これまでの小中学校におけるアントレプレナーシップ教育の展開計画では、いくつかの課題がありました。たとえば以下のような課題です。
- 既存の授業科目とは「別」のコマを用意することが想定されており、学校や教師の負担となっている(ただでさえ、外国語や情報教育で負担が増している中で)
- 「アントレプレナーシップ教育=ビジネス教育」という素朴な理解(誤解)を持つ教師に反発を受ける
- 適切なアントレプレナーシップ教育を実施できる人が(特に地方では)少なく、広く展開することが困難である
これらの問題を解決する方法として「埋め込まれたアントレプレナーシップ教育 (Embedded Entrepreneurship Education: EEE) 」があるのではないかと思います。
これは、アントレプレナーシップ教育用の授業を別の枠を用意して行うのではなく、既存の科目の中でアントレプレナーシップ的な能力を伸ばすことを企図した教育です。
例えば日本の小学校などでは、以下のような形をとることができるのではないかと思います。
科目 |
具体的な活動 |
涵養されるアントレプレナーシップの資質・能力 |
理科 |
教科書にないことを提案し、実験をしてみる |
仮説検証 |
社会 |
地域の社会課題を知り、解決する |
社会課題解決、仮説検証、リソースの獲得 |
国語 |
誰かを動かすメッセージを書く |
リソースの獲得 |
算数 |
お金の計算をする |
財務、会計 |
埋め込まれたアントレプレナーシップ教育を実現しようとすると、既存の科目の中身を少しずつ変えていくとい大きな作業が発生します。ただ、それを超えるメリットとして、
- 追加の授業をしなくても良い(教員の負担を減らせる)
- 既存の教員を活用できる(ただしアクティブラーニング的手法を学ぶ必要がある)
- 個別にアントレプレナーシップの授業を行うよりも大きな効果が得られる可能性がある
- アクティブラーニングや、文部科学省の「生きる力」とも密接に関連するアントレプレナーシップを既存の課程を活かしながら涵養することができる
といったものが得られるのではないかと考えています。
これまでもEUやイギリス等では先行的に試されており、これらの事例を参考にしながら進めていくことができるのではないかと思います。
なお、この Embedded Entrepreneurship Education は 2023 年にシステマティックレビューが書かれています。
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