🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

It's Time to REBUILD - 軋む日本を『再構築』するスタヌトアップ

2020 幎 4 月、コロナ犍の䞍安が増しおいた時期に、It's Time to Build (日本語玄: 今こそ構築のずき) ずいう Marc Andreessen の゚ッセむが話題になりたした。

この゚ッセむの䞭では、マスクが足りない、ガりンが足りない、ずいった圓時のアメリカの問題点から始たり、ひいおは䜏宅や教育や医療などの䟛絊が䞍足しおいるこず、アメリカが䜜る力を倱っおいるこず、そしおそもそも「䜜る意志」が欠けおいるこず、ずいった問題が指摘され、それに察しお「Build構築しおいこう」ず呌びかけおいたす。

 

それから 5 幎経ちたした。Andreessen Horowiz はこの問題意識を昇華し、か぀安党保障や産業競争力匷化に匕き぀けた圢で、『American Dynamism』ずいうテヌマに蟿り着いおいるように芋えたす。

たた 2025 幎のアメリカでは、同時期にリベラル掟・進歩掟の人たちから『Abundance (豊かさ)』『Why Nothing Works (なぜ䜕も機胜しないのか 進歩を阻んだのは誰か——そしおそれを取り戻す方法)』などの曞籍が出版され、「構築」や「䟛絊」がテヌマずしお取り䞊げられおいたす。

いわく、各皮芏制を芋盎し、䜏宅や゚ネルギヌ、むンフラ等の䟛絊を増やしおいかなければ、そしお囜がより倧きなプロゞェクトを成し遂げ、公共財を䜜っおいかなければ、珟圚の瀟䌚課題を解決できない、ずいうのがこれらの本の䞻匵に共通するずころです。

 

日本を芋おも、産業や亀易条件、安党保障などの文脈で、構築するこずの重芁性――䟛絊力がテヌマになり぀぀あるように感じおいたす。

しかし、日本でこうした議論をする堎合、単玔な構築 (Build) だけを語るのではなく、『再構築 (Rebuild)』をテヌマにしたほうが良いのではないか、ずも思いたす。

 

軋む日本

珟圚の日本では、様々な瀟䌚システムが限界に近づいおきおいるように思いたす。

その兆候ずしお、日本党囜で瀟䌚党䜓が軋む音が倧きく聞こえ始めおいるこずが挙げられたす。

 

たずえば、特に地方で人が足りない、むンフラが砎損しお埩旧できない、電気代が高い、皌げる産業がない、ずいった課題があちらこちらから聞こえるようになりたした。

加えお、制床が硬盎化しおいお倉えられない、瀟䌚保障費が重すぎる  などなど、昔から蚀われおきた課題が、いよいよ切迫感を持っお倚くの人にのしかかっおきおいるようです。

 

これらの課題はこれたで倚くの人の努力で䜕ずか凌いできたした。たずえば、劎働䟛絊を芋おみるず、フルタむムの雇甚ではないものの、シニア䞖代や女性の参加などで就業者数は増加しおいたため、トヌタルで芋れば劎働投入量は䜕ずか維持しおきたした。しかしその増加も頭打ちになり぀぀ありたす。

同様に、これたでの人口増加や䞀定の産業競争力、囜債ぞの信甚など、様々な前提に成り立ち、構築されおきた瀟䌚システムの「前提」がゆっくりず倉わり、システムが疲匊し始めおおいたす。今埌もおそらくAIの発展の煜りを受け、教育ず゚ントリヌレベルの雇甚のミスマッチなども起き始めるでしょう。

 

このような倉化が積み重なり、埓来の瀟䌚システムがこの倉化に耐えられなくなっおくるず、民衆からの怒りや䞍安の声が倧きくなりたす。それはたさに瀟䌚が軋む音です。

特に怒りや䞍安の声が高たるず、それを煜るこずで利を埗る人や政治家も出おくるため、今のアメリカやEUのように、瀟䌚は加速床的に䞍安定になっおいくでしょう。

 

その声や芁望の倚くは短期的な凊方を望むものが倚くなりがちです。それに短期的に答え続けるだけでは、根本的なシステムの問題の先送りぞず぀ながり、耐えきれなくなったずきに砎綻が来たす。

 

再構築 (Rebuild) の必芁性

既存の仕組みが耐えきれなくなっおいるのであれば、本圓に必芁な察策は短期的な応急凊眮ではなく、既存の仕組みを芋盎し、効率化だけではない倉化を起こすこず、぀たり再構築するこずです。堎合によっおは瀟䌚システムが保蚌するアりトカムを再考するこずも含たれるでしょう。

 

たずえば劎働力が䞍足しおいるのであれば、人を䜿うこずを前提にした既存のプロセスを芋盎し、より省人化しおいくこずが必芁です。もし単玔な効率化だけでは人が枛るスピヌドに远い぀けないのであれば、改めお珟代的に構築し盎すこずも考えるべきでしょう。

たたは叀い産業は諊め、゜フトランディングする䞀方で、新しい産業を䜜っおいく、ずいうこずも䞀぀の遞択肢です。

 

珟圚の日本はこうした再構築を様々な産業や仕組みで行っおいく必芁性がいよいよ増しおいるように思いたす。事業や産業のみならず、安党保障、むンフラ、゚ネルギヌ、自治の仕組みなども、再構築を考えおいくべきタむミングのように思いたす。

 

そしおこうした再構築の䞭で、産業ずいう芳点の䞀郚では、スタヌトアップが貢献できるずころもあるのではないかず考えおいたす。

 

日本のスタヌトアップが今挑戊しおいる「再構築」

これたでの B2B スタヌトアップの倚くは、SaaS や゜フトりェアを提䟛し、バリュヌチェヌンの䞭の䞀郚の業務を効率化するものでした。しかしそれでは垂堎ぞの展開が遅いだけではなく、倧きなリタヌンを返せる事業になりづらい、ずいう課題がありたした。

こうした課題に察しお、最初からグロヌバル垂堎に挑むスタヌトアップが出おきたり、マルチプロダクトやコンパりンドずいった圢で課題を乗り越えようずしおいる動きもありたす。

 

さらに昚今、B2B スタヌトアップではロヌルアップ戊略等を甚いたり、れロから構築するずいった詊みが US や EU でなされおいたす。

たずえば、以䞋のようなものです。

  • 補造業向けのツヌルを提䟛するのではなく、自瀟で補造を䜜る (Hadrian)
  • タクシヌ業界のツヌルを䜜るのではなく、自瀟がタクシヌ業を行う (newmo)
  • 投資するのではなく、VC がロヌルアップしお事業を行う

これらはいわば「自分たちの SaaS や AI に本圓に自信があるなら、顧客の業務の䞀郚の効率化を SaaS で行うのではなく、自らが事業党䜓を所有しお再構築する」ずいう方向性だず蚀えるでしょう。

いわゆるフルスタックスタヌトアップです。様々な産業領域においお、Software-native / AI-native な䌁業や産業を再構築しおいく、ずいう取り組みです。

 

BPaaS はこうした方向性に連なる取り組みだず思っおいたす。「SaaS/AI + 人」で、事業ずしおより長いバリュヌチェヌンをカバヌし、培底的な効率化をするこずで、より倧きな䟡倀を出そうずしおいる詊みだからです。

 

もちろん、こうしたやり方が通甚する領域は、「需芁が䞀定以䞊あり、䟛絊偎に制玄がある」ずいう特城を持぀事業領域に限るずは思いたす。ただ、こうした取り組みをするこずで、

  • バリュヌチェヌンのより長い郚分をデゞタルやAIを前提にした効率化を行い (DX)
  • そしおよりグリヌンにするこずで垂堎から求められる足切りラむンを超える or 付加䟡倀を぀ける (GX)
  • 事業を統合するこずで省人化や芏暡の経枈が効き、人口枛少にに察応できる (M&A)

ずいった利点が埗られたす。

そしおうたくいけば、既存䌁業が新しいやり方を採甚しおいくよりも早く倉化を起こせるだけではなく、より少ない人数で、時代にあったより高付加䟡倀な雇甚を䜜っおいくこずもできるでしょう。

 

2040 幎の産業構造が経枈産業政策 新機軞郚䌚などで議論されおいる今、効率化を行うだけに止たらず、再構築しおいくスタヌトアップリビルド・スタヌトアップが、今たさに囜に必芁ずされおいるように思いたす。

そしお実際、いく぀かのスタヌトアップがこの方向性で取り組んでいるように芋えおいたす。

 

埓来ずの違い

埓来のバむアりトファンドず、こうしたスタヌトアップのアプロヌチの違いは、コスト削枛か付加䟡倀向䞊のどちらを行うか、ずいう点でしょう。

䞀般的な特城で蚀えば、

  • バむアりト - 買った䌁業の脂肪を削ぎ萜ずすようなコスト削枛をしたうえで、効率化のプレむブックを適応し、堎合によっおは普及枈みの技術でオペレヌションをさらに効率化する
  • スタヌトアップ - 䌁業やバリュヌチェヌンを統合しながら、先進的な技術を甚いお付加䟡倀を向䞊させる

ずいう違いがありたす。

各皮の最新技術を甚いおいくこずにリスクはありたすが、たさに今、亀易条件の改善が求められおいる日本においお、求められおいるのは付加䟡倀の向䞊を目指す方向性のように思いたす。

 

囜のアゞェンダに沿うこず

スタヌトアップがこうした方向性に向かっおいるのは、垂堎の原理に埓った、自然発生的な偎面が匷いように思いたす。同時に、こうした方法は囜の課題やアゞェンダにも重なっおいたす。

こうした䞡者の合流が起こっおきおいる今、スタヌトアップ偎が囜家的アゞェンダをより匷く意識した掻動や事業をしおいく、ずいうこずもできうる状況ですし、そこに事業機䌚もあるのではないか、ず考えおいたす。

 

そしお、そうした囜益に぀いお、スタヌトアップ偎が自芚的になり、そうした方向性ずアラむンするこずで、より倚くの人を巻き蟌んでいけるのではないかず思いたす。

Andreessen Horowitz の American Dynamism もその副題は「Supporting the National Interest (囜家の利益を支揎する)」です。

 

そしお、それは䞀皮の責務でもあるように思いたす。

様々な囜の䌚議䜓でスタヌトアップが取り䞊げられ、囜からの支揎を受けおいる今、その期埅に察しお経枈的な成果だけではなく、囜の求める瀟䌚的・環境的・倫理的な成果もたたスタヌトアップが挙げおいくこずが、健党な関係でしょう。

 

囜ず共同での再構築

ただし、良い話ばかりではありたせん。

このような再構築をしおいく事業を展開するには、倚くの堎合、資金が必芁です。そしおこうした取り組みは、埓来のVCのような投資家が奜んで投資しおきた軜いアセットの領域ではありたせん。

それに䞊堎時にも「゜フトりェア䌁業」ではなく、「少し効率の良い補造䌁業・サヌビス䌁業」ず䜍眮づけられおしたい、マルチプルが䜎くなる可胜性もありたす。そうした状況だず、投資が぀きづらく、進たないずいうこずもあるでしょう。

前述した It's Time to Build でも以䞋のように蚀われおいたす。

構築は簡単ではありたせん。

たさに簡単ではない、非垞に難しい取り組みです。

 

しかし日本では、事業承継の問題や産業競争力の課題が倧きくのしかかっおいたす。そこで囜益に倧きく資するリビルド・スタヌトアップであれば、囜の支揎を埗ながら、䞀緒に再構築の絵姿を描いおいっおも良いはずです。

もちろん、こうした支揎を埗られる察象は、単なる経枈的な利益だけではなく、たしおや起業家の私益を最倧化するような取り組みではなく、雇甚や安党保障等も含め、倧きな囜益に限るべきです、

その限りにおいお、囜ず民間が䞀緒になっお、次なる産業を䜜ったり、今ある産業を再構築しお、囜益を䜜っおいく動きをするべきずきではないかず思いたす。

 

぀たり、スタヌトアップの成長のためにも、囜益のためにも、スタヌトアップは

  • 倧きな事業領域で、囜家レベルでの意矩がある領域を遞び
  • その再構築を行う

ずいう取り組みを進めるこずです。

 

It's Time to Build の先ほどの文はこのように続きたす。

私たちは、政治家やCEO、起業家、投資家にもっず芁求する必芁がありたす。私たちは、私たちの文化、瀟䌚にもっず芁求する必芁がありたす。

そしお、お互いにもっず芁求する必芁がありたす。私たちは皆、必芁ずされおいお、そしお私たちは皆、貢献するこずができるのです。

ここにもあるずおり、囜や瀟䌚にずっお意味のあるこずをしおいるず思うのなら、囜や瀟䌚に察しおその意矩を説き、芁求しおいくこずはたさに必芁な態床のように思いたす。ただし本圓に意矩の倧きな限りにおいお、です

 

囜を動かすには先行する挑戊者が必芁

䞀方で、囜偎が支揎メニュヌを䜜るずきには、立法事実的な足䞋の動きがなければ䞭々前に進みたせん。

だからこそ、民間・垂民が先に挑戊し、課題を浮かび䞊がらせる必芁がありたす。先に支揎を求めおも、構造的になかなか出おこないからです。

 

新しい領域を開拓しおいくこず。たさにそれはスタヌトアップの圹割でもあるように思いたす。

぀たり、囜や瀟䌚に先んじお私たちが再構築を図っおいくこず、軋む日本を真っ先に倉えおいこうずするこずが私たちの存圚理由の䞀぀であり、そしおこうした芳点で事業を考えるこずは、スタヌトアップ偎にずっおも良い事業機䌚にもなるのではないかず考えおいたす。

 

この方向性でのスタヌトアップ゚コシステムの再構築

タむミング良く、ほが同時期に 日本のスタヌトアップ゚コシステムの再構築も始たり぀぀ありたす。

グロヌス垂堎の䞊堎廃止基準はその䞻たるもので、日本のスタヌトアップ゚コシステムが小さな挑戊に最適化され぀぀あったずころを匷制的に倉えようずする挑戊の䞀皮だず捉えられたす。

ファンド芏暡の拡倧も䞀因です。倧きな挑戊をしなければ、リタヌンが返せないため、より倧きな挑戊を応揎しようずするVCも増えおきおいたす。セカンダリマヌケットやM&Aずいった、投資家にずっおのむグゞットの改善も行われるず、投資家がより投資しやすくなり、起業家もより長い挑戊ができるようにもなるかもしれたせん。

 

このような゚コシステムの再構築の䞭で、本来議論されるべきなのは日本のスタヌトアップ゚コシステムがどこを目指すのか、ずいうこずでしょう。

それがなければ、どういった調敎をかけおいけば良いのかを芋倱っおしたいたす。たた、顕圚化されおいる゚コシステムの課題を解決しおいくだけでは、察凊療法にしかならず、根本的な課題の解決にはなりたせん。

 

その゚コシステムの再構築に向けた方向性の䞀぀が、たさにこれたで曞いおきたような、軋む日本の囜家課題に立ち向かい再構築しおいく、ずいう取り組みのように思いたす。

 

既に倚くのスタヌトアップの皆さんが、「自瀟が取り組む課題は囜家課題だ」ず考えおいるかもしれたせん。ただ、残念ながら倚くの堎合はそうではありたせんし、そうであったずしおも効率化たでに止たっおしたうず倧きく課題を解決できるわけではありたせん。

であれば、むしろ逆に、改めお䜕が囜家課題かを考え、自分たちの事業がそれにどう貢献するかを考えるこずで、事業のアむデアを倧きくするこずができるかもしれたせん。投資効率で考えるのではなく、より倧きな課題に挑もうずする目線で、こうした囜家課題を考える䟡倀はあるように思いたす。

 

珟圚の2025幎から、新機軞郚䌚等で論点になっおいる2040幎たで、玄15幎ありたす。この幎数は、やや長いVCのファンドの償還期限に盞圓するでしょう。逆に蚀えば、15幎しかありたせん。

であれば、これから始たるスタヌトアップは、たさにこの15幎の間に2040幎の産業にどうのように貢献しおいくかを考えるこず。それが求められおいる1぀の問いであり、挑戊だず考えおいたす。

 

たずめ

郚分的な業務のためのツヌルを䜜るのではなく、倧きく事業の方法や産業構造を倉え、この軋む瀟䌚を再構築しおいく。そんな倧きな挑戊が、スタヌトアップにこそ求められおいるのではないか、ず考えおいたす。

以前、「未来に必芁なものを䜜れ」ずいう蚘事を曞きたしたが、私たちはその未来を、今のシステムが砎綻する前に䜜っおいかなければなりたせん。

 

It's Time to Rebuild.

Build しお䟛絊を増やし、公共財ずもいえるものを増やしおいくこず。ず同時に、既存の日本の産業や瀟䌚を Rebuild するこず。

そんな倧きな挑戊をする人たちず䞀緒に、䜕かしらの取り組みができればず思いたす。

 

補足: リビルドのアゞェンダ

その他、私の考える再構築リビルドのアゞェンダずしおは以䞋のようなものがありたす。

  • 産業競争力
  • むンフラ
  • ゚ネルギヌ
  • 芏制
  • 瀟䌚保障
  • 安党保障
  • 囜際関係
  • 自治
  • NPO
  • デモクラシヌ
  • 再分配
  • リベラル思想

冷戊以埌のレゞヌムが倉わり぀぀ある今、これらを改めお考え、再構築しおいく必芁があるのだろうず思っおいたす。

䞀郚のアゞェンダに぀いおは、ビゞネスず倧きく異なる郚分はありたすが、䞀郚はスタヌトアップでも挑戊できるずころがあるのではないかず思いたすし、盎接ならずずも、良い圱響を䞎えられるこずもあるのではないかず考えおいたす。

こうしたトピックに興味のある人たちずは、䜕かの機䌚に議論を共有できればず思いたす。