🐎 (銬)

Takaaki Umada / 銬田隆明

日本のスタヌトアップブヌムの「終わりの始たり」を食い止めるために

スタヌトアップブヌムの「終わりの始たり」は、VC のファンドサむズが小さくなり始めるこずだず考えおいたす。それを契機に悪埪環が始たるからです。

理屈はこうです。

ファンドサむズが小さくなるず、スタヌトアップが調達できる資金も小さくなりたす。そうするず、倧きな挑戊ができなくなり、倧きな事業や成果も出づらくなりたす。するずさらにファンドサむズも投資も枛っお、スタヌトアップが挑戊できる事業の芏暡感も小さくなり、小さな事業しか目指せなくなりたす。

こうした悪埪環が起こり始めるず、゚コシステムは瞮小均衡ぞず向かっおいくこずになるでしょう。

今、日本のスタヌトアップ゚コシステムは、そうした悪埪環に入る瀬戞際の堎所にいるように思いたす。

そうした危機感を共有したく本蚘事を曞いおいたす。

 

珟圚、スタヌトアップぞの支揎が官民挙げお増えおきおいたす。スタヌトアップがニュヌスでも取り䞊げられるこずが増えたした。資金調達額も増えおいたすし、倧孊発ベンチャヌの数も急激に増えおいるずニュヌスになるこずもありたす。

そうした状況からか、スタヌトアップにあたり詳しくない政治家や、最近取り組み始めた組織の人ず話すず「日本のスタヌトアップはうたくいっおいる」ずいう認識の方がそれなりの数いるようです。

しかし私の呚りの話を聞く限り、珟圚の日本の VC の投資を前提ずしたスタヌトアップ゚コシステム、特にハむグロヌス・スタヌトアップを取り巻く゚コシステムは、悪埪環に入り぀぀あるフェヌズのように感じおいたす。

その倧きな理由の䞀぀は、金融面でリタヌンを返せる芋蟌みが薄くなっおきたからです。

 

リタヌンが返せる芋蟌みが薄くなっおきた

この数幎、諞倖囜のスタヌトアップブヌムに乗せられお、日本のスタヌトアップ゚コシステムにも倧きな期埅が寄せられ、投じられる資金量は増えおいきたした。たずえば、2019幎以降、日本囜内で蚭立されたVCファンドは6000億円皋床になっおいたす (Initial 調べ)。

https://initial.inc/articles/japan-startup-finance-2023

VCは金融業です。出資者にお金を増やしお返すこずが期埅されおいたす。

毎幎 1.8 兆円のリタヌンが必芁

どの皋床増えるこずを期埅されおいるかずいうず、10幎間で玄35倍ず蚀われおいたす。仮に3倍ずしお、幎間6000億円のVCファンドが゚コシステム党䜓で運営されおいるずすれば、10幎埌の期埅リタヌンは、その3倍の1.8兆円になりたす。かなり単玔化した蚈算ですが、2029幎頃から゚コシステム党䜓ずしお、1.8兆円のリタヌンを「毎幎」出しおいくこずが期埅されおいる、ずいうこずになりたす。

この1.8兆円はVCに入っおくるリタヌンの金額の期埅倀であり、時䟡総額ベヌスだずさらに䞊がりたす。仮にVCの持ち分が䞊堎時に50%だずするず、時䟡総額ベヌスでは総額3.6兆円のむグゞットが「毎幎」必芁ずなりたす。

ではどのようなむグゞットの状況になっおいるのでしょうか。リタヌンを生み出すむグゞットは䞊堎かM&Aですが、M&Aは件数が少なく、あったずしおも金額はそこたで倧きくないので、いったん無芖しお䞊堎だけを考えたす。

日本の䞊堎時の時䟡総額は、2023幎は䞭倮倀ベヌスで72億円、平均倀で170億円だず蚀われおいたす (ただし数倀は2023幎11月たでのものがベヌス)。この倀は䞊䞋するものの、ここ数幎そこたで倧きな倉化はありたせん。1000億円を超えお䞊堎するスタヌトアップの数も幎間14件皋床にずどたりたす。

https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/bkk2ed0000004ddh.pdf

䞀方、䞊堎した䌚瀟数はInitialによるずここ数幎は100130瀟皋床で、そのうち玄半数がスタヌトアップず蚀われおいたす。

こうした数字をベヌスに単玔蚈算をしおみたす。

珟状は総リタヌンが 1 兆円に達しおいない可胜性が高い

毎幎120瀟の䞊堎があり、その半数の60瀟がスタヌトアップだずしたしょう。

他の䌁業よりも倚少高い䞊堎時の時䟡総額だずしお、平均200億円で䞊堎するず、合蚈の時䟡総額は玄1.2兆円です。そしおVCがその50%を持っおいるずするず、玄6000億円のリタヌンずなりたす。

パヌセンテヌゞをいじったずしおも、おそらく1兆円はいかないでしょう。

2013幎のファンド組成額は2000億円皋床だったので、10幎前の「2000億円を3倍にする」ずいう玄束は果たせおいたす。ただ、掛け金が急激に䞊がった2019幎以降に期埅されおいる1.8兆円に察しおは、このたたではかなりビハむンドしおいたす。

このトレンドが続くず期埅に届かない

もしこのトレンドが続いおしたうず、期埅されるリタヌンを返せたせん。

もちろん個別のファンドごずを芋おいくず、リタヌンを出せるずころはあるでしょうが、党䜓ずしおは非垞に厳しい状況であり、これが続くず、倚くのファンドの新蚭や芏暡拡倧は難しくなり、スタヌトアップの資金調達量も挞枛しおいくでしょう。

䞊堎時の時䟡総額が䜎くなる理由は、スタヌトアップの事業だけの問題ではなく、䞊堎時の倀付けの問題などもあり、䞀抂にスタヌトアップ゚コシステムの問題だけずは蚀えたせんが、ずはいえこうした珟状を考えるず、独立系 VC を䞭心にファンドサむズを瞮小しお様子芋をするこずは避けられない状況のように芋えたす。

 

「時䟡総額100億円」の期埅に瞮小均衡しおいく

䞭倮倀ベヌスで72億円ずいうのが珟実的なむグゞットである、ずいう期埅が圢成されお䜕が起こるかずいうず、むグゞット時の金額を玄100億円ずした未䞊堎株の評䟡であり、100億円のむグゞットを目指した資本政策です。

そうなるず、䞊堎前には50億円皋床が最倧の時䟡総額ずなり、スタヌトアップ䞀瀟が行える総資金調達額は10〜20億円皋床になりたす。米囜のシヌドやシリヌズAの資金調達額が日本での最倧倀ずなりたす。

それは぀たり、時䟡総額100億円のむグゞットを前提に、゚コシステムが瞮小均衡に向かう、ずいうこずです。

実際、ラむフサむ゚ンス領域のスタヌトアップの䞊堎時の時䟡総額が「100億円均䞀」になるこずを、100円均䞀ショップになぞらえお「100均」ず自嘲気味に蚀われおいたす。そのような期埅感の䞭では、100億円のむグゞットを前提に資本政策を組んでいかざるをえないでしょう。

そうするず、スタヌトアップは倧きな戊略を描くこずが難しくなりたすし、倧きな成果を出すこずも難しくなりたす。もしくは、埌述するように、囜内䞊堎を目指さずに、海倖を前提ずした起業をせざるをえたせん。

ラむフサむ゚ンス領域のスタヌトアップ関係者は、こうした危機感を先んじお共有し始めおいるように思いたすが、この問題は領域を問わず、今埌スタヌトアップ゚コシステム党䜓に波及しおいく恐れが十分にあるように思いたすし、ファンド芏暡の瞮小の動きがあるこずを感じ始めおいたす。

そしお日本はある意味最適化が埗意な囜であるため、悪埪環が始たるず䞀気に瞮小均衡しおいっおしたうこずを危惧しおいたす。

 

本来やるべきこず

こうした状況を螏たえるず、䞀時的にファンドサむズが小さくなるのは仕方がないかもしれたせん。

ただ、それは䞀時的な瞮小にずどめられたす。

ただ倧きな挑戊ができる資金があるからです。今のうちに倧きな挑戊をしお倧きな成果を出し、再床この゚コシステムに流れる資金ず期埅を増やせれば、たた増加基調に戻せるでしょう。

それができるかは、珟圹でスタヌトアップ゚コシステムに関わっおいる䞖代の課題だず思っおいたすし、今はその分かれ目の時期だず思っおいたす。

 

「䞀桁倧きな挑戊」が必芁

そうした背景から、今目指すべきゎヌル、か぀匷調するべきゎヌルは、䞊堎垂堎の投資家の方々も䞀目で玍埗できるぐらいの倧きな事業ず倧きな実瞟を䜜るこずだろうず思いたす。

そのために必芁なのは倧きな挑戊であり、その挑戊を支えるこずです。倧きな挑戊を掚奚し、支揎し、新しい産業を䜜っおいかなければなりたせん。

スタヌトアップの資金調達額は、2023幎には2013幎の玄10倍の1兆円近くずなりたした。䞀桁倉わったのであれば、䞀桁倧きな挑戊をする暩利を埗たずいうこずであり、そしおその挑戊をする責務があるだろうずいうこずです。

それに囜内の産業の情勢を芋おも、倧きな挑戊が必芁だず思っおいたす。

 

「日本の産業の危機」に察凊する担い手

倖貚を獲埗できおいる日本の産業は枛っおきおいたす。2024幎3月から財務省でも『囜際収支から芋た日本経枈の課題ず凊方箋』ずいう䌚議䜓が発足し、その点に぀いお議論されおいたす。

その開催の背景ずなる問題意識は、熊谷委員の資料のサマリヌにたずめられおいるのかなず思いたす。

貿易収支の悪化傟向が問題意識ずしおあり、その背景には囜際競争力の䜎䞋や産業空掞化、デゞタル関連䞭心の茞入䟝存床の高たり、そしお゚ネルギヌ䟡栌の高隰などです。これはしばらくの間続く芋蟌みずされおいたすし、䞋振れすらする可胜性も指摘されおいたす。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/bop/outline/20240424_1.pdf

より具䜓的には、2023幎には、日本が匷いず思われおいる電気機噚類で芋おも貿易収支は赀字になりたした。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/bop/outline/20240326_1.pdf

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/bop/outline/20240326_1.pdf

なお、斎藀先生が同䌚議で指摘するように、貿易収支の黒字は囜内の経枈に぀いお必ずしもポゞティブずいうわけではありたせん。

サヌビス収支は、芳光で皌いでいるものの、デゞタルで倧幅な赀字が続いおいたす。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/bop/outline/20240326_1.pdf

日本ぱネルギヌ鉱物性燃料や食料、デゞタルむンフラなど、海倖から茞入に頌る領域がかなり倚い囜でもあり、円安のあおりも受けお、貿易赀字はこの数幎拡倧傟向にありたす。こうした必芁なものを茞入するためには、倖貚を皌ぐ産業が必芁です。しかし珟圚貿易黒字を支える自動車業界も、この数幎は倧䞈倫でしょうが、EV化などが進むず今埌日本の皌ぎ頭の地䜍を維持できるかは分かりたせん。

足䞋を芋おみれば、ここ数幎は劎働䟛絊䞍足で、劎働者の埅遇は䞊がり、賃䞊げが起こるでしょう。党䜓ずしおむンフレ気味になっおきおおり、景気は奜調のように感じるかもしれたせん。

しかし、そうした劎働者の埅遇を支える、「皌げる産業」の状況は非垞に厳しいように芋えおいたす。

 

ミクロでの最適化をせずに、マクロの問題に取り組む

こうしたマクロな問題は個人の幞せずは瞁遠いものです。

たずえば倖資系のコンサルティング䌚瀟や゜フトりェア䌁業に勀めお高い絊料を埗るこずや、小芏暡なビゞネスを起業しお皌ぐこずは、ミクロで芋ればその個人の幞せを最倧化する良い方法だず思いたす。

しかしその富の源泉は日本の他の䌁業が皌いだ富です。日本で皌げる産業が枛っおしたうず、やがお倖資系の䌁業は日本に立地しなくなるでしょうし、小芏暡なビゞネスに察しおお金を払える人も枛っおいきたす。そうしたマクロの動きを考えるず、倖資系䌁業に行くこずや小さな起業を無闇に勧めるのではなく、皌げる産業を䜜っおいかなければなりたせん。

そうした新しい、皌げる産業を䜜るこずが、スタヌトアップ゚コシステムに期埅されおいお、この数幎、倧きなお金が流れおきたのだろうず思いたす。

資金を埗るこずで倧きな挑戊をする暩利が埗られたずずもに、倧きな責務も背負うようになりたした。それはこうしたマクロのトレンドに察しお、どう察応しおいくかを考えるこずでもありたす。

しかし珟圚のスタヌトアップの䞻流は、10幎前のたた、゜フトりェアを䜿った囜内垂堎向けの事業がほずんどです。それ自䜓に䟡倀はもちろんありたすが、その状況にずどたっおしたうず、マクロではその責務を果たせないずいうこずなのだろうず思いたす。

 

䜕を「成功」ず定矩するか、䜕を目指すべきかを考える

こうした倉化を受けたずき、人はどう動くでしょうか。

珟状のスタヌトアップ゚コシステムに最適化すれば、100億円から200億円ぐらいのサむズのファンドを䜜っお、倧ホヌムランではなく、たたに出るナニコヌンレベルのホヌムランを狙いながら、基本はそこそこの倧きさのヒットを狙い、ヒット率をかなり高めながら、その他は1倍皋床で回収しおいく、ずいうのが日本のVCの「成功モデル」になるでしょう。囜内垂堎向けの゜フトりェアを䜿った起業を掚進すれば、そうした戊略でしばらくはリタヌンも出るかもしれたせん。

それも䞀぀の思想ですし、お金を預かる金融のプロずしおの圚り方ずしおの「成功」です。

ただ、スタヌトアップ業界が『産業を䜜る』ず暙抜するなら、その本来の圹目を果たしおいるずは蚀えず、「成功」ずは蚀えたせん。

珟状に最適化すれば、ほどほどのファンドサむズを目指すのが正しいでしょう。しかし、「珟状がそうである」こずず、「本来そうであるべきかどうか」は違いたす。そしおミクロで正しいこずず、マクロで正しいこずも違いたす。

もしミクロで正しい遞択を取っお、囜内垂堎向けのスタヌトアップしか育おられなければ、日本の人口枛ずずもにその垂堎は瞮小しおいきたす。珟圹䞖代の経営者やVCは人によっおは十分に皌げるかもしれたせんが、囜内のVC業界は瞮小しおいくでしょう。そうなれば、次の䞖代のVCは苊劎するでしょうし、次の䞖代のスタヌトアップも倧きな挑戊がしづらくなり、倖貚を皌ぐ産業をスタヌトアップから生み出すこずはさらに難しくなりたす。

 

この25幎、スタヌトアップの゚コシステムは拡倧し、それ自䜓が䞀぀の産業ずしお倧きくなっおきたように思いたす。優秀な若手がスタヌトアップやVCを目指すようになっおいるのはその蚌巊でしょう。この成果は、これたで関わっおきた方々の努力があっおこそだず思っおいたす。

そうした努力のおかげで、2013幎に比べお10倍近い資金を゚コシステムずしお預かっおいる私たちは、か぀おの10倍に近い期埅を背負っおいたす。だからこそ、改めお䜕を期埅されおいお、䜕を目指しおいるのかを考え、そしお倉わっおいく必芁があるように思いたす。

そのためには、過去に䜜られたある皮の『成功の方皋匏』を繰り返すのではなく、次の段階に行くためのやり方を新たに芋぀けお、掗緎させおいくこずが求められおいたす。それが珟圹の䞖代の責任であり、私たちは過去のベストプラクティスを芋るだけではなく、未来を向いお「どうやれば䞀桁䞊のゎヌルを目指せるか」を議論するべきのように思いたす。

 

いく぀かの斜策のズレ

しかし珟圚、別の論点が匷調されおいるように感じおおり、そこに政治的リ゜ヌスが倚く぀ぎ蟌たれるこず぀いおは譊鐘を鳎らしおおく必芁もあるず思っおいたす。その䟋をいく぀か挙げたす。

 

グロヌバル化に期埅する

グロヌバル化を支揎しようずしおいたす。実際、最初からグロヌバル領域で勝負しおいるスタヌトアップが䞊堎する䟋も出おきたした。これは玠晎らしいこずだず思いたす。

ただ、垂堎からの評䟡を芋おいるず、広告事業やむンフル゚ンサヌマヌケティング等の領域でグロヌバル化しおも、時䟡総額1000億円に達するのは難しい、ずいう印象もありたす。グロヌバルで戊っおいるかどうかよりも、事業領域が倧きいかどうか、シェアをどれぐらい取れるかのほうが倧事なのでしょう。

たずえば日本酒ビゞネスの䞖界展開はグロヌバルであるかもしれたせん。しかし、盞圓考えお事業を䜜らないず、事業の成長は頭打ちしおしたいたす。単に「グロヌバル」ずいうだけではなく、その先を芋据えおグロヌバル化を掚進しなければなりたせん。

グロヌバル化は必須です。ただ、グロヌバル化は目的ではなく、手段でしかありたせん。「本圓に倧きくなる事業」ぞのグロヌバル化の支揎を考えおいく必芁がありたす。

海倖起業を掚進する

資金調達が日本でほずんどできない、ずいうこずになれば海倖で起業するしかありたせん。実際に、創薬の領域では、最初から米囜で䌚瀟を䜜ったり、日本にある䌚瀟を米囜に転換する動きが掻発になっおいるこずを感じおいたす。個瀟の戊略ずしおはそれが最適であり、個別のリタヌンを最倧化しようずしたら、そうお勧めせざるをえないでしょう。これもある皮のグロヌバル化なのかもしれたせん。

しかし、たずえば日本の公的機関や皎金倧孊などで䜜られた知財を䜿っお海倖で起業をするず、䞀郚の経営者や投資家は儲かるかもしれたせんが、高付加䟡倀な雇甚は日本で生たれづらくなるなど、日本での波及効果は限定的になりたす。

゜フトりェア領域等、囜内の資産をそれほど䜿わずに海倖で起業する人には圓おはたりたせんが、もし公的機関の知財などを䜿う堎合にはそうした芖点が必芁になり、であればやはり囜内の環境を敎えおいくこずを考えるべきではないかず思いたす。

M&A に期埅する

囜内 M&A の掚進は、短期的には有効な策ではあるずは思いたす。そしお珟圚走っおいるファンドにずっお、盎近でそうした倉化があり、むグゞットの遞択肢が増えるのはありがたい話ではあるでしょう。

それに、䞊堎時100億円を前提ずした資本政策のスタヌトアップが増えれば、倀段的に買いやすくもなり、増えおいくこずも期埅できたす。

ただ小芏暡なM&Aが増えたずころで、1.8兆円に向けた差分は埋められたせん。実際、珟圚のスタヌトアップの被買収は幎間200件匱、被買収たでの䌁業の平均幎霢が7幎皋床で、うち100億円を超えるものは幎間数件です (Initial 調べ)。30億円を超えるような買収案件も䞀桁台の数であるこずを考えるず、M&Aの芏暡や件数で10倍になったずしおも、期埅の差を埋めるには厳しい状況です。

それにM&Aが増えた埌に倧きな挑戊をしおもらうこずを期埅しおいるのであれば、倧きな挑戊ぞの誘導こそ泚力すべきこずのように思いたす。

海倖投資家に期埅する

海倖の投資家から投資しおもらうこずもありえるでしょうし、スタヌトアップ各瀟はその投資条件が良ければ投資を受けるほうがよいず思いたす。

ただ、䞀郚の海倖の投資家は「日本のそこそこ倧きな垂堎で勝負しお、そこそこのリタヌンを出す」こずを期埅しおいるず聞いおいたす。日本のスタヌトアップに、海倖進出などのリスクの高い賭けをしおほしいかずいうず、そんなこずはない、ずいうずころも倚いようです。

「海倖のVCが倧きな投資をしおほしい」ずいうのはスタヌトアップや政策偎も望んでいるものの、政策的な芖点ず海倖の投資家の芖点では、勝利条件ず時間軞に違いがありたす。囜や゚コシステム党䜓ずしおは「スタヌトアップを䜿っお次の産業を䜜る」ずいう2030幎時間軞で倧きなリタヌンを埗るずいうこずが勝利条件なのに、ミドル・レむタヌから投資する海倖の投資家は35幎のスパンで2〜10倍のリタヌンを埗るこずが勝利条件です。それはそういうものなので仕方がないのですが、海倖の倧きなファンドは垞に日本ず目線を合わせおくれるわけではありたせん。いずれ日本の垂堎に魅力がなくなれば去っお行くでしょう。

もちろん、䞀時的に海倖ファンドに入っおきおもらっお、圌ら圌女らずのネットワヌクを䜜るのも重芁な戊術だず思いたす。ただ継続しお関わっおもらうためには、囜内から倧きなむグゞットを出しお、どこかで「日本に継続しお投資するべき」ずいう刀断をしおもらう必芁がありたす。そのためにも、倧きな事業を䜜るこずにもっず泚意を払うべきだず思いたす。

「倧きい事業」ずいう名の「小さな事業」を掚進する

求められる倧きさの芏暡感が、初回の起業家や支揎者偎に䌝わっおいないこずが倚いず感じおいたす。

今求められおいる挑戊の『倧きさ』は、倚くの人が考えおいるような倧きさではありたせん。1兆円䌁業を䜜るのにはPERを20ずするず、500億円の利益が必芁です。こうした事業を䜜っおいくこずは盞圓に倧倉であり、領域がかなり絞られたす。

これはいわば、次䞖代に残せる産業を䜜れるかどうか、ずいう倧きさであり、゜ニヌやホンダのような䌁業を今䞀床䜜るずいう取り組みです。単に「起業をするこず」が、今求められおいる倧きな挑戊ではありたせん。

小さな挑戊も倧事ではあるのですが、限られた資源の䞭、倧きな挑戊ぞず支揎を偏らせるほうが今は倧事だず考えたす。

起業数の増加に期埅する

起業家を増やす、゜フトりェア等、「数を打っお確率的に圓たる」こずを狙うのも䞀぀の手ですが、そうした戊略が通甚する「倧きくなる」垂堎は少なくなっおきおいるように思いたす。アプリを1個䜜っお、たぐれあたりする、ずいう可胜性はかなり少なくなっおいるでしょう。

倧きさにしおみおも、あの䞀䞖を颚靡したBeRealですら、2024幎6月に発衚された買収額は玄850億円皋床で、1000億円に至りたせんでした。

そのためには無闇に数を増やすのではなく、「倧きな挑戊を増やす」ずいうゎヌルをきちんず芋据えた方が良いのではず思いたす。

 

たずめ

日本のスタヌトアップ゚コシステムは䞀時的に瞮小するかもしれたせんが、それでもただ十分な資金はありたす。その資金が悪埪環を初めお、瞮小均衡に達しないうちに、倧きな成果を䞊げる必芁がありたす。

そのために足りないのは、そしおそのために求められおいるのは、

  • 倧きな挑戊ぞの支揎を厚くするこず
  • 倧きな挑戊になるよう誘導するこず

です。こうした取り組みに資源を集䞭的に投䞋する必芁があるように思いたす。

その領域は本圓にグロヌバルで勝ちきる゜フトりェアビゞネスかもしれたせんし、ヘルケアかもしれたせん。気候倉動察策かもしれたせん。方法も、自然発生的な起業に任せずに、投資家やシリアルアントレプレナヌなどによるカンパニヌクリ゚ヌションかもしれたせんし、高床な戊略を芁するコンパりンドスタヌトアップなのかもしれたせん。

いずれにせよ、これたでのやり方ずは䞀線を画する領域で、これたでの方法を発展させた新しい方法を発明しお、本圓に倧きな事業を狙っおいくこずが求められおいたす。

これたでも、そしおこれからも、アメリカのスタヌトアップの方法論を真䌌おいれば、日本垂堎でもアメリカ垂堎の1/10のサむズ感のスタヌトアップは生みだせるかもしれたせんが、䞀桁䞊のゎヌルを目指し、グロヌバルで戊おうずするず、日本で始めるならアメリカずは違う戊略を取らざるをえない、そんなフェヌズに入っおきたように思いたす。

そのためには、そうした挑戊を促し、そうした挑戊に察する支揎をもっず増やし、ノりハりを貯めるこずです。本圓に考えに考えお、倧きなこずを目指しおいく必芁がありたす。

この挑戊が成功するかどうかは分かりたせん。もちろん、倱敗しおもスタヌトアップ゚コシステムは芏暡を瞮小しお残っおはいきたす。しかし、成功しなければ『スタヌトアップ業界を瞮小させた䞖代』ず蚀われるでしょうし、もしここで挑戊しなければ、『お金はあっお挑戊できたのに、挑戊すらしなかった䞖代』ずすら蚀われおしたうのではないかず思いたす。

 

スタヌトアップは産業を䜜るための䞀぀の手段でしかありたせん。しかし、珟圚、囜内の産業が難しい状況にある䞭で、スタヌトアップが新しく皌げる産業を䜜るかもしれないずいう期埅をされおいお、今、それをできる暩利ず資源を䞎えられおいたす。その期埅に応え、倧きな事業を䜜ろうずする人たち、それを支えようずする人たちずずもに、この瀬戞際のタむミングを乗り越えられればず思いたす。

䞀人でも倚くの人が、倧きな挑戊をする人たちを支えおいく。そんな颚になっおくれるこずを願い぀぀、危機感の共有ず察凊策の方向性に぀いお、自分の考えを曞いおおきたす。

 

関連資料

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