受託開発での起業や自己資金での起業を「インディースタートアップ」や「インディービジネス」と呼ぶことについての話題が懇親会で挙がりました。
スタートアップとスモールビジネスはよく比較されますが、「スモールビジネス」というと、小さい=良くないというニュアンスがどうしても含まれてしまうようです(決してそんなことはなく、proudly small という選択はありだと思うのですが)。
そうした悪いニュアンスを払拭しながら、ハイグロース・スタートアップと対比しうる言葉が「インディー」ではないかと感じています。
音楽やゲーム等で使われる「インディーズ」という言葉の「インディー」は independent から来ている言葉で、そこそこの認知を得ています。そこで起業の形態として、インディースタートアップという言葉を使うと、そうした背景情報がうまく作用して、
- 独立性
- 意識的に小さくあろうとする志向性
- 格好良さ
といった前向きなニュアンスが含まれうるので、スモールビジネスという言葉よりも広く受け入れられる可能性があるかもしれないと思っています。
こうした話が挙がったのは、もともとは Off Topic での話が契機なのかなと思います。
私はシャットダウンした indie.vc なども思い出しながら話してました。
(なお、indie.vc のサイトではユニコーンを燃やす動画があります)
起業の分類
全ての起業が「スタートアップ」と呼ばれることもある中、解像度を上げてどの起業なのかの意識合わせが必要なことも増えてきました。その整理の方法として、これまでも起業の4類型やハイグロース・スタートアップなどを紹介してきています。
それに加えて、会社としてどのような独立性を保とうとしているのかという、「インディーかどうか」という軸を加えることで、
- 外部資金なし⇔あり(インディーかそうでないか)
- 成長⇔安定
という2軸で整理できそうです。
(ただし、後で少し説明しますが、それぞれの軸は直交しているわけではないとは思います。)
2つの軸での整理
横軸を外部資金の有無、縦軸を成長への志向性で表すと以下のような2軸が取れます。
この2軸で整理すると、ふわっとしがちな「スタートアップ」という言葉を多少整理しやすくなるのかなと思っています。
横軸: 独立性
まず横軸では独立性という観点で自己資金と融資と出資で分けて、左側をインディーに、VC 投資を受けるものを右側に持ってきます。
縦軸: 成長 ⇔ 安定
そのうえで縦軸で成長と安定のどちらを重視しているかをマッピングします。今回は4つの起業の形態から、以下の3つを取り上げています*1。
- ハイグロース志向
- マネージドグロース志向
- ライフスタイル志向
四象限
その上で最後にそれぞれを交差させて細かく分類する、みたいなイメージでいます。
インディー志向であっても急成長することは可能です。ただ数としては、ハイグローススタートアップは VC-backed なところが多くなるとは思います。
たとえば、冒頭に挙げたソフトウェア受託企業はインディーライフスタイルスタートアップ、もしくはインディー・マネージドグロース・スタートアップに該当するのかなと思います。
まとめ
「スタートアップ」という言葉が起業全般を指すようになってしまって、いろいろと整理をしなければうまくかみ合わないし、政策も変な方向に行ってしまうことを危惧しているのは以前の記事にも書いた通りです。
かといって、スタートアップと対比する形で「スモールビジネス」という言葉を使うと、ニュアンス的に少し誤解や反発を招くこともあるので、インディースタートアップやインディービジネスのような言葉が出てくることで、いろいろと収まりが良くなっていくかもしれないなと思っています。
振り返ってみれば、「ベンチャー企業」が「新興企業」全般のことを指すようになってしまったために、スタートアップという別の言葉が出てきたように思いますが、そうしたときも言葉の混乱が見られました。
そもそも「ベンチャー企業」が「新興企業」全般のことを指すようになってしまったのも変な話で、「ベンチャー」という言葉は本来「冒険的」という意味なので、安定的な起業は意味しない言葉のはずです。(起業自体が冒険だったのかもしれませんが)
いずれにせよ、ベンチャー企業やスタートアップという名詞は、どんどんとその言葉のカバー範囲が広くなってくるようです。
そこで「インディー」や「ハイグロース」といった形容詞を付けないと、今の日本の起業の形態はうまく認識できなくなってきているのだろうなと思いますし、議論のかみ合わないのだろうなと思います。そうした意味で、志向性が示せるインディーという言葉は有用なのかもしれないなと思いました。
追記: なお、これまでも「ブートストラップ」という言葉がありましたが、ブートストラップは「始め方」の意味合いが強く感じており、状態や志向性ではないのかなという感じがしており、少し別の言葉を今回は用意しています。
*1:サバイバル型の起業は日本ではほとんどないため、そこは省いています。