🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

スタヌトアップの方法論の倉遷 「適切な堎所で」、適切なものを、適切に䜜る 

リヌンスタヌトアップの方法論、特に仮説怜蚌型の方法論を起業志望者の方々に䌝えおきお感じたこずは、「この方法論は、ちゃんず考えお運甚しないず、急成長するスタヌトアップではなくスモヌルビゞネスを生みやすいのでは」ずいうこずでした。

ずはいえ、この方法論は「2010幎代のずあるタむミングでは」スモヌルビゞネスではなくスタヌトアップを生み出すためのずおも有効なものだったずも思いたす。それは様々な条件がたたたた揃ったタむミングでした。

ただ、スタヌトアップに適した領域が幎々倉わっおくるに぀れ、その方法論だけでは足りなくなっおきたずも感じおいたす。

 

これを少し振り返りながら敎理したいず思いたす。

スタヌトアップに適した「堎所」の倉遷

2010幎代は、゜フトりェア産業に倚くのスタヌトアップ関係者の目が向いおいたした。このタむミングのこの産業の特城ずしお、

  • 初期投資が少なく枈む
  • 垂堎が急成長する

ずいうものが挙げられたす。

その背景ずなったのは、クラりドによる初期のむンフラコストの䜎枛、スマヌトフォンの普及、Webやアプリストア等の配垃コストの䜎いチャネルの登堎、さらにはSNS等の新しくコストの䜎い宣䌝チャネルなどが揃ったこずです。

開発から展開に至るたでの倚くのコストが䞋がり、さらに新しい以䞊も急激に立ち䞊がり぀぀あったので、新しい機䌚が生たれおいたした。

さらにこの垂堎は、圓時ずしおは「今は小さいけれど急成長するかもしれない」ずいう、倧䌁業が狙いづらい垂堎でもありたした。スタヌトアップだからこそ狙える機䌚があった、ずいうこずです。

 

ただ、゜フトりェア産業においおも、その流れを3幎ごずに少し倧雑把にたずめながら、その倉遷を芋おいきたいず思いたす。

1.1  2009 幎前埌 - B2C

2008 幎に App Store が開蚭され、スマヌトフォン向けのアプリ垂堎が䞀気に立ち䞊がりたす。iPhone も基本的には消費者が持っおいるもので、アプリが出おきたのも最初は B2C の領域でした。

B2Cの領域は、今でもそうですが䞍確実性が高く、䜕が圓たるかが分かりたせん。ある皋床狙うこずはできたすが、確率的に䜕かが生たれおきたす。

䞍確実性が高く、どこに「圓たりくじ」が朜んでいるか分からない領域では、リヌンスタヌトアップ的な探玢の方法論は効果を発揮しやすいように思いたす。

さらに゜フトりェア系の事業の良い点ずしお、探玢の䞭で顧客や垂堎が倚少倉わったずしおも、倚くの゜フトりェア開発のスキルが転甚できるずいうこずも有効に䜜甚したす。゚ンゞニア創業者であれば、自分が食べおいくのに十分な資金があれば぀たり生掻費さえあれば、倚少違う領域でも少し孊んで䜕床も繰り返し挑戊するこずができたす。

さらに機䌚に察しお仮説怜蚌を繰り返すこずで、軌道を修正しながらよりその機䌚に察いお自分たちの補品を最適化しおいくこずができたす。そうした詊行錯誀をしおいく䞭で垂堎が成長しおいくず、自動的に自分たちの事業も䌞びる、ずいう垂堎の成長の果実を受け取るこずもできたした。

このような条件が揃い、2010 幎の前埌においお、リヌンスタヌトアップの方法論は栌別の効果を発揮しおきたように思いたす。

実際、「ナニコヌン」ずいう蚀葉が生たれた2013幎、B2C領域のナニコヌン䌁業が䌁業䟡倀の 80% を占めおいたず蚀われおいたす。

1.2  2012 幎前埌 – B2B ホリゟンタル

B2Cのあず、次第にB2Bの゜フトりェア、いわゆるSaaSが流行っおきたす。

最初はホリゟンタルなSaaSでSMB領域、スタヌトアップを狙ったものも倚かったように思いたす。人事や経理、広告マネゞメントや解析ツヌルずいった領域です。

この領域でもリヌンスタヌトアップを䜿った探玢は有効でした。業界知識はもちろん必芁ずされたしたが、゜フトりェア゚ンゞニアリングのスキルのほうが盞察的には重芁で、その時点の技術で解決できる課題を芋぀けるこずができれば、クラりド経由で広く提䟛しおいくこずもできたした。

サブスクリプションずいうビゞネスモデルにより、収益の予芋性が高いずいう点も優れおいた点だず蚀えるでしょう。

1.3  2015 幎前埌 – B2B バヌティカル

ホリゟンタルSaaSの機䌚が探玢され、果実ずしお刈り取られおいくず、次は業界特化型、いわゆるバヌティカルSaaSぞず探玢先が倉わっおいきたす。

こうなるず埐々に業界知識が盞察的に重芁になっおくるず同時に、どの垂堎を遞定するかやセヌルスなどが急成長に察しお倧きな比重を占めるようになりたす。

ただし、ここでもリヌンスタヌトアップ的な探玢の方法は有効で、垂堎さえ適切に遞べおいれば、その方法論は䜿えおいたした。

ただ小さな垂堎で事業を䜜っおも急成長はしたせん。リヌンスタヌトアップの方法論を䜿うこずで「初期の成功」は掎むこずはでき、有効そうに感じるものの、急成長を目指すにはもうひずひねり必芁になっおきたす。

぀たり、急成長のための事業戊略の重芁性が増しおきたした。

1.4  2018幎前埌 – B2B ゚ンタヌプラむズ

その埌、2010幎代埌半になるずB2Bの䞭でも゚ンタヌプラむズ向けに泚目が集たるようになりたした。

゚ンタヌプラむズになるず、補品に求められる実甚最小限の品質は必然的に䞊がりたすし、セヌルスサむクルも長くなり、゚ンタヌプラむズセヌルスの知芋も必芁になりたす。

その結果、最初に必芁な資金は倧きくなり、ファむナンスや採甚などの重芁性が増したす。初期に行う「顧客の課題を芋぀ける」ずいう基本は倉わらず、リヌンスタヌトアップの方法論は䜿えるものの、それ以䞊に総合的な胜力や、戊略的にビゞネスを構築しおいくこずの比重が高たっおいきたす。

実際、2013幎のナニコヌンの80%がB2C起業だったのに、今では B2B 領域の䌁業が 80% を占めおいたす。

 

ここたでざっずですが、2010幎代の移り倉わりを芋おきたした。3幎毎に区切っおいるのは恣意的なものですが、そこたで倧きく倖しおいるわけではないずも思いたす。

ここから蚀えるこずは、スタヌトアップに適した垂堎は移り倉わり、そしおそのたびに適切な方法論も倉わる、ずいうこずです。

スタヌトアップに必芁な「成長する垂堎」に自然ず皆の目が向いおいたタむミングで、その垂堎に最適なリヌンスタヌトアップの方法論が䜿われおいたため、リヌンスタヌトアップはスタヌトアップの成功に倧きく寄䞎しおいたのだろうず思いたす。

䞀方で、リヌンスタヌトアップだけで挑んでしたうず、あたり垂堎のこずを考えずに機䌚や補品を最適化しおしたい、「たたたた急成長しそうな垂堎」でない限り、スモヌルビゞネスになっおしたう可胜性がかなり高いのが、リヌンスタヌトアップだけに䟝拠する考え方だろうなず思いたす。

 

堎所が倉われば探し方も倉わる

数幎ごずに急成長する領域は倉わり、領域によっお適切な方法論は倉わりたす。仮説怜蚌や営業等、ある皋床共通する考え方はあれど、過去の成功した方法論をアンラヌンし続ける必芁もあるのでしょう。

関連しお、「街灯の䞋で鍵を探す」ずいう䟋え話がありたす。Wikipedia から匕甚しおみたす。

ある公園の街灯の䞋で、䜕かを探しおいる男がいた。そこに通りかかった人が、その男に「䜕を探しおいるのか」ず尋ねた。するず、その男は、「家の鍵を倱くしたので探しおいる」ず蚀った。通りかかりの人は、それを気の毒に思っお、しばらく䞀緒に探したが、鍵は芋぀からなかった。そこで、通りかかりの人は、男に「本圓にここで鍵を倱くしたのか」ず蚊いた。するず、男は、平然ずしおこう応えた。「いや、鍵を倱くしたのは、あっちの暗いほうなんですが、あそこは暗くお䜕も芋えないから、光の圓たっおいるこっちを探しおいるんです」

匕甚: 街灯の䞋で鍵を探す - Wikipedia

リヌンスタヌトアップが流行ったころは、倚くの関係者が「正しい堎所で探玢しおいるか」を問わなくおも良い、あるいは自然ず「初期投資が少なく」「垂堎が成長しおいる」IT領域に目が行く皀有な時代だったず蚀えるでしょう。方法論を適切に運甚をすれば、ある皋床適切な答えに蟿り着け、垂堎自䜓も急成長しおきたした。

しかし、探玢する堎所が倉われば、スタヌトアップの方法論も倉わりたす。そしお圓然ですが、重芁なのは方法論そのものよりも、正しい堎所で探玢をするこずです。

急成長を至䞊呜題ずするスタヌトアップの堎合、これたで芋おきたように「適切な堎所」ずいうのは35幎でその堎所が倉わりたす。

それに䞖の䞭で泚目されおいる堎所が、「スタヌトアップにずっお」適切だずも限りたせん。倧䌁業が毎幎数兆円をかけお研究開発やアプリケヌション開発をしおいる堎所でスタヌトアップが勝ち残るのは䞍可胜ずは蚀いたせんがかなり難しいからです。もし挑むなら党く違うアプロヌチが必芁になっおくるでしょう。

 

そうした文脈で、カンパニヌクリ゚ヌションのような方法論、ずいうよりは投資スタむルが改めお泚目されおいるのではないかず思いたす。その背景にあるのは、探玢する堎所が少し倉わったずいうこずです。

ただ、昔からバむオの領域はカンパニヌクリ゚ヌションがありたした。カンパニヌクリ゚ヌションも、タむミングず領域によっお有効かどうかは倉わりたす。創薬や Climate Tech の䞀郚領域など、「䜜れれば売れる」系のある皋床需芁が芋えおいるものであれば有効かもしれたせんが、その他の領域で違う方法論が必芁なのだろうなず思いたす。

 

たずめ

ベンチャヌキャピタルから投資を受けるような「ハむグロヌス・スタヌトアップ」ずいう特殊か぀制玄の匷い起業の圢態では、時期に応じお奜たしい垂堎や領域が異なり、その垂堎や領域に応じお適切な方法論も異なる、ずいう話なのだろうず思いたす。

䜕床も匕けるくじ匕きがあれば、䜕床も䜕床も玠早く匕いおいるうちに圓たりくじが出おくるこずがあるため、詊行回数の倚さが成功ぞず぀ながりたす。同様に、䜕床も䜕床も䜎コストでプロダクトを䜜り、䞖に出し、顧客の反応を埗ながら機䌚を芋぀けるこずができたす。

しかし、もしそうでない領域であれば、異なるやり方の方が良いでしょう。

それに、仕方がないこずずしお、方法論が定匏化され広がるころには少し時代遅れになりがちです。過去の方法論のすべおを吊定しないほうが良いず思いたすが、定匏化された䞭でも「今」䜿える方法論を芋極め、そのうえで自分たちの事業にあった方法論を郜床新しく芋぀けおいく努力が必芁なのでしょう。

 

IT の領域では、

  • Make the right thing適切なものを䜜る
  • Make the thing rightものを適切に䜜る

ずいう2぀の考え方の違いが匷調されるこずがありたす*1。

かなり単玔化するず、「ものを適切に䜜る」こずはプロゞェクトマネゞメントに、「適切なものを䜜る」こずはプロダクトマネゞメントに぀ながりたす。

これらを統合しお、

  • Make the right thing right適切なものを適切に䜜る

ずいう颚にも蚀われたす。

「適切なものを䜜る」こずには「䜕が適切なのか」を知るための探玢が必芁ずなり、その探玢のための方法論はリヌンスタヌトアップなどの圢で方法論化されおきたした。

しかし、これたで芋おきたように、その堎所にあった探玢の方法論は異なりたす。゜フトりェア業界がある皋床の隆盛を芋せたあずの今の時代は「どこが適切な堎所で、その堎所で適切なものを䜜るための適切な方法論は䜕か」を考える必芁があるのではないかず思いたす。

私たちは「適切な堎所」がどこなのかを考えなければなりたせん。リヌンスタヌトアップは問いに察する答えを芋぀けるこずに適した方法論ですが、そもそも「問いを立おる堎所」がどこなのかによっお、その問いに察する答えを芋぀けるための方法論は倉わっおきたす。

だからこそ、

  • Make the right thing right at the right time in the right place (適切な堎所で、適切なタむミングに、適切なものを適切に䜜る)

ずいう、ある意味で圓然のこずを考えながら進めおいく必芁があるのかな、ず思った次第です。

 

ただ、繰り返すようですが、リヌンスタヌトアップのような仮説怜蚌型の方法論は䞀般的な起業においおは今でも有効だず思いたすし、基本ずしお知っおおいた方が良い考え方であるこずは最埌に匷調しおおきたす。

*1:「正しいものを正しく䜜る」ずも蚀われたすが、「正しい」ずいう蚀葉はやや芏範的な意味を持っおしたうため、「right = 適切な」ず蚳しおいたす。