🐴 (馬)

Takaaki Umada / 馬田隆明

機会からはじめよ

ハイグロース・スタートアップを目指す起業家や、大企業の新規事業の人たちの多くに共通する、新事業の立ち上げがうまくいかない原因の一つは、「自分のやりたいこと」を重視しすぎてしまうことだと感じています。特に大企業のボトムアップ型の新規事業にお…

アイデンティティを緩く保つ

「文系で技術がありません。どう起業すればよいでしょうか」というのは学生から頻出する質問です。その質問に対する答えにはいろいろありますが(たとえばチームを組めばよいなど)、一方で「そこまで自分を規定しなくとも良いのでは…」とも思います。 文系…

「やりたいこと」を探すよりも「やるべきこと」に目を向けてみる

学生の方から「やりたいことがない」「行動を起こせるほど興味があるものがない」という質問のような相談が出てくることがあります。 そうしたとき、最近は「やりたいことよりも、むしろやるべきことを考えてみてはどうでしょう」「何かできるところから始め…

「未来にとっての過去」を今から作り始める

起業に興味がある若手の方と話していると、「自分には原体験がない」「文系(理系)だから」「スキルがない」といって、行動を始めることを躊躇してしまう人がそれなりの数いることに気づきます。 実際、起業を始める前に「あなたの原体験は何か」といったこ…

埋め込まれたアントレプレナーシップ教育

これまでの小中学校におけるアントレプレナーシップ教育の展開計画では、いくつかの課題がありました。たとえば以下のような課題です。 既存の授業科目とは「別」のコマを用意することが想定されており、学校や教師の負担となっている(ただでさえ、外国語や…

学生にとっての「社会」と「社会課題の解決」

「社会」という言葉はもともと日本語にあった言葉ではなく、society という言葉の翻訳のために、明治時代に新しく作られた造語だそうです。 この society という言葉には意味が大きく2つあり、 狭い範囲の人間関係 (例: 仲間、友人、組、会) 広い範囲の人…

大企業とのカンパニークリエーション - デマンドサイドからのオープンイノベーション

先日取り上げた、スウェーデンの「インパクト・カンパニー」ビルダーである Vargas Holding が、新たに繊維スタートアップの Syre を立ち上げ、2024年3月に資金調達を行って表舞台に出てきました。 Syre はポリエステル繊維の大規模なリサイクルを行い、サー…

成功を測るものさし📏

同じ「起業家」と呼ばれる人たちと話していても、成功の認識は大きく違うと感じています。 富、名声、力を成功と捉えて起業する人もいれば、より良い社会を残すこと、より大きな何かを成し遂げることなどを求めて起業という選択を取る人もいます。 富一つと…

Company Creations by Vargas Holding: Creating a Series of Decacorns and Unicorns 🦄

What is Vargas Holding? Method 1. Look at macro trends and create what should be 2. Vertically integrate 3. Secure sales commitments early 4. Have customers buy the product and also invest 5. Utilize financing techniques 6. Don't take on t…

「インディースタートアップ」とスモールビジネス

受託開発での起業や自己資金での起業を「インディースタートアップ」や「インディービジネス」と呼ぶことについての話題が懇親会で挙がりました。 スタートアップとスモールビジネスはよく比較されますが、「スモールビジネス」というと、小さい=良くないと…

「スタートアップ」の定義が曖昧なことによる弊害と悪影響

国の政策の方針もあって、「スタートアップ」が注目されており、予算等もついて「スタートアップの数」などが公共団体等での KPI に置かれ始めています。 スタートアップの数を増やすことは個人的にも賛同していますが、ただ、気を付けたいのがスタートアッ…

Make Something the Future World Needs

In the Silicon Valley of the past, young hackers created one groundbreaking software service after another, guided by the motto of Y Combinator: Make Something People Want However, as large corporations have increased their presence even i…

未来の世界に必要なものを作れ

かつてのシリコンバレーでは、 人が欲しがるものを作れMake Something People Want という Y Combintor のモットーを合言葉に、若きハッカー達が次々と時代を画するソフトウェアサービスを生み出してきました。 しかし、ソフトウェア領域でも大企業の存在感…

Distinguishing "High-Growth Startups" from the Broadening Definition of "Startups"

As the term "startup" has become more widespread in Japan, it seems to have lost its original meaning and context, which referred to a distinct and specialized form of entrepreneurship that aimed for rapid growth while leveraging technolog…

Exit の量と質: 日本のスタートアップエコシステムのボトルネックと1兆円企業

真ん中が増えて、「入口」と「出口」が増えてない 出口がより大きな課題 量を増やすか? 質を上げるか? 日本の M&A の数と産業構造の関係 中長期的には質を上げる 2024 年の日本のスタートアップエコシステム全体としてアプローチしなければならない中長期 …

スタートアップの方法論の変遷 ~「適切な場所で」、適切なものを、適切に作る ~

スタートアップに適した「場所」の変遷 1.1 2009 年前後 - B2C 1.2 2012 年前後 – B2B ホリゾンタル 1.3 2015 年前後 – B2B バーティカル 1.4 2018年前後 – B2B エンタープライズ 場所が変われば探し方も変わる まとめ リーンスタートアップの方法論、特に仮…

デカコーンやユニコーンを次々に作る「Vargas」によるカンパニークリエーション

Vargas Holding とは 方法 1. マクロトレンドを見て、あるべきものを作る 2. 垂直統合する 3. 売上コミットメントを早期に獲得する 4. 顧客に製品を買ってもらって、投資もしてもらう 5. ファイナンス手法を駆使する 6. 技術リスクはそこまで大きく取らない …

コンテストでは評価軸を読み込む

僭越ながら審査側に立つことが多くなってきました*1。 補助金やピッチコンテストなどでこれから登壇される方に、審査員としてぜひ伝えたいことは、「審査の評価軸が事前に公開されているなら、それをきちんと読み込んで挑んでください」ということです。 ど…

「強み」にこだわりすぎない

私たちはしばしば、「自分の強みは●●なので、この道を選ぶ」と言ったり、誰かから「日本の強みを活かして勝つ方法は何か?」と尋ねられたりします。 強みに焦点を当てるべきだとよく言われますし、過去の経験を生かすことは理屈でも、コストパフォーマンスの…

J-Startup Impact の推薦委員から見た、J-Startup Impact 応募と準備のコツ (2023 年度版)

(※本記事は推薦の審査中ならびに推薦直後に書いたものです。2023年10月6日に J-Startup Impact の受賞企業が発表されたので、公開しました。) 1 整理 1.1 社会的インパクトを比較する例 2 応募の際のポイント 2.1 J-Startup に選ばれうるぐらい事業を伸ば…

Startup Studio や Venture Creation Model の台頭と日本での必要性

1 Startup Studio について 1.1 Startup Studio の概要 1.2 Startup Studio の事例 1.3 背景 1.4 類型 2 Venture Creation Model について 2.1 概要 2.2 プロセス 2.3 類型 3 日本におけるこれらのモデルの今後 3.1 領域の広がり 3.2 非営利組織の役目 3.3 E…

Entrepreneur in Residence (EIR) というキャリアの機会とプログラムの改善

海外でたまに見かける「Entrepreneur in Residence (EIR)」の仕組みが日本でも徐々に広がりつつあります。 アントレプレナー・イン・レジデンスは、ざっくりと言うと「おおよそ数か月から2年程度まで、一定程度の給料をもらいながら起業準備ができる」という…

2023年のスタートアップを取り巻く環境、今後に向けた施策 (特にアクセラレーターの視点から)

Y Combinator 以外のアメリカの著名なアクセラレーターの成果を見てみると、2015年以降、そこまで優れたパフォーマンスが出ていません。ユニコーン輩出という観点では、Y Combinator 以外のアクセラレーターからユニコーンがあまり出なくなっています。 http…

選び方と審査のイノベーション

助成金や賞などの審査員や評価委員として関わることがあります。そこで感じているのは、選び方にもイノベーションが必要ではないかということです。 私たちは、「選ぶ」ことに対してあまり注意を払っていません。特に「選ぶためのプロセス」や「選び方」につ…

「インパクト」と「スタートアップ」の整理

社会的インパクト、ソーシャルインパクト、あるいはそれらを略してインパクトという言葉がスタートアップの界隈でも取り上げられるようになりました。また「社会課題の解決」と「持続可能な成長」を両立し、ポジティブな影響を社会に与えるスタートアップで…

TRL と MRL と ARL (技術成熟度レベルと製造技術成熟度レベルと採用成熟度レベル)

Technology Readiness Level (TRL: 技術成熟度レベル) という言葉を聞いたことがある人も多いのではないかと思います。 TRL と略されるこの基準は NASA によって開発され、現在は様々な新技術やイノベーションの成熟度を測るものとして転用されています。日…

R&D (研究開発) から RDD&D へ

R&D (研究開発) ではなく、RDD&D という言葉を聞くことが増えました。 この RDD&D は、 Research (研究) Development (開発) Demonstration (実証) Deployment (展開・普及) の頭文字をとったものです。 たとえばアメリカのエネルギー省 (DOE) の技術移転室 …

「研究開発成果の事業化」と「スタートアップ」を混同しないために

大学発ベンチャーや大学発スタートアップと呼ばれる企業の多くは、主に大学での研究成果を用いて起業します。 注意したいのは、こうしたベンチャー企業やスタートアップは「起業」ではあれど、ハイグロース・スタートアップであるとは限らない、ということで…

ハイグロース・スタートアップ: 起業全般を示すようになった「スタートアップ」から峻別するために

スタートアップという言葉が広まるにつれて、スタートアップという言葉がかつて有していた「テクノロジーを用いながら、急成長を志向する、独特で特殊な起業形態」という意味や文脈が脱色され、「起業」全般の意味で使われるようになってきているように感じ…

『解像度を上げる』の裏話 (2) もともとは世に出ない予定だった?!

書籍の『解像度を上げる』には元となった同名のスライドがあります。*1 前著の『未来を実装する』の校了後、2021年1月頭ぐらいに時間ができたので、授業準備で忙しくなる3月までに一気にスライドを書くことにしたのが、解像度についてのスライドを書くきっか…