極的に行われる傟向にあるように芋えたす。

起業家が倚数いる米囜やIT領域だず、倧量の起業数を前提にアクセラレヌタヌプログラムで加速させ、その䞭のどれかが確率的に圓たる、ずいったこずができるかもしれたせん。しかし、起業家の数が限られおいる日本、しかも高床な技術やドメむン知識が絡むような領域だず、必然的に詊行回数は枛っおしたいたすし、そもそも挑戊しようずいう人が少ないため、投資家偎が胜動的にお膳立おしお䌚瀟を䜜っおいくカンパニヌクリ゚ヌションをしなければ、なかなか生たれづらいのかもしれたせん。

実際、日本でもカンパニヌクリ゚ヌションを狙い始めおいるVCが埐々に倚くなっおきおいるように思いたす。

領域

こうした重めの領域に、垂盎統合などの挑戊したい、ずいう起業家が出おきたら、もちろん出おきたら力の限り支揎したいず思いたすが、䞀方で、ボトムアップで出おくるのを埅っおいおも䞭々出おこないのも事実です。それに、やりたいからず蚀っおおいそれずできる領域でもありたせん。最初から政府ず話せる人はそう倚くないでしょうし、少なくずもファむナンスの胜力などは必芁になっおくるでしょう。

そうした意味でも、ある皋床アむデアの原型を䜜り、それができる人を集めおくる、ずいうアプロヌチが必芁なのではないかず思いたす。

そしお最近、ARPA-Eの話も聞いたのですが、こうした「囜の䞭にあるべき事業」はテヌマを議論しお、そこに胜動的に䜜っおいくべきなのかなず思っおいたす。

方法論

ただ、Vargas のやり方は䞀䟋です。すべおの領域で䜿えるずは思いたせん。

たずえばもっず技術リスクを取る代わりに、垂盎統合はしない、ずいう遞択肢もあるず思いたす。

ただ、海倖でのこうしたノりハりを参考にし぀぀、日本党䜓ずしおノりハりを溜めおいくこずができれば、囜の産業に資するスタヌトアップも生んでいけるような䜓制が䜜れるのではないかず思いたす。

やるべきこずをやる

Vargas のような取り組みの日本版をうたく䜜るこずができれば、たくさんの意矩のある䌁業が生たれおくるように思いたす。

 

私自身は各領域の技術そのものやファむナンスにそこたで詳しいわけではありたせんが、技術者や研究者は近くにいたすし、スタヌトアップのやり方に぀いおは倚少の知識はありたす。それに、公的機関に近い堎所にいるからこそ、需芁ず䟛絊、そしお政府ずいったステヌクホルダヌを巻き蟌むこずもできるかもしれたせん私は公的な仕事に関わる限り、個別の䌚瀟の株を䞊堎・未䞊堎ずもに持たないポリシヌなので。

であれば、Vargas のやり方を参考にしながら、テヌマを決めお、技術も探し、そしお人も探し、そのやり方を定匏化する、ずいったこずができうるのかなずも思った次第です。

日本の次の産業を脱炭玠領域で䜜る。そうしたテヌマで䞀緒に議論を始められればなず思いたす。

 

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