顧客インタビューの方法は多数語られています。しかし一方で、「顧客インタビュー相手の獲得方法」はそこまで多くの言及されているわけではありません。しかし多くのスタートアップから、「顧客インタビューの相手が見つからない!!」というにはしばしば聞く共通の悩みです。
もしあなたが「そもそも顧客インタビューの相手が数人しかいない」という状況なのであれば、それはとても悪いサインでしょう。その領域に明るくない、ということだからです。
しかし仮に多くの知り合いがいたとしても、10人から20人程度で自分の知り合いの在庫がなくなってしまいます。
なので、最終的にはインタビュー候補の新規開拓をしなければなりません。そこで私たちの経験から、顧客インタビューの相手の見つけ方と、実際の獲得率(返答率)を紹介します。
サービス | 返答率 |
---|---|
機縁法 | 20% |
ランディングページ | 30% |
10 - 5% | |
? | |
イベント | ? |
カンファレンス | ? |
ゲリラ | 1% |
yenta | 10% |
VisasQ | ? |
Time Ticket | ? |
クラウドソーシング | ? |
3% | |
お問い合わせフォーム | 5% |
返答率をもとに、だいたいどれぐらいの人たちにリーチすれば、何人ぐらいから回答が貰えるのかが計算できるようになるはずです。たとえば 20 人必要であれば、「返答率 10% の方法を使って 200 人ぐらいにリーチすればなんとかなるかも」といった風にです。
インタビュー相手の獲得手法の紹介
紹介
人を介してインタビュー相手を見つける方法です。機縁法とも呼ばれます。
ヒット率は高いものの、それほど数多くいるわけではないところがネックです。また、インタビュー相手と仲介者がどれぐらい仲が良いかによって、返答率は変わってきます。
ランディングページ
ランディングページ MVP を作って、そこに事前登録してもらうのは一つの手です。登録者にはイノベーター層が多く、比較的多くの人が顧客インタビューの相談に乗ってくれます。
ランディングページ自体を告知することに手間がかかります。しかし見知らぬ人に顧客インタビューをお願いするときには、自分たちのことを説明する資料が必要になるため、そうしたときのためにもランディングページはあったほうが良いでしょう。
メール登録付きのランディングページは Mailchimp などで簡単に作れます(後日解説します)。
アンケートからの個別ヒアリング
アンケート自体で顧客の本当のニーズが分かることはほぼありません。「こんなに多くの人が私たちのアイデアを良いと言ってくれました!」と言ってアンケートのデータを持ってきても、説得力はほとんどないことが多いです(それが何十人であっても)。なぜならアンケートではユニークな洞察が得られることが少ないからです。
しかし簡単なアンケートを作ったうえで、連絡先を教えてもらい、そこから個別インタビューをさせてもらうことは効果的です。フットインザドアのテクニックとして、アンケートを使ってみる手法です。
Twitter でキーワードサーチをして、それらしき人にメンションを飛ばしてみてください。体感として、初期は 5 - 10% ぐらいの方々が返答をしてくれます(返答してくれそうな人を選定できるため)。
キーワードで検索して引っかかる人がほとんど出てこなければ、同じような課題を持っている人が少ない、という悪いサインなのかもしれません。
Facebook & Facebook Group
Facebook Group を検索して、グループを探してみると意外と見つかることもあります。そうしたところに投稿してみるのも良いでしょう。ただ人数が多いグループほど返答率は悪くなります。
一度知り合った人に「どういうFacebook Group で情報を得ていますか?」と聞いてみると、意外なコミュニティが見つかることもあります。
イベント
Peatix, Connpass, Meetup などのイベントサービスで、領域に関係するコミュニティを見つけるのも一つの手です。直近のイベントに参加してみて、そこから輪を広げていきましょう。LTの機会などがあれば登壇もしてみましょう。
コミュニティから顧客インタビューは時間はかかりますが、投資対効果の高い方法だと思っています。また自分でイベントを開くのも手です。そのトピックに対して熱量の高い人たちが集まってくるはずです。
カンファレンス
ビッグサイトなどで行われている特定テーマごとのカンファレンスは、業界の動きを知ることができるだけでなく、特定の業種の人たちと知り合える機会としても使えます。
ただそこまで獲得率は高くない…という印象です。
ゲリラ
カフェなどで行うゲリラインタビューです。一般的な消費者向けアプリを考えているときには役立つかもしれません。
ただターゲットユーザーがいることは少なく、正直あまりヒット率はよくありません。またカフェなどで行う場合、カフェの店員さんなどもあまり良い顔をしません。やるときは注意してください。
yenta
ビジネスマッチングアプリです。5 - 10% 程度の確率で会える印象があります。特にB2B系のサービスを考えているときには便利です。
ただし業種を絞れば絞るほど該当する人は少なくなるため、コンタクト先がすぐに尽きてしまう可能性もあります。
VisasQ
スポットコンサルティングの visasQ は専門家に会えるサービスです。それなりにお金を支払う必要がありますが、高い確率で該当する人に会えます。
Time Ticket
タイムチケットも専門家に会えるかもしれないサービスです。B2B 向けサービスを考えているときなどに使える選択肢です。
クラウドソーシングサービス
クラウドソーシングのサービスを使って、該当しそうな人にお願いするのも一つの手です。それなりのお金を支払う必要はあるのと、専門家へのリーチが少し難しいときがありますが、一つの手として知っておくと良いと思います。
クラウドワークス、ランサーズといったクラウドソーシングサービスもあれば、ココナラなどのスキルシェアサービスも一つの出会い方かもしれません。
まだそれほど日本人の登録は多くはないものの、相手のビジネスバックグラウンドが分かるため、B2Bビジネスを行うときには便利です。
連絡してみると 2 - 3%ぐらいの確率で返答があります。
お問い合わせフォーム
もしあなたがユニークな製品を開発しているのであれば、各企業のお問い合わせフォームから問い合わせてみると、意外と返答があります(驚くかもしれません)。
ただ問い合わせフォームを見ている人は、おそらく担当者ではないでしょう。「適切な担当者に繋いでいただければ」という風なことを書いておくほうがベターです。
顧客インタビューの際
顧客インタビューの際にはぜひテンプレートを使ってみましょう。
インタビュー質問の例(1)
東工大EDPが、リーン顧客開発の質問をベースにPDFにしてくれています。ぜひ印刷して持って行ってください。
またインタビューの最後に「知り合いを紹介してくれませんか?」というのを必ず聞くようにしてみてください。
インタビュー質問の例(2)
Y Combinator の顧客インタビューの授業では以下の5つの質問が紹介されています。
- あなたが解決しようとしていることに関する、一番の難題は何ですか?
- その問題に最後に直面した時のことを教えてください
- それが困難だった理由は何ですか?
- その問題を解決しようと思って、したことがあれば教えてください
- これまで試したソリューションのなかで、気に入らなかった点は何ですか?
PDFにはなっていませんが、使う場合は必ず印刷して持って行くようにしましょう。
インタビュー後
インタビューしてくれた人には必ずお礼をしましょう(もし仲介者がいるのであれば、そのインタビュー相手を紹介してくれた仲介者にもお礼の一報を入れておきましょう)。
礼儀として、という側面もありますが、一度インタビューに乗ってくれた人に対して改めてインタビューをしたくなるタイミングは必ずやってきます。その際に、もう一度インタビューをお願いできる関係性を構築しておくことは大事です。
またそうした関係性が構築できていれば、毎回大きな工数をかけてインタビュー相手を探さなくても良くなります。
自分たちのサービスを応援してくれる人たちのコミュニティを作っておくことは、中長期的にサービスへの改善に役立ちます。ぜひインタビューに乗ってくれた人たちを大切にしてください。
参考文献
FoundX Resources の顧客インタビューの項目も参考にしてください。